第1期トランプ政権の足跡から十分予想がついたことですが、第二次大戦後のアメリカ対外政策の根幹に座ってきた「アメリカのリーダーシップを前提とする国際主義」に対するアンチ・テーゼとしての「アメリカ第一主義」、気候変動をはじめとする環境問題に対する軽視(というより敵視)、中東問題に関するイスラエル偏重(その裏返しとしてのアラブ諸国軽視・イラン敵視)、そして「アメリカ第一主義」を脅かす(とトランプが認識する)中国に対する警戒意識は、第2期トランプ政権においてもいささかも変わることはありません。また、ビジネスにおける成功体験に立脚する、自らの直感的判断力に対する自信・過信及びその裏返しとしてのエスタブリッシュメント・ワシントン官僚機構に対する不信感も、第2期政権になってますます自己主張を強めています。トランプ外交に対する批判的・否定的評価がアメリカ内外を問わず伝統的エスタブリッシュメントの間で主流である所以です。
 しかし、トランプ外交に関するアメリカ国内の論調がすべて批判的・否定的というわけではありません。特に、「クインシー研究所」(Quincy Institute for Responsible Statecraft 以下「QI」)と「アメリカ的保守」(The American Conservative 以下「TAC」)から発表される文章の中には、トランプ外交に対する肯定的・建設的評価が散見されます。それらの文章に共通するのはトランプ外交を実事求是で分析する姿勢です。  以下では、まず、QIとTACの自己紹介を紹介し、トランプ外交に対する実事求是のアプローチを生み出す、両者の基本的スタンス及び異同を確認します。その上で、トランプ外交、ウクライナ問題、中東問題、中国・南シナ海問題に関するいくつかの文章を紹介します。
 なお、ウクライナ問題についてあらかじめ確認しておきたいことがあります。私はこのコラムで、NATOの東方拡大(ドイツ統一に際して1インチたりとも東進しないと約束していたのを反故にした行動)、特にウクライナのNATO加盟推進(ロシアの国家的安全を直接脅かす)が、ロシアをしてウクライナ侵攻決断を余儀なくさせた根本原因であること、したがって、ウクライナ戦争を終結させるためにはアメリカ・NATOがウクライナのNATO加盟を認めないことを確約することが大前提となることを明らかにしてきました。「ロシア寄り」と評されるトランプ政権の政策・アプローチに対しては、日本を含む西側諸国では、批判的・否定的評価が圧倒的ですが、トランプがウクライナ問題の以上の根本原因を直感的に理解したことが同政権における対ウクライナ政策の出発点となっていることを正しく認識・評価することが求められます。また、QIとTACのトランプ政権の政策・行動を実事求是で評価する論調は、ケナン、キッシンジャー等に代表される、アメリカの良質のパワー・ポリティックスの思潮が今日なお命脈を保っていることを示しています。

1.クインシー研究所(QI)とアメリカ的保守(TAC)

(1)自己紹介

(QI -About Us-)
 「他国の命運を実力(軍事力)で一方的に決めてしまおうとするアメリカのアプローチは実際にも道徳的にも失敗しており、この事実はアメリカの対外政策の前提に対する根本的再考を迫るものである。21世紀になって台頭している多極世界においては、経済力も多くの国々に分散しており、この事実もまたアメリカ外交のあり方に再考を迫っている。QIは、(以上二つの事実が迫っている)アメリカ外交の再構築を主導することを目的としており、その再構築がアメリカの死活的利益の実現及びより公正で平和な世界の実現という広く共有されている利益に資することを意図している。
 我々は、軍事的自制並びに外交的関与及び他国との協力を特徴とする対外政策は、軍事力による世界支配の維持を主軸とする従前の政策よりも、アメリカの利害及び価値観の実現により資すると確信している。」
(TAC -編集者文章-)
 「この数十年間、自ら保守を名乗る人々の間で、モヤモヤした不快感が広がっている。例えば、アラブ・イスラム世界に対するネオコン主導の終わりのない戦争に対して、すべての保守層が賛成しているわけではない。また、移民受け入れ問題に関していえば、我々は新たな移民受け入れで得るものはあることを認めつつ、過去20年間の大量移民を受けて、すでに受け入れた移民の同化を優先し、新規移民受け入れをスローダウンする必要があると考える。
 ところが、1970年代に台頭した新保守主義(ネオコン)は今や圧倒的に優勢であり、語る価値のあるアメリカ保守主義はこれをおいて他にはないという勢いである。
 我々の雑誌『アメリカ的保守(The American Conservative TAC)』の使命は多岐にわたる。すなわち、冷戦終了後に保守が怠ってきた議論の再活性化、グローバル自由貿易経済、移民、世界におけるアメリカの役割、等々。
 保守主義はもっとも自然な政治的流れであり、なじみのあるもの・家族・神に対する信仰に根ざすものである、と我々は信じる。我々はまた、真の保守主義は既存の制度及び道徳観を受け入れる傾向があると信じる。ところが、現代の保守主義とされるものの多くは、一種の急進主義(グローバル覇権の幻想、アメリカは世界人民すべてにとってのユニバーサル国家であるという傲慢な考え方、超グローバル経済)と結びついている。このような急進主義は、アメリカの伝統的同盟諸国に対するあからさまな軽蔑と結びつく時、むしろ災難への処方箋となる。
 我々は、このような急進主義に対する我々の立場を明らかにする。」

