8月27日の中国外交部定例記者会見で、NHK記者が「今日、自民党と台湾民進党がネット上で両党間の「2+2」会議を開いた。中国側のコメント如何?」と質問し、趙立堅報道官が答えていることを、中国外交部WSをチェックしている中で発見(?)しました。ネットで調べたところ、ロイター、TBSなどがこの件について報道していることを知りました(朝日新聞では載っていなかったと思うのですが)。自民党の狂気の暴走は留まるところを知らないことを改めて思い知らされました。日中共同声明と日中平和友好条約は「いまやいずこに」です。ロイターとTBSの報道は以下のとおりでした。

(ロイター)「日本と台湾、与党間で初の安保対話 防衛協力の可能性も議論」
2021年8月27日3:37
[台北/東京 27日 ロイター] 台湾与党の民進党と日本の自民党は27日、外交・防衛政策を担当する議員同士が会談し、防衛協力の可能性などについて議論した。日台の与党が安全保障対話を開くのは初めて。
日台は外交関係がないものの、中国が台頭する中で非政府間の関係を強化している。
台湾の民進党からは羅致政、蔡適応の両立法委員が、日本の自民党からは佐藤正久外交部会長と大塚拓国防部会長が出席。羅氏と蔡氏は会談後、記者団に対し、半導体や中国の軍事活動、日米台の協力の可能性などについて議論したことを明らかにした。
羅氏は「ある意味で両政府の関係強化に向けた努力を表す会談となった」と説明。「さらに重要なのは、両者とも中国の圧力に直面する中でもこうした対話が継続されることを強く決意していることだ」と語った。
蔡氏によると、会談では防衛協力も話題に上った。しかし、機微な内容だとして詳細は明らかにしなかった。
自民党本部から会談に出席した大塚氏は「実際の中身をなかなかお話できないぐらい踏み込んだ話もしている」とした上で、「協力してやっていく分野も非常に多いということが確認された」と語った。
台湾を自国の一部とみなす中国は、内政干渉すべきでないと会談の開催を批判していた。
羅氏は「台湾は主権国家、独立国家として二国間、多国間関係を発展させる権利がある」と述べた。
(TBS)「自民 台湾与党議員と対中念頭に与党版「2+2」を初開催」
2021年8月27日 20時19分 TBS
 自民党の外交、国防部会長は27日、台湾の国会議員にあたる立法委員とオンラインで初めて対話しました。
自民党 佐藤正久 外交部会長
 「政府間の実務者間の交流等を含めて、制限があるという状況を考えると、やはり政権に責任を持つ与党の政策責任者が意見交換、政策面での積み重ねをやるということが、さらなる台湾と日本の関係強化に繋がる」
 27日のオンライン対話では、自民党側からは佐藤外交部会長、大塚国防部会長、台湾側からは与党・民進党の外交・防衛関係に力を持つ議員が参加しました。
 対話は中国に関する話題が中心で、日本側から「中国大陸と対峙をするという位置にあるという意味で、運命共同体としての側面がある」という意見が出ました。また、台湾側からも「いま最も大きな脅威は中国からの脅威。台湾と日本が手を携えて立ち向かわなければならない」との声が上がりました。
 日本政府はアメリカやインドなどと外交、安全保障担当の閣僚同士が議論する、いわゆる「2+2」を行っていますが、日本と台湾は外交関係がないため、政府レベルのこうした会合を行っていません。今回の与党版「2+2」は、それを補うことを狙いとしていて、今後も対話を重ねていきたいとしています。
ネットを検索している中で、台湾の呉釗燮「外交部長」が6月7日に産経新聞の単独インタビューで「日台当局間の安全保障対話」を呼びかけていたことも知りました。このようなことがキッカケになって今回の与党版「2+2」となったのかもしれません。参考までに紹介します。
対中安保「日台で対話を」 台湾の外交部長が異例の呼びかけ 単独インタビュー
2018/6/27 07:20
 【台北=田中靖人】台湾の呉釗燮外交部長(外相に相当)は26日までに、産経新聞の単独取材に応じ、「日本と台湾はともに中国の軍事的な圧力と脅威に直面している」と述べ、日台当局間の安全保障対話を呼びかけた。日本と外交関係のない台湾の高官が当局間対話を求めるのは異例。台湾周辺で活発化する中国軍の動向を受け、一歩踏み込んだ。
