お菓子の家      

5. お菓子の家 010918


むかしむかしの話でございますが、そうは言ってもそれほど昔ではないと聞いております。
つきがとても明るい夜に、とうさんとかあさんは、なにやらひそひそ相談しておりました。
ごくつぶしどもをこれ以上養うことはできないのだ、かわいそうだが森へ捨ててしまおう。
ろくでもない両親ではありますが、そうしないと家族共倒れだよ、みんな貧乏が悪いのだ。
うまの骨のような言いぐさではありますが、他に方法がなく家族全滅するよりはましだぞ。
はたして、ヘンゼルとグレーテルは親に捨てられ深い森の中に置いてけぼりにされました。
がんばって家に辿り着こうとしたのですが、目印のパンは何処にも見当たりませんでした。
たすけて神様!と二人が祈っても、鳥の声が聞こえるだけで、どうにもなりませんでした。
すきっ腹の二人は、なんとまあ、色とりどりのお菓子で作られた家に辿りついたのでした。
きいろのウエハースの屋根がわら、チョコレートの壁、ケーキの窓、ドアノブはクッキー。
ー晩かけて、砂糖菓子やキャンディーやカステラで出来た家を食べ尽くしてしまいました。
とんでもないがきだ!こらしめてやる!家を食われた魔法使いのおばあさんが現れました。
いばるなばばあ!お菓子は食べるためにあるのだ、おまえも喰ってやるぞ!と大喧嘩です。
うしろにヘンゼル、前にグレーテルと姉弟に挟まれた魔法使いのお婆さんは大ピンチです。

それから長い年月が過ぎたと聞いておりますが、しかしまたつい最近の事かもしれません。

りくつを越えた凄惨な戦いの後、姉弟は勝利を納めますが呪いをかけられてしまいました。
にげることもかなわない限りなく涌き出る食欲の呪いにより二人は草を食べ木を食べます。
のばらを食べ土を食べ、川を丸ごと飲み込みいつしか二人は森を食いつくしてしまいます。
りせいを、ふと取り戻したふたりは、いつしか自身が森になっていたことに気がつきます。
ともあれ、森の化身となった彼らは、もののけ姫が登場するまで長生きすることでしょう。

ルポルタージュ日本「森は生きている」をお送りいたしました、坊や良い子だねんねしな。



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*この雑文は、赤ずきんちゃん☆オ〜バ〜ドライブの「おはなし雑文企画」参加作品です。
以下の縛りに従っています。
1.登場キャラクター5人限定で、昔話や童話のパロディ。
  おとうさん、おかあさん、ヘンゼル、グレーテル、魔女の5人が登場。
  もののけ姫は「登場するまで」と書いてあるので、登場していないのです。(←姑息な手段)
  言うまでもなく、「ヘンゼルとグレーテル」のパロディです。

2.「むかしむかし」で始まり、「それから長い年月が」をあいだにはさみ、
  昔話らしい締めの言葉で終わる。
  日本マンガ昔話らしい締めの言葉「坊や良い子だねんねしな」を採用させていただきました。

3.あなたの地元について文頭作文。
  文頭をつなぐと「ムツゴロウは、ガタスキーというソリに乗り、採る」となります。
  延ばす音(ー)を、「いち」と読ませる姑息な手段を使っています。イソタ一ネシト的用法。

4.蛇足
  意味もなく、一文の字数をそろえてみました。こうやると文頭作文が読み取りやすいが、
  一文ごとに強制改行が入っているので、テキスト庵に参加できません。
  


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