(2)スタンスの親近性と独立性

 QIとTACの最大の親近性は、脱冷戦後のアメリカ政治経済のあり方を根本から批判し、21世紀アメリカの国際社会におけるあるべき方向性を提示しようとする明確な問題意識にあると思います。すなわち、政治面では、「他国の命運を実力(軍事力)で一方的に決めてしまおうとするアメリカのアプローチ」(QI)、具体的には「1970年代に台頭した新保守主義(ネオコン)」すなわち「グローバル覇権の幻想、アメリカは世界人民すべてにとってのユニバーサル国家であるという傲慢な考え方」(TAC)に対する根本的批判、経済面では、「超グローバル経済」(TAC)、具体的には「多極世界においては、経済力も多くの国々に均等に分配されて」いる事実を承認しない新自由主義(QI)に対する根本的批判です。
 他方、TACが「アメリカ的保守」への原点回帰を強く志向するのに対して、QIは21世紀国際社会の本質(多極世界)に立脚した「アメリカ外交の再構築」という政策的未来志向性が強いという点に、それぞれの特徴・独立性を見て取ることができます。ただし、QIの代表的論客がTACで、また、TACの代表的論客がQIで論考を発表しているように、両者の関係は相互補完的です。ちなみに、両者の親近性を端的に表すものとして、TAC編集者によるQI代表(Andrew Bacevich-AB-)に対するインタビューをTACが掲載した、次の文章を紹介しておきます。
○「平和を慈しみ戦争を憎むQI」-もっと非軍事的で平和な対外政策を望むのであれば、戦争を憎む気持ちを持たなければならない-(原題:"The Quincy Institute: Cherishing Peace, Abhorring War" If we want to have a less militarized and more peaceful foreign policy, we must have true abhorrence for war)"
2019年7月29日付TAC(QIが標榜する原則に関する、TAC編集者によるQI代表に対するインタビュー)
 (TAC)QIの名称にもなっている原則は「責任ある国家運営(responsible statecraft)」という使命感であるが、「責任ある国家運営」とは具体的に何を意味するか説明してほしい。また、研究所の名称がこれに落ち着いた理由は何か。
 (AB)冷戦終了により、(アメリカの)政治エリートは異常なまでの傲慢に陥った。そのことを表す端的な主張は、歴史はアメリカに「不可欠な国家」という役割を与えたというものだ。傲慢は無鉄砲と無責任につながり、2003年のイラク戦争を生んだ。「責任ある国家運営」は(無鉄砲と無責任に対する)対抗手段である。「責任ある国家運営」における不変的特質は、リアリズム、抑制、慎重及び積極的関与である。QIは反軍ではないが、全ての可能な手段が尽くされない限り、戦争には慎重である。我々は、戦争が意図しない結果を生み出し、予期せぬコストを強要する傾向があることを強く自覚している。
 過去30年間のアメリカの対外政策を批判する者のほとんど全員が一致するのは、ソ連崩壊後のほとんどの間、アメリカ政府が責任ある国家運営を行ってこなかったという認識である。その結果、アメリカは過剰かつ無謀なミリタリズムの犠牲になってきた。アメリカ政府は、外交、協力そして国際関係強化といった責任ある国家運営を行わず、世界との関わり方を制裁、体制、力という観点から定義するようになった。このアプローチが生み出したのは、弱い国に対しては条件を押し付け、これに従わない場合には攻撃し、同盟国に対しては命令するべき従属国として扱い、これに従わない場合には罰する対象として扱い、「何かをする」だけのための反射的制裁を課し、仮に勝てたとしてもアメリカの安全を高めることにはならない戦争を始めることだった。
 QIの目的は、政府及び人々に過去数十年にわたる軍国主義と傲慢を拒否し、正義に導かれた、良識と思いやりのある対外政策を受け入れる代替案を提供することである。それは初代大統領・ワシントンが助言した世界との関わり方に他ならない。

2.「力による平和」のトランプ外交

 トランプがウクライナ戦争の早期終結実現に強い意欲を示していることからも分かるように、彼はピースメーカーとして歴史に名を残すことに強い意欲を持っていることは、彼自身がしばしば口にし、また、多くの論者が指摘するとおりです。彼が稀代の俗物であることは、ノーベル平和賞を受賞したオバマに異常なほどの対抗心を燃やし、自らも同賞受賞に執着心を隠さないことに端的に現れています。
 日本でも報道されましたが、2月19日にトランプがフロリダで演説した後に司会者の質問に答えて行った、広島・長崎にも言及した発言は、彼の「力による平和」観を率直に示すものでした。ホワイトハウスWSに掲載された発言(大要)は以下のとおりです。
(質問)歴史上の統治者だったとした場合、戦時と平時のいずれの時期に統治したいと思うか(If you were a historical ruler, would you prefer to rule during war or peace?)。
(回答)私はピースメーカーになりたいし、我々が戦争の局外にいるようにしたい。しかし時として、そのために強国である必要がある。強大な軍隊を保有しなければならない。(I want to be, again, a peacemaker and I want to keep us out of war. But sometimes, to do that, you have to have a very strong country. You have to have a very strong military.)…
それは力による平和ということだ。なぜならば、力なくしては平和を保つことは難しく、奪われてしまい、悪いことが起こるからだ。だから、力による平和が必要であり、私は力による平和をやってきた。(it's really peace through strength, because without the strength, it's going to be very hard to have peace because you're going to be taken over, bad things are going to happen. So, you really want to have peace through strength, and that's where I've done it.)…願わくは、力を使用しない方が良い。(Hopefully, you don't have to use that power.)
 話しておくことがある。私は、プーチン大統領との間で非核化についての取引で成功しつつあった。我々は真剣に話し合っていたが、そこにコロナを始め多くのことが起こった。我々は、中国との間でも話し合いを行っていた。(I will tell you, I was dealing with President Putin very successfully on denuclearization. We were talking about it very seriously, and then COVID came and lots of things came. And we had also talked to China about it.)…
 核兵器の威力を知った以上、絶対に核戦争を起こしてはならない。核戦争が起こったら、世界は破壊されてしまうだろう。核兵器の力は巨大だ。広島を見ろ。長崎を見ろ。(今の核兵器の威力は)500倍以上だ。世界は滅びるだろう。だから、そのことを理解しているものが大統領、統治者になる必要がある。核戦争を起こさせてはならない。(When I saw the power of nuclear weapons — and we can never let that happen. If that happens, the ball game will be — the world will be destroyed. The power is so enormous. You look at Hiroshima, you look at Nagasaki — multiply that times 500 times, and the world would be destroyed. So, you want somebody as your president, or you want somebody as your leader that understands that. We just can't let that happen.)
 (今の核兵器国)以外の国々に核兵器を持たせることはできない。イランだけではない。イランは好例で、人々が思い浮かべるだろうが、持たせるわけにはいかない。(We can't let other countries get nuclear weapons — not only Iran. Iran is a good example, and maybe the one that people think about, but we can't let that happen.)
 今日の兵器の威力はあまりにも巨大なので、(それが使われたら)世界は崩壊するだろう。だから、そういうことを起こさせてはならない。(The power of weaponry today is so enormous that the world — the world would disintegrate. So, we can't let it happen.)
(質問)大統領、三つの言葉でアメリカを言い表すとしたら、何ですか。
(回答)三つの言葉?
(質問)三つの言葉。
(回答)愛、リスペクト、力。(Love, respect, and strength.)難しい質問だが、それがベスト・アンサーだろう。(That's a tough question. That might be my best answer)

