プーチン訪朝
-首脳会談、新条約、安保理制裁決議-
ロシアのプーチン大統領は6月19日に朝鮮を訪問しました(当初は18日及び19日の2日間の予定でしたが、ピョンヤン到着は19日未明にずれ込みました)。首脳会談、包括的戦略的パートナーシップ条約及び朝鮮に対する国連安保理制裁決議の3点について、ロシア側文献(ロシア外務省ザハロワ報道官の安保理制裁決議に関する発言、プーチン訪朝の意味について論じたロシア人専門家文章を含む)の内容を重点的に紹介します(なお、朝鮮中央通信によれば、この条約のほか、豆満江国境自動車用橋の建設に関する協定と保健、医学教育及び科学分野での協力に関する協定も締結されたことが明らかになっています)。
ロ朝関係の急速な進展を西側メディアが歓迎するはずはありませんが、パワー・ポリティックスの「色眼鏡」を通じてしか物事を見ることができない西側メディアは、中国もロ朝関係の進展を歓迎しないはずだという勝手な思い込みに立って、様々な憶測を行っています。この点についてはロシア人専門家が、中国の反応に関する実事求是の分析に基づいて厳しく批判しています。また、ロシア人専門家の判断の基礎になっているであろう中国の反応(中国外交部報道官発言及び専門家文章)についても合わせ紹介します。
<首脳会談>
今回の首脳会談の内容については、ロシア大統領府が6月19日に発表した「ロ朝会談後のプレス声明」(Заявления для прессы по итогам российско-корейских переговоров http://kremlin.ru/events/president/transcripts/74334)が金正恩とプーチンの発言内容をかなり詳しく紹介しています。以下は、カール・サンチェス(karlof1.substack.com/)による英語翻訳版に基づいた、両首脳の主な発言内容です(強調は浅井。以下同じ)。ちなみに、6月20日付の朝鮮中央通信は、今回の条約締結に関連して「共同発表」が行われたと紹介した上で、金正恩とプーチンの発言を次のとおり紹介しています。国連安保理決議に関するプーチンの発言に関する紹介部分(「米国とその追随勢力にそそのかされる国連安保理の無期限の対朝鮮制限措置は再検討されなければならないと強調」)、朝ロ実務関係に関するプーチン発言部分を切り取っていることを除けば、ロシア大統領府発表内容と大きな違いはないことが確認できます。(金正恩)
プーチン大統領と私はたった今両国間の包括的戦略的パートナーシップ条約に署名した。この条約は、両国の友好関係発展の歴史に永遠に光り輝き続けるだろう。
この条約により、互いの活発な協力(政治、経済、文化及び軍事を含む)を通じて、両国の進歩を達成し、両国人民の福祉を増進するべく、両国関係はさらなる発展への軌道に乗ることとなった。
両国関係は、同盟関係という新たな高いレベルに到達した。この地域と世界の平和と安全を保全し、両国共通の利益にしたがって強国を建設するという両国指導者の壮大なビジョン及び両国人民の数世紀の願いを実行に移すための法的基盤が据え付けられた。
昨年9月にヴォストチュニでプーチン大統領と私が新条約締結問題を話し合ってからわずか9ヶ月でこの条約が締結されたことを喜ばしく思う。朝鮮人民のもっとも親愛な友人であるプーチン大統領の傑出した洞察力、大胆な意志と決意なしには、朝ロ関係史の中でもっとも強力なこの条約の誕生は考えられなかったことを強調したい。
時は変わった。グローバルな地政学的構造における朝鮮とロシアの地位も疑いなく変化した。本日、この場所で錨は上がり、ロ朝同盟関係の荘厳なスタートが告げられた。これはロ朝関係発展史における分水嶺である。 朝鮮は、ロシアとの包括的戦略的パートナーシップと無敵の同盟関係を継続的に発展させる中で、条約に基づく義務を常に忠実に実行していく。この条約は、建設的、前途有望、際だって平和的かつ防衛的性格の文書である。この条約は、支配、隷属、覇権、暴力とは無縁の新多極世界の創造を加速させる駆動力となることを、私は信じて疑わない。
今日この場所で、私は我が政府の変わることない意志を次のように厳粛に宣言する。両国の人民及び未来の世代の恒久的友好を発展させ、利益を増進するという歴史的課題の実現に関し、また、両国がすでに直面し、また、将来直面することになるいかなる困難も協調による共通の努力で克服することに関して、解釈の違いはなく、躊躇も曖昧もない。
これまでに、ロ朝友好史の一部となる多くの重要な共通文書が署名され、多くの荘厳な出来事が催され、特別の行事が注目を集めた。しかし、私は以下の希望を表明したい。すなわち、この荘厳な署名式が戦略的選択となり、その重要性がロ朝関係の末永き発展の道程でますます明らかとなり、両国人民のより明るい未来を約束する忘れられない瞬間となるという希望、である。
(プーチン)
