第74回世界保健総会(WHA)のエントリーが5月10日に締め切られ、台湾当局は「大陸当局の圧力で招待を受けられなかった」と明らかにしました。5月5日のG7外相会議共同声明は、G7各国が「一つの中国」原則にコミットしていることを無視して、「WHOのフォーラム及びWHAへの台湾の意義深い参加を支持する。国際社会はコロナ対策にかかわる台湾の貢献‥から裨益することができるべきである」(第18項)と明記しました。また、7日にはブリンケン国務長官が「2400万人の台湾の人々をWHAから排除するのはグローバルな保健目標を危うくし、今後の公共保健にとって不利になる」として、「WHOは台湾をオブザーバーの資格でWHAに参加することを招請するよう」呼びかける声明を発表しました。アメリカ及びG7のこれほど露骨な圧力にもかかわらず、WHAは台湾に対する招請を発出しなかったわけです。G7及びアメリカの国際政治における威信・地位の凋落ぶりをまざまざと見せつけるものでした。
 5月10日の中国外交部の定例記者会見でこの問題について質問された華春塋報道官(報道局長)は、「台湾問題は中国の核心的利益にかかわり、この問題に関しては中国には妥協、譲歩の余地はあり得ない」と強調し、アメリカの動きは「国際社会の大多数のメンバー国の断固とした反対に遭遇するに違いない」と述べました。今回の結果が示したのはWHOの194の加盟国の多くが「一つの中国」原則を遵守し、アメリカ等の最大限の圧力にもかかわらず、中国の立場を支持したということです。換言すれば、アメリカ以下の西側先進国が勝手に設定する「ルールに基づく国際秩序」は国際社会の受け入れるところではなく、アメリカ以下の西側先進国(日本を含む)も「国際法(「一つの中国」原則はその不可分の一部)に基づく国際秩序」を受け入れ、遵守しなければならないという、いわば「自明の理」が国際的に確認されたということです。
 私は、アメリカの対中国対決政策及びそれを「丸呑み」した今回のG7外相会議共同声明の圧力に対してWHOとWHAがいかなる回答を示すのか注目していました。私はアメリカの専横及びG7の居丈高な物言いがまかり通るようなことがあってはならないと確信しています。しかし「ひょっとしたらアメリカ及びG7の主張に流される国も少なくないのではないか」という懸念を捨てきれませんでした。今回の結果はそうした私の懸念を払拭するもので、ご同慶の至りです。
 5月10日及び11日の華春塋報道官の発言は、「一つの中国」原則に基づく中国の台湾当局に対する立場・政策を理解するには格好のものです。要するに、「一つの中国」原則に明確にコミットしていた国民党当局時代には柔軟な対応、この原則を承認しない(独立志向の)民進党当局に対しては厳しい対応、ということです。以下に華春塋報道官の発言を紹介しておきます。

(5月10日)
 中国はG7外相会議共同コミュニケにおける台湾関係の内容について厳正な立場を表明した。ブリンケンの関連声明は一つの中国原則及び中米間の3つの共同コミュニケの規定に深刻に背馳し、中国内政に深刻に干渉するものであり、中国は強烈な不満と断固とした反対を表明する。
 世界には一つの中国しかない。台湾地域が国際機関(WHOの活動を含む)に参画するに当たっては必ず一つの中国原則に従って処理しなければならず、このことは国連総会決議2578及び世界保健総会決議25.1も確認している根本原則であって、国際社会の普遍的な支持を得ている。民進党当局は頑固に「台独」の分裂的立場を堅持しており、このことにより、台湾地域がWHAに参画する政治的基礎はもはや存在しない。その責任はすべて民進党当局にあり、彼らはそのことを言うまでもなく理解している。
 アメリカは政治的目的から、台湾をWHAに参加させないことは「グローバルな保健目標を危うく」し、今後の公共保健上の危機に対応する上で不利であると大騒ぎしているが、これは彼らがでっち上げた政治的デマである。事実において、中国ほど台湾同胞の健康福祉に関心を寄せているものはいない。コロナ発生以来、中国政府は大陸以外では真っ先に台湾地域の保健専門家が湖北省武漢に赴いて視察するよう招請し、13回計52の防疫資料を共有するとともに、台湾地域に対して疫情防控に関する最新情報を何度も通報した。これらの情報は大陸で感染した台湾住民の情報を含む。また、大陸とWHOによるコロナ遺伝子配列等の情報も通報した。5月5日現在までに、中国政府が台湾地域に通報したコロナ関連情報は258回に及ぶ。本年3月には、テレビで結んだ両岸の防疫政策及び経験交流座談会を開催し、技術と経験を分かち合った。
 また、一つの中国原則に合致するという前提のもとで、中国政府は台湾地域がグローバルな保健問題に参画することもしかるべくアレンジしてきた。関係方面による不完全な統計によれば、2020年以来、台湾の医療技術専門家はWHOの技術的活動に16回参加しており、この中には第4回グローバル疫苗免疫研究フォーラム、WHO免疫戦略諮問専門家グループ会議等の重要な会議が含まれる。台湾地域は「国際保健条例」コンタクト・ポイントを設けており、WHOのWSにアカウントを登録していて、WS等を通じてWHOが発表する公共保健に関する突発的ニュースについても適時に取得することができるし、WHOに適時に通報することもできるようになっている。WHO秘書室は、中国政府の同意を経た上で、台湾地域の保健専門家に対して3回にわたって疫情について通報した。台湾地域は「コロナ疫苗実施計画」にも加わっている。台湾地域の専門家はWHO免疫戦略諮問専門家グループ会議にも何度も参加しており、コロナ疫苗に関する情報を適時かつ十分に取得している。…
 私は再度、台湾問題は中国の核心的利益にかかわり、この問題に関しては中国には妥協、譲歩の余地はあり得ないことを強調する。‥台湾問題について騒ぎ立てることをやめるようにアメリカに忠告する。このことは国際防疫に役立たないのみならず、必ずや国際社会の絶対多数のメンバーの断固たる反対に遭遇するであろう。
(5月11日)
 2016年に民進党が政権について以来、「台独」の立場を頑固に堅持し、両岸が一つの中国に属することを承認することを拒否したため、台湾地域がWHAに参加する政治的基礎はもはや存在しなくなった。台湾地域がWHAに参加できなくなった局面は民進党当局が作り出したのであり、民進党当局はこのことを言うまでもなく理解している。
 (台湾がWHO関連の活動に関与していることに関する10日の発言を繰り返した上で)民進党当局がWHA出席問題について騒ぎ立てる本当の目的は「コロナを利用して独立を図る」ことであり、我々はこれに断固反対する。事実が繰り返し証明しているように、一つの中国原則は国際社会の大勢が赴くところであり、民心の向かうところであり、民進党当局の企みが思いどおりになることはあり得ない。民進党当局に対しては、コロナにかこつけて政治的企みを行うことをやめ、自ら辱めを招くなと忠告する。
 (民進党当局が国連総会決議2578の引用は誤りであると指摘していることに関して)何が誤りだというのか。総会決議2578は、中華人民共和国政府代表は国連における中国唯一の合法的代表であると明确に承認している。世界には一つの中国しかなく、台湾は中国の一部であり、国連における中国の代表権の中には台湾を当然に含む。