(1)トランプ外交の平和志向性に対する肯定的評価

トランプ外交を肯定的に評価した文章としては、以下のようなものがあります。最初及び三番目のものはTAC掲載文章、二番目はQIの代表的論客がロサンジェルス・タイムズで共同執筆した文章です。
 特に二番目の文章は、バイデン政権が推進した「ルールに基づく国際秩序(RBIO)」の「偽善とダブル・スタンダード」の権力政治的本質を暴露するとともに、その否定に立脚するトランプ外交の可能性を、期待を込めて指摘するものです。
 余談ですが、岸田政権及び石破政権は、ウクライナを「侵略」するロシア及び台湾・南シナ海で「覇権を追求」する中国を批判する拠り所として「法に基づく国際秩序」を標榜しています。これはバイデン流「ルールに基づく国際秩序(RBIO)」の日本版、いわば焼き直しです。失笑を禁じ得ないのは、日米首脳会談で石破首相が後生大事に「法に基づく国際秩序」を持ち出したことです。通訳者が原義であるRBIOと表現した可能性が高いですが、トランプの不快感はいかばかりだったか、想像するに余りあるものがあります。日本外交が致命的に時代遅れであることを象徴する事例です。
○「ピースメーカー・トランプ」-アメリカ対外政策に画期的変化をもたらしうる大統領-(原題:"Trump, Peacemaker? The once and future president can effect an epochal change in American foreign policy")
2024年12月25日付TAC 執筆者:W.J.アントル(Antle III)
 トランプには、第一期時代以上にアメリカ対外政策を作り替えるチャンスがある。44年前のレーガンのように、トランプは戦争屋というレッテルを貼られ続けてきた。しかし、レーガンが「力による平和」(という理念)において「力」と「平和」の双方を信奉していたのと同じことがトランプについても言いうる。第一期トランプ政権スタッフには戦争と平和の問題に関してタカ派とハト派が入り交じっていたし、そのリスクは第二期政権についても当てはまる。しかし、トランプは戦争屋ではなく取引屋として歴史に名をとどめるだろう。それが彼の自己認識における中心にあり、彼の対外政策上の本能においても重要な比重を占めている。彼がこの自己認識・本能に忠実に、アメリカの利益のためにこれを巧みに運用することを祈りたい。
○「アメリカ外交改善の担い手・トランプ」(原題:"The improvement Trump could make to U.S. foreign policy")
2025年1月8日付ロサンジェルス・タイムズ 執筆者:サムエル・モイン(イエール大学教授)&トリタ・パルシ(QI「よりよい秩序プロジェクト」リーダー)
 バイデン政権は「ルールに基づく国際秩序(RBIO)」を売りにしたが、トランプにはこれを尊重する姿勢を窺えない。しかし、そのことにこそチャンスがある。なぜならば、アメリカが「ルールに基づく」秩序を振りかざしてグローバルな安定を強調したことに、世界では好意的反応よりも否定的反応の方が大きいからである。RBIOはアメリカのポジティヴなビジョンであるよりはむしろ、アメリカの偽善とダブル・スタンダードを象徴するものとなっている。トランプがRBIOを言わないことは賢明なことだ。
 バイデン政権は、RBIOを対外政策の基調に据えたが、その狙いは、現存国際秩序を作り替えようとする中国及びロシアに対する西側諸国の結束を誇示することにあった。グローバル・サウスと中ロとの間には立場の違いがあるにせよ、RBIOに対する反対という点で両者は結束している。なぜならば、RBIOはこれら諸国を犠牲にしてアメリカの一極支配を維持するためのシンボルと受け止められているからである。…
 大国間の競争がすでに起こっているとすれば、重要な問題は、それが何らかの共通の枠組みの下で進むのか、それとも各大国が自国のためにのみ争うことになるのかということだ。トランプはそのいずれを選択するだろうか。トランプは多極世界に対してオープンであるように見える。トランプがアメリカの世界的軍事プレゼンスを減らし、米軍を本国に引き揚げ、世界の警察官という役割を減らすことに本気であるとするならば、多極的システムを支持して平和を促進することはアメリカの利益、すなわちトランプの利益となるだろう。
 トランプは自らの利益を熱心に主張する人物だ。彼の第一期政権時の外交政策は取引主義(transactionalism)を特徴としており、時にワシントンの典型的な道徳観念を超越し、アフガニスタン撤退をタリバンと交渉するなど、関与を通じて米国の利益を推進した。国際問題に対するこの「自分に何の得があるか」というアプローチにより、第二期トランプ政権は歴代政権が推進してきた「有志連合による国際秩序」という神話を捨て去ることができるかもしれない。
 機能する世界秩序は、中国との経済競争に勝ち、ウクライナで平和を築くなど、トランプの外交政策目標の実現にとって重要な条件である。これらの目標は、意見の相違や紛争が相互に破壊的な戦争に発展するのを防ぐ、健全で予測可能な安全保障の枠組みがなければ達成できない。現存する規範、法律、制度の中には、良好な結果を生みだし、維持するに足るものがある。その中には、軍事力を規制する国連憲章及び国連そのものが含まれる。ウクライナとガザで進行中の戦争を終わらせることができるかどうかに関して言えば、取引の巧拙次第だろう。しかし、その結果如何は、公正で共通の基準のもとで取引が行われるという確信が共有されるもとで取引が行われるかどうかにかかっている。(バイデン政権の)RBIOはその可能性を奪った。今後4年間、アメリカはより良く振る舞う必要がある。
○「トランプの骨太のパックス・アメリカーナ:アメリカ式スタイルの刷新ビジョン」(原題:"Trump's Muscular Pax Americana, The 45th and 47th president has articulated a renewed vision of the American way of life")
2025年1月21日付TAC 執筆者:ダニエル・マッカーシー(TAC寄稿エディター)
 第2期トランプ就任演説は敵・味方双方のすべての疑問を吹き飛ばした。彼はアメリカを決定的に右旋回させ、そのビジョンは明確にナショナリストであることを明らかにした。同時に彼は、「私がもっとも誇りとする遺産はピースメーカーそしてユニファイアーとなることだ」と述べて、レーガン以後の大統領の中で誰よりも大胆に平和にコミットした。対外政策エスタブリッシュメントの戦争熱に対するトランプの敵対姿勢は政治的便宜に基づくものではない。選挙という観点からは何も得るものがないにもかかわらず、トランプは21世紀の戦争を一貫して批判してきた。レーガンにおいてそうであったように、平和はトランプの中心的核心である。しかもトランプはその就任演説において、「我々は、我々が勝利する闘いによってのみではなく、我々が終結させる戦争、否、もっとも重要なことは、我々が絶対に戦争に首を突っ込まないことによってその成功を判断するだろう」と述べることで、後に続く大統領に対しても(戦争に否定的な)基準を設定した。
 もちろん、グリーンランド、パナマに関する発言に明らかなように、トランプは平和主義者ではない。また、アメリカの伝統的平和は拡張主義を伴わないものではなかったし、軍事力の使用を忌避するものでもなかった。例えば、20世紀のレーガンは敵からも味方からもタカ派・ミリタリストと見なされたが、誰にも増してピースメーカーであるというパラドックスの見本だった。21世紀のトランプが直面する課題は1980年代のレーガンよりも簡単ではない。否、レーガン以後の大統領は、1991年以後起こった一連の戦争に首を突っ込むことで、冷戦を終結させたレーガンの功績を無駄にし、第1期トランプ政権になってやっと歯止めがかかった。第2期トランプ政権が直面しているのは、過去35年間の共和党及び民主党政権が犯した誤りを正すことである。