我々は、共通の歴史という光栄ある伝統に立脚する、伝統的に友好的かつ善隣的なロ朝関係を強化することを最高に重視している。ソ連は、日本の植民地支配から朝鮮を解放することに重要な役割を担った。本年は、DPRK最初の国際条約締結75周年を記録する。それは我が国との協定であった。
我々はまた、1950-53年の愛国解放戦争期間中に朝鮮人民を支援し、平和な生活を確立し、国民経済の回復を助けた。
それに続く数十年間、我々は様々な分野において相互パートナーシップのめざましい経験を蓄積してきた。重要なことは、両国が活発な協力発展に誠実に取り組んできたことであり、その協力は、経済、議会、司法、外交諸分野の指導層を通じて、また、公共的諸機関及び市民の間で行われてきていることである。
本日、我々は実際的協力に関する全ての分野の諸課題について精力的な交渉を行った。その結果、包括的戦略的パートナーシップに関する新たな協定が署名された。この条約は、ロ朝関係の長期的発展のための意欲的な目標とガイドラインを定めている。その適用範囲は、政治、貿易、投資、文化及び人道の諸分野並びに安全保障セクターに及ぶ。
この条約は画期的文書であり、両国が現状に甘んじることなく、両国関係を新たな質的レベルに引き上げようとする願望を反映している。
貿易取引に関して言えば、絶対額はまだ大きくはないものの、動態的には極めて喜ばしいものがある。2023年に貿易取引額は9倍になった。本年最初の5ヶ月間でもさらに54%の伸びを示している。
政府間委員会は順調に機能している。我々は様々な分野における協力を議論している。特に指摘したいのは、カサンー羅津鉄道現代化という戦略的に重要なプロジェクトであり、これにはロシア鉄道公社が参画している。ロシアのカサン・チェックポイントから朝鮮の羅新港に至る、1435/1520ミリ結合線路が再建中であり、羅新港では現代的な複合輸送ターミナルも建設中である。このプロジェクトはすべて第三国の使用に供され、特に大量の石炭が中国消費者に向けて輸送されてきた。鉄道旅客サービスもロ朝間で回復し、最初のツーリストもすでにこのルートを利用した。
農業分野及び文化的人道的分野における関係も発展中である。金正恩同志直々の配慮のもと、マリンスキー劇場のプリモルスキー・バレー団がDPRKで公演し、大きな成功を収めた。
教育分野の関係も発展している。現時点で、130人のDPRK市民がロシアで学んでおり、今後さらに協力を発展させていく。
スポーツ分野の協力も確立し、ツーリズムの発展も始まった。この夏には、4つのツア・グループが朝鮮のシーサイド・リゾートで休日を過ごすべく計画中である。
そしてもちろん、今日の会談では安全保障及び国際問題に多くの時間が割かれた。両国は、より公正で民主的な多極世界秩序を創造するという考え方を常に擁護している。この秩序は、国際法及び文化的文明的多様性に基礎を置くべきである。
ロシアと朝鮮は独立の対外政策を追求し、恐喝、命令の類いは受け入れない。我々は、政治的動機に基づく制裁及び制限を課そうとする動きに反対する。これらの不法な行動はグローバルな政治的経済的システムを損なうだけである。
外からの圧力にもかかわらず、両国は主権的独立的基礎を発展することに成功し、真の友人そして良き隣人として、互いに全面的に協力してきたし、今後も協力していく。
我々はまた、西側が政治経済その他の分野で覇権を保全するための道具として慣用している制裁に対して対抗していく。この脈絡で、アメリカとその同盟国が音頭をとる、DPRKに対する国連安保理の無期限の制限レジームは再検討されるべきであると強調したい。
西側の連中が繰り返す宣伝的決まり文句は、その攻撃的な地政学的意図をもはや偽ることはできず、それは北東アジア地域においても然りである。軍事的政治的エスカレーションの根本原因に関する我々の評価は一致している。その原因とはこの地域で軍事インフラを大幅に拡張させようとするアメリカの対決政策であり、この対決政策はDPRKに敵対する韓国と日本を巻き込んだ様々な軍事演習の規模及び強度の際立った増強を伴っている。このような動きは半島の平和と安定を損ない、北東アジア諸国全ての安全に対する脅威となっている。情勢悪化をDPRKのせいだとする試みは全面的に受け入れられない。ピョンヤンは適正な措置を講じて自らの防衛力を強化し、国家の安全保障を確保し、主権を擁護する権利を有する。
ロシアは以下のために政治的外交的努力を行い続ける用意がある。一つは、朝鮮半島における武力紛争再発の脅威を排除すること、もう一つは、安全保障の不可分性原則に基づく長期的な平和と安定の枠組みを構築すること、である。
本日署名された包括的パートナーシップ協定は、締約国の一方に対する侵略が起こった場合の相互援助についても規定している。
