もどる<新「西の常識」00/07>次号を読む


2000年7月の常識

高射砲台の家/水っぽいタバコ/ポストであふれる家/働くおとうさん/たてふだ/ジャンクフード/ささ丸マンガ/あとがき


新「西の常識」第3号(ミリオン出版「GON!」2000年7月号掲載)

「日本のたんつぼ」とよばれる大阪はまた、T重層的な都市Uともいわれている。誰がゆーとんのかというと、大阪好きのインテリ地方出身者が、なんとか無理にほめてくれているのである。ありがたいことだが、じつは大阪は都市としての開発が中途半端でいまだに「ややこしい」物件が整理されず残っているに過ぎない。土地の境界線が1センチずれても民事訴訟という時代に、大阪では訴訟以前のローカルなおつきあいでなんとなく成立させているのである。どうでもよいが、面倒な事柄でも他人ゴトならそこそこ楽しいのも事実である。

なお今回、取り上げた物件は5年前の本誌上(「西の常識」95年8月号)で小さく取り上げたものではあるが、これは、5年も経てば前回の読者はもういない、と考える大阪シゴトの代表的仕業である。くれぐれも深読みは禁物なのである。 西の常識主筆

 

■大阪変博 第二回「高射砲台の家」

大阪市東淀川区の某所に高射砲台の家がある。旧帝国陸軍の高射砲台は、まわりに盛られていたはずの土嚢は取り除かれ、直径約10メートル、高さ約4メートルの巨大な丸テーブル状のコンクリート建造物をうまくアレンジした家屋となっている。そうした建物が町中にいくつもあれば目立ってしかたがないと考えるのはド素人で、年月を経た現在は周辺の風景にも同化し、そのつもりになって見ないと高射砲台だとはまったく気づかない風情である。知らないひとなら有名な建築家の設計した現代建築と見えないこともない。あたりまえだが、高射砲といえば軍隊の施設であり、昭和20年の敗戦時までは旧帝国陸軍管理の国家財産であったはず。そこが何故に一般民家となっているのか。しかも、砲台の存在する場所は計画道路用地(大阪内回り環状道路)じゃあーりませんか。これはどう考えてもややこしそうなのである。

●砲台は5基あった

で、何故に高射砲台が家になっているのかという大きな疑問がある。現在確認される砲台は4基。5年前の取材時に、もともと5基あったことまでは確認できている。1つがマンションになってしまったのが悔やまれる。ご近所でアレコレ聞き込みしたところ、1つは空き家、2つの砲台跡に3家族が住んでいるらしい。残りの1つは後ほど説明いたします。で、またすぐ近所には砲台以外にも旧軍施設らしき、ごついコンクリートの建物がいたるところに存在している。しかし古い建築物とその後に建築されたと推測される建物が言葉では説明不可能なぐらい入り組み、その上樹木も覆い茂っているので、地上から全体像は把握できない。しかも、まずいことには、そうした明らかにややこしい建築物に住まれている方々に直接お話をうかがう勇気など持ち合わせている主筆ではないのだ。いくらシゴトがズサンな主筆でもこれではマズイ。ということで、5年前はかなりお忙しくてお話をうかがえなかった、ややこしくなさそうな残りの砲台の持ち主に取材したのであった。

●砲台の持ち主に聞く

現在4つあるうちの3つは住居等として利用されているのは前に説明しましたが、最後の1つは住居ではなく鉄筋工場になっている。暗い工場のなかほどには高射砲台が塩梅よくまるごと入っている。というより高射砲台を基に工場を建てたというべきかもしれない。砲台の上部を防水処理したという工場の屋上からは、外から一部しか見えなかった最後の砲台も間近で確認できた。そちらの砲台はなんと大工さんが入って建て増し新築のまっ最中であった。砲台の家は今でも現役なのだ。工場の土地は昭和30年ごろ地主から買ったもので、もともと高射砲台付きの土地だったという。壊す計画もあったらしいが、使えるモンは利用する大阪人のシマツの精神で高射砲台アレンジの工場になったとのこと。また当時から道路計画も進行していた。じっさい、現在道路計画にひっかかる東側2基の砲台(周辺も含む)に住む方々の家屋も法規上の土地所有者は大阪市という。こうなると、終戦直後のドサクサが許したある意味では違法行為となる可能性も否定できないが、部外者がこの手のことを厳密に言及することなど不可能。予定では道路完成は5年後、どのみち近いうちに2基の砲台は消滅する運命なのである。いささか無責任な発言だが、主筆はこうしたややこしさが大阪なのだと主張するのである。

参考:情報公開が叫ばれてはいる昨今ではあるが、旧軍施設の資料は当時からことごとく極秘事項扱いで、現在調査しようにもそのすべはないに等しい。大阪の旧陸軍関係施設に詳しい事情通の調査によると、高射砲台は昭和10(1935)年に建設され、昭和初期、陸軍に制式採用された「八八式高射砲」が複数基、日夜空をにらんでいたとされている。当時、大阪城の東に隣接しアジア最大の兵器工場といわれていた「大阪兵器工廠」や、大阪市北部地域の生活水源であった十三の「柴島浄水場」を空襲から守るために配置されたのではないかといわれている。もっとも、その八八式高射砲の砲弾到達高度は約六千メートル、戦争末期の雲霞のごとくおとずれた大空襲の主役であるB29の飛行高度が一万メートルではとうてい役にたたなかったのである。

