僕がまだ若くて傷つきやすかった頃、父がこんな忠告をしてくれた。「ゴールデンウイークに関する雑文が書けたとしても、世間はお前のように連休をフルに休めるような人ばかりではないという事については少しは考えた方がいい」以後、僕はこの言葉をずっと心に留めておくことになった。
以上でタイトルに関するギャグは終了である。
ゴールデンウイークが明けては見たものの、なかなか本調子に戻らない。やはり仕事したくない。ゴールデンウイークのせいなのか、20年以上かかりっぱなしで治る気配を見せない五月病のせいなのかよくわからない。
キリストが市場を通りかかると、一人の女が石をうたれていた。「この者はゴールデンウイークを終わらせた罪で石を投げられているのです」キリストは言った。「この中で、今までゴールデンウイークの恩恵を受けて休んだことのない者のみ石を投げよ」一人去り、二人去り、最後にはNHK職員だけが残った。(映画業界用語なのでNHKはゴールデンウイークと言わない。彼らが休むのはあくまで「初夏の大型連休」である)。
ああ、また解説が必要なうえにそれほど面白くないギャグが。
ゴールデンウイークに子供が出はらってしまい、部屋の中、夫婦で見つめあっても煮詰まるばかりなので、お出かけすることにした。「そういえば東京にはほとんど連れていってくれたことがないわね」という家内の提案だか恐喝だかを受け、東京に出かけることにした。
東京のシンボルと言えば東京タワーだが、既に行ったことがある。スカイツリーはまだ混んでるだろう。すると東京の象徴! というか省庁の上に君臨する国会議事堂を見に行く。桜田門駅から外に出るとそこは国会議事堂の正面。でかい。変形合体しそうである。彼を倒すには落雷攻撃しかない。うかつに近づくと逮捕されそうだったので早々に立ち去る。
ゴールデンウイーク! 黄金の弱点! 奴の目だ! 目を狙え!(5月1日、2日あたりの平日を指していると思われます)
昔の警視庁本庁は桜田門にあったので桜田門と言えば警視庁のことであったが、桜田門に来て桜田門と言った場合警視庁を指すのか桜田門自体を指すのか。少なくともカードキャプチャー桜だモン!を指すのではないことは明白である。
桜田門周辺を歩くと警視庁のでかい建物。た、逮捕される。警視庁を通り過ぎ、桜田門をくぐる。前に進んでも桜田門(江戸城の門)、後に戻っても桜田門(警視庁)。桜田門は改装中で白いシートに覆われていて風情がない。
桜田門を過ぎると広場があって、おお広いなあさすが皇居と田舎者丸出しの感想。もちろんこの感想は間違っていて、そこは皇居外苑の端っこの通路にしか過ぎなかったのである。
少し歩くと二重橋、記念の写真を撮りましょうね。東京だよおっかさんと言っても家内は理解してくれない。思ったより広い。広いな。石垣の石がでかい。皇居外苑という面と江戸城という面が頭の中で融合してくれない。
お濠には案内用パンフレットのとおり白鳥が二羽泳いでいる。ニワトリでもないのに二羽。裏庭には二羽白鳥がいる。白鳥って冬の渡り鳥ではないのか? きっとあれは観光客用のメカ白鳥である。優雅に泳いでいるように見えるメカ白鳥も、水面下では懸命にマブチモーターが水をかいているのだ。
東御苑に移動。大手門をくぐる。緑ばかり。番所を抜けて松の廊下跡へ。殿中でござる。殿中でござる。と言っても家内は理解してくれない。ここには電柱はないよ。いやそうではなくて、吉良上野介と浅野…知らんものは知らんですかそうですか。元廊下も今は緑の草の中、である(は、俳句!?)。本丸跡へ。広い、広いよ。弁当つくって持って来ればよかったなあ。大奥も今は単なる広場。あおいちゃんがここに!と家内が興奮する。家内は篤姫好きだなあ。天守閣跡に登ったあとは、藤棚や各県の木や池や茶屋や雑木林を見て回る。
大手門を出ると大手町駅。歩き疲れた二人は地下鉄に乗って家へ向かう。
ゴールデンウイークは去り、半茶家に再び平和が訪れた。しかし安心してはいけない。また、いつの日かゴールデンウイークが襲い掛かる日がくるとも限らない。ほら、三千年前の蓮の種が花開いたというそうじゃないか。