(2)ミュンヘン安全保障会議

 ミュンヘン安全保障会議におけるヴァンス副大統領及びヘグセス国防長官の演説は、「アメリカ第一主義」のもとでの米欧関係に関するトランプ政権の基本認識・政策を欧州に突きつけるものでした。その要諦は、①(防衛・安全保障に関して)「ただ乗り」「おんぶに抱っこ」はもはや許されず、欧州側の自助努力を要求、②(会議の中心議題と目されたウクライナ問題に関して)ウクライナのNATO加盟は論外、対ロシア軍事対決戦略・政策を曲げない場合は欧州の自助努力によるべし、③(「共通の価値観に基づく米欧関係」という大前提に関して)欧州政治の堕落で関係維持の前提そのものが失われている、とまとめることができます。ここでは、TAC所掲の二つの文章を紹介します。ヴァンス及びヘグセスの思想はいわば「札付き」ですが、この二つの文章は二人の思想信条に囚われず、両演説が客観的・歴史的に持つ意義を明らかにしています。
 ちなみに、日米関係に関してもアメリカの以上の基本認識・政策が当てはまることは見やすい道理です。防衛・安全保障に関しては、トランプがすでに対日不満を口にしています。ウクライナ問題に関しては、安全保障問題の権威を自認する石破首相はさすがにトランプ政権の認識・政策の変化を踏まえた発言を意識するようになっています。しかし、(相変わらずウクライナ支持一辺倒の国内世論に引きずられる)日本政府は軌道修正ができず、米欧の狭間で「股裂き」状態です。「共通の価値観に基づく日米関係」の虚構性は根源的なものであり、「アメリカ第一主義」のトランプ・アメリカとの関係は今後ますます空洞化があらわになっていくことが予想されます。
○「汎大西洋主義の空中分解」-時代錯誤の旧思考にお灸を据えたヴァンスとヘグセス(原題;"Exploding Transatlanticism"Vance and Hegseth made speedy work of yesteryear's shibboleths at Munich)
2025年2月15日付TAC 執筆者:スマントラ・マイトラ(TAC上級ライター)
 欧州エスタブリッシュメント(及びアメリカ・メディア)はミュンヘン安全保障会議の冒頭に何が起こるかについて心の準備ができていなかった。実は数年前から、NATOにおける防衛分担シフトについての予兆はあったにもかかわらず。
 ブラッセルで行われたウクライナ・コンタクト・グループにおける演説で、ヘグセス国防長官は、「欧州の安全を保障することはNATOの欧州加盟国にとっての緊急課題でなければならない。その一環として、欧州は今後の対ウクライナ援助の大部分を提供しなければならない」と述べた。アメリカは、対米依存を助長する不均衡な関係をこれ以上容赦しない。米欧関係においては、欧州の安全について欧州が責任を負うことを優先する。アメリカが引き続き核の傘を提供する同盟関係のもとで、欧州が「非核分野における安全を担う」という提案は数年前から提起されていたが、ヘグセスは、それが今やアメリカの現実の政策となったことを明言したのである。防衛分担(Burden-sharing)は去り、防衛移転(burden-shifting)が公式な政策となったというわけだ。
 ヘグセスは次のように述べた。「ブラッセルにおける私の任務は、我々の会話の中にリアリズムを持ち込むことにある。(ウクライナ問題に関する)交渉による解決においては2014年の国境に戻ることにはリアリティがない。ウクライナにおける米軍の駐留にはリアリティがない。交渉による解決の一環としてのウクライナのNATO加盟にもリアリティがない。」その上でヘグセスは、「欧州の安全を保障することはNATOの欧州加盟国にとっての緊急課題でなければならない。その一環として、欧州は今後の対ウクライナ援助の大部分を提供しなければならない」と述べた。
 トランプは次のように述べて以上のヘグセス発言を支持した。「ロシアの立場に置かれた国家がウクライナのNATO加盟を許すとは思えない。それはありえない。」トランプはさらに続けた。「戦争は、バイデンがウクライナのNATO加盟はあり得ると述べたことから始まった。」
 以上だけでも不十分とばかり、ヴァンスはその歴史的な演説の中で次のように指摘した。すなわち、米欧間における価値観の共有という言辞とは裏腹に、EUは旧ソ連の「スマイル・バッジ」版の様相を呈している。ヴァンスはさらに次のように非難の言葉を連ねた。「大西洋対岸の我々から見ると、EUはますます、ソ連時代のウソと偽情報に塗り固まった旧既得権益の様相だ。」ヴァンスはさらに次のように述べた。「欧州に対する脅威という点に関して私がもっとも懸念するのは、ロシア、中国といった外部的対象ではない。私が心配するのは内なる脅威だ。もっとも基本的な価値観、アメリカと共有する価値観が失われていることである。」
 汎大西洋主義の主張は、共通の価値観及び共通の統治形態が共通の内外政策を支配するという前提に立っていた。それは元々馬鹿げた主張だが、ヴァンスとヘグセスの功績はこの前提・主張を粉々に打ち砕いたことにある。価値観が共通でもなく共有されてもいないとすれば、対外政策を支配するのは地政学である。ヴァンスとヘグセスに共通する命題は、最良の時においても貿易上のただ乗りのライバルであり、アメリカの無条件な支持・保護を受けるに値しないEUという、人工的かつ膨れ上がった構成体に赤裸々な現実を突きつけることにあった。
○「ヴァンス・ミュンヘン演説の要諦」―地政学的革命宣言と西側アイデンティティ問題に対する一石投与-(原題:"What Vance's Munich Speech Really Means"He proclaimed nothing less than geopolitical revolution and a reckoning with the question of Western identity)
2025年2月17日付TAC 執筆者:アンドリュー・デイ(TAC上級エディター)
 欧州は激怒した。先週、アメリカ副大統領はミュンヘン(安全保障会議)にこれ見よがしに現れ、欧州に対する激しい非難を浴びせた。少なくとも、欧州側のヴァンス演説に対する受け止めはそうだった。
 しかし、こうした反射的受け止めは(ヴァンス演説の)本質を捉えていない。ヴァンスが意図したのは、「多極化」時代における西側に関するビジョンを提起することにあった。この演説が行われた前日、アフガン人難民申請者がミュンヘンで人だかりに車を突っ込ませ、2歳の娘とその母親をひき殺した。ヴァンスはこの事件を取り上げ、「我々は何時になったら方向転換し、我々が共有する文明を新しい方向に導くことができるのだろうか」と問いかけた。
 欧州聴衆はこの演説に痛く傷つけられただけではなく、会議の主題である国際安全保障と何の関係があるかといぶかった。彼らは、ヴァンスがロシアとウクライナとの和平問題ではなく、大量移民と権威主義的リベラリズムについて長広舌を振るったことが理解できなかった。
 欧州は、世界が新たな地政学的パラダイムを迎えており、文明的意味合いを帯びた諸問題が提起されていることを認識できていない。第二次大戦終了から冷戦期にかけて続いたアメリカの世界覇権はもはや終わった。その後の新しい時代が何時開始したかに関しては、アメリカがアフガニスタンから撤退した4年前かもしれないし、モスクワがウクライナに侵入した3年前、あるいは、トランプがホワイトハウス入りした1ヶ月前かもしれない。変化が開始したのは何時にせよ、欧州はまだその変化の開始自体を認識できていない。ヴァンスはその変化を伝えるべくミュンヘンに来たのだ。
 ヴァンス演説の意義はそこにあり、彼が安全保障よりも根源的なテーマに集中した理由もそこにあった。その根源的テーマとは、西側文明のアイデンティティ、第一諸原則、そしてその脆弱性ということである。2025年という年は、ソ連の終末期と同じく、西側が根源的諸問題について新思考が求められている時である。ヴァンスは基調演説においてこのプロセスの開始を告げたのである。
 ミュンヘンに来たEU官僚たちは、トーマス・クーンの『科学革命の構造』(1962年)に描かれた「まともな」科学者のごとく、支配的な理論的パラダイムに疑問を抱くことなく、そのパラダイムの枠内でパズルを解こうとしている。しかし、所与のパラダイムの枠組みは次第に役に立たなくなり始めている。例外が蓄積し、矛盾が台頭し、それまでのコンセンサスは崩壊し、古いパズルを解き、新しいパズルを提起できる、代わりとなる枠組みが必要になっている。
 ヴァンス演説の2日前、ヘグセス国防長官がアメリカの地政学的新思考の軍事的側面を提起し、西側世界にとっての重要性について強調した。その要諦は、アメリカのパワーは削減され、再編されるので、欧州は自らの大陸におけるパワーを増大させる必要があるという点にある。ヘグセスが欧州側に通告したことは単純であり、世界の警察官としてのアメリカはもはや欧州を守ることを約束できないということだ。つまり、自ら武装しなさい、ということである。以上の結論はもはや変えることのできない前提から引き出されたものであったが、アメリカのヘゲモニーは衰えることはなく、欧州は永遠にこの超大国に依存する権利があるという思い込みに立ったEU官僚は、この発言にも激怒した。
 ヴァンス演説は軍事問題を取り上げず、(欧州における防衛論議のあり方をまな板にのせた上で)「何から身を守る必要があるか」という議論はあるが、「何のために身を守るのか」という問題意識が曖昧であると指摘し、リベラル・デモクラシーの発祥の地である欧州が選挙結果を無効にし、言論及び宗教の自由を抑圧している事例を挙げた上で、欧州諸国が反リベラル・反民主的な手段を講じることによって、グローバル・リベラリズムは西側デモクラシーの危機を醸成している、という認識を表明した。
(参考)
 TACの二つの文章に反映されている認識は決して「独りよがり」の産物ではありません。2月15日付のロシア・トゥデイが掲載したヒョドル・ルキヤノフ署名文章「アメリカの真意を代弁したヴァンス」(原題:"Fyodor Lukyanov: Vance only said what Americans really think")及び2月15日付英ガーディアンWSが掲載したクリストファー・チヴィス署名文章「新世界秩序を前に分岐に立つ米欧」(原題:Christopher S Chivvis "The US and Europe are at a crossroads. A new world order is emerging")は、以下のように見事に本質を捉えています。
(ルキヤノフ文章)
 ヴァンスの画期的演説における最重要ポイントは世界政治における基本的シフトを指摘したことにある。今日におけるカギとなる問題は、冷戦は最終的終焉を迎えたのか、
それとも今後も続くのかにある。西欧は今後も続くと主張しているが、その理由はかつての敵(ロシア)を平和的に統合することに失敗しても、相変わらず固執していることにある。これに対してアメリカは前進する用意があるように見える。この欧州からの重心シフトはトランプあるいはヴァンスの主観的産物ではなく、アメリカにおける優先度のシフトによるものである。このシフトはブッシュ(父)政権時代に始まり、その後の歴代政権下でも継続してきたが、公然と口にされることはなかった。トランプはそれを公然と述べたに過ぎない。
 西欧にとって、冷戦時代の思想的地政学的枠組みにしがみつくことが生き残りに直結する。つまり、西欧は旧秩序を維持することによってのみ、国際政治における中心的地位を維持することができるし、もっと重要なことは、そうすることによってのみ、すでにきしみ始めている内部的求心力を保つことができるのである。
 しかし、アメリカにとっては、冷戦時代の枠組みを放擲することによってのみ、中国、太平洋、北米、北極といったこれからの挑戦に焦点を当てるチャンスが生まれてくる。ちなみに西欧は、これらの分野においては不可欠の要素ではなく、お荷物になるに過ぎない。
 こうして不都合な結論が導かれる。すなわち、西欧は緊張を高めることによってのみ消極的なアメリカを引き込むことができる。今日の真の問題は、旧世界が情勢をそういう方向に引っ張っていくことができるかどうか、ということにある。
(チヴィス文章)
 米欧関係の基盤が劇的に変化した。トランプ政権がアメリカの新たな対欧アプローチを提起したのだ。その中心に座るのはウクライナとロシアの戦争終結交渉であり、アメリカは欧州に自らの防衛の責任を負わせることを明らかにした。過去25年間の米欧関係においても似たような危機はあったが、元の鞘に収まってきた。今回は違う。
 ミュンヘン安全保障会議において、トランプ政権要人は欧州側に対して次々と言語爆弾をぶつけた。欧州は団結して主体的に防衛に当たるのか、それとも米ロ間のゲームにおけるコマに堕するのか。ウクライナはロシア軍に席巻されるのか、それとも主権国家としての地位を保全するのか。世界全体にとって、西側の崩壊、ロシアの再興、そしてウクライナ戦争の終結はいかなる意味を持つのか、等々。
 ことの始まりは、トランプがプーチンとの間で戦争終結交渉を計画していると発表したことだった。欧州とウクライナは、自分たちの安全保障の未来が自分たち抜きで決められる可能性に震え上がった。ヘグセス国防長官はNATO本部で、戦争終結後のウクライナ防衛は欧州の責任になる(アメリカの援助は限定的になる)と告げた。ヘグセスはさらにウクライナのNATO加盟はないと述べた(皮肉なことに、2008年、ロシアを刺激することを恐れた独仏が反対したのを押し切って、ウクライナのNATO加盟を最初に主張したのはブッシュ(父)だった)。