私は次のことに注意喚起したい。すなわち、アメリカ及びNATO諸国による、ロシア領土を攻撃するための精密長距離兵器システム、F-16戦闘機及びその他のハイテク兵器の(ウクライナに対する)供与に関する声明のことである。実は、これは声明というだけではなく、現実に起こっている。これら全てのことは、西側諸国が様々な国際的義務の枠組みのもとで受け入れた制限に対する重大な違反である。
この点に関して、本日署名された文書に従い、ロシアはDPRKとの軍事技術協力発展を排除しない。朝鮮の友人は、ウクライナ問題解決に関して客観的でバランスのとれた立場を取っており、この危機の真の発端原因を理解している。朝鮮指導部の取っている立場は、DPRKが真の独立・主権の路線を歩んでいることに関するいまひとつの証左である。
金正恩同志は、ロシアの友好使節が訪れたここ平壌を全世界が非常な関心の中で見守るこの時刻、最も真実で、親しい戦友であるロシアの同志たちと意義深い席を共にしていて感無量であると述べ、今日、ウラジーミル・V・プーチン同志と朝ロ友好関係発展史に永久に輝く条約に署名したと言及した。
これは重大な出来事であり、朝鮮民主主義人民共和国国務委員長としてプーチン大統領同志と共に朝ロ両国の立派な人民のために、現在だけでない未来に備えて深遠な戦略的重みと意義を持つ政治的出来事を責任を持って成し遂げたという自負によって実に光栄に思っていると述べた。
金正恩同志は、条約の締結によって両国関係は同盟関係という新たな高い段階に発展し、これによって共通の利益に合わせて地域と世界の安定環境をしっかり守りながら強い国家を建設しようとする朝ロ国家指導部の遠大な構想と人民の世紀的念願を実現できる法的基盤が築かれ、政治、経済、文化、軍事など多くの方面における相互協力の拡大によって両国の進歩と福利に寄与できるより立派な展望的発展軌道に乗るようになったと評価した。
金正恩同志は、朝ロ関係史上の最も強力な条約の誕生は、朝鮮人民の親しい友人であるプーチン同志の卓越した先見の明、果敢な決断力と意志を抜きにしては考えられないということを特別に強調したいと述べた。
金正恩同志は、朝ロ関係発展史において分水嶺となる偉大な朝ロ同盟関係は今日、この場で初めて歴史の帆を上げて荘厳な出港を告げたと述べ、朝鮮民主主義人民共和国政府はロシア連邦との包括的かつ戦略的なパートナーシップ、不敗の同盟関係を絶えず発展させるための今後の全道程で自己の条約上の義務にいつも忠実であるものと確言した。
金正恩同志は、朝ロ両国間に締結された強力なこの条約は両国人民の根本利益を増進させ守るための非常に建設的かつ展望的であり、徹底的に平和愛好的かつ防衛的な条約であり、支配と隷属、覇権と強権のない多極化の新世界の創設を加速させる推進力になるということを信じてやまないと述べた。
金正恩同志は、両国の人民と次世代の永遠なる友好発展と福祉増進に寄与する全ての歴史的課題を遂行するに当たって、そして両国にすでに到来し、また今後直面するいかなる多事多変と国難を一致した共同の努力で打破するための義務履行に忠実であるに当たって、いささかの解釈上の相違も、いささかの躊躇や動揺もないであろうという朝鮮民主主義人民共和国政府の不変の意志を厳かに宣言した。
ウラジーミル・V・プーチン同志は、ロシア連邦は伝統的に親善的で友好的なロ朝関係の強化に優先的な意義を付与していると述べ、数十年間、朝鮮と多くの分野にわたって相互協力発展の大きな経験を蓄積したことについて指摘した。
プーチン同志は、ロ朝間に調印された包括的かつ戦略的なパートナーシップに関する条約は達成された状態にとどまらず、ロ朝関係を新たな質的水準へ引き上げようとする両国の志向を反映している事実上の突破口になる文書であると言明した。
プーチン同志は、ロシアも朝鮮も自主・独自の対外政策を実施し、恐喝と強要の言語を容認せず、政治的動機によって制裁と制限措置を実施することに事実上反対すると述べ、西側が政治、経済、その他の分野における自分の覇権を維持するために習慣的に用いる手口である制裁・圧殺策動に引き続き対処するであろうし、この脈絡で米国とその追随勢力にそそのかされる国連安保理の無期限の対朝鮮制限措置は再検討されなければならないと強調した。
また、朝鮮半島地域の緊張激化の基本原因は韓国と日本など、朝鮮民主主義人民共和国を敵視する国々の参加の下で軍事訓練の規模を拡大し、度合いを強める米国の対決政策にあると述べ、ロシアは情勢悪化の責任を朝鮮に転嫁しようとする企図を絶対に許さないであろうと指摘した。
プーチン同志は、朝鮮民主主義人民共和国は自らの国防力を強化し、国家の安全を保障し、自主権を守る権利を持っていると述べ、ロシアは今後も朝鮮半島での武装紛争再発脅威を取り除き、不可分の安全原則に基づいてこの地域で長期的な平和および安定構図を形成するために政治的・外交的努力を傾ける用意があると言明した。
