96. 「空飛ぶ木馬」(20060919)


第十夜 空飛ぶ木馬

あるとき、異国の者が王様を尋ねてきました。その異国の者は黒檀でできた馬を王様に献上しました。まさに今にも走り出しそうな馬の姿に王様は感心し、褒美をとらせました。しかし、異国の者が言うには、その木馬は夜になると人を乗せて空を飛び、歩けば一年かかる距離を一晩でたどり着くということでした。
王様はたいそう喜び、褒美を倍にしました。
けれども翌朝になって、かんかんに怒った王様は異国の者を呼びつけました。
「私を騙したな。この馬は空を飛ぶどころか、ぴくりとも動かないではないか。」
「そんなはずはございません。何かの間違いでございましょう。」
「ならば、お前がこの馬を飛ばせてみせよ。」
「わかりました。」
そういうと異国の者はその風変わりな衣装を、持っていた紐でたすき掛けにし、馬の前に立ちました。
「王様、準備できました。それでは今から馬を飛ばして見せましょう。では、その前に、馬をその屏風から追い出してください。」
「ううむ、あっぱれ。」
異国のスキンヘッドの小僧のとんちに感心した王様は、小僧に褒美をとらせました。
「しかし、ちと納得がいかん。やはり斬首にいたす。」
哀れ、スキンヘッドの小僧は縛り上げられ、牢屋に放り込まれてしまいました。
「とほほ、異国の地にて果てるか。」
その夜、看守が様子を見に来ると縛り上げられた小僧に鼠が襲いかかろうとしているではありませんか。
「しっ、しっ。」
看守は鼠を追い払おうとして、それが本物の鼠ではなく、小僧が流した涙を使って足で描いた鼠だということに気がつきました。これはいずれ名のある画家に違いない。処刑されれば国家的、いや世界的損失である、と思い密かに小僧を逃がすことにしました。

オチその1
小僧は看守の手引きで逃げ出しましたが、お城のお堀にかかっている橋のたもとの看板に「このはしわたるべからず。」と書いてありました。よせばいいのに、わっはっはと笑いながら橋の真ん中を歩いて渡ったので老朽化した橋に開いた穴から落ちて、お堀の凶暴なワニに食われて死にました。

オチその2
小僧は、看守の申し出を断りました。
「私は空飛ぶ木馬で帰ろうと思います。」
その時、はるか上空から巨大な木馬が降下してきました。
そうです、空飛ぶ木馬とはご存知ホワイトベースのことだったのです。
ガンダムに守られた小僧はホワイトベースに戻っていきました。
「なにしてんの! 右舷、弾幕薄いよ!」
それを見ていた王様は、
「認めたくないものだな。若さゆえの過ちというものは。」
と通常の三倍のスピードで言ったと伝えられております。

オチその3
小僧は命からがら逃げ出し、はるか東の故郷に向かって歩き出しました。
途中、印度を過ぎたあたりで猿と豚と河童をつれた坊主とすれ違ったところを見かけたものがいると言う噂が流れましたが、その後の小僧の行方を知るものはいません。


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