7月26日、中国国防部の譚克非報道官はペロシ訪台計画に関する記者の質問に対し、「アメリカ政府における「ナンバー・スリーの地位にある人物」(浅井:大統領後継者として、下院議長は副大統領に次ぐ地位にある)であるペロシ議長が仮に訪台するとなれば、一つの中国原則と中米3共同声明の規定に厳重に違反し、中国の主権及び領土保全を深刻に侵害し、中米関係の政治的基礎を厳重に破壊し、中米両国両軍関係に極めて深刻な破壊を作り出し、台湾海峡情勢のさらなる緊張のエスカレーションを導く。中国はアメリカが「台湾独立」を支持しないという誓約を実際行動で履行することを要求し、ペロシ訪台をアレンジすることは許されない。仮にアメリカが独断専行するならば、中国軍隊は絶対に指をくわえて見過ごす(中国語:‘坐视不管’)ことはあり得ず、必ず強力な措置を執って、いかなる外部勢力の干渉及び「台湾独立」の分裂策謀をも挫折させ、国家主権と領土保全を断固防衛する」と述べました。
 中国国防部が中米関係に関して具体的関与を明言するのは、私の記憶の限りはじめてです。しかも、その発言は、「中国軍隊は絶対に指をくわえて見過ごすことはあり得ず、必ず強力な措置を執る」というもので、実力行使に踏み切ることを明言したものと理解するほかありません。ペロシ議長は、搭乗機を撃墜する可能性に言及しましたが、私は、おそらく搭乗機を強制的に中国本土に着陸させる行動を考えていると思います。最近では、2021年にライアンエア機がベラルーシによって強制着陸させられたケースがあります。2001年の海南島事件(アメリカの電子偵察機と中国軍機が空中接触し、中国軍機は墜落、米軍機は海南島に不時着した)を思い出す人もあるでしょう。
 いずれにせよ、今回の国防部報道官発言によって、米中国防部間で内密に行われてきたペロシ訪台に関するやりとりが公然化し、中国は、ペロシが訪台を強行するときは実力阻止する不退転の方針であることが明らかにされたということです。もはや「第三の道」を模索する可能性は封じられたと言えるでしょう。バイデン政権の中国に対する「有言不実行」政策に、中国が三行半を突きつけたことになります。