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137. 須臾ビルヂング 64F 休日出勤 20130409


祝日

 はるか向こうまで広がるオフィスのフロアに動く人影は見当たらない。

 こんなに広かったっけ。

 フロア入り口の扉から自分のデスクにたどり着くのに一苦労である。なぜかフロアの机と椅子が水に浮かんでいるかのようにゆらゆらと揺れ動いている。ときおり水面に渦が生じたかのように螺旋を描いて、それでもゆっくりとくるくる回る。机に触れると、そのままゆっくりと進み、別の机にぶつかり、ぶつかり、くるくると、またぶつかり、そしてゆっくりと動きを止める。

 日が高くなり窓から差し込む光が強くなると、オフィスの空気がおずおずと対流し、流されて机と椅子は列を作りフロア全体を周回しはじめる。その流れを邪魔しないように自分の机に向かう。

 当然のように、いつもの場所には自分の机はなく、床に振り落とされていた無粋なボールペンと書類を拾い上げ仕事を始める。

 日が落ちる頃、何食わぬ顔をして机と椅子がオフィス一周から戻り、私の横で私が座るのを待っている。

 


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