プーチン同志は、今日、調印された包括的かつ戦略的なパートナーシップに関する条約はこの文書の締約国のうち、一方が侵略を受ける場合、相互支援を提供することも予見していると述べ、ロシア連邦は条約に従う朝鮮民主主義人民共和国との軍事技術協力を排除しないと強調した。
プーチン同志は、今日の会談がロシアと朝鮮民主主義人民共和国間の友好とパートナーシップのより一層の発展と全ての地域の安全強化に寄与するものとの確信を披歴し、金正恩同志と全ての朝鮮の友人が立派な歓待を施し、有益な共同事業を組織してくれたことに改めて謝意を表した。
朝ロ最高首脳たちは、今日のこの意義深い条約調印式が、今後の朝ロ関係発展の百年の大計とともにその意義が一層鮮明になり、浮き彫りになる戦略的選択となり、この世で最も強靭で英知に富む両国人民の明るい未来を約束する忘れられない契機になることを祈った。
<プーチン記者会見発言>
プーチンは、訪朝訪越の締めくくりとして、ハノイでロシア記者団との会見に臨みました(6月20日)。包括的戦略的パートナーシップ条約及び対朝鮮国連安保理制裁決議にかかわるプーチン発言は以下のとおりです。(条約)
○「この条約は何ら新しいものではない。古い協定が失効したので、この協定に署名した。そして、すべての条項は前の協定と同じである。新しいことは何もない。もちろん、今日の条件のもとでは目立つかもしれない。しかし、我々はほとんど何も変えていない。朝鮮はほかの国々との間でも同じような協定を持っている。相互軍事援助に関しては、軍事侵略がある場合に備えて規定されている。」
○(条約の相互軍事援助条項とウクライナ問題との関連性)「この条項は軍事侵略に備えての規定である。ウクライナはロシア領になる前のルガンスクとドネツクに攻撃を仕掛けた(のであるから、この条項の適用はない)。(ロシアは)誰にも(軍事援助を)求めていないし、ロシアに(軍事援助を)申し出たものもない。」
○(ロシアが事実上の戦争のさなかにある時に、金正恩がこの条約に署名した決定的要因及びプーチンがこの条約署名に踏み切った理由を問われて)「(朝鮮の動機については)金正恩に尋ねることだ。私は知るよしもない。この条約署名の趣旨は、すでに述べたとおり、失効した条約を複製するという趣旨であり、何も新しいことは含まれていない。」
(朝鮮の危機はくすぶっており、軍事的全面対決にエスカレートする可能性がある状況下で、条約に署名した決定的要因は何かという追及質問に対して)「もう2度述べたことだが、もう一度繰り返そう。(この条約は)失効した1961年条約を複製したのだ。確かに、朝鮮危機はくすぶっている。しかし我々は、朝鮮民主主義人民共和国(DPRK)との協定はこの危機が本当の戦争にエスカレートすることを予防するデタラントとして働くだろうという前提及び期待に基づいて行動している。」
(浅井注)"新条約に新味はなく、失効した旧条約を復活させたに過ぎない"とするプーチンの再三の発言は、首脳会談におけるプーチンの発言内容(前述参照)に照らして違和感を拭えません。また、「失効した旧条約・協定」に関するプーチン発言は、失効した「1961年条約」(軍事支援条項を含めて全7条)、2000年2月に調印した親善善隣協調条約、2000年7月の朝ロ共同宣言を混同している節も見られます。記者会見での上記発言は、米日韓3国が新条約の軍事同盟的側面に強く反応・反発していることを意識し、これを沈静しようとする意図が働いた結果かも知れません。
○(アメリカ情報筋は、今回の条約締結を含め、ロ朝関係のスピードに驚いているが、このスピードは何に由来するのかという質問に対して)「条約自体については、1960年代に締結した条約内容の焼き直しであるので、アメリカ情報筋が驚いているとすればおかしなことだ。しかし、我々が精力的に取り組んできたことは事実だ。というのは、現下のアジア情勢を含む国際情勢の動きのもとで、パートナー諸国との関係の法的枠組みを強化する必要があるからだ。アジアに関して言えば、ブロック・システムが形成されつつある。NATOはアジアで恒久的プレゼンスを狙って動いている。これらのことはロシアを含む地域諸国すべてにとって脅威である。我々は対応しなければならないし、対応しているということだ。」
○「我々を結びつけているものは何か。国家間協力に関連する諸問題であり、安全保障、経済を含む諸分野におけるDPRK及びロシアの発展に関わる諸々の利益である。」
○「南朝鮮、つまり大韓民国は何も心配するには及ばない。なぜならば、我々が署名した条約に基づくロ朝の軍事協力は、いずれか一方が侵略に見舞われた場合にのみ発生するからである。私の承知している限り、大韓民国はDPRKに対するいかなる侵略も計画しておらず、ということは、安全保障分野におけるロ朝の協力を憂慮する理由はないということだ。」
○(ロ朝新条約に反発した韓国がウクライナに致死性兵器不供与の政策を再考する可能性があると述べていることに関する質問に対して)「致死性兵器をウクライナの戦闘地域に送ることとなれば、重大な誤りとなるだろう。そうならないことを希望するが、もし現実となった場合には、南朝鮮指導部が歓迎できないような所要の決定を行うことになるだろう。」
