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133. 繁盛していない定食屋(ターコイズ雑文祭2013 遅刻作品) 20130405


「繁盛していない定食屋は御飯がまずい」という法則がある。私が今作った。御飯がパサパサしているならまだしも、明らかに昨日炊いて宵越しの黄色い御飯だったりすると、いくら料金を安くしてもどんどん客足が遠ざかる。まさしく、しわよせの黄色い御飯である。

 昼御飯を食べに時々入るこの中華屋(…でいいんだよな)は、米はまずいが麺類がまあまあいけるという絶妙のバランスの上に経営が成り立っている。通勤時の人の流れから微妙に外れた、ぽっかりと空いたスペースにある店で、看板は目に入るが、なんとなく客が通り過ぎていくという感じ。主人が変わる前の店の時はお客が入ってるのを見たことがなかった。それくらい立地はよくないのだが、その割には健闘している。

 最初に行ったときに頼んだのは日替わり定食。出てきて驚いたのだが鳥ソバとチャーハンと副菜二品とデザートという山盛り。体育会系男子高校生向けのボリュームである。チャーハンなのでご飯のまずさはうまく隠されているが、なにしろこのボリュームである。サラリーマンは注文すると後悔する。というか、した。ちなみにこの界隈では男子高校生を見かけたことがない。店主は何を考えているのか。男子高校生を集めるのが無理なら、その代替にウエイトレスとして女子高校生をバイトとして雇うべきであろう。髪型はポニーテールで。え?趣旨が違う? まさにポニーテールと趣旨(AKB48)。

 日替わりでない定食は白御飯とおかず(麻婆豆腐など)。おかずはなかなか本格中華でうまいのだが、この御飯、一度食べると忘れられないパサパサ感の白御飯。モサモサした御飯をメソメソしながらたべるとクヨクヨしてしまうくらいの代物である。たいていの人は御飯を残してしまう。完食するのは絶対ムリムリかたつむり。それではお店の目玉はどこにあるかというと目玉メニューは鳥ソバである。目玉メニューが卵焼きだったら面白いのだが、世の中そう都合よくはできていない。

 目玉メニューは鳥ソバ(塩味)。これはお勧めだが、困ったことに店に来るたびにラーメン丼の中身が違う。最初に食べたときは漢方薬的な独特の風味のスープに太めの直線の麺、この赤いのはクコの実かな。鳥ソバの名に恥じず、鳥の手羽先が一本まるごと入っていた。入れ過ぎ。これはなかなかうまいぞ、とスープまで完食。

 なかなかうまかった。おすすめ。いうことで次回も注文してみる。鳥の手羽先はではなく、ささみになっていた。

 次に来たときには漢方薬風味がずいぶん薄れ塩ラーメン風に。

 次に来たときには麺は細い縮れ麺になり、ささみの量は減り、クコの実が消え、白菜とネギが山盛り。

 変わり過ぎだよ。次に注文する時にはサッポロ一番塩ラーメンになってしまいそうな変遷である。インスタントラーメンが出てくるならまだよい。ラーメンの簡略化に慣らされたあげく、注文して白湯がでてきても違和感を覚えなくなっていたらどうするのだ。食べずに店を出るしかない。昔から言うではないか

「さゆーなら、バイバイ」


ターコイズ雑文祭2013 (遅刻作品)
縛り:以下の三つのフレーズを文中に入れる。
 ・スペース
 ・無理無理ムリムリかたつむり
 ・(ぞろぞろ、つるつるなど反復型のオノマトペ)


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