4月15日のコラムで「梨の木ピース・アカデミー」で私が行っている6回シリーズの講座についてご案内しました。明後日(4月28日)には第5回「冷戦崩壊後の国際環境の変化とアメリカの対日政策」のお話しをすることになっています。レジュメができましたので、皆様にも紹介させていただきます。今回の講座に参加してみようかなと思われる方は、https://apply.npa-asia.net/items/39585006で申し込みできるそうですのでお試しください。ただし有料だそうです。

第5回:冷戦崩壊後の国際環境の変化とアメリカの対日政策

1.戦後日本外交-理念なき懸案処理外交-

(1)「日米基軸」:アメリカの対日要求エスカレーション(「懸案」)への受け身的処理

○日米安保条約改定(1960年)
-日米の思惑
*日本(岸政権)
**岸信介首相:改憲志向(警察官職務執行法-警職法-反対闘争で挫折)と条約の双務性(対等平等性)実 現意欲
**警察予備隊(1950年8月)→保安隊(1952年10月)→自衛隊(1954年7月)
**経済復興
*アメリカ(アイゼンハワー政権)
**日本のナショナリズムに対する配慮
**在日米軍の行動の自由及び在日米軍基地の自由使用(≓治外法権)の確保
-結果:「花をとらせて実をとる」
*形式的(法的)対等平等性:協定の「双務化」
*実質的不平等:地位協定による治外法権
○沖縄「返還」(1972年5月)
-日米の思惑
*日本(佐藤政権)
**佐藤栄作首相
***沖縄本土復帰:「沖縄が復帰しない限り、日本の戦後は終らない」(1965年)
***非核三原則:「核は保有しない、核は製造もしない、核を持ち込まないというこの核に対する三原則、 その平和憲法のもと、この核に対する三原則のもと、そのもとにおいて日本の安全はどうしたらいいのか、これが私に課せられた責任でございます。」(1967年12月) **経済成長と国民的保守化
***世界第2位の経済大国(1968年)
***高度経済成長→国民的「生活保守化」
*アメリカ(ニクソン政権)
**ヴェトナム戦争(1964年~)の重圧
***世界戦略見直し
***対日:沖縄「返還」の「見返り」を求める。
**アメリカ経済の衰退化傾向
***金・ドル交換停止(1971年8月)とドル防衛政策
***スミソニアン協定(1971年12月)と変動相場制
***ブレトンウッズ体制(1944年成立)崩壊
-結果:「花をとらせて実をとる」
*「返還」:「琉球諸島及び大東諸島に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定(1971年6月署名、1972年   5月発効):「アメリカ合衆国は‥平和条約第3条の規定に基づくすべての権利及び利益を‥日本国のために放棄する。日本国は‥これらの諸島の領域及び住民に対する行政、立法及び司法上のすべての権利を行   使するための完全な権能及び責任を引き受ける。」(第1条1)(←対日平和条約第3条)
**「基地」(第3条1)→治外法権・自由使用 X「本土並み」(公約)
**「核兵器」(第3条2)→「核密約」
**「労務費」(第7条)→「思いやり予算」(1978年)
   (参考)日米地位協定第24条(「合衆国軍隊を維持することに伴うすべての経費は、 2に規定するところにより日本国が負担すべきもの(注:地権者への補償等)を除くほか、この協定の存続期間中日       本国に負担をかけないで合衆国が負担することが合意される。」)
*日米繊維協定(1972年1月)
*ガイドライン(「日米防衛協力の指針」)(1978年):3項目の研究・協議事項に合意
**「侵略を未然に防止するための態勢」
**「日本に対する武力攻撃に際しての対処行動等」
**「日本以外の極東における事態で日本の安全に重要な影響を与える場合の日米間の協力」
○湾岸危機・戦争 (参考)浅井基文『新保守主義』
-アメリカ(ブッシュ(父)政権)  *同盟体制→新世界秩序構想
**脅威認識:ソ連→イラク(地域的不安定要因)
**軍事力行使・カネ:単独(+同盟国分担)→同盟国分担(+単独)
**法的根拠:自衛権(+集団的自衛権)→集団的自衛権(+自衛権)
**国連:迂回→選択的活用
***「お墨付き」:「集団的自衛権行使=集団安全保障措置」(安保理決議)
***「手抜き」:国連PKO活動、地域的機関
 *対日本:「基地提供」・「ホスト・ネーション・サポート(HNS)」→「分担」
**戦費負担
**後方支援
**「血を流せ」(アーミテージ)
-日本(海部俊樹政権・小沢一郎幹事長)
*「一国平和主義」→「軍事国際貢献」
**9条(平和主義):「イラクの侵略に対して何もしないですむのか」
**大国・日本:「カネだけ出せばいいのか」
**国連協力:「一国平和主義で国際批判に応えられるか」
 *対アメリカ
**戦費負担:20億ドル(+戦後復興20億ドル)
**後方支援:兵站活動拠点
**「血を流せ」:PKO法(「国際平和協力法」)(1992年6月)
○アメリカの戦略見直しと朝鮮半島情勢 (参考)浅井基文『国際的常識と国内的常識』 『新ガイドラインQ&A』
-クリントン政権
*「ボトムアップ・レビュー」(「アメリカの戦略構想の徹底的見直し」)(1993年10月)
