109. 逆行(20080101)


 「とっぴんぱらりのぷう」 とは秋田地方の昔話の締めの言葉である。意味不明ということだが、いつものように無理やり解釈してみよう。

 「ずいずいすっころばし」の歌詞の中に「とっぴんしゃん」というよく似た言葉が出てくる。これは「戸をぴしゃりと閉める」ことである。何故戸を閉めるかというと、将軍様に献上するお茶に関連する話なのだが、長いので割愛する。戸を引いてシャンと閉める(とっぴんしゃん)。

 これを適用すると、「とっぴん」で戸を引いている。しかし「ぱらりのふう」であるから戸を閉めていない。何をしているのか。

 「はらり」は御祓いである。御祓いをしてその後、ぷう(封、封印)している。

 何か禍々しいモノを、戸を閉めて閉じ込め、御祓いをして封印したことを示す。

 すると、この封印された引き出しの中に、なにかが封印されていると あなたはおっしゃりたいわけですか。

 あなたが信じたくないなら信じなくても良い。しかし、この封印をあけてはならない。

 このなかになにが潜んでいるというのです。

 それは、あなたがここに辿り着くまでに、さまざまなところで見かけたものがあるはずだ。それがヒントです。

 私が目にしたもの、それは金平糖。殺人現場に、事故の後に、自殺現場の花束の中に、この建物の入り口の地面の上に。さりげなく、しかし、しらじらしく残されていた金平糖。

 こんぺいとう ポルトガル語のコンフェイト (confeito) から来ている言葉だ。Confeitoは、彼らの言葉ではこう綴られていた。Cu hl thu(コウ フル ツー)

 彼らとは誰なんですか?

 封印されていたモノを崇める人たちだよ。彼らは古代から連綿と

 それがどうつながるんですか

 かれらは崇めるものを明らかにできなかった。明らかにすれば当然社会から迫害されるからね。だからストレートに呼ぶことができず、隠すためにアナグラムにしたのだ。

 いつの間にか部屋の明かりは消え、声が聞こえてくる背後から生臭い匂いが漂ってくる。

 金平糖……こんふぇいと……confeito……Cu hl thu……Cthulhu ……クトゥルフ

 震える手に持つナイフが封印を切断しようのを、自分の手ではない様に、とめることができない。大声で叫びながら自分の手が封印を解くのを眺める。そして開いた封印の隙間から黒い暴風が溢れてくる。

古代の邪神は、机の引出しの奥に忘れていたものだった。


第八回雑文祭 を参考に致しました。

第八回雑文祭の縛り
■書き出し: ○○は、机の引出しの奥に忘れていたものだった。
■縛り: 金平糖を文章のどこかに入れる。
■結び: とっぴんぱらりのぷう。
■追加縛り: 逆にしてみる。


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