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156. 職住接近 20130428


 職場の間取りは非常に我が家と似ていて、これは偶然なのか、自分が家具調度を揃える時にオフィスと似ているものを購入してしまったせいかよくわからない。

 課長の顔は家内と見分けがつかないくらいに似ているが、課長の名前は教えてもらえず、試しに家庭内の話をしてみると無表情に私の顔を覗きこむだけなので、多分他人の空似なのであろう。机に座ると新聞紙に似た手触りの書類が既に回覧されて、内容確認しなければいけない。書類の中身は一見もっともらしいが、実情に添わない頭で考えて書類内だけで通用する理屈に満ちているので、真剣に読むことはない。誤字脱字を探すくらいだが、滅多に発見できない。書類を畳んで次の人に回す。

 十分働いたのでお茶の時間にする。給湯室は家の台所に似ていて、お茶を入れるくらいの事しかしないはずだが、料理用の鍋、フライパン、包丁、フライ返し、各種調味料などが揃えられている。非常事態に備えているのだろうか。お茶の葉は引き出しの中に、ポットからお湯を注いでお茶を入れる。

 デスクに帰ると既にお昼休み。それほど空腹を感じないのでロッカーの影で昼寝する。昼寝はおおっぴらには認められていないが、収納にはなぜか布団が常備されている。

 目が覚めるとそこは自分の家であるという夢を見る。会社で仮眠している間に長編の夢を見るのだ。布団を収納に似た押入れに戻し、デスクに似たリビングテーブルに戻る。なぜか判子が押してある新聞をとって、中身のない記事を読む。私も判子を押してみる。係長が家内が買い物に行くような雰囲気をかもし出して外回りに行ってくるというので、ついでに買い物を頼んでみる。課長は私の顔をじっと覗きこんでから、何も言わずに外へ出かける。社内に残された私は、給湯室の湯のみを洗い、洗濯物を干し、フロアの掃除をする。

 定時になったような気がしたのでオフィスの玄関に施錠し、バス停に向かう。既にバスは待機しており、私が乗り込むのを待っている。バスの揺れに身体を任せていると次第に眠くなってくる。

 さて、バスが到着するまで仮眠するとするか、それともそろそろ目を覚まそうとするか。


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