9月13日のコラムで、台湾駐米事務所の名称変更の動きに対して、9月13日付の環球時報社説が台湾に対して実力行使の警告を行ったことを紹介しました。驚いたことに翌日(9月14日)付同紙は「大陸軍機、最終的には台湾巡航の要あり」と題して再び台湾に対する実力行使の警告を行いました(ウェブ掲載は13日21時59分)。私はかなりの確信を持って次のように理解します。すなわち、13日付の社説は環球時報の判断で出されたものであるのに対し、14日付の社説は中国指導部の承認・指示のもと、外交部、国防部など関係部署との綿密な擦り合わせを経て出された、高度に公的な立場の表明である、ということです。そのことは、両文章を比べてみると一目瞭然です。13日の社説の文章がかなり荒削りで、感情的ですらあるのに対して、14日の社説は極めて論理的かつ緻密であり、感情的要素はまったく見られません。
 私の想像をいえば、13日の社説を読んだ指導部が評価し、関係部局と環球時報に対してよりまとまった形で台湾当局及びバイデン政権に対する警告を行うことを指示したのではないかと思います。バイデン政権に対しては中国の不退転の決意を明らかにする(バイデン政権の小細工は中国の決意をひるませようとしても何の意味も持たず、軽挙妄動は慎むべし)とともに、蔡英文当局に対しては最終的に二者択一(九二共識に戻るか、身の破滅か)しか残されていないことを最後通牒する、ということです。
 この社説は今後の台湾情勢を見る意味で極めて重要だと思います。訳出して紹介します。

環球時報社説「大陸軍機、最終的には台湾巡航の要あり」
 台湾問題は不断に発酵を続けており、中国外交の面倒ごとの半分以上はこの問題に関連している。長期的に見る時、現在の形で台湾海峡の平和を維持することは大陸にとってますます高いコストのものとなっており、米台共謀と日台共謀は大陸の外交資源及び精力を不断に消耗させることとなる。
 民進党当局が米日の反大陸支持にしがみついており、島内世論をますます深刻に縛り付け、アメリカも台湾問題に対する戦略的手練手管をますます頻繁かつ密度を高めて進めているので、大陸としては、抜本的な措置を講じて断固とした闘争を行うことによってのみ、今の事態を阻止し、民進党当局及びその支持者を徹底的に押し鎮め、台湾海峡情勢の戦略的主動権をがっちり握ることができる。
 解放軍軍機が台湾本島上空に飛行すること、これは我々が必ず踏み出すべき一歩である。それは民進党当局に対する根本的警告となり、台湾海峡地域の情勢の再構築をもたらすだろう。それは中国が台湾に対して主権を有していることのこれ以上にない明確な宣言であり、この主権を現実のものとするためにかつてない条件を創造することになる。
 台湾本島上空はもともと中国の領空であり、いわゆる「台湾海峡中間線」なるものは大陸が未だかつて承認したことはなく、したがって、解放軍機が台湾島を飛ぶことは法理的に十分な根拠がある。
これまで解放軍機が台湾上空を巡航しなかったのは島内の心理に対する配慮であり、海峡地域の安定を守るという善意に出たものである。しかし現在、民進党当局は完全に大陸と敵対し、アメリカの中国封じ込め戦略のコマとなることに甘んじており、我々としてはこれまでの配慮を撤回する時になっており、軍機による台湾巡航という主権行使を準備するべきである。
 台湾軍は解放軍機が台湾島上空を飛行することを阻止するべく発砲する度胸があるだろうか。我々の回答は次のとおりだ。この巡航を実行するという大陸の決意が固いものである限り、彼らが発砲して阻止するということは、大陸が壊滅的報復を行い、台湾解放戦争を行うという即時開戦を意味するので、台湾軍は飛行任務を執行する解放軍機に発砲することをためらうだろう。
 大陸軍機が台湾島を飛行するに当たっては大規模かつ圧倒的な軍事的準備が後ろ盾とならなければならず、軍機の飛行は台湾海峡のパラダイムをリセットするという強大な決心のほんの一部分である。これは台湾当局に対する果たし状である。民進党当局は二つの選択を与えられる。一つは、大陸軍機の台湾巡航を受け入れ、米日とつるんだ極端な反大陸路線を引っ込めることである。もう一つは、大陸軍機に発砲して戦争を引き起こし、解放軍によって一気に壊滅消滅されることだ。
 大陸軍機が台湾島を飛行することは非常に重大な事件であり、アメリカその他の国々は必ずや国際的な波風を起こし、中国大陸を誹謗中傷し、中国の「一方的な現状変更」を攻撃するだろう。我々はこれを無視するべきだ。蔡英文当局は登場してすぐ九二共識を放棄し、台湾海峡の現状を変えたのであるから、大陸軍機の飛行行動は彼らのサラミ・カット式「台独」路線に対する清算であり、彼らによる台湾海峡現状変更に対する根本的矯正である。
 大陸と米台の台湾海峡をめぐる争いには極めて長い行動エスカレーションの系列があるが、大陸軍機の飛行行動はもっともカギとなる一歩となるだろう。解放軍は早くから台湾に対する軍事闘争について周密な準備を行ってきており、我が軍機は頻繁に台湾近傍空域で活動し、「海峡中間線」をまたいで飛行し、民進党当局は「共産党軍機侵入」に対する心理的準備をますます積み重ねてきている。
 もちろん、台湾島上空飛行ということはパラダイムを打ち破る行動であり、もっとも適切な時期を選んで行う必要がある。大陸側は軍機の上空飛行準備について不断に情報を流すべきだ。そうすれば、民進党当局が深刻な挑発を行う時に大陸軍機が本当に飛んでくることに対する予想を生み出すことになる。「大陸激怒」の世論に引き立てられて解放軍機が飛行行動を実行すれば、安全係数は最高となるだろう。
 我々としては台湾海峡全面対決の準備を不断に行い、国家主権と領土保全を防衛する強大な意志と正真正銘の実力によって民進党当局の意志を圧倒し、もっとも正しい時に解放軍機の台湾上空第一回飛行を実現する。それは中華民族の国家統一の道における里程標となるであろう。