(国連安保理制裁決議)
○「北朝鮮に対して導入された制裁の中には、控えめに言ってもおかしいものがある。
今北朝鮮に起こっていることは何か。(北朝鮮)当局についてはいろいろな考え方があるだろうが、例えば労働移民(labour migration)に対して制限を設けるのはいささか問題だ。この制限の結果何が起こるかと言えば、その労働者の家族が子供を養うための金を稼ぐ機会がなくなるということだ。これが人道的と言えるだろうか。したがって、政治的理由で導入されたこのような制裁については、人類の発展の今日的レベルに適応したものにならなければならない。ピョンヤンで述べたように、この制裁レジームについて変更すべきことは何か、また、どのように変更すべきかについて、ともに考える必要があり、また、このレジームが今日的必要にマッチしているのかについても、ともに考える必要がある。」
○(制裁決議の変更に対する強い反対がある中で、どう変更していくのかという質問に対して)「現状のもとでは、通常の手段で(変更しようとしても、それ)はほとんど不可能だということは理解しているが、我々は努力を続けなければならない。また、アメリカ主導で成立した、労働移住のケースの如き制裁に関しては、制裁導入当初に意図した効果、実体、人道目的が失われている。したがって、この努力を開始し、続けていこうというのが我々の意図していることだ。「雨垂れ石を穿つ」("little strokes fell great oaks")という諺もある。どうなるか見てみようではないか。」
<ロシア外務省ザハロワ報道官の国連安保理制裁決議に関する発言>
6月26日に定例記者会見に臨んだロシア外務省のザハロワ報道官は冒頭発言で、朝鮮に対する国連安保理の制裁レジームを取り上げ、次のように発言しました。上記プーチン発言を補足する意味合いが込められています。我々は、国連安保理が課す制限措置は、平和と安全に関わる複雑な問題を解決するための、国連憲章の枠組みのもとにおける補助的手段の一つと見なしている。いずれかの国が地政学的なライバルをやっつけるとか、自国の狙いを推進するとかの理由だけで、数十年にわたってダモクレスの剣のように制裁を振りかざすことはできないし、そうするべきでもない。また制裁は、西側が重視しているはずの人権状況を崩壊させたり、生活水準を引き下げたりする原因となるべきではない。安保理の責任ある一員として、ロシアは制裁の国際的評判を重視している。
DPRKに対する安保理の制裁は今日もはや完全に時代遅れとなっている。同国の経済及び人口に対する否定的効果を考えれば、無害なアナクロニズムとして片付けることはできない(コロナ流行の際に、制裁決議の対象となっている朝鮮以下の国々が、西側の政策故にワクチン入手困難に陥ったことを例示)。さらに、個々の国が不法な一方的制裁措置を執っており、そのことが人道的状況をさらに悪化させていることを忘れてはならない。
しかも同時に、アメリカと同盟諸国は北東アジアにおける軍事活動を強化しており、これが地域の安定に対する脅威となっている。西側集団はDPRKの社会政治システムを覆そうとしており、DPRKはそれに対抗して安全上の措置を執ることを余儀なくされている。対話より対決を優先するアメリカは朝鮮半島の膠着状態に全面的に責任がある。
安全保障理事会のすべての理事国が真のデタントに関心があるのであれば、以上のアプローチは変えなければならず、それは早ければ早いほど良い。DPRKに対する制裁レジームの修正は、以上の目的に向けた有効なステップとなるだろう。ロシアはそのための第一歩、すなわち、制裁に明確な時間枠を設けるとともに、いくつかの制裁措置については廃止を含めた修正を行うという提案を行っている。一連の経済制裁措置は即時停止も可能だろう。こうした積極的シグナルを発出することにより、関係諸国は、信頼できる安全保障措置を含めた、互いを尊重した交渉を行うことができるようになるだろう。これまでのところ、ロシアのイニシアティヴはDPRKに敵対する国々に受け入れられていない。しかし、我々は彼らの再考を求める。
<ロシア人朝鮮問題専門家文章>
6月22日付のロシア・トゥデイ(WS)は、ロシア科学アカデミー中国現代アジア研究所朝鮮研究センターのコンスタンティン・アスモロフ署名文章「プーチン・金正恩会合の意味」(原題:"The West's fears realized? What Putin's meeting with Kim Jong-un really means")を掲載しました。朝鮮人労働者が現実にロシアで就労しているという指摘、中国の冷静な反応に関する分析等、注目すべき指摘が含まれています。今回の訪問が朝鮮支持のジェスチャーに過ぎないと考えているものは重要な中身を見忘れている。今回、「包括的戦略的パートナーシップ」という表現が用いられたということは、国家間の協力レベルが最高級レベルにあることを意味している。これまでのロ朝関係に関する記述と比較すれば、これは大躍進である(浅井:後で紹介する中国人専門家の判断の方がより正確だと思われます)。