 

■今月の気ぃわるい物件

トイレに放置されたままのカルビ弁当

 

■水っぽいタバコ屋

中東などでは「水タバコ」というタバコの煙をいったん水にくぐらせ、タールなどの有害物質を除き、しかも煙の熱をとり、そのドラッグ成分であるニコチンを楽しむ喫煙の楽しみがある。大阪市北区の某タバコ店では南米系のナマズが泳ぐ水槽内にタバコを展示している。店主の熱帯魚趣味とシゴトであるタバコ販売の両立を計ったスバラシイ店舗デザインである。男女ともに平均身長が延びた現在、残念ながら、それに気づくひとが多くないことが惜しまれる。

 

■郵便ポストであふれる民家

とある一般家屋の駐車場に見なれた郵便ポストが山のように積み上げられている。覗き込んだところ、けっこう駐車場は奥深く、いったいポストが何台あるか全体像は不明。謎は深まるのであった。というのも郵便事情くわしい友人の郵便局員に聞いたところ、こうした郵便ポストはよほどのことがないと民間には払い下げたりはしないというのである。ブームはとうに去ったとはいえ、切手マニアに代表される郵便関連のオタクは世界的にみても少なくはないのだが、こうした公衆の面前に使用後とはいえ郵便ポストが打ち投げられているというのは謎なのだそうだ。

 

■シリーズ 働くおとうさん

世間にはさまざまなオシゴトが存在している。いろんなヒトがいろんなトコでいろんなコトをして生計をたてているのである。さて、大阪市内某所で発見したこの社名プレート。いったいこのビルのなかではどのようなオシゴトが営まれているのであろうか。ケチャップとかソースとかの業界団体だというのは理解できるが、具体的に何をしているのかこちらがバカなのか一向にイメージが湧かないのである。たとえば、この「全国トマト工業会」は、ネット革命でリストラの嵐ふき荒れるわが国でどのようにして利益を上げ、おっさんら人件費を計上しているのでしょうか。謎なのである。参考までに、神戸市内某所で発見した「豆腐油揚商工業共同組合」というのも掲載しておく。こちらはなんとなく解るし、個人的にも厚アゲが大好物なので許せるのである。

 

■たてふだ

田舎道の立て札なんで最初はてっきりチカンに注意ってやつかなと思ったんですが。知ってます“くくりわな”? 大阪と奈良に跨がる金剛山のふもとをクルマで走っていたら“ようこそ神話のふる里へ”というコピーが目に入ったんで、この村への入口に来たんですがねえ〜 コレ読んだとき正直ヤバイかもって思いましたよ。実物は見たことないけどなんでも狩猟の仕掛けらしいですから。それにこんなダーティな注意書きはスズメバチの巣に注意ってやつ以来見たことないだけにねえ。実はもう一つアスファルトの道があったんですけど、でもなんたって神話のふる里ですよ神話の、どうせなら山道を歩いて行くのが礼儀というものでしょう。一歩一歩慎重に踏み出しましたよ。15分くらいで到着したけど、ちょっとドキドキものでした。わなより不審人物と鉢合わせたらって思うと。結局神話のふる里ってところはよく見てません、ただの田舎みたいだったので。まあそれが良いんでしょうけど。

 

■今月のジャンクなヤツ 「たこ焼きハット」

ジャンク好き友人Fの最近のお気にいり、

たこ焼き5個とジュースのセット。

ほかに「焼めしハット」「ポテトハット」「焼そばハット」アリ。

すべて各300円。

利点…あきるほどないのがちょうどいい量。

   いちいち飲み物を別に頼まなくていい。

欠点…ちょうどいい量すぎて、このあと釣り場に

   行ってから空腹感がやってくる。

   なので、

   絶対アマゴを釣らなければならない。

   と思うと肩に力が入る。

   結果、これを食べるといつも釣れる確率が 下がる。

 

■ささ丸マンガ「誓いの魔球」

 「ささ丸マンガ館」はこちら

■あとがき

●私事ながら、主筆は先月より自宅に「ひきこもり」、日がな一日「インターネット」である。我ながら流行に敏感だと自負している。とはいえ日常の行動パターンにそれほど変化もなく、ことさら「大きなコト」をしたいとも思ってはいない。主筆が17歳でないからといえばそれまでであるが。

●次週「西の常識」は夏に向かい、真っ赤に燃えあがるであろう大阪の男女交際関係に言及してみたく思っている。「関西ホモのハッテン場アレコレ」「ひったくり全国一!」「阪神ファンの日常」「大阪の心霊スポット」などなどを予定していますが、都合で変更するかもしれません。刮目して待て!!

※なお、高射砲台は実在のモノとは一切関係ありません。

■主筆:二階堂茂

■協力:NGD、ひらま、上田耕司ささ丸


もどる<新「西の常識」00/07>次号を読む
ご意見はこちらまで