みんな消えてしまう      

17. みんな消えてしまう 020501


 みんな消えてしまうフェスティヴァーエンドカーニヴァーが開催されているようであるので便乗してみようかとも思ったのだけれども、どうやら乗り遅れてしまったようだ。なぜかバスに乗ろうとするといつも一人だけ遅れてしまう。ラーメン博物館に2回も行って、未だに一杯も食べていないのは遅れる癖があるせいだ。今の処、何を書いてもしょうがない病にかかっているのでますますしょうがない。ここでいろんなもっともらしいことを書いたとしてそれがなんだというんだ。でもまあ一応梗概だけでも書いておいてもバチは当たらないだろう。いや、当たるかもしれない。だけどそれがどうしたというのだ。
 冒頭はおーたさんの書いたものに従う。なんといいますか、こういう何かを思わずにいられない冒頭を書けるというのは才能だよな。うらやましい。

 記憶力が凄過ぎて気が狂ってしまう人がいるということはお話として何度か聞いたことがあるけれど、確かに忘れるということは優れた能力の一つなんだと思う。僕は今までにそんな辛い経験してきたわけではないけれど、それでもやっぱり全部のことを覚えていたら生きるのが怖くなってしまうかも知れない。

 この冒頭だと忘れてしまう話になりそうなところを逆手にとって忘れられない話にしてみたりする。

 忘れてしまっていた記憶が一気に甦えったりするとはまさか思いもよらなかった。

 単なるへそまがりである。なぜか期待されていることに対しては意欲がわかない。誉められるとやる気をなくす性格なのである。かといって貶されるとますますやる気をなくすから始末におえない。かといって放置されるのが一番だめなのだから、これはどうしようもない。こういう性格だから生温かく見守って下さるようお願いする次第である。
 冒頭で記憶の話をしたところで、記憶についての話にもっていく。起承転結の承である。ちゃんと転結するかどうかは保証できない。

 記憶のメカニズムというものはそう明解に解析されているわけではないらしいが、どうやら見たり聞いたり触ったりとかの五感が知覚した事象は、一旦無意識のフィルターでその重要度が選別されたのち大脳へ送られ、そのあと理解したり感動したり思ったり考えたりするらしい。大脳に到達しない膨大な情報は捨てられてしまうというわけでもなく、無意識の大海の中に放り込まれて沈んでいく。ふとした拍子にすっかり忘れていた記憶が蘇ったという経験があると思う。重要で無いと判断された記憶が、無意識の領域から浮き上がってきたのだ。無意識の大海に沈んでいるのは重要で無い事柄ばかりではない。思い出すのも嫌なこと、四六時中意識していれば気が狂ってしまうようなこと。精神の安全のために忘れ去るために無意識の大海に押し込んでおいたのだ。
 無意識の領域は意識下の領域と比較して無尽蔵に大きいと言える。通常は、健康な精神状態を保つためには、無駄なこと、思い出しては危険なこと等を押し込めておくには十分な容量がある。かといってあまり詰め込みすぎると、圧力が上がって意識下に悪影響を与えることがある。鬱とか。圧力を下げるためにガス抜きをするのが夢の役割である。夢で解消しきれない場合、意識下に悪影響を与えることがある。鬱とか。

 念のために書いておくけど、上で述べたことはデタラメです。いつもの事だから気にしないように。それでもって話を続けます。一般的な話から、このお話に戻してゆきます。

 なんらかの原因で、無意識下に押し込めたさまざまな事象が一気に噴出することがある。例えば、あまりにもストレスが大きくて無意識が持ちこたえられなくなってしまった時とか。長々と説明してきたが、今の私はそう言う状態にある。
 私の意志と無関係に、ランダムな細かい記憶の断片が一気に脳裏に押し寄せては消える。

 適当に書いていったら、どうやら今回もダークなお話になりそうです。ここで、あらゆる記憶の断片が繋がりながらランダムに想起しては消えてゆく状況を描写しなければなりません。これはへたをすると長編小説のテーマであり、才能があるひとがうまく書いても短編小説の分量を費やさなければならないことに気がつきました。私の才能および力量をはるかに凌駕しておりますので、あっさりとすますことにしましょう。

 頬を流れる風の音。風が電線を鳴らす。震える銅線。冷えた空気と低い雲。凍えてかじかんだ手袋の中の手。走る。吐き出す度に白くなる息。寒さで痛くなる咽。次第に汗ばむセーターの下の体は走るのを止めたとたんに冷えだす。風邪をひいた時の虚脱感。学校を休んで寝る。天井が揺れて見える。天井の染みが小動物となって動き出す。

 ほら、やっぱりうまくいかない。季節外れだし。本当はここで誰かの台詞を入れると効果的なのは分かっているんですけど。入れることができない。理由は聞くな、男なら。いや、女でも。差別はいかんな。区別ならいいのか。正当な理由なく性差を区別してはいかんではないか。では追加して理由は聞くな、オカマでも。なんかテーマがずれてきているような。しょうがないから話を戻してみる。

 なんらかの原因で、無意識下に押し込めたさまざまな事象が一気に噴出することがある。例えば、あまりにもストレスが大きくて無意識が持ちこたえられなくなってしまった時とか。例えば、パスタを作って食べようとして、ふいになにもかも嫌になり窓から飛び下りた時。スピードを出して近付いてくる地面が、すぐ其処に迫ってくる暗黒を予感させて意識が耐えられなくなった時に。次の瞬間に出現することが確実な虚無を見据えることが出来ない時に。押さえ付けられていた無意識の大海から、今まで放り込んで鍵をかけていたさまざまなことが一気に出現する。虚無が現れるまでの実時間では数秒のうちに、意識下では時間をかけてすべての記憶が一度に噴出する。虚無から目を逸らすためにすべての記憶が私自身を責めるように次々と現れる。もうたくさんだ。このくだらない人生のすべての事象よ。ああ、もう手が地面に届きそうだ。ありふれた手垢によごれた陳腐な私の記憶たちよ。

 書き直したところで、やっぱりうまくいかないようだ。記憶力が凄過ぎて気が狂ってしまう話を書こうとしたのに、出来上がったのは、忘れてしまった記憶が一気に噴出して消えない話ではないか。できそこないの雑文が書かれたモニターの前で、私と、この登場人物は同じ言葉を呟く。

みんな消えてしまえ!


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