また、朝鮮・労働新聞に掲載されたプーチンの文章にも重要なテーマが含まれている。すなわち、ピョンヤンとモスクワの関係強化は正義に基づく新世界秩序の始まりである、という指摘がそれである。それは、アメリカのルールに基づく世界秩序に反対するということだ。今日、ワシントン-東京-ソウルで構成される「西側トライアングル」がNATOのアジア版として進められており、ピョンヤン及びモスクワによる脅威なるものをでっち上げて自らの行動を正当化している。この3国の動きはモスクワ-北京-ピョンヤンで構成される「東側トライアングル」間の協力強化を導いている。
-相互軍事援助-
条約第4条は、「締約国の一方がある国家または複数の国家による軍事攻撃を受けて戦争状態に入った場合、もう一方の締約国は利用できる全ての手段で軍事その他の援助を直ちに提供する」と定めている。ただし、プーチン及びラブロフ外相がコメントしているように、この協定は第三国に向けられたものではなく、したがって韓国が懸念する必要はない。
第4条の規定のキー・ポイントは公式の「戦争状態」にある。例えば、ロシアはウクライナで「特別軍事行動」を行っており、両国は互いに宣戦していない(から、第4条は適用されない)。公式の「戦争状態」以外のケースは第3条でカバーされている。第3条は、「締約国の一方に対して軍事侵略行為による切迫した脅威が起こる場合には、両締約国の一方の要請に基づいて、両締約国は直ちに、当該脅威の消滅に資する、可能で現実的な措置について合意するように両国の立場を協調させるための二国間協議チャンネルを起動する」と定める。この協議を通じて、特定の戦略及び措置が講じられることになる。
例えば、ウクライナ国旗標識のNATO機がベルゴグラードの標的を攻撃する場合、これは侵略行為と解され、ロシアは朝鮮の支援を要請することができる。朝鮮もまた、ロシアに対して砲弾を提供することになるだろう。 なお、第8条では、合同軍事演習または「戦争を防止し、地域及び国際の平和と安全を守るための防衛力強化のための合同措置」についても定めている。
-国連安保理朝鮮制裁措置-
プーチンの労働新聞寄稿文章及び条約は、教育、保健及び科学分野における協力の重要性を強調し、制裁は解除されるべきこと及び双方はそのための方途を追求することを明確にしているが、それらの規定は、制裁に公然と違反し、あるいは制裁遵守を拒否することを意味するものではなく、制裁について再解釈を行いあるいは制裁を迂回することをほのめかしているに過ぎない。
我々は、国連機構を含む伝統的世界秩序が(西側の)二重基準にさらされて崩壊に向かっていることを目撃している。モスクワは当面、禁止されていなければ許可されているということ、という類いの制裁の「創造的解釈」の立場であり、自らがかつて賛成した制裁措置に従っていくであろう。条約第16条の「一方的強制措置」批判の規定に関しては、制裁レジームを変更し、あるいは迂回する意向の表明と解されるが、ロシア及び朝鮮は制裁に従うことが必要ではないと考えているという趣旨はどこにもない。
もっとも、以上の状況はさらなるエスカレーション次第で変わる可能性はある。というのは、ロ朝間の武器取引が事実であるか否かに関わりなく、西側はロ朝両国を非難し、何らかの措置を講じる可能性があるからである。
朝鮮の労働者がロシアにいることは、法的であれ事実上であれ、制裁の一部を無視するという決定が行われたという事実の証明になっている。マラット・クシュリン副首相はかねてから、ロシア新領域を含む建設現場で朝鮮からの労働者を雇用することを提起してきた。彼らは輪番制で実によく働く軍事建設労働者である。費用対効果、品質、安全、そして目立たない、これらが彼らの共通するメリットだ。したがって今後は、ロシア極東の女性が自宅のアパートを改装したい時には、朝鮮からの労働者を雇うことにもなるだろう。
-中国の反応-
プーチン訪朝に対する中国の反応は抑制されたものだ。北京は、これは重要で、真剣に行われた出来事である、とのみ述べている。環球時報は、ロ朝協力はアメリカを驚かせる可能性があると述べ、また、中国外務省は、ロシアとの関係を発展させたいという朝鮮の願いは正常なことだと言い表した。いずれもどちらかと言えばニュートラルな評価である。