(3)トランプ外交の「危うさ」

 実事求是を旨とするQI及びTACは、トランプ外交に潜む「危うさ」も認識し、率直に指摘もしています。その典型例として、2月11日付TACが掲載した、QIが運営する「リスポンシブル・ステイトクラフト」の常連寄稿者であるテッド・スナイダーの署名文章「「マッキンレーとセオドア・ルーズベルトを賞賛するトランプの危うさ」-ピースメーカーたらんとするトランプのヒーローは戦争屋-」(原題:"The Threat Behind Trump's Praise of McKinley & Roosevelt", The president says he wants to be peacemaker—but his heroes were warmongers)を紹介します。
 トランプは就任演説で、「我々は、我々が勝利する闘いによってのみではなく、我々が終結させる戦争、否、もっとも重要なことは、我々が絶対に戦争に首を突っ込まないことによってその成功を判断するだろう」、「私がもっとも誇りとする遺産はピースメーカーそしてユニファイアーとなることだ」と述べたが、この演説の中で挙げた先任者はウィリアム・マッキンレーとセオドア・ルーズベルトだった。
 1898年は、アメリカが植民地だった自らの過去を意識して他国の主権を尊重し続けるか、それとも、ハワイ、キューバ、フィリピン、グアム、プエルトリコを植民地とする拡張主義を追求するか、という選択に直面した年である。後者を選択したのがマッキンレーだった。就任初日にトランプが署名した行政命令では、マッキンレーが「米西戦争におけるアメリカの勝利を導いた」と賞賛している。また、トランプは就任演説において、パナマ運河の建設に関わった大統領・ルーズベルトにも言及している。
 グリーンランド、パナマ、カナダに対する野心をあけすけに述べた第2期トランプ政権にはマッキンレー的精神とルーズベルト的戦略が反映している。自らの政権の成功を測る基準は「我々が絶対に戦争に首を突っ込まない(こと)」と述べたトランプだが、マッキンレーとルーズベルトに敬意を払うトランプの姿勢には不吉な執拗低音の響きがある。

