この目の前にある詰替え用のシャンプーをどうするか。それは早急に解決しなければいけない問題である。事の起こりは昨晩、使っていたシャンプーのポンプを押した時に空気のみ排出された時から始まる。数日前からポンプを押してもほとんど少量の粘度の高いシャンプーの飛沫と空気しか出てこなくなってしまっていたのだ。このようなケースでは、推奨度は低いが採用度が高い方法論として、容器内に水を加えて薄めると同時にシャンプーの量を増加させて使用するテクニックが名高い。従って、そのようにした。すると当座の急には役に立つが、自明の如く数日でポンプを押しても出なくなる。理論的には更に水を加えてしまえば更に数日間継続して使用可能となる。しかし、シャンプー濃度が極めて低くなるため実用には遠い。泡がたたない。汚れが落ちない。単なる水洗いか。シャンプー買わなくちゃ。買って来ました。間違えて詰め替え用を。
ということでポンプ機能がないプラスチック容器に入ったシャンプー（いわゆる詰替え用）を目の前においてじっと考える。風呂場で裸のまま。
頭を洗うことを第一義に考えると１）詰替え用シャンプーから直接シャンプーを手に取り頭を洗うという直接的現実主義がとられる。しかし、この方法が長期にわたって政権をとった場合、なにしろそのような使い方が想定された上で製造されていないため、容器の口が大きい。いかに注意して手にとることを試みたとしても大量に、大量に、手の平をシャンプーがはみ出すほどに、こぼれるほどに、ふざけながら、はしゃぎながら出してしまうことが予想される。バラより美しいぁあぁあ君は。昔、味の素が消費量を増やすために容器の穴を大きくしたという故事がよみがえる。今夜だけならともかく、連夜必要量を大幅に超えて合成界面活性剤を無駄に使用するなんて。いかん、資本者の術中にかかっては。いかん。しかも環境に優しくないではないか。
２）直接民主主義的選挙が否定された今、我々が用いる方法は次のとおりである。押しても駄目なら轢いてみな。ギャー。すなわち間接民主主義投票である。詰替え用シャンプーに封入されたところの毛髪及び頭皮洗浄用合成洗剤を、使用するに適当な容器が現状では入手できないという危機的状況においては、なにしろ裸で体を洗ったばかりであるから外に解決を求めることは不能、風呂場国内で解決せねばなるまい。我々の窮地を救わなければならない。自助努力こそが我々を救う。そこで即ち使用に適当と考えられるシャンプーの濃度にあらかじめ希釈し、そこから各自おのおの使用に必要な分を得ることがよい。いまそこにある湯船に張られたる湯。ここに詰替え用シャンプーの中身を放り込み丹念にかきまぜる。このここにわれらの手によって発現した頭皮及び頭髪洗浄用希釈溶液を各自洗面器にとり、己の頭上より降り注がれたし。この水は単なる水にあらず、我々の智恵と英知の結晶として汝を清めることであろう。ここで問題は、湯船のお湯が洗浄用希釈液となったため、頭を洗ったあとにすすぐことができないことである。環境の汚染を恐れる余り、われわれ自身の身体を汚染せしめる結果となりき。ああぁ。この間接民主主義的手法も弁証法的にアウフヘーベンすべし。
３）直接であれ、間接であれ民主主義的手法をとろうとする意図こそが、わが国の敗北の原因なり。衆愚はいくら集まろうと衆愚。この国は英雄を求めている。過去の因習と常識に囚われない斬新な方法を編み出し、良民をよき方向に導く事。それが我々選ばれしものの義務である。シャンプーだから頭を洗う？はん！クダラヌ。お前の発想は常識の呪縛に囚われすぎている。発送は発表をもって代えさせる呪縛。愚直である。新時代を自らの手で切り開け。停滞した現状を打破するには？ それを考えろ。動物でなく人であり続ける為には考え続けよ。資本家に搾取されることに甘んじるよりも、sham（偽）のPoo(無職)を選べ。sham（偽）のPoo（プー）。偽のプー。シャボン玉を作れ。洗剤としてつかえ。学校の廊下にばらまいてスケートせよ。池に注ぎ込み資本家の錦鯉を全滅させよ。ブルジョア階級の花壇に巻いて草木を枯れさせ冬の景色を作り出せ。偽のプー。偽のプー。プールにまいて泡風呂に変えよ。官憲に捕らえられるな。規則その１シャンプークラブのことを話してはいけない。規則その３シャンプークラブのことを話してはいけない。規則その７シャンプーハットをかぶってはいけない。官憲に捕らえそうになったら仕方が無い、詰め替え用シャンプーの蓋を取り一気に飲み干して自決せよ。わが帝国に栄光あれ。合言葉は偽のプー。