かえるの合唱      

4. かえるの合唱 010912


かえるの合唱
岡本敏明 作詞 文部省唱歌

かえるのうたが
きこえてくるよ
クヮ クヮ クヮ クヮ
ゲコゲコ ゲコゲコ
クヮ クヮ クヮ

かえる鳴くと言えば春の季語。産卵の為にメスを誘ってオスが競って鳴く季節である。桜咲き乱れ、木の芽時と呼ばる心かき乱される季節である。

唄の後半では、一匹一匹のかえるの声が聞き分けられていることから、鳴いているかえるからそれほど距離があいていないことが窺われる。数十メートルであろうか。かえるの鳴き声が聞こえると言えば水田である。かえるの鳴き声が合唱のように聞こえるのであれば、相当に広い水田であろう。かえるが居ると言うことは農薬を使用していない有機農業であることが判明する。古い形の農業をかたくなに守り、広い水田を所有し、その水田のすぐ隣に住む人。これが、この唄を歌う人のプロファイリングである。

さて、気になるのがこの唄の時制である。「きこえてくるよ」であり、「きこえている」ではないことから、「現時点では聞こえていないが、近い将来聞こえることがほぼ確実に予想される。」ことが主張されている。また、この予想を心に秘めるのではなく、わざわざ言葉にしていることから、この予想を誰かに教えているということが明示されている。

さて、この予想を教えられている人とは、どのような人物なのであろうか。この季節、夜になるとかえるが盛んに鳴くということを知らないであろう人物である。即ち、街育ちの人物である。

更に、「何故、しばらくするとかえるがうるさく鳴く」ということをわざわざ知らせる必要があったのであろうか? かえるが盛んに鳴くのは夜である。もうすぐ夜になりあたりが暗くなることを訴えているのである。また、うるさい鳴き声で周りが満たされることを知らせているのである。

 この歌から得られた情報から、以下のような状況が推測される。

 古い形の農業をかたくなに守り、広い水田を所有する旧家の娘。都会の大学で知り合った都会の彼氏。彼女の親に結婚することを報告にきた二人だが、親は農業を継ぐ気がない彼との結婚を許さない。彼は都会育ちなので、この季節夜になるとかえるが騒がしく鳴くことを知らない。「私を連れて逃げて」彼女はそう言いたいが、なにしろ古い農家で隙間だらけなのでどこで誰が聞いているかわからないので、うかつなことは言えない。もうすぐ夜になる。暗闇にまぎれて連れていって、かえるの鳴き声で足音がかき消されるのに紛れて、私を連れていって。彼女はそう謎をかける。

残念ながら彼氏は、彼女の願いを受け入れることが出来なかった。彼女の父親に勧められた酒を飲み過ぎて酔いつぶれてしまったのだ。この様子は歌詞に歌われている。

 下戸 下戸 下戸

彼女は、頼り無い彼氏に愛想をつかすのか、それとも愛を貫くのか? 我々は温かく見守ろうではないか。


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