西側では、中国の立場が格好のスペキュレーションの対象となり、中国はロシアと朝鮮の親善関係を極めて不愉快に感じ、両国が条約を署名しないようにと圧力をかけようとしたとまで書き立てている。しかし、このようなためにする解釈は、思い込みでストーリーをでっち上げた中世の宗教裁判官のようなものだ。西側は、プーチンが朝鮮とヴェトナムを訪問したのは、両国が社会主義陣営の一員であるからではなく、中国と緊張関係にあるからだと信じ込んでいる。しかし、我々はスペキュレーションを避け、確固とした事実に基づいて物事を見る必要がある。
中国も1961年に遡る朝鮮との協定があり、その協定ではやはり軍事援助も約束している。ただし、両国関係が改善する前の2017-18年当時、中国の複数の専門家は、朝鮮が半島の紛争を引き起こす場合には中国の支援を外交分野にとどめる、しかし韓国が攻撃を起こす場合にはかつて人民義勇軍が血を流したことを思い起こして介入するだろう、と述べたことがある。その当時と今とでは状況が変わったかどうかは分からない。また、ピョンヤンが核実験を控えていることについて、北京の意向をどの程度くんだ上でのことなのかということも定かではない。
-ロ朝協力分野-
ロ朝間の新たな協力分野には科学、文化、保健などが含まれているが、これはそれらの分野の人材を必要としているためである。一部の見方によれば、朝鮮の学生をロシアで学ばせるということは制裁迂回の一種である。というのは、外国人を含め、学生は働くことが認められているからだ。学生として登録される10000人の朝鮮人がロシアの建設現場で働くことも想定できるだろう。しかし、これまで伝えられている(朝鮮人学生の)数は130人であり、彼らはモスクワ国立大学及びロシア技術大学の物理学及びテクノロジー学部で学ぶ予定である。彼らは将来、朝鮮の軍事・工業コンプレックスの開発を担う、軍事・テクノロジー分野の専門家となるだろう。
重要なプロジェクトの一つには、朝鮮とロシアを結ぶ自動車専用橋の建設計画がある。現在、両国間には鉄道ルートしかないという事実は多くの人には驚きそのものである。自動車専用橋建設の話はずいぶん前からあったが、今回やっと決定にこぎついた。この橋の建設により、両国間の全ての分野での取引がはるかに円滑となるだろう。
コロナ流行期間中、ロシア大使館スタッフ・家族は補助的な鉄道手段で国境を越えることを余儀なくされた。迅速に退避しなければならなかったが、国境を越える手段はそれしかなかったからである。今後はそういうこともなくなるだろう。朝鮮の建設労働者の高いスキルを考えれば、橋の建設は迅速だろう。
-プーチン訪朝の効率の良さー
プーチンの訪朝期間は(1日という)短いものだったが、達成された成果は豊富である。これが可能になったのは、事前の準備工作が周到に行われ、残されていたのは文書に署名することだけだったからだ。在朝鮮ロシア大使館は事細かに双方の訪問団の行き来を発信したので、双方政府機関(農業、緊急事態、司法等々)のコンタクトが極めて実務的かつインテンシヴであったことを理解できる。
<中国側リアクション>
アスモロフ署名文章の中国の反応に関する判断が正確であることを確認する意味で、中国外交部報道官の発言と中国専門家の文章を紹介しておきます。(中国外交部)
6月20日付の中国新聞網は、前日(19日)の中国外交部報道官による定例記者会見で行われた、韓国メディアの質問と林剣報道官との質疑応答を次のように報じています。朝鮮とロシアが6月19日に署名した包括的戦略的パートナーシップ条約に関して、林剣報道官は20日の定例記者会見の席上、朝ロ間の二国間協力問題についてはコメントしないと表明した。
韓国メディアの記者は次のように質問した。すなわち、朝鮮とロシアは包括的戦略的パートナーシップ条約を締結したが、締約国の一方が侵略を受けた時にはもう一方の締約国は全ての手段で軍事その他の援助を行うという規定が含まれている。新条約は朝鮮半島及びユーラシア地域の平和と安定にいかなる影響を及ぼすと考えているか。
林剣は、「我々は関連する報道に留意している。これは朝ロ間の二国間協力問題であり、私はコメントしない」と述べた。その上で林剣は、朝鮮半島問題に関する中国の立場は一貫しており、半島の平和と安定を維持し、半島問題の政治的解決プロセスを推進することが各国共同の利益になると一貫して考え、各国がそのために建設的な努力を行うことを希望している、と述べた。
この韓国の記者はさらに次のことを質問した。すなわち、プーチン大統領は金正恩国務委員長との会談後、ロシアと朝鮮は軍事面で協力を行う、国連安保理は朝鮮に対する制裁を改めるべきである、と述べたが、中国側はプーチンの立場を如何に評価するか。
林剣は次のように述べた。ロシアと朝鮮の協力は両主権国家間の問題であり、中国は状況を掌握していない。中国は原則として、半島関係問題においてひたすら制裁で圧力をかけることでは問題は解決できず、政治解決のみが唯一の出口である、という立場である。
(中国研究者文章)
