7月17日のコラム「2021年版防衛白書と台湾問題」で7月14日付の環球時報掲載の呂小慶(中国在日本大使館参事官を経て現在は中日関係史学会常務副会長)署名文章を紹介しましたが、1ヶ月弱後の8月11日付の環球時報は再び彼の「日本はもはや受け身でアメリカに付き従う弟分ではない」と題する文章を掲載しました。最近訪米した秋葉剛男国家安全保障局長とブリンケン国務長官の会談での台湾問題への言及、岸信夫防衛相のフィナンシャル・タイムズでの台湾問題を中心としたインタビューを取り上げ、日本がますます台湾問題に深々と首を突っ込もうとしているとし、文章タイトルにあるように、日本はアメリカ以上に危険な行動に出ていると指摘し、中国が厳正な対応を取る必要があると最大限の警鐘を鳴らしています。
 台湾問題に関しては、バルト3国の一つであるリトアニアが急速に台湾と接近しており、同国に「台湾」名をつけた代表事務所を設置することで合意したことが中国の逆鱗に触れています。中国外交部の華春塋報道官は8月10日、駐リトアニア中国大使の召還を決定するとともに、駐中国リトアニア大使の本国召還をリトアニアに要求する強硬な立場を表明しました。これに対してリトアニア政府が「一つの中国」原則に基づきながら台湾との互恵的関係を発展する決意を表明したのに対し、同報道官は12日さらに、リトアニアが「台湾」名をつけた代表事務所の設置を許可したことは中国の主権と領土保全を深刻に損ない、「一つの中国」原則に違反していると指摘しました。
 この問題について8月12日付(WS掲載は11日22時9分)の環球時報は「リトアニア懲罰 中ロには大いに協力空間あり」と題する社説で、徹底した反ロシアのリトアニアに対して、リトアニアと国境を接するロシア及び白ロシアと中国がタグを組んで懲らしめることを提起した上で、日本にとって到底看過できない二つのことを提起しています。
一つは台湾問題で暴走する国家に対して中ロがタグを組んで懲罰する提案です。具体的には次のように述べます。リトアニアを日本に置き換えてみてください。

「中ロはアメリカに忠実な走狗を懲らしめて一罰百戒とする必要がある。アメリカの同盟友好国が国際関係原則のボトムラインを突破するやり方で中ロ両大国を挑発することを放任することはできない。中ロ戦略関係はアメリカの同盟国に対して威信を示し、アメリカの支持があれば中ロに対して勝手なことをすることができるなどという間違った判断を抑えるべきだ。中ロ両国は、理性を失った国に狙いを定めて痛撃を与えることを中ロ戦略協力における新たな内容及び方向にするべきである。リトアニアは中ロに対して同時に難癖をつけることについてもっとも極端に走っている国の一つであり、中ロがタグを組んで教訓を与える最初の対象になるべきである。」
 もう一つは、アメリカ主導で起こりつつある台湾問題に関する挑発と難癖は中国が台湾問題を処理するコストを高めているとし、台湾問題の徹底解決プロセス(=武力解放)を速めることを問題提起していることです。次の内容です。
 「アメリカが率いて起こりつつある台湾問題をめぐる挑発と難癖の新たな波は、中国が台湾問題を処理するコストがますます高くなっていく勢いを予示している。このことは、我々が一つの問題をもっと積極的に考えることを促している。その問題とは、台湾問題の徹底解決のプロセスを速め、米日及びその子分たちにとってのこの「カード」を根こそぎにすべきではないかという問題である。少なくとも、このような戦略的考慮は日増しに緊迫度を増している。」
 以上の環球時報社説の主張を念頭に置きながら、以下の呂小慶文章を熟読玩味することが必要だと思います。
 (秋葉と岸の上記言動を紹介した後)台湾問題が中心テーマであるということ自体が極めて尋常ではない。これまでの我々は、台湾問題における日本はアメリカの戦略的従属国として「虎の威を借りて威張る狐」であり、暴君を助けて暴虐を行うぐらいにしか考えてこなかった。しかし、本年3月の日米「2+2」東京会談以来、日本は台湾問題でアメリカよりもっと主動的になり、アメリカとグルになって悪事を働く一面を持ちつつ、より主動的に事を起こし、台湾問題では先陣を切るという一面を暴露するようになった。(中略)
 最近における日本の一連の行動を見るとき、台湾問題に関しては、アメリカの後ろにくっついている弟分と見るだけではすまなくなっている。日本が台湾問題で先頭に立とうとするのには三つの目的がある。第一、台湾問題をさらに複雑化させようとしてひっきりなしにこそこそと動くこと。例えば、オリンピック開会式で、中国と台湾の出場の順番をことさらにアレンジして台湾と中国大陸を物理的に切り離した。第二、台湾問題をますます国際化すること。岸信夫は、国際社会がもっと「台湾の生存」に注意を払うべきだとイギリス・メディアに呼びかけた。東京は、単独で中国と対するだけの力はないことが分かっているので、いわゆる国際社会を連合させ、台湾問題で新たな中国包囲網を形成することを考えている。第三、台湾という高度に敏感な問題をさらに常態化させようとすること。
 我々は、日本が今後台湾問題でさらに表立った、もっとも主動的な勢力になる可能性が高いということを正確に認識しておく必要がある。台湾問題において、アメリカは無言実行だが日本は有言実行だ。次に日本が取る一歩としては、アメリカが台湾問題で手を緩めないで中国に圧力をかけるように促す手立てを考えるとともに、イギリス、オーストラリア、インドなどと積極的に連絡し合ってなんらかの行動に出るという可能性が大いにある。
 日本が台湾問題で不断に線をまたぎ軌道を踏み外してあちこちで悪さを働くことに対して、我々は「台湾問題における冒険は戦争挑発にほかならず、火遊びするものは必ず火に焼かれる」という厳重な警告を与えなければならない。同時に我々は主動的に動き、国際舞台において台湾問題の境界をさらに明確にすることによって日本の企みを打ち砕き、また、台湾の分裂を企む様々な勢力が国際社会で孤立し、これに打撃を与えるようにするべきである。こうした主動的行動は、日本に対して、また、アメリカ及び国際社会に、台湾問題は中国にとって絶対に動かすことができないものであり、あらゆる代価を惜しまないものであることを見届けさせることになる。
 以上に加え、日本の妄動を牽制する上では沖縄問題を改めて取り上げることもできる。近代以後の日本は沖縄問題を口実にして台湾を侵略し、沖縄を不法に併合した後に台湾に黒い手を伸ばし、その後、9・18事変をでっち上げて中国東北地方を占領し、次いで全面的な中国侵略戦争を発動した。今日の情勢のもとでは、沖縄問題を改めて議論することが大いに必要である。明年は中日国交正常化50周年だ。中国は、日本が初心を忘れないこと、中日復交三原則の前提は「日台関係」を正しく処理することにあること、中日国交正常化の核心もまた台湾問題であることについて、日本に思い出させるべきである。日本は厳格に国際法及び国家関係の準則を遵守し、中日共同声明で行った国家としてのコミットメントを堅守し、一つの中国の立場を充分に尊重し、ポツダム宣言第8項を完全に実行しなければならず、以上の点についてはいかなる灰色空間もあり得ない。