フキノトウ

フキノトウの雄株

「ほろ苦き 恋の味なり 蕗の搭」・・・・杉田久女

春の息吹と春の味を届ける花である。
立春を過ぎたとはいえ未だ名ばかりの寒い時期に、散歩道の道端や畑の脇にその可愛い姿を現し、又、野菜売り場の片隅や、あるいは園芸店の店先に改良された園芸種の鉢が目に付くようになる。
フキノトウはフキの花芽で、フキノトウと言う植物が存在するわけではなく、花の後に地下茎から葉が出て成長し、この葉柄がフキである。
トウは花の花軸の事で、盛り(さかり)が過ぎる事を 「とうが立つ」 と言うがそのトウで、花軸が伸びすぎるとまさにトウが立って食用にならない。
春を告げる食材として、古くから、味噌和えや天ぷらとして食べられ、杉田久女の句にあるように、そのほろ苦い味が珍重されてきた。 又、咳止め、タン切り等の民間薬としても用いられた。
雌雄異株の両性花で、雄株と雌株があり、自然界では一対一であるが、栽培種はほとんど雌株だそうである。

フキノトウの雌花        とうが立つ          フキ

一方、フキは平安時代に書かれた 「和名抄」 にすでに蕗(フキ)とあり、古くから栽培もされてきた数少ない日本原産の野菜である。
小さな山蕗(ヤマブキ)から傘の代わりになる大きな秋田蕗まで多くの種類があり、北海道の巨大なラワンブキはその下にコロボックルと呼ばれる小人(こびと)が住んでいると言うアイヌの伝承がある。
フキの名の由来は諸説あり、そのひとつとして、国語学者である金田一晴彦の 「拭き葉」(フキハ) で昔のトイレットペーパーであるとする説は興味深い。
フキノトウはそのフキの花芽で、小さな花が集まって花頭を作るキク科の特徴を良く表す花である。

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