セリ

「鍋焼きの 鴨と芹(セリ)とは 二世の縁」・・・・江戸時代の川柳

上記の江戸時代の川柳の意味は鍋物にした場合鴨肉と芹がよく合うと言う事であるが、「鍋物の主役にセリにかなうものなし」 とも言われ、セリ(芹)はその独特の歯ざわりと香りから日本人にとって格別な野菜であった。
万葉集の一首に 「丈夫(ますらお)と 思えるものを 太刀佩(は)きて かにはの田井に 世理(セリ)ぞ 摘みける」 とあるように、万葉の時代から美味しい食材とされ、「セリ、ナズナ、オギョウ、ハコベラ、ホトケノザ、スズナ、スズシロ これぞ七草」 と春の七草の筆頭を飾る。  現代でもお浸し、胡麻和え、天ぷら、根のきんぴら等、普通の野菜として使われており、日本在来の野草から野菜となって今でも賞味されているものはこのセリとミツバ、フキ、ワサビ等、限られる。( 「ミツバとウマノミツバ」 「初恋の苦き味なりフキノトウ」 「ワサビは日本原産の香辛料」 の項参照)
春の七草の一つとして食用の旬は春なので春の植物のイメージが強いが、花は夏に咲く。 セリ科の花は一般的に唐傘花(からかさばな)と呼ばれるように枝が放射状に広がりその先端に白い小さい花をたくさん付ける。(「その他夏のセリ科の花」の項参照)
セリも小さいながらも可愛い花を一杯咲かせ、春には目立たないものの、夏には小川の水辺や、田の畦などで良く目立つ。

セリの花と葉

一方、薬草としても昔から用いられ、漢方の生薬名(しょうやくめい)を水芹(すいきん)と呼び、食欲増進、解熱、神経痛等、に効果がある。
食用、薬草として古くから知られた植物であるが、平安時代には 「芹摘む」 と言えば高貴な人にかなわぬ恋をする意味に用いられ、 「何となく 芹と聞くこそ あはれなれ 摘みけん人の 心知られて」 と西行の一首がある。 西行も又、待賢門院にかなわぬ恋をしていたと言われる。

花が終わった秋に匍匐枝の節から新苗を出して越冬するが、新苗が沢山でて、競り合うように葉が茂っていくので 「競り合う」 からセリになったとされる。
セリ科セリ属の花で、かっては鍋の主役として、現代でもお浸しや胡麻和え等広く食べられ、日本在来の野草から野菜となった数少ない植物の一つである。

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