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159. Over the River 20130501


「この電車に乗ったまま、知らない場所へたどり着きたい」
「このまま二人で流されていきましょう。地の果てまで」

 という訳で、東横線直通副都心線に乗って寝ているうちに終点川越駅についてしまいました。地方出身者同士の夫婦の上にあまり出歩かないので、埼玉方面はほとんど未知の領域。駅にあるパンフレットを見ると、なんか昔の町並みが残っている小江戸というところがあるそうなので行ってみることにする。駅から数キロあるみたいなのでバスを探す。

 駅前のバス停は、工事のため移動していて案内表示がでたらめになっていて迷う。歩道橋を何度も降りたり登ったりして疲れる。しまいには面倒くさくなって車道を横断。観光地への循環バス(一日乗車券付)というのがあるみたいだったが、一時間に一本程度で、次の発車が20分後だったので普通のバスに乗り込む。発車を待っていると運転手がどこかに出かけてしまい、なかなか発車しない。そのうち循環バスが発車するのが見える。まあ急ぐ旅でもないからいいか。

 普通の駅前の普通のビルが見える。普通に発車して普通に進むと、いきなり蔵っぽい建物が現れたので次のバス停で降りる。確かに古っぽい街並み。商店の正面が木の桟のガラス戸。なんかすぐ割れそうなガラスだなあ。平日のせいかゴールデンウイークのせいかお休みの店が目立つ。あんまりボッているような値段も見かけず、客引きも少ない。商売っ気がないなあ。

 平日のせいか人がそれほど多くなくて助かる。これ休日だと車道に人が溢れるんじゃないかなあ。

 時の鐘が見える。三階建ての建物くらいの高さかな。マントを羽織って「ああ……時が見える…」とやった人が昭和の間に三人はいるに違いない。登るための階段(ほとんど梯子のような感じ)は登れないように蓋がしてある。町内会のお知らせの為の鐘かなと思ったが、櫓の上にお寺の鐘が吊るしてある。下をくぐってみるとその先には神社。元はお寺だったが、明治維新の時に神社になったらしい。せっかくだからお参りしていこうと思ったが賽銭箱もおみくじ売り場も見当たらない。商売っ気がないにもほどがある。

 しばらく路地を散策する。動かないことで有名なハシビロコウの石像が置いてある。二メートルくらいありそうなでかい像である。何かの宣伝でもなさそうで、意図がわからない。更に歩いていくと空き地にこれまた大きなパンダの像。「パンダの前はパン屋だ」……パン屋さんの宣伝であることはよく理解できたが、なにか我々と感覚が異なるような気がした。

 菓子屋横丁という路地には駄菓子屋や飴屋、漬物屋、風呂敷屋、コーヒー屋が並んでいる。家内はカルメ焼きときな粉飴を買う。私はキリン柄の手ぬぐいに心引かれたが、使い道を思いつかなかったので次の機会にすることにした。

 駅までは歩いて帰ることにした。今度は商売っ気ありありの普通の商店街が現れる。この商店街、長いし店が多いし活気があるなあ。この落差はなんだろうか。そしてどうしてこんな近くに本川越駅と川越市駅と川越駅が密集しているのだろうか。 元は一つの駅だったが、分裂したのだろうか。

 と特に落ちもなく電車に乗って帰宅の途についたのであった。行きは直通電車だったので油断していたが、帰りの池袋駅での乗り換えに苦労したのは恥ずかしいので内緒である。


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