11月3日(ワシントン時間12日)、ブリンケン国務長官と王毅外交部長は、16日に予定されている米中首脳ビデオ会談の準備について電話会談を行いました。その際に両者は台湾問題に関するそれぞれの立場を表明し、来たるべき首脳会談の中心議題が台湾海峡問題となることを予告した格好となりました。米国務省及び中国外交部の発表文によれば、両者の発言内容は次のとおりです。

(ブリンケン)
 長官は台湾海峡をまたぐ平和と安定にかんする一貫したアメリカの関心を強調し、台湾に対する中国の軍事、外交、経済における継続的な圧力に関する懸念を表明した。長官は北京に対して、台湾人民の願望と最善の利益に沿った形で、平和的に海峡問題を解決する、意味ある対話を行うことを主張した。
(王毅)
 台湾問題に関して最近アメリカが取っている誤った言動に対して、王毅は中国側の厳正な立場を更に踏み込んで表明した。王毅は次のように表明した。歴史と現実はすでに、「台独」が台湾海峡の平和と安定の最大の脅威であることを充分に証明している。「台独」勢力に対するいかなる放任及び支持もすべて台湾海峡の平和に対する破壊であり、最終的に自業自得の結果となるだろう。王毅は次のように述べた。アメリカ側が本当に台湾海峡の平和を守ることを考えているのであれば、いかなる「台独」の動きにも断固反対するべきであり、3つの中米共同声明において行った厳粛なコミットメントを誠実に遵守するべきであって、一つの中国政策を行動において具体化させ、「台独」勢力に二度と間違ったシグナルを発出するべきではない。
 両者の発言は、台湾海峡の緊張原因及びその解決に関する米中双方の認識・立場の相違を浮き彫りにしています。今年に入ってからの台湾海峡の緊張が、バイデン政権の対中敵視政策、特に蔡英文当局に対する見境のない「テコ入れ」によって引き起こされていることは公知の事実である以上、ブリンケンの発言はおよそ説得力のカケラもなく、王毅発言は至極当然です。とりわけ強調しなければならないことは、バイデン政権の行動は3つの米中共同コミュニケでアメリカが約束し、長年にわたって実行してきたプラクティス(一つの中国原則に抵触する行動を慎む;台湾との公的接触はしない;台湾との軍事関係を自粛する)を悉く投げ捨て、「台湾独立」を目指す蔡英文当局に対する支持・支援を公然と展開してきたという事実です。
「ルールに基づく国際秩序」を自ら標榜しながら、アメリカも承認した「一つの中国」原則という現代国際関係における最重要ルールの一つを、自分の都合次第で無視し、投げ捨てるバイデン政権の行動は絶対に許されてはならないものです。西側メディアの議論しか接することがない私たちはバイデン政権の破廉恥な行動を「破廉恥きわまるもの」と認識することもできないでいます。しかし、「一つの中国」原則を承認して中国と国交関係を結んでいる180カ国(その大多数はアジア・アフリカ・ラ米諸国。ちなみに、台湾と国交関係があるのは中米と南太平洋プラスヴァチカンの15カ国に過ぎない)の中で、アメリカ寄りの言動を取っているのは日本(菅政権、岸田政権)、オーストラリア(+リトアニア)などごくわずかに過ぎないという事実の重みを私たちは正確に認識する必要があります。
 11月15日付(WS掲載は14日19時26分)の環球時報社説「中米「管理競争」 カギは「台独」共同抑え込み」は、ブリンケン発言の欺瞞性を鋭く突き、こういういい加減なアメリカに対しては筋を通した議論をいくらしても無駄だ、となかば匙を投げながらも、16日の米中首脳会談でアメリカが好戦的な対中政策を転換することが唯一の事態打開策だとする論調を載せています。要旨は以下のとおり。
 アメリカ側は、中米首脳ビデオ会談に対する最大の期待は「責任を持って米中の競争を管理すること」としているが、「管理」上のカギであり、緊要なのは台湾問題が爆発する可能性を消し去ることだ。なぜならば、仮に中米の対抗が爆発するとすれば、台湾海峡が導火線になる可能性がもっとも高いからだ。
 ブリンケンは、大陸側が「台湾人民の願望と最善の利益に沿った形で、海峡問題を平和的に解決する意味ある対話を行うこと」を求めているが、これは偽善的な決まり文句であり、無駄話だ。民進党当局は2016年に政権に再度就いて以後「九二共識」を投げ捨て、それ以後一つの中国を提起せず、台湾「独立」は明确極まりない目標になっている。ところがアメリカは、民進党当局の冒険主義を止めないどころか、逆に放置し、激励し、その上で中国側に対して「平和的に」海峡危機に対処しろと要求している。こんな理屈が天下で通用するはずがあり得ようか。
 台湾情勢を安定させる唯一の途は、政治的に対抗を緩和し、両岸の間で平和相居、共商未来の政治的基礎を再建することであり、アメリカは、民進党当局の過激路線を変えさせるために建設的な役割を発揮するべきである。政治上の最低限度の相互信頼もない中で、台湾海峡地域について何をなすべきか、誰の責任が大きいかについて中米が論争するなどということに、どんな意義があるというのか。
 アメリカは中国抑え込みを主目的とするインド太平洋戦略を推進するとともに、中国に対して「台湾カード」を大上段に振りかざし、台湾当局は完全にアメリカに寄りかかり、自らを「権威主義に抵抗する民主世界の最前線」と公然と唱えるに至っている。アメリカはこのような台湾当局を中国大陸が包容しろと言うが、一体いかなるモラルがあってこのように「アドバイス」するのだろうか。
 台湾問題は中国の至高レッドラインである。中米戦略衝突発生リスクを減らすためには、アメリカは台湾問題で後退し、矛先を収めなければならない。アメリカが中国の核心的利益に難癖をつけて中米関係の根本的な緊張を作り出したのであり、自分がやり過ぎだったことをはっきり認識しなければならず、中国には退路はないのであるから、中米のパワーが安全な距離を保つためにはアメリカが後退のステップを踏む以外にない。  アメリカは最近台湾の国連「代表権」問題で騒ぎはじめ、アメリカが「台湾における軍事プレゼンスを回復」しようとしているとも解釈できるサラミスライス式行動を公然と取り、米対軍事協力のニュースは間断ない。これらのことがすべて「競争」と呼べる類いであるはずがない。アメリカは一方でこうしたことをやりながら、他方では「中米競争が衝突にエスカレートすることを防止」しようと言い立てている。我々には一体どうなっているかさっぱり理解できない。我々は、アメリカの論理を理解しようとするのは無駄であり、台湾海峡でアメリカと白黒をつける上ではパワーだけが少しは役に立つのではないか、とますます感じるようになっている。
 中国はアメリカとともに台湾海峡情勢のリスクを減らすことを願っているが、歴史が我々に告げるのは、アメリカが本気でこだわるのは実力対話のみであるということだ。中国としては「戦争と交渉(中国語:'打与談')」ともに強硬でいかざるを得ないだろう。我々が希望することは、アメリカが本当の誠意を持って中米首脳ビデオ会談を行い、高度に緊張した中米関係を緩和するために解決するべき問題の解決を推進することであり、国内向けのために対中「強硬」を主目的にするべきではないということだ。現在、世界全体が中米関係のさらなる悪化に不安を募らせており、アメリカが好戦的な対中政策を改めることが局面転換のカギである。