拉林鉄道(拉薩(ラサ)-林芝)開通
6月25日付けの人民日報は一面で、拉林鉄道(拉薩(ラサ)-林芝)が6月25日に開通することを伝えています。中国高速鉄道の代名詞ともいえる「復興号」がこの区間も走るということであり、2006年に開通した青蔵鉄道(青海省西寧―チベット自治区拉薩)との連結を通じて、復興号が中国の31の省区市すべてを走ることになります。私は中国大使館勤務の頃から中国の鉄道で旅行して車窓からの眺めを見届けることが好きになりました。明治学院大学にはゼミの一環で「校外実習」というプログラムがカリキュラムに組み込まれており、年に一度はゼミ生と中国に旅行しましたが、鉄道利用が時間的にもっとも確実(1990年代まではまだ)ということもあり、いちばん長いものでは、北京-西安-蘭州、北京-ハルビンも鉄道で移動しました。そんな私にとっては、青蔵鉄道が開通したニュースを知ったときは、一度でいいから乗ってみたいというのが夢になりました(結局果たせないままで終わりましたが)。そういう私にとって、拉林鉄道開通のニュースはとても新鮮であるわけです。人民日報の一面記事はとても短いものですが、新華社、中央テレビWSなどは、青蔵鉄道、拉日鉄道(2014年に開通した拉薩とシガツェ(日喀則))という先行鉄道とも合わせて、詳しい解説記事を掲載しています。チベットへの鉄道旅行は「果たせぬ夢」に終わりました(拉薩へは空路で一度だけ旅行したことがあります)が、せめてこの機会に、関連ニュースをまとめておきたいと思い立ちました。なお、チベットを走る青蔵鉄道、拉日鉄道及び新しい拉林鉄道については下↓の地図でお確かめください。ちなみに、このコラムの紹介で刺激されて、チベット旅行を思い立つ方への忠告ですが、チベットは3000メートルから4000メートルにかけての高原地帯が圧倒的ですので、空気は薄く、高山病になる確率が高いです(私もかかりました)から要注意です。
1.拉林鉄道(拉薩(ラサ)-林芝)開通
拉林鉄道は全長が435.48キロ、青蔵高原のガンディス山脈(冈底斯山)とヒマラヤ山脈に挟まれたヤルンツァンボ川沿いの谷間を走り、90%以上が海抜3000メートル以上で、地形地質の条件は極めて複雑です。2015年3月に全線で建設が開始され、13万人以上が建設に従事しました。ヤルンツァンボ川をまたぐこと16回、橋の数は全部で121カ所、トンネルは47カ所。全部で38駅ですが、協栄-林芝間で新駅が34作られ、34駅すべてが景観の素晴らしい観光スポットになることが期待されています。ただし、当面は17駅で営業を開始します。他の2鉄道(青蔵鉄道はゴルムド-拉薩間、拉日鉄道は全区間がディーゼル機関車牽引)と異なり全線が電化されますが、使用される復興号は最後尾に2両のディーゼル機関車を配することで、地形地質条件の複雑さによる万一の事故に備えるとともに、電化と非電化が自由に切り替えできるようになっています。拉林鉄道は拉薩、山南、林芝の3市を結び、拉薩-山南間は最速で1時間10分、拉薩-林芝間は最速で3時間29分です。鉄道沿線はチベットの人口稠密区域であり、鉄道建設によってチベット東南部の鉄道空白を埋め、拉薩-林芝間の所要時間を大幅に短縮するとともに、年間の貨物輸送能力は1000万トンに達し、物流改善に大きく貢献することが期待されています。また、他の二つの鉄道とともにチベット高原に全天候型の運輸網を形成することでチベット全体を国内の大循環網に組み込み、チベットの質の高い発展を促進することが期待されています。