 呉氏は中国の海空軍が近年、西太平洋への進出を「常態化」(中国国防省)させていることを念頭に、「軍用機が宮古海峡を南下すれば台湾、バシー海峡を北上すれば日本への脅威となる」として、日台の安全保障は「密接不可分だ」と指摘し、「日本と安全保障分野での意見交換を望む」と述べた。
 米国と台湾の間では安全保障協力が「非常に密接だ」とし、「外交関係の有無を安全保障対話の前提条件にすべきではない」とも述べた。また、日本側が公開での対話を望まないのであれば、「非公開でも構わない」とし、まずは窓口機関を通じた対話でも良いとも述べた。
 一方、日本政府が求める福島など5県産食品の輸入解禁は「消費者の信頼回復に台日が(安全性のアピールなどで)協力することが必要だ」と述べるにとどめた。
■呉釗燮氏 台湾・彰化県生まれ。政治大卒、米オハイオ州立大で博士号(政治学)。政治大教授から民主進歩党の陳水扁政権で駐米代表などを歴任。2014年から蔡英文党主席(党首)の下で秘書長(幹事長)を務め、16年の蔡政権発足と同時に総統の外交・安保政策諮問機関「国家安全会議」秘書長に就任。総統府秘書長(官房長官)を経て今年2月から外交部長。63歳。
 自民党のこの動きに対して、中国が厳しく反応することは当然でした。冒頭に紹介した趙立堅報道官の発言と、在日中国大使館が公表した公式反応を併せて紹介します。
(趙立堅)
 台湾は中国領土の不可分の一部である。中国は、中国と国交を結んでいる国が台湾との間でいかなる形のオフィシャルな交流(中国語:"官方往来")を行うことにも断固反対する。中国はすでに日本に対して厳重な申し入れを行った。
 台湾問題は中日関係の政治的基礎にかかわる。日本は台湾問題では中国人民に対して歴史的罪責を負っており、とりわけ言行を慎む必要がある。我々は、日本が中国内政に干渉することを止め、「台独」勢力に誤ったシグナルを出さないことを厳重に要求する。
(在日中国大使館)
 自民党の個々の国会議員が台湾民進党の関係者といわゆる「外交安全対話」を行い、実質的なオフィシャルな交流を行うことを企み、中国内政に乱暴に干渉し、一つの中国原則と中日間の4つの政治文献の精神に深刻に背き、日本がこれまで行ったコミットメントに深刻に背いたことは、台湾問題における日本の今ひとつのネガティヴな振る舞いであり、「台独」勢力に対して深刻な誤ったシグナルを出すものである。中国はこれに対して強烈に不満であり、断固と反対し、すでに日本側に厳重な申し入れを行った。
 台湾は中国領土の不可分の一部である。一つの中国原則に対する挑戦は許さない。中国は、中国と国交を結んでいる国が台湾との間でいかなる形のオフィシャルな交流を行うことにも断固反対する。いかなる者といえども、国家主権と領土保全を防衛する中国人民の確固とした決意、断固とした意思及び強大な能力を過小評価するべきではない。一つの中国原則を否定し、これにチャレンジするいかなる企ても、すべて失敗に終わるであろう。
 台湾問題は中国の核心的利益にかかわり、中日関係の政治的基礎にかかわり、両国の基本的信義にかかわる。台湾問題を適切に処理することは中日国交回復の前提であり、基礎であり、中日共同声明等の4つの政治文献はこのことについて明確に規定している。最近、日本側は台湾問題に関して次々と極めて消極的な動きを示しており、両国の政治的相互信頼を損ない、中日関係の雰囲気を悪化させている。中国は、日本が実際の行動で中日間の4つの政治文献の精神を遵守し、台湾問題で約束を誠実に守り、中国の主権、安全及び発展利益を損なうことをいかなる形でもストップし、両国関係がさらに損なわれることを避けることを厳粛に促す。
 8月27日付の環球時報は、張文生(厦門大学台湾研究院副院長)署名文章「日本は台湾海峡に軍事介入する力も肝っ玉もない」を掲載して日台の今回の行動を酷評しました。中国側の問題意識の所在が分かります。参考までに要旨訳出で紹介します。
