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157. 鏡の 20130429


 顎に手を当ててみると髭の剃り残しがある。トイレに行って洗面所の鏡を覗き込む。どれどれと自分の肩越しに自分が覗き込む。振り返ると誰もいない。鏡を見ると二人の自分がこちらを見ている。三人。逃げ出そうとトイレの出口に走ると、いつのまにか鏡になっていて走ってきた自分とぶつかった。と思ったら、鏡の中に入り込んでしまった。これで四人。

 死人とは縁起でもない、誤認であろう。と言ってみるが他の自分はクスリともしない。仕方がないのでまじめな顔をよそおって、次の自分がやってくるのを待つ。


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