8月15日のタリバンによるカブール攻略は、アメリカ情報部門の「情報」が如何に当てにならないかを白日にさらしただけではなく、その情報に頼って撤兵を急いだためにこの事態を招致したバイデン政権の呆れ返るほどの無能ぶりを世界中に知らしめました。"アメリカの戦争目的は同時多発テロの犯人を懲罰することであり、その目的は達成された"と子供じみた弁解をしたブリンケン国務長官は'その任に堪えない' ことを暴露し、「アフガニスタン軍が自ら戦おうとしない戦争で、アメリカの兵士が戦って死ぬことはできないし、そうするべきではない」(8月16日演説)と自己正当化を図ったバイデン大統領の居直り発言に至っては'もはやつける薬はない'、呆れ返るものでした。私は8月14日のコラムで、「ブリンケン・サリバンの前後の見境のない、後先を考えずに突っ走る「狂」気に絶望するのです。かつては米上院で「外交通」として名を馳せたバイデンがブリンケン・サリバンのごとき「若造」の言うがままに動いているのを見ると、「バイデン老いたり」の感を深くします」と述べたばかりですが、カブール陥落に対するバイデン、ブリンケンの周章狼狽ぶりを目の当たりにすると、彼らにこれ以上政治のかじ取りを任せたら、世界全体がとんでもないことになるという実感を深くしました。
 そのブリンケンは、8月16日に中国の王毅外交部長及びロシアのラブロフ外相と相次いで電話会談(いずれも米側の申し入れによるもの)を行い、アフガニスタン問題で苦境に立つアメリカへの中ロ両国の協力を求めました。私がとても興味深く感じたのは、米ソ冷戦時代から一貫して基本的にアメリカとの対立関係が常態であるロシアと、トランプ政権時代から対立関係に入り、バイデン政権になってさらに対立が深刻になっている中国とが、アメリカに対して際立った対応の違いを示したことでした。ラブロフは、ブリンケンが協力を求めてきたことに対して「好意的」に反応しましたが、王毅はなかば「逆ギレ」して、ブリンケンのご都合主義の対中アプローチを厳しく批判しました。中国外交部とロシア外務省の発表文は以下のとおりです。ちなみに同じ16日、中ロ外相も電話会談を行い、アフガニスタン問題での共同を確認し合いました(王毅は8月15日に言及し、歴史を直視しない日本について厳しく批判する発言を行いました)。

(中国)
 ブリンケンはアフガニスタン情勢が重大な段階に入ったとし、タリバンはテロリズムとのつながりをキッパリ絶ち、秩序ある権力移転及び包括的政府樹立の道を選ぶべきであるとした上で、中国が重要な役割を発揮することを期待した。
 王毅は、中国のアフガニスタン情勢に関する立場を述べた上で次のように表明した。事実が再度証明するとおり、外来モデルを歴史文化国情の異なる国家に生硬に押しつけるのは水と油の関係であって、成功するはずがない。政権というものは人民の支持がなくては成立し得ず、強権と軍事手段で問題を解決しようとしても問題が増えるだけだ。この面での教訓は真剣に反省する必要がある。
 王毅は次のように表明した。中国はアメリカと対話を行い、アフガニスタン問題の軟着陸を推進し、アフガニスタンに再び内戦や人道上の災難が発生しないように促し、テロの震源地や避難場所にならないようにし、アフガニスタンの国情にあった、開放包容の政治的枠組みの建設を促すことを望んでいる。
 王毅は次のように述べた。アメリカはアフガニスタンで安定を促し、乱を防ぎ、和平を再建する上で建設的な役割を担うべきだ。アメリカがそそくさと撤兵したことはアフガニスタン情勢に深刻なマイナスの影響を及ぼした。今後再び新たな問題を生み出すとすれば、ますます無責任である。
 王毅は次のように強調した。アメリカ前政権は「東トルキスタンイスラム運動」テロ組織の認定取り消しを発表し、対テロ問題で二重基準を行ったが、これは極めて危険かつ間違っている。アメリカは態度を改め、対アフガニスタン及び国際テロ問題での中米協力上の障害を除去するべきだ。
 王毅はさらに次のように述べた。中米は共に安保理常任理事国であり、今日の国際システムにおける重要な参画者である。次から次へと起こるグローバルな挑戦及び解決が待たれる地域問題に直面して、中米は協調合作するのが筋であり、それは国際社会の普遍的期待でもある。しかし、アメリカは一方で中国をやっつけようとして躍起となり、中国の正当な権益を損なっている。そのくせ他方では、中国の支持と協調を冀っている。国際関係において未だかつてこのようなロジックはあった試しはない。中米のイデオロギー、社会制度、歴史文化は異なっている。これは客観的事実だ。どちらも相手を変えるのは不可能であり、正しいやり方は相互尊重の基礎の上で、両国がこの地球上で平和共存する道を共同で探求することだ。アメリカが何をしようとしても、中米関係は最終的にこの道を探求するしかなく、この道のみが可能であることを、歴史は必ずや証明するだろう。アメリカは理性的実務的な対中政策を実行し、中国の核心的利益及び重大関心を尊重し、両国首脳の話し合いの精神にしたがって、対話を強め、違いを管理し、中米関係が一日も早く正常な軌道に戻るように進めるべきである。
 ブリンケンは次のように述べた。米中が重要な国際地域問題で意思疎通を維持することは非常に重要だ。米中が平和共存を実現することが共同目標であることに同意し、協力を探求し、展開することを希望する。米中間に違いがあることは明らかだが、建設的な方法で逐次解決を図っていくことができる。すべてのテロに反対し、中国西部国境地域で動揺が起きることを求めないことを再確認する。アフガニスタン情勢の変化が再度示しているように、米中が建設的、実務的に地域の安全問題で協力していくことは極めて重要である。
(ロシア)
 両者はアフガニスタン大統領が国外に脱出した後の同国での事態の展開について話し合った。
 国務長官は、米行政府がカブールの米大使館スタッフを脱出させること及び現地の緊急な人道上の問題について通報した。
 ラブロフは、起こっていることについてのロシア側の評価を米側とシェアし、安定と秩序を回復するために、ロシア大使館がアフガニスタンの主要な政治勢力すべてとコンタクトしていることについて述べた。
 ロシア外相と国務長官は、中国、パキスタンその他の関係国及び国連の代表との協議を続け、新しい環境のもとで包括的なアフガニスタン内部対話を開始する条件を作っていくことに同意した。