3.ウクライナ問題

(1)トランプの大統領就任前から戦争終結への行動を促していたQIとTAC

 QIとTACは、トランプ当選直後からウクライナ戦争終結にリーダーシップを発揮するようを促す言論を発表していました。
○「ウクライナ戦争を終結させる権限を有するトランプ」(原題:"Trump has a mandate to end the Ukraine War")
2024年11月13日付QIRS 執筆者:マーク・エピスコパス
 西側がウクライナ戦争という窮状から抜け出そうとするのであれば、以下の単純な真実を承認することから始めなければならない。
-全面的通常戦争におけるウクライナのロシアに対する勝利はあり得ない。
-ウクライナはこの消耗戦において決定的に敗北しつつあり、西側のいかなる軍事援助もウクライナの崩壊軌道を逆転させることはできない。
-NATOとロシアの全面戦争以外にはロシアの無条件降伏はあり得ないが、西側諸国にはウクライナのために対ロ全面戦争を行う用意はない。
 アメリカ、欧州そしてウクライナの利害は、アメリカ主導の交渉による解決を速やかに達成することによってのみ保全される。それこそはトランプが自らの対外政策の優先順位に据えているものである。トランプはこの戦争を終結させる強大な権限を有しており、この権限を行使することにより、アメリカの欧州における立場だけではなく、グローバルな立場を強化することができる。
○「NATO拡張ストップがウクライナ和平への道」(原題:"For Peace in Ukraine, Stop NATO Expansion")
2024年12月19日付TAC 執筆者:ダグ・バンドウ(カトー研究所上級フェロー)
 トランプがウクライナ戦争を終結させたいのであれば、その最初のステップは、ウクライナを巻き込んだ現在及び将来の紛争に対するアメリカ及びNATOの関与を拒否することから始めるべきである。今回の侵略を決定したのはプーチンであるが、この戦争につながる状況を作り出したのは西側である。クリントン政権は、NATOはロシア国境まで拡張しないという、(アメリカが)エリツィン政権に対して繰り返し行ってきた保障を無視した。その後、ロシアは力を回復し、NATO拡張の帰結について繰り返し警告するに至った。NATOのストルテンベルグ事務総長(当時)が詳述しているように、ロシアの侵略開始前に、プーチンはウクライナのNATO加盟問題に関して交渉することを要求したのに、西側はこれを拒否した。また、西側がロシアとウクライナの国境を軍事化する計画を放棄していたならば、ロシアによるウクライナ侵略はなかっただろう。
 アメリカにとって、同盟とはアメリカの安全保障を高めるためのものであるべきで、外国に慈善を施すためのものではない。ウクライナとロシアを巻き込むいかなる紛争においても、戦闘の大部分(核のエスカレーションを含む)を請け負うのはアメリカであり、リトアニア、エストニア、ドイツさらには欧州ではない。ウクライナをNATOに加盟させることは、アメリカを守ることにつながらず、アメリカを戦争に巻き込む可能性が高い。  ロシアはアメリカを脅かさない。冷戦は終わった。米ロ間にはイデオロギー上も領土的にも紛争はない。プーチンが欧州に対して軍事的野心を持っていることを示唆する材料もない。プーチンがウクライナのNATO加盟問題に焦点を当てていること自体、彼がNATOとの紛争を避けたがっていることを証明している。
 ロシアとのいかなる戦争においても、重荷を背負い込むのはアメリカである。したがって、不必要な戦争を回避することはアメリカにとって死活的目標となる。エストニア、リトアニアなどがロシアとの対決を望むのであれば、アメリカ人の命ではなく自国民の命をかけて行えば良い。
 ロシアがウクライナに侵略を開始してからほぼ2年間に、アメリカはウクライナ支援に数百億ドルを投じてきた。費やしたカネは戻らない。問うべきは、今後もさらにウクライナを支援する価値があるかということだ。  ウクライナ戦争の終了は今後の交渉次第である。しかし、交渉の対象にしてはならない問題がある。それはウクライナのNATO加盟だ。

(2)ウクライナ戦争の元凶・アメリカ

 トランプがウクライナ戦争に関してロシアを全面的に糾弾する立場を取らないのは、ロシアがもっとも警戒したウクライナのNATO加盟を米欧・NATOが推進したことに、同戦争勃発を招いた最大の原因がある、という正しい認識を備えていたことによるものです。そのことは、2月26日の閣議に先立って行われた記者会見でのトランプの発言から確認できます。
(記者)あなたが人生で行ったすべての取引、あなたが向かい合って交渉したすべての人々の中で、プーチン大統領は何か特別な点があるか?
(トランプ)彼はとても頭のいい男で、非常にずる賢い人物だ。私は本当に悪い連中と付き合ってきた。この戦争に関して言えば、彼は(取引で)決着させるつもりはなかったというのが私の見解だ。彼はすべてを自分のものにしたいと思っていたのではないか。
 しかし、私は当選後に彼と話し合った。そして、私は取引できると思った。保証はできない。しかし、取引はあくまで取引だ。取引では思いもかけないことがたくさん起こる。しかし、(彼とは)取引ができるだろう。  もし私が当選していなかったら、プーチンはウクライナ戦争をやり抜いていただろう。そしてその間に多くの人々が殺されただろう。戦争はしばらく続くことになっただろう。
 私はファイターたるウクライナを大いに尊敬している。しかし、我々が提供する装備がなかったら、人々が言うように、この戦争は極めて短期間で終わっていただろう。
(質問)(交渉・取引の)タイムラインはあるのか?
(トランプ)(あなたたちにも)記憶があるかもしれないが、私は(対戦車ミサイル)ジャベリンを供与した。戦争開始当初、(ロシアの)戦車をノックアウトしたのはそのジャベリンだった。オバマはシーツを与え、トランプはジャベリンを与えた。私も(武器を)与えた一人だ。しかし、私はそれを終わりにしたと考えている。
(質問)プーチン大統領は譲歩に応じるだろうか。
(トランプ)譲歩するだろう。譲歩に応じなければならなくなるだろう。
(質問)その点についての見通しは如何?
(トランプ)私が当選したので、この戦争は終わると確信している。かりに、我々、この政権が選ばれていなかったとしたら、この戦争は長期化し、プーチンはすべてを手に入れたいと考え続けていただろう。
(質問)いかなる譲歩(をするだろうか)?
(トランプ)私の最大関心事は、プーチンはすべてを手に入れたいと思っているのかということだ。世界最優秀の我々の装備がなかったとしたら、戦争は早々と終わっていただろう。
(質問)どんな譲歩を期待しているか?
(トランプ)今は語りたくない。しかし、NATOについては忘れていいと言える。すべてのことの始まりはおそらくこれ(ウクライナのNATO加盟問題)だと思っている。
 トランプが最後に言及した「NATOについては忘れていい」、「すべてのことの始まりはおそらくこれだ」という発言に関しては、トランプが同日の記者会見でさらに詳しく敷衍しています。この点に関する翌日のAP電が秀逸ですので、その内容を紹介します。
 トランプは、3年前にロシア侵攻で始まった戦争で、ウクライナ支援のためにバイデン政権が納税者のカネを使い過ぎてきたことに不満を口にしてきた。トランプは、(ゼレンスキー訪米の目玉である)レア・メタル取引(協定)によってそのカネの回収を考えた。
 ゼレンスキーは、この協定にアメリカによるウクライナに対する安全の保障が盛り込まれていないことが最大の懸念であり、トランプとの首脳会談では、アメリカの対ウクライナ軍事支援の継続・確約を取り付けることを含め、ウクライナを待ち受けるアメリカの包括的ビジョンの表明確保を最大の狙いとしていた。
 しかし、トランプには(ウクライナに対する)上乗せの安全保障についてコミットする意思はなかった。記者会見でトランプは、アメリカにはいかなるコミットもする用意はなく、今後の保障については「欧州にやらせる」("We're going to have Europe do that")と述べた。
 トランプはさらに、ウクライナで鉱物資源開発に従事するアメリカが「自動的な安全保障になる。なぜならば、アメリカ人の物理的プレゼンスに対して「手出しする」(messing around)者はいないからだ」(浅井:アメリカの経済的・人的プレゼンスそのものがロシアに対するデタランスとして働く)と説明した。
 トランプはまた、ウクライナは西側軍事同盟・NATOへの加盟を「忘れることだ」("could forget about")と述べるとともに、ウクライナにおける戦争終結の合意を達成するため、近くプーチンと直接話をする意向を表明した。彼は、ロシア及びウクライナの双方にいかなる譲歩を求めるかについての詳細は述べなかったが、アメリカの立場として、ウクライナのNATO加盟を支持できない(not tenable)と強調した。トランプは、「NATOについては忘れろ」("NATO, you can forget about it,")「すべてのことの始まりはそれだと思う」("I think that's probably the reason the whole thing started.")と述べた。…
 こうしてトランプは、従前のアメリカの政策を投げ捨てた。つまり、プーチンを孤立させる政策をスクラップし、欧州同盟諸国に対する支持そのものに疑問を投げかけたのだ。この発言は、地政学的大変動を引き起こし、ウクライナ戦争の道筋をリセットすることを意味するものだった。
 なお、ロシアを追い詰めることを目的とするアメリカのNATO東方拡大戦略が米ソ冷戦終了から一貫して追求されてきたことを実証的に克明に明らかにした労作があります。2024年11月に刊行された、スコット・ホートン(Scott Horton)著『被挑発者:ワシントンは対ロシア冷戦とウクライナの悲劇を如何に開始したか』(原題:"Provoked: How Washington Started the New Cold War with Russia and the Catastrophe in Ukraine")です。私はKindle版を購入して読んでいる最中ですが、6000以上の脚注を伴う膨大かつ詳細なものです。日本を含む西側諸国における「ロシア叩き」がいかに誤っているかを理解する上での必読書です。2月19日付TACも、TAC創設エディターであるスコット・マッコネルによる詳しい解説(標題:"The First Draft of the Ukraine War's History")を掲載しています。

