95. 「シンドウバットの冒険(完結編 上)」(20060918)


第九夜 第六番目の航海

シンドウバットが出かけましたところ、その船はすぐに嵐に会い難破してしまいました。懲りないですね。乗組員と小さなボートで漂流し、たどり着いたところは小さな島でした。やっと助かったと思いましたが、なんということでしょう、その島には水も食料もなかったのです。気がつくとその島は難破船のたどり着く島だったらしく、いろんな船の積荷の宝物や宝石が沢山転がっていました。しかし、そんな物がなんの役に立つでしょう。飢えと乾きで次々と倒れる乗組員達。とうとう最後の一人となったシンドウバットは、最後の気力を振り絞って材木でいかだを作り、散らばっている宝石を手当たり次第に掴み海に出ました。もうだめだ、そう思い、シンドウバットは気を失いました。

なんと言う幸運。シンドウバットは別の島に流れ着いたようです。しかし体が動きません。よく見ると体中が細い糸で縛り付けられているようです。なんと、シンドウバットは小人の国にたどり着いてしまったのです。それから、いろいろあって巨人の国とか馬の国にたどりついたりして命からがら戻ってきたというわけさ。

と、長い冒険の話を聞いていたシンドウバットの女房が言うには、まあそんな嘘八百出鱈目ばかり。どこでそんな口八丁の練習をしたのかしら。どうせ他所の女のところに転がり込んでいたんでしょう。わたしを七年も放っておいて今更帰ってこられても困ります。行方不明の死亡者に準じるということでもう離婚手続きは成立してます。それにもう別の人と結婚して子供も三人います。あなたがいると邪魔なんです。元女房はシンドウバットが邪魔で邪魔で仕方ありません。虚言癖と妄想があると申し立てられ、哀れシンドウバットは航海で得た宝物は慰謝料として全部没収され、本人は精神病院に強制入院させられてしまいました。

 

それから何年過ぎたでしょうか。シンドウバットが脱出のために部屋の壁をスプーンで掘っていると、隣の部屋から老人の声が聞こえてきたということだそうです。

それから数年後、社交界にモンテ・クリスト伯爵という謎の人物があらわれ、一躍脚光を浴びますが、それはまた別の話である。

完結篇 下 へ続く


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