7月11日付けの環球時報は、傘下の「環球世論センター」(中国語名:"环球舆情中心"。以下「センター」)が過去10年間にわたって行ってきた民意調査の結果を整理して、この10年間に外国人の対中国観並びに中国人の対外観及び自国観にどのような変化が起こっているかに関する分析結果を明らかにする報道を行いました。内容的には、最後の部分(「2010年から2020年にかけて、中米関係は一貫して最重視されていた。ところが2021年には、中ロ関係が第1位、中欧関係が第2位となり、中米関係は第3位に転落した」)を除けば、おおむね想定の範囲内と言えると思います。
 私が個人的に意外、新鮮と感じたのは、日本を含む西側の世論調査と異なり、センターの調査は、環球時報の問題意識・関心に即して問題を設定していることでした。

(外国人の中国観)
 2012年から2017年にかけて、センターの関心の中心テーマは、外国が中国をどう見ているか(「中国を世界一流の強国と見ているか否か」)であった。2012年時点では、アメリカ、ロシア、イギリス、ブラジル等の世界主要国の回答者中、中国が一流の強国だと考えているのは53%に過ぎなかった。しかし、2017年の調査結果では、上記の国々に加えさらにスペイン、フランス等も調査対象としたが、回答者の82%超が中国は世界一流強国の仲間入りした、または仲間入りしつつあると考えていた。しかし、中国人自身はより控えめな見方をしていた。2010年に中国は世界No.2の経済大国になったが、その年及びその後の3年間における調査で、中国がすでに世界の強国となったと考えている者は18%未満だった。2014年には34.9%に達したが、その年の外国人回答者の64.3%が肯定的に考えているのと比べれば、落差は明らかだった。
 ただし、国家発展の前途に関しては、中国人回答者は普遍的に極めて楽観的だった。2015年から2021年にかけての調査によれば、90%前後の中国人回答者は中国にとっての国際環境について、「どちらかといえば楽観的」または「良好」と答えている。
 世界の中国に対する見方に関しては、2012年から2018年にかけて「プラスまたは中立的」とする回答者が75%~80%だった。センターの2019年の調査ではこの問題は取り上げず、中国に対するイメージ及び影響力に関して「良くなった」か「悪くなったか」を尋ねたが、ほとんどの回答者が「良くなった」と答えている。2020年には、コロナ流行及びそのもとでの対中イメージの悪化という背景のもと、「コロナによって中国が嫌いになったか」という質問をしたが、回答者の56.5%は「そのようなことはない」と答えた。また、半数近い回答者が中国のコロナ対策の成功に驚きを示した。
 2018年にアメリカが対中貿易戦争を発動して中米関係は急速に悪化した。これを受けて、センターの関心も中米の実力比という問題に移った。2018年の17ヵ国1.6万人以上を対象にした調査では、41.9%の回答者が「アメリカの影響力は低下し続けている」と考えており、69.8%の回答者は「中国の実力は上昇し続けている」と考えており、2019年の調査では、15ヵ国の回答者の54.6%が「アメリカの影響力は低下し続けている」と考えていた。2020年の調査によると、回答者の50%以上が「アメリカは華為などの中国企業の行動に打撃を与えることは容易ではなく、中国は対抗措置を執るだろう」と考えていた。興味深いのは、アメリカの同盟国の対米信頼感はさらに低かったということである。すなわち、日本、イギリス、ドイツ及びフランスの数字(アメリカの影響力は低下し続けているとする回答者の割合)はそれぞれ67.1%、61.5%、60.8%、60%だった。
(中国人の対外観)
 このように、世界の対中国観が急速に変化したように、中国人の世界に対する見方も大きく変貌してきた。
 センターが2021年に中国100都市以上で行った調査によれば、西側を「対等に見る」(中国語:'平视')中国の若者は過去5年間で6ポイント増えたのに対して、西側を「仰ぎ見る」(中国語:'仰视')若者は29ポイントも減っている。さらに詳しくいうと、「5年前に西側諸国について問われたとき、あなたはどのように思っていたか」という質問に対して、「仰ぎ見ていた」としたのは回答者の37.2%、「対等に見ていた」とした者が42.1%、「西側諸国はたいしたことはない」とした者が18.4%だった。しかるに、「現在、西側諸国について問われるとき、あなたはどのように思っているか」という質問に対しては、「仰ぎ見る」回答者はわずか8.1%であり、「対等」とする者が48.3%、「たいしたことはない」とした者が41.7%だった。
 中国人の西側に対する見方がこのように大きく変化した主原因は2017年の18回党大会以後の中国の持続的発展であり、さらには、アメリカのガヴァナンス能力に問題が露わになっていることも中国人の西側制度に対する「迷信」を打ち破った一因として考えられる。特に中国の若者はますます自信を深めており、「世界を対等視する」世代になっている。
 こうした変化は、西側の対中挑発・非難に対する対応にも表れる。センターは2020年の調査でいわゆる「戦狼外交」問題(浅井:2020年12月13日のコラム参照)を取り上げた。調査結果によると、回答者の71.2%が「中国の取るべき外交姿勢だ」と考えていた。この変化は、中国と外国との関係に対する中国人の見方にも変化を生んでいる。2010年から2020年にかけて、中米関係は一貫して最重視されていた。ところが2021年には、中ロ関係が第1位、中欧関係が第2位となり、中米関係は第3位に転落した。