4.中東問題

 中東問題(イランを含む)に関しては、第1期政権時代にアブラハム合意に基づくイスラエルとサウジアラビア以下のアラブ諸国との関係改善に注力したトランプのスタンスは第2期政権になってからも変化の兆しはありません。否、2023年10月7日のハマスによる対イスラエル奇襲攻撃で始まったイスラエルといわゆる抵抗枢軸(イラン、ハマス、ヒズボラ、フーシ派)との軍事対決において、トランプ政権はバイデン政権のネタニヤフ政権支持政策をそっくり引き継いでいるだけでなく、さらに推進する構えです。
 QI及びTACはトランプ政権のイスラエル支持政策を厳しく批判する論調を掲げています。そして、トランプの「平和志向」的要素を重視し、トランプ政権の対中東政策の根本的見直しを極力促す立場から論陣を張っています。ここでは3例を紹介します。
○「本能とタカ派アドヴァイザーの間で揺れ動くトランプ」(原題:"On Middle East, will Trump follow his instincts or hawkish advisers?")
2024年11月26日付QI「リスポンシブル・ステートクラフト」 執筆者:スティーヴン・ワインシュタイン
 中東問題に関するトランプ政権の政策的方向性は、トランプが軍事的離脱を志向する自らの本能的直感に従うか、それとも彼を取り巻くタカ派の勧告に耳を傾けるかによって大きく左右されるだろう。そして、実際の政策は干渉主義的要素と抑制的要素とのブレンドとなり、第1期政権時と同じように、先が見通せない、時には支離滅裂に陥る可能性がある。
○「トランプがイランと強力な取引を行うためのアプローチ」(原題:"Here's How Trump Can Make a Strong Deal With Iran" The president will find Tehran more amenable than ever if he tries to drive a bargain.)
2025年2月1日付TAC 執筆者:サイナ・トゥッシ(国際政策センター上級フェロー)
 トランプは、究極のディールメーカーという評価をうち立ててきた。すなわち、混沌状態をチャンスに変え、他のものではお手上げなのに、彼は結果を生み出すのである。今、中東はガザとレバノンにおける紛争が危なっかしい状態にあり、アメリカとイランとの緊張は危機的状況にある。トランプは、彼以前の大統領が誰も成し遂げることができなかった、大胆で、状況を一変させる取引をイランとの間で行うことによって、歴史に名を刻むことができるだろう。
 このような取引は、動乱状態の中東地域を安定化させるだけでなく、アメリカに経済的チャンスを解き放ち、アメリアの安全保障を高め、ワシントンのエスタブリッシュメントを鼻白ませる歴史的勝利を実現することで、彼ならではの能力を誇示することができるだろう。
 この取引は、イランの核武装を防止するというトランプの目標を成功させるのみならず、歴代政権による悲惨な外交的失敗を避けるというトランプの就任演説を実現することにもなる。しかも、この取引成立はイランという未開拓市場のドアを開け、アメリカの企業に競争力を付与するだろう。これは単なる外交問題ではなく、アメリカ経済に目に見える利益をもたらし、アメリカ第一主義を掲げるディールメーカー・トランプにとっての赫々たる遺産となるだろう。
 この点に関しては、ごく自然な疑問が生まれる。アメリカ不信で知られるハメネイ師がゴー・サインを出すかという問題だ。彼及び取り巻きのレトリックには、極めてポジティヴなものがある。たとえば、ハメネイ師の信任が厚いイラン対外経済戦略協議会主任のカマル・カルザイは最近、イランの行動はアメリカの出方次第だとしつつ、「イランには交渉の用意がある」と述べた。前国会議長でやはりハメネイ師のアドヴァイザーであるアリ・ラリジャーニに至っては、ハメネイ師のオフィシャル・ウェブサイトにおけるインタビューで、イランには核交渉の用意があり、アメリカとの「新しい協定」にオープンであるとまで述べている。また、ペゼシュキアン大統領自身も最近、NBCとのインタビューの中で、交渉の用意があると述べ、トランプを個人的に攻撃することはないと述べた。
 ペゼシュキアン大統領の外交チームも一貫して外交努力を支持している。アラグチ外相は繰り返し建設的交渉に対するイランの用意を強調している。ザリーフ戦略担当副大統領(当時)はダヴォス経済フォーラムで、協定に対する用意を強調した。こうしたイランの一貫した立場は、ペゼシュキアン政権が有意な対話を行う用意があることのシグナルである。
 アメリカ国内における妨害勢力は、凝り固まった対外政策エスタブリッシュメント層とトランプを取り巻く対イラン・タカ派である。しかし、トランプは闘いから退いたことはない。トランプは一貫してエスタブリッシュメントに闘いを挑んできたし、自らの本能及び彼を当選させた公約に対して忠実である。アメリカの有権者は果てしのない戦争を終わらせ、イランの如き仇敵との間でも大胆かつ歴史的な取引を行うことを公約したトランプに投票した。トランプは、イランとの取引がアメリカの企業及び労働者に対して巨大な経済的利益をもたらすことを強調して、この取引を売り込むユニークな能力を持っている。彼のトレードマークである決断力そしてアメリカ人大衆と結びつくたぐいまれな能力をもってすれば、雑音を乗り越え、チャンスを捉え、ディールメーカー及びアメリカ第一主義指導者としての遺産を確たるものとする勝利を実現することができるだろう。
○「トランプが抵抗すべき勝ち目のない中東戦争」(原題:"Trump Should Resist Another America-Last War in the Middle East: Military involvement in Yemen or Iran is a losing proposition")
2025年3月18日付TAC 執筆者:ジャスティン・ローガン(カトー研空所防衛・対外政策ディレクター)
 トランプは就任演説で、「ピースメーカーそしてユニファイアー」として歴史に記憶されたいという意志を明らかにした。その目標は危険にさらされている。政権内外の勢力は、中東(イエメン及びイラン)戦争に彼を引きずり込もうとしているからである。(対イエメン紅海戦争の経済的非生産性、イスラエルにそそのかされて行う、地域大国であるイランとの戦争は泥沼化する危険性が大であることを詳述した上で)ヴァンス副大統領は去る10月、「アメリカとイスラエルの利害は、時に重複し、時に截然と区別される。そして、アメリカにとっての最善の利益はイランと戦争しないことだ。それは資源の浪費であるのみならず、アメリカにとってとんでもなく高価なものとなる」と述べた。ヴァンスは正しい。自らの遺産を保全し、アメリカ第一を貫くためにも、トランプは中東戦争に引きずり込もうとする連中にノーと言うべきである。

