北京冬季オリンピック開幕式に合わせて2月4日に訪中したロシアのプーチン大統領と中国の習近平主席との首脳会談(2時間半。そのあとの食事の際に国際問題を議論)後に発表された「新時代国際関係とグローバル持続可能発展に関する中ロ共同声明」(以下「共同声明」。ただしタス電によれば、会談に先立ってリリースされたとしている)は、ウクライナ問題でアメリカと激しく対立しているロシアと台湾問題で同じくアメリカと全面対決している中国が、民主・人権、平和・発展・協力、安全保障、国際秩序の4分野で、アメリカ・バイデン政権(西側)主導で営まれてきた国際関係のあり方(パワー・ポリティックス)に正面から異議申し立てを行い、21世紀にふさわしい国際関係の構築を目指して両国が全面的に協力していくことを世界に向けて発信する、'画期的な対米対決宣言'となりました。
厳しい米中、米ロ関係を背景にして行われる中ロ首脳会談であり、アメリカ問題が会談の中心テーマとなることは誰もが予想できることでしたが、共同声明の冒頭に「民主・人権」を据えたこと(第一部)及びあるべき国際秩序のあり方について独立して扱ったこと(第四部)は、21世紀にふさわしい国際関係の構築に共同してリーダーシップを取って取り組んでいくという中ロ首脳の不退転の決意を余すところなく示すものとなりました。中ロ両国は、AALA諸国(いわゆる第三世界)との関係強化に力を入れており、「農村が都市を包囲」した中国革命のように、「第三世界が西側先進国を包囲する」形で新国際秩序の形成を進めていく構えであると考えられます。私たちは往々にして、「アメリカというプリズムを通じて世界を見る」ことしかできませんので、中ロ両国が考えていることを視野に収めることができません。しかし、21世紀の国際関係を考えていく上では、今回の共同声明に盛り込まれた中ロ両国の共通スタンスをも踏まえた複合的視点を我がものにする必要があると思います。ということで、共同声明の主な内容を紹介します。

 今日、世界は大変局を経ており、人類社会は大発展、大変革の新時代に進入している。世界多極化、経済グローバル化、社会情報化、文化多様化は持続的に進んでおり、グローバル・ガヴァナンス・システム及び国際秩序の変革も持続的に推進され、各国の相互の連携及び依存も大いに深まり、国際的なパワー・バランスは再編に向かっており、平和及び持続的発展に対する国際社会のアピールはますます強まっている。これと同時に、コロナは世界的にまん延が広がっており、国際及び地域の安全情勢は日増しに複雑さを増しており、グローバルな脅威・挑戦はますます高まっている。国際的に少数の勢力が頑固に一国主義を奉じ、強権政治に訴え、他国の内政に干渉し、他国の正当な権益を損ない、矛盾、分裂及び対抗を作り出し、人類社会の発展と進歩を阻害している。国際社会はこれを絶対に受け入れることはできない。
 双方は、各国が全人類の共同の福祉から出発し、対話を強化し、相互信頼を増進し、共通認識を凝縮させ、平和、発展、公平、正義、民主、自由という全人類共同価値を守り、各国人民が自主的に発展する道及び主権安全発展の利益を選択する権利を尊重し、国連を核心とする国際システム及び国際法を基礎とする国際秩序を守り、国連及び安全保障理事会が核心的な協調的役割を発揮する真の多国間主義を実行し、国際関係の民主化を推進し、世界の平和と安定及び持続可能な発展を実現することを呼びかける。

 双方は一致して、民主は全人類共同価値であって少数国の特許ではなく、民主を促進し保障することは国際社会の共同事業であると認識する。
 双方は次のように認識する。すなわち、民主とは公民が自国の問題に参与し、これを管理する方法であり、その趣旨は、民生福祉を増進し、人民の当家作主を実現することにある。民主は全過程かつ人民全体に向き合い、人民全体の利益と意志を体現し、人民の権利を保障し、人民の要求を満足させ、人民の利益を擁護するものであるべきである。民主制度の実践は紋切り型ではなく、異なる国家の社会制度と歴史、伝統及び文化的特色を考慮するべきである。各国人民は自国の国情に適合した民主の実践形式・方法を選択する権利がある。一つの国家が民主であるか否かは、その国家の人民のみが評価することができる。
 双方は以下のとおり指摘する。民主の原則は国内ガヴァナンスのみならずグローバル・ガヴァナンスのレベルにおいても体現されるべきである。個別の国々は、イデオロギーで線引きし、他国に自らの「民主スタンダード」を受け入れることを脅迫し、様々な小グループを寄せ集めることを通じて民主に関する定義権を壟断することを企てているが、これは実際上民主を踏みにじるものであり、民主の精神及び真の民主的価値に対する裏切りである。この類いの覇権的地位の行動は、地域及び世界の平和と安定に対する深刻な脅威となり、国際秩序の安定に対して害を及ぼす。
 双方は、民主及び人権を守ることは他国に対して圧力を及ぼす道具となるべきではないと確信する。双方は、いかなる国であれ、民主の価値を濫用し、民主、人権を守るという口実で主権国家の内政に干渉し、世界の分裂・対抗をそそのかすことに反対する。双方は、国際社会が各国の文化及び文明の多様性、異なる国家の人民の自決権を尊重することを呼びかける。双方は、志を有するすべての国々と手を携えて真の民主を推進したいと考える。
 双方は次のことを指摘する。国連憲章と世界人権宣言は世界の人権事業にとっての崇高な目標を確立し、基本原則を定めており、各国はこれを遵守し、実行するべきである。同時に、各国の国情は異なり、歴史文化、社会制度、経済社会発展レベルには違いがあるので、人権の普遍性と各国の実情を結合させ、国情及び人民の要求に基づいて人権を保護しなければならない。人権を推進し、保護することは国際社会の共同事業であり、各国は同等に重視し、系統的に各種人権を推進するべきである。国際人権協力は、各国が平等の対話の基礎の上で協商するべきであり、各国は平等の発展権を享受するべきであり、各国は平等及び相互尊重の基礎の上で人権の協力を行い、国際人権システムの建設を強化するべきである。

