二つのフロアがビル自体からその存在を忘れ去られてから悠久のときが経過した。水による上下階に向かう侵食・腐食が無視できないものとなったため、調査隊が結成されフロアが再発見されることとなった。大量の水はその供給が断たれ、自動修復ロボットの大量投入により機能が復旧した。大量の水を処理するのは下水処理能力に疑問が残ったため、ビルの壁の一部を爆破して一気に排水処理を行うことが検討されたが、先発調査隊が帰還しなかったため中止となった。水は三十年かけてゆっくりと排水されることとなり、水面が徐々に下がると同時に水棲の神が現れることが予想されたが、不思議なことに彼らは発見できなかった。急激に絶滅したのか、他のフロアに移住したのか、ビルの外に集団で出て行ったのか、専門家の意見は今のところ一致しない。身体の外見を、湖底に積まれた粗大ゴミに擬態し発見を免れているという異端の説があるが、今のところ検証されるに至っていない。
上階のスラムの住民は、救援をかたくなに拒み、救援隊と交戦に至り、激烈な戦闘を経過し、最終的には救護隊が持ち込んだ外界のバクテリアにより感染症にて全滅した。
上のフロアの大穴、下のフロアから見れば天井の大穴をふさぐことは、その大きさ故に難しく、最終的にフロア間の床/天井を取っ払い吹き抜けの一フロアに改修されることとなった。大穴はなくなり、大穴の伝説が残されるのみとなった。
吹き抜けのフロアの床にうずたかく積まれたゴミの山はいつしか大穴山とよばれるようになり、春には桜の観光名所となっている。桜の花を眺めて、彼らはこの歌を口ずさむ。
♪はあ、穴が開いては
いくさは
できぬ
できる、できぬは
傾斜の時に
言う言葉
水に放り込めば
すべては消える
消えて現れる
白い影
出ては引っ込む
白い影
やさほい やさほい
すんだらけの ぱっぱっぱ
よいとまければ わるくてかちよ
ああ ほいほい
じゃすら くらげて
すすすのす すすすのす
JUSRAC 出 123−1234598
JUSRAC云々は歌詞ではないなので御注意いただきたい。