5.中国・南シナ海問題

(1)中国

 中国問題となると、TACでは強硬論が主流です。しかし、QIは早くも2020年に「QI東アジア・プログラムの見解」として、対中強硬論の危険性を説き、建設的関与の立場を明らかにしています。
○「アメリカの新東アジア戦略指針」(原題:"Principles to guide a new US strategy in East Asia")
2020年10月1日付QI 執筆者:マイケル・スウェイン、ジェシカ・リー、ラヘル・オデル
 (以下の指針は、東アジア地域に対するQI東アジア・プログラムの見解の要約である。)
 世界は今、画期的変化のさなかにあるが、この変化の多くは東アジアにおける変容によって牽引されており、とりわけ、中国の軍事力、経済力及び技術力の台頭によるところが大きい。アメリカの東アジア戦略はこの契機に適合するべく変化しなければならない。しかるに、近年アメリカは軍事的支配を強化し、敵対的なイデオロギー競争の火に油を注ぐだけで、外交的経済的関与を怠ってきた。このような政策は危険であり、非生産的である。
 アメリカは、東アジアにおいて包摂的で安定した多極的秩序の形成を促進しなければならない。気候変動、パンデミックといった共通の課題に取り組み、繁栄を促進し、紛争を平和的に解決するべく、アメリカは地域諸国共々、中国と協働しなければならず、対決するべきではない。同時に問題によっては、中国の増大する国力と影響力に対応するべく、アメリカは同じ立場の国々と協力して共通の価値・スタンダードを促進し、強圧と直接の武力行使に対抗し、経済的政治的レジリエンスを確保するべきである。
(アメリカのアプローチの危険性)
 東アジアにおけるアメリカの戦略は、中国との軍事的緊張を高め、危機を誘発し、戦争にエスカレートする可能性がある点で、アメリカの国家安全保障上の利益を危険にしている。中国を敵として扱うことは、気候変動、パンデミック、朝鮮の核ミサイル問題など、米中共通の課題に関する協力を損ない、また、中国をして妥協することに消極的にさせてしまうだろう。
 また、現在のアメリカのアプローチはアメリカの国際的立場を弱めている。アジア諸国は米中の間でいずれかの側を選択することを迫られ、アメリカの同盟国ですらゼロ・サムの選択を迫られることに抵抗し、反発する。アメリカの冷戦的対中戦略は、アメリカの政治的経済的影響力を弱めてもいる。また、アメリカ人の多くも米中間の争いを拒否している。

(2)南シナ海(南海)

 南シナ海(南海)に関してもTACでは強硬論が主流ですが、QIは慎重ながらも建設的関与の立場からの言説を発表しています。
○「挑発なき防衛」(原題:"Defending Without Provoking: The United States and the Philippines in the South China Sea")
2025年2月12日付クインシー・ブリーフ70号 執筆者:サラン・シドアー
 2022年後半以来、南シナ海におけるフィリピンと中国の対立エスカレーションは、アメリカを巻き込みかねない勢いである。アメリカは、フィリピンに対する同盟上のコミットメントを守りつつ、不必要に中国を挑発する軍事行動を回避するべきである。ワシントンが認識すべきことは、フィリピンの海洋的権利を防衛することはアメリカの死活的国益ではなく、中国との高強度紛争へのドアを開けることは大きな負担になるということだ。アメリカの利害を正しく評価するならば、南シナ海では抑制戦略を採用することになる。死活的に重要なことは、南シナ海における紛争のリスクを高めることによって、フィリピンが台湾問題に関して攻撃的な立場を取るようにさせないことである。
○「米比両政府に対する冷静的対話の勧め」(原題:"Can US-Philippine talks calm South China Sea tensions?")
2025年2月18日付QI「リスポンシブル・ステートクラフト」掲載文章 執筆者:サラン・シドール(QI「グローバル・サウス・プログラム」ディレクター)
 ウクライナ問題上のU・ターンに代表されるトランプ政権の一連の動きは、トランプがアメリカのグランド・ストラティジーにおける大幅な見直しに対して消極的ではないことを示唆している。欧州正面における方向転換は重要な意味を持つ。利害に関する厳しい現実の承認、そして、(バイデン政権当時の)「民主主義対権威主義」の如き自滅的枠組みからの離脱もまた、アメリカの包摂的な東アジア・東南アジア政策を考える上で好材料である。
 しかし、トランプ・チームが中国とのグランド・リセットを目指すと信じるに足る材料は少ない。中国との経済的対決指向はエスカレートする一方だ。トランプが国家安全保障会議及び国務省で任命した連中はタカ派であり、リセットを進言する可能性はゼロである。ただし、ペンタゴンに関しては対中抑制を志向する人々がいる。新しく南・東南アジア担当副次官補に任命されたアンドリュー・バイアーズはその一人であり、テッドフォード・タイラーと最近共著した米中関係ペーパーにおいて、中国海警局がパトロールを抑制することと引き換えに、アメリカはフィリピンから軍事力・兵器システムを引き上げることを示唆した。アメリカとしては、地域の安定を考慮しつつ、喫緊の課題であるエスカレーション防止を試みるべきである。