 双方は、平和、発展、協力が今日の国際システムの主流であると考える。発展は人民の福祉を実現するカギである。(一帯一路とユーラシア経済連盟の協力、北極での協力、国連等における多国間協力、交通領域での協力、気候変動協力、生物多様性協力、ワクチン協力、コロナ発生源探求問題の政治化反対)。

 双方は、国際安全情勢が直面する深刻な挑戦に対する深い関心を表明するとともに、各国人民は命運を共にしており、いかなる国家も世界の安全から離れることはできないし、離れるべきでなく、他国の安全を犠牲にして自らの安全を実現するべきではない。
 双方は、互いの核心的利益、国家主権及び領土保全を断固支持し、外部勢力が両国の内政に干渉することに反対する。(ロシアが台湾に関する中国の立場を支持し、双方がNATO拡張に反対し、アメリカの「インド太平洋戦略」を警戒し、AUKUSに反対するなど。日本の福島原発汚染水放出にも重大な関心表明。中国は、ロシアが提起した法律的拘束力を持つ欧州安全保障提案を支持)

 双方は次のように強調する。中ロは世界の大国及び国連安保理常任理事国として、国連が国際問題において核心的協調的役割を発揮する国際システムを断固擁護し、国連憲章の精神及び原則を含む国際法を基礎とする国際秩序を断固擁護し、世界の多極化及び国際関係の民主化を推進し、繁栄安定、公平公正な世界を共同で建設し、手を携えて新型国際関係を構築していく。
 ロシアは人類運命共同体構築に係わる中国の理念を積極的に評価する。この理念は国際社会の団結を強化することに役立ち、力を合わせて挑戦に対処する。中国は、公正な多極的国際関係構築を進めるためのロシアの努力を積極的に評価する。
双方は、第二次大戦の勝利の成果及び戦後国際秩序を断固擁護し、国連の権威及び国際の公平正義を断固擁護し、第二次大戦の歴史を否定し、歪曲し、書き改める試みに反対する。
 世界大戦の悲劇がくり返されることを防止するため、双方は、ファシズム、軍国主義の侵略者及びその仲間が歴史的罪責を回避し、戦勝国を侮辱する行動を断固非難する。
 双方は、相互尊重、平和共存、合作共嬴の新型大国関係を唱道し、その建設を推進する。中ロの新型国家関係は冷戦期の軍事政治同盟関係モデルを超越するものであることを指摘する。両国の友好は留まる境はなく、協力にはタブーがなく、その戦略的協力強化は第三国に向けられず、第三国または国際情勢の変化にも影響されない。
 双方は、国際社会は団結するべきであって分裂するべきではなく、協力するべきで対抗するべきではないと重ねて表明する。双方は、国際関係が大国対抗、弱肉強食の時代に後退することに反対する。個別の国々及び国家集団が「小グループ」のルールを以て普遍的に承認され、国際法に合致した制度・メカニズムに取って変えようとする企みに反対し、共通認識が達成されていない方法で国際問題を解決しようとすることに反対し、強権政治、覇権的行動、一方的制裁、「国境をまたぐ管轄」に反対し、輸出制限の濫用に反対し、WTOのルールに合致した貿易を支持し、推進する。
 双方は、対外政策協調を強化することを重ねて述べ、真の多国間主義を実践し、多国間メカニズム内の協力を強化し、共同利益を守り、国際及び地域のパワー・バランスを維持し、手を携えてグローバル・ガヴァナンスを改善していく。
 双方は、WTOを核心とする多国間貿易システムを支持し、擁護し、WTOの改革に積極的に参与し、一国主義及び保護主義に反対する。‥
 双方はG20が‥役割を発揮することを支持し、G20が団結協力の精神を発揚し、国際抗疫、世界経済回復、包容的で持続可能な発展の促進、公正で合理的な世界経済ガヴァナンス・システム改善等の分野で指導的な役割を発揮することを共同で推進し、力を合わせてグローバルな挑戦に対処する。
 双方はBRICSが戦略的パートナーシップを深めることを支持する‥。
 双方は、上海協力機構の役割を全面的に増強し、レベルをアップさせ、公認された国際法原則、多国間主義、平等、共同、不分割、綜合、協力、持続可能な安全という基礎の上で多極化世界パラダイムの構築を推進していく。‥
双方は、地域の主要なマルチ経済対話プラットホームとしてのAPECの役割を強化していく‥。
 双方は、中ロ印メカニズムの枠組みの下における協力を進め、東アジア・サミット、ASEAN地域フォーラム、ASEAN国防省拡大会議等のプラットホームでの協力を継続していく。中ロは、ASEANの東アジア協力における中心的地位を支持し、ASEANとの協力協調を深めていく。‥