- 寒修行にあたり
-
- 私達人間は「死」に直面すると自我や欲望が壊れて、悲しみや優しさが溢れてきます。ところが、何かを獲得しようと闘っている時は、獲得が生き甲斐となり自己実現が中心になってきます。最近の耐震強度疑惑などもそれでしょう。その時は悲しみや優しさに素直に共感出来ません。欲望とはそういうものです。
- 私達も寒行をしながら「きつい……まだ終わらないのか……近道を歩こう……恥ずかしい。」など考えたりもします。しかし、本来の宗教観である『支え』『救い』を信じ鍛錬によって自己を痛めつけ、道端の小さな命などにも感動し、心の成長を見出そうとしているのです。その結界に於いて宗教への大きな畏敬が生じるのではないでしょうか。そしてこの寒行は自己ではなく、苦しみを分かち合う純粋な心の表現として六〇年以上続けております。そんな道中頂いた浄財は、すべて社会に還元し続けています。
- 「可愛くば、五つ数えて三つ褒め、二つ叱って良き人となせ」
(二宮金次郎)
- 景気が回復したとの情報によって、社会が自己主義に走る前に、このような心から滲み出る優しさや愛情がいかに必要であるかを考えながら、私達は今年も寒風の中太鼓を叩いています。御協力ありがとうございました。
- 合 掌
-
- 平成十八年正月
西身延本佛寺寒修行団
|