6月20日付中国網は、「プーチン訪朝が変化を加速する北東アジア・パラダイム」(原題:"普京访朝,东北亚地区格局加速演变")と題する専門家の文章を掲載しました。筆者は、対外経済貿易大学朝鮮半島問題研究センター主任・郝君峰及び山東社会科学院国際問題研究センター執行主任・王付東です。その内容は以下のとおりです。今回のプーチン訪朝を通じて、両国は全方位で二国間関係をレベル・アップするという基調を確認し、北東アジア地域のパラダイムは変化を加速することとなった。
今回の訪問においてもっとも注目されるのはロ朝が包括的戦略的パートナーシップ条約を締結し、政治、安全保障、経済等分野における全方位の戦略協力を深化させることを確認したことである。以前のロ朝友好善隣協力条約で「一方の国家の平和と安定が脅威を受ける時は、双方は直ちに接触するべきである」となっていた規定は、今回(の条約では)「一方が他国または複数の国家の武装侵略を受け、戦争状態に入った場合には、他方は直ちに保有する全ての手段で軍事その他の援助を提供するべきである」という規定へとエスカレートしている。
もちろん、ロ朝双方の条約に対する解釈には一定の違いがあることも見届けるべきである。すなわち、朝鮮は両国がすでに「同盟」関係を確立したことを強調しようとしているが、ロシアは「同盟」という提起を避けている。また、「包括的戦略的パートナーシップ」という表現は、ロシアの対外関係中の通常の配列において、「同盟」より低い位置に置かれている。このことは、ロシアが対朝鮮関係に関してなお留保の余地を残しており、ロ朝関係を同盟関係にまで引き上げることを急いでいないことを意味している。
経済協力も今回の訪問における重要テーマだった。ロシアと朝鮮はともに外部からの深刻な制裁に見舞われており、両国経済の発展は大きな挑戦に直面している。近年、ロ朝両国は経済的結束の度合いを明確に増大させている。プーチンは6月18日に朝鮮・労働新聞への寄稿文の中で、「ロ朝両国は、西側の支配を受けない代替的貿易及び相互解決のメカニズムを発展させ、違法な一方的制裁に共同で抵抗する」と述べており、両国が1990年代以来未だかつてなかった全方位経済協力を促進させようとしていることが分かる。報道によれば、両国は朝鮮による労働者のロシアへの派遣及び食料援助の問題についても議論したとされる。さらに本年に入ってから、ロシアは1200トン以上の小麦粉と1000トンのトウモロコシを朝鮮に輸出し、朝鮮の穀物価格の安定を保証した、という推測もある。これらの動きは、両国が国際制裁の影響から抜けだし、両国経済の発展上の困難を緩和しようとすることを目的としている。
さらにプーチンはピョンヤンで、「朝鮮との軍事技術協力を発展させる可能性を排除しない」と表明した。プーチンの発言に先立って、ペスコフ報道官は「センシティヴな領域を含めあらゆる分野における」協力を進めていると発言した。したがって、「武器と技術との交換取引」が双方の会談における重要テーマだとする見方が外部メディアでは普遍的である。
ロ朝関係が緊密さを増すことは双方共通の願望に合致する。近年、米韓、米日、米日韓の同盟関係、軍事協力はエスカレートし続けており、そのことは、地域の安全保障情勢にマイナスの影響を及ぼし、朝鮮の危機感は増大している。朝鮮にとって、核ミサイル能力を強化すると同時に、ロシアとの全方位協力を強化し、ひいては同盟関係を樹立することは、安全保障上の不安感を緩和する上で唯一の選択となっている。ロシアにとっては、米西側の巨大な軍事圧力に直面している状況の下、朝鮮との協力を強化することは、軍事的及び人的な支持を獲得することが期待できるだけでなく、朝鮮半島問題を動かすことによってウクライナ問題に関するアメリカのエネルギーを分散することを通じて、韓国の対ウクライナ支援テンポを牽制するというメリットもある。
ロ朝が協力レベルを引き上げることは、対米一辺倒を強化して周辺諸国に対する圧力を強化しようとする韓国の対外政策に取って重大な打撃となる。アメリカに追随することで大国間競争に介入しようとするユン・ソンニョル政権の狙いは、全方位作戦を通じて朝鮮に対する軍事圧力を強化し、朝鮮内部に変化・混乱を引き起こすことにあったが、結果的には、ロ朝準同盟関係の形成を助ける結果になってしまった。朝鮮としては、強力な外部の援助に依拠して自国の安全保障を大幅に改善し、軍事技術の大幅なレベル・アップを実現し、経済的にもロシアとの協力を通じて国際制裁による大きな損失を転換打開する可能性が生まれており、ポスト・冷戦下でバランスが大きく損なわれた朝鮮と韓国の実力比に関しても一定の修正が行われることとなるだろう。
米韓同盟及び米日韓協力が普段に強化されるという状況の下、ロ朝協力も協力強化が続くであろうから、地域的な陣営対立パラダイムは今後ますます突出し、地域の緊張度もエスカレートし続けることが懸念される。北東アジア地域の対峙緊張の態勢を緩和し、冷戦再演を回避して地域の平和安定繁栄を推進する方途を探求することは、地域各国が担うべき重大な責任である。