7月24日のコラムでアメリカのペロシ下院議長の訪台問題を取り上げましたが、7月25日の中国外交部定例記者会見で、ペロシ訪台に対する中国の警告は以前より厳しく、軍事的対応を行う可能性を指摘する報道もあるが、この報道は正確か、というロイター記者の質問に対して、趙立堅報道官は、「厳陣以待」という古語(出典:宋・司馬光『資治通鍳』。「万全の軍事的態勢を整えて、侵入する敵を待つ」(现代汉语词典:"摆好严整的阵势,等待来犯的敌人"))を以て答えました。ロイター記者はさらに、中国がアメリカの政府関係者(中国語:'官員')に対してより厳しい警告を出したという報道は正しいのかと尋ね、趙立堅は「その理解は正しいと思う」と確認しています。
 私は上記コラムの中で、7月20日付け環球時報社説の大要を訳出し、その中で次の一節を紹介しました。

 台湾訪問はペロシが絶対に踏むことができない高圧線である。国家主権と領土保全を防衛する中国の態度は確固たるものであり、情勢の変化に応じていつでも、「台湾独立」分裂勢力及び域外干渉勢力に対して断固として有力な措置を執る権利を持っており、それはアメリカの航程及びペロシ本人に対するものも含まれる。
 この指摘について私は、「21日にペロシが、「大統領が語ったことは多分、軍部が心配しているのは我々の乗った飛行機が中国側に撃墜されるという類いのことを心配しているのだと思う」と述べたことは、「アメリカの航程及びペロシ本人に対するものも含まれる」という社説の指摘に符合します。ペロシ発言は社説発表前に行われていますから、中国国防部から米国防省に対して同趣旨の警告が行われ、社説はそれを公にしたと理解することも可能だと思います」という私の見方も付け加えました。
 趙立堅の「厳陣以待」発言及びロイター記者の確認質問に対する「その理解は正しいと思う」という発言は、私の以上の見方を裏付けるものだと思います。6月17日のコラムでは、シャングリラ安全保障対話における米中国防相会談で、魏鳳和国防部長が、「台湾を分裂させようとするものがあれば、我々は戦いを惜しまず、代価を惜しまず、必ず最後まで戦う(中国語:"如果有人胆敢把台湾分裂出去,我们一定会不惜一战、不惜代价,一定会打到底")」と述べたことも紹介しました。これ以上にない対米警告が繰り返し発出されている以上、バイデン政権及び米議会はこれ以上の「火遊び」をやめなければなりません。ウクライナ問題では、アメリカは代理人戦争という火遊びが可能でしたが、中国はペロシ訪台に対する対抗措置として「アメリカの航程及びペロシ本人に対するもの」を含むと明言してアメリカの「逃げ口」を閉鎖していることをアメリカは直視するしかありません。
 7月25日の趙立堅と記者のやりとりを紹介します(出所:中国外交部WS)。
(ロイター記者) フィナンシャル・タイムズの報道によれば、ペロシ訪台の可能性について、中国は警告の度合いを強めており、これらの警告あるいは脅迫は以前よりも強硬かもしれないという。同紙の消息筋はさらに、中国は軍事的対応を行う可能性があるとも述べた。この報道は正確か。中国が軍事的対応を行うとすれば、いかなる対応になるのか。
(趙立堅) 中国は最近幾度も、ペロシ議長の訪台に断固反対するという厳重な関心と厳正な立場をアメリカに対して行っている。我々は、万全の軍事的態勢を整えて、侵入する敵を待つ(「厳陣以待」)。仮にアメリカが独断専行するならば、中国は必ず有力な措置を執り、国家主権と領土保全を防衛する。これによって作り出されるすべての深刻な結果はアメリカの責任である。
(ブルームバーグ記者) 今あなたは、ペロシ訪台の可能性に対して「厳陣以待」と言った。もっと詳細を提供できないか。中国は軍事的対応を行うのか、それとも外交的対応を行うのか、さらには他の方法で対応するのか。
(趙立堅) 私はたった今中国の立場を極めて明確に表明した。仮にアメリカが独断専行するならば、中国は必ず有力な措置を執り、断固として対応し、報復する(中国語:'反制')。
(ロイター記者) フィナンシャル・タイムズの報道の問題について追加質問。報道では、中国がアメリカ政府関係者に対してさらに厳重な警告を発したとしているが、その通りか。
(趙立堅)  その理解は正しいと思う。