 いわゆる「第1回日台安全対話」が「反中」を真っ先に置いたことには疑問の余地はない。台日の執政当局が最近ますます接近しているのは、その背後に有形無形の推進者がいることは当然だとしても、台日の一定の政治勢力の間の意気投合の結果でもある。日本の一部政客はかつての植民地・台湾のことが忘れられないし、台湾を地縁政治上の中国牽制の道具にしようとも考えている。近年、中米関係が悪化しており、日本人の中の一部の者は、甘んじてアメリカの「反中・抑中」のコマになるとともに、民進党当局を極力引きこんで「反中・抗中」政策をたきつけようとしている。
 対中政策においても台湾問題においても、日本の心理は複雑である。一方では、中国大陸の発展を押しとどめることはできないし、経済的に対中緊密関係を切り離すことができないことも理解している。しかし他方では、そのことに甘んじることができず、アメリカの配置する「反中同盟」に積極的に身を投じ、アメリカ指導の同盟によって中国を牽制することに希望を託している。台湾問題においても同様であり、一方では一つの中国を承認せざるを得ず、第二次大戦後に形成されたアジア太平洋の政治パラダイムを変えるだけの力も肝っ玉もないが、他方では、島内「台独」勢力を支持し、中国統一事業に障害を作り出そうとしている。
 台湾が「非平和的に統一される」可能性に対して、日本は台湾海峡をいわゆる「周辺事態」のカテゴリーに含め、台湾海峡衝突介入の可能性を探っている。しかし同じく、日本には軍事的に台湾海峡に介入する力も肝っ玉もない。なぜならば、火を招いて身を焼くだけだからだ。しかしながら、日本の一部の者はそのことで「台独」がなりを潜めることになることを心配し、「台独」支持のためには中日が一戦を交えることを恐れないという面構えを装っている。中山恭秀防衛副大臣は、「台湾は普通の意味の友人ではなく、日本の兄弟であり、身内である」と露骨に述べ、日本が台湾を保護すると公言したことがある。だが問題は、日本にはその肝っ玉があるか、能力があるか、ということだ。日本の個々の政客が騒ぎ立てるのは「野次馬にとっては事が大きいほどいい」の類いにほかならず、日本が「台湾人の安全」を真剣に考えたことは、植民統治をしていた時もないし、戦争に負けて台湾を放棄した以後もなく、これからはなおさらあり得ない。
 島内「台独」勢力は、日本の態度如何にお構いなしに一途に日本に媚びる姿勢を示してきた。民進党が政権に就いてからは日本の台湾植民統治の歴史を極力美化し、日本の植民者の台湾における虐殺、強奪の罪悪を薄めてきた。蔡英文は日本の植民者・八田与一の記念活動に自ら出席し、植民者を美化したテレビ・ドラマも台湾で堂々と放映された。民進党当局は日本が台湾のために大胆に振る舞うことを必要とする一方で、両岸衝突のもしもの時は日本が手を差し伸べて救ってくれることにも希望を寄せている。
 しかし、島内「台独」勢力は片思いすぎることを免れない。島内メディアが指摘するように、「台湾防衛」は日本のできることではなく、日本国民も戦争に巻き込まれる意志はない。日台の議員は会談の焦点を「外交」と「国防」に置いたが、植民地時代の関係を再建するなどと思っているのではあるまい。日台がいわゆる「反中同盟」を結成しようとしても妄想の極みにすぎない。国際社会のルールはアメリカ一国が定めるものではなく、国際社会もアメリカの一言で決まるものでもない。台湾問題で中国に圧力をかけ、牽制しようとするのはすべて妄想である。
 中国はすでに日本に対して「台湾問題は中日関係の政治的基礎にかかわる。日本は台湾問題では中国人民に対して歴史的罪責を負っており、とりわけ言行を慎む必要がある」と警告した。日本は今回表向きには「政府間会談」を回避したが、執政党議員の会談が何を表すかについては、見識のある人間であれば分からないはずがない。
 日台の結託は祖国統一完成の中国の決意と流れを左右することはできないし、国際社会における一つの中国という既存の枠組みを変えることもできない。台湾が中国の一部であることはカイロ宣言が明文で記していることであり、日本の降伏文書も承認したことでもあって、日台の議員はもう一度読み直してみる必要があるのではないか。