**出発点:アメリカの安全確保
**脅威認識(4つの「危険」):核兵器・地域・民主主義・経済(市場経済)
**アプローチ:リーダーシップ+ヘゲモニー(=パワー・ポリティックス)
**特徴
***ユニラテラリズム>マルティラテラリズム
***選択的介入:「コスト」「我々にとってもっとも役に立つところ」「戦略的利益に影響がある国家」
***普遍的価値:人権+民主主義+市場経済
   ***二重基準:レーク「相互に利益になる場合は、非民主主義国家と友達になり、さらには彼らを防衛することが必要となる」
***同盟関係重視:「地域の警察官」
***国連:選択的利用
 *対日要求
  **ボトムアップ・レビュー
   ***大規模地域紛争への対処
  ****第一段階:侵略阻止(安保条約第6条実施交換公文の事前協議制度無視)
  ****第二段階:敵戦闘能力削減(自衛隊出動)
  ****第三段階:敵の決定的撃破(自衛隊参加)
  ****第四段階:戦争後の安定確保(占領管理)
   ***以上の対処を可能にするための法的枠組みの整備
   ****現存同盟(日米安保体制)の拡大→集団的自衛権行使への踏み込み
   ****「新たな地域安全保障取極・同盟の推進」→日米韓同盟(北東アジア版NATO)
  **TMD(戦域ミサイル防衛システム)の配備・共同開発
  **ACSA(物品役務融通協定)締結 (注)ACSA 1980年:「NATO相互支援法」→1986年:同盟国に拡大。1988   年:対日締結申し入れ
-朝鮮「核疑惑」とナイ・イニシアティヴ
*朝鮮の核開発と「核疑惑」
**1980年:原子力開発政策公表(労働党第6回大会)
**1985年12月:NPT加盟
**1987年12月:米朝参事官クラス接触開始
**1989年5月:CIAが北朝鮮の核開発能力を証明する決定的証拠を得たという韓国側報道
**1991年11月:米軍備管理軍縮局レーマン局長、北朝鮮が現在の速度で核兵器開発を進めれば、極めて早い時期に開発実現という見通しを述べる。チェイニー国防長官、IAEA査察だけでは不十分で、北朝鮮になん   らかの強制措置を検討すべきと発言。
**1991年12月:盧泰愚大統領、韓国には核兵器はないと宣言(←9月、アメリカ政府は海外戦術核兵器の本土   引き上げを発表)→南北共同声明
**1992年1月(30日):朝鮮・IAEA保障措置協定署名
**1992年5月~93年1月:IAEA、申告された16施設に対する特定査察実施
**1992年9月~93年2月:未申告2施設「訪問」→(92年10月米韓合同軍事演習チーム・スピリット)→92年12   月「試料採取」拒否→93年2月IAEA理事会特別査察決議
**1993年3月(12日):朝鮮、NPT脱退決定
**1993年3月(18日):IAEA緊急特別理事会、特別査察受け入れ要求決議
**1993年4月(6日):ブリックス事務局長、安保理に北朝鮮の態度は保障措置協定違反と報告
**1993年5月(11日):安保理、対北朝鮮再考要求決議(中国:棄権)
*米朝枠組み合意
**1993年5月~6月:米朝交渉→米朝共同声明(6月11日)
***アメリカ、平等かつ公正な対話継続に応じる。
***アメリカ、武力による威嚇・武力行使をしないと約束
***査察に関しては、「全面的な適用」(アメリカの要求)と「公正性の保障」(朝鮮の要求)の並列
***朝鮮、NPT脱退の効力を「一方的に臨時停止」
**1993年7月:米朝高官会談→米朝共同報道文(19日)
**1993年8月~94年5月:対朝鮮交渉難航
**1994年6月(13日):朝鮮、IAEA即時脱退表明→アメリカ、安保理に対朝鮮制裁決議案提出
**1994年6月(15日~18日):カーター訪朝
**1994年10月(21日):米朝枠組み合意(重油提供→黒鉛炉建設中止→軽水炉建設開始→……→原発提供・   核開発疑惑要素取り除き)
 *ナイ・イニシアティヴと新ガイドライン(1994.6.30~1995.7.8.村山政権→1996.1.11.~1997.9.11.  橋本政権)
**背景
***NATOの変質と役割拡大:1991年11月NATO首脳会議「同盟の新戦略概念」
****対ロシア警戒
****東方拡大
****多国間軍事行動への積極的参加
***クリントン政権の国際情勢認識と戦略:ボトムアップ・レビュー(既述)
***北朝鮮「核疑惑」で明らかになった日米安保の「欠陥」
  **1994年11月:ナイ訪日と安保「再定義」に向けた日米間の作業開始
***1995年2月:「東アジアにおけるアメリカの安全保障戦略」
***1995年3月:「米日安全保障関係報告」
**1995年11月:新防衛計画大綱
**1996年4月(15日):SACO(沖縄施設区域特別行動委員会)中間報告
**1996年4月(17日):日米安保共同宣言
***普天間返還と有事対処の取引:「花をとらせて実をとる」
***ガイドライン改定指針:安保「再定義」(日米安保条約の変質強化)
****地理的拡大:「日本以外の極東」→「日本周辺地域」
****時間的拡大:「事態」→「発生しうる事態」(緊急時・戦時→平時・緊急時・戦時)
****物理的拡大:「安全」→「平和と安全」(日本の安全に影響ある場合→いかなる状況にも対応)
****法律的拡大:「対米軍便宜供与」→「日米間の協力」
**1996年5月(16日):日本政府作業部会(「各種対米支援」「「沿岸重要施設整備・テロ対策」「法人等救   出」「難民救援」」
**1996年5月(29日):日米検討事項(「予防措置」(平時);「拡大防止措置」(周辺有事);「対日攻撃対   処」(対日攻撃))
**1996年6月:ACSA締結
**1997年9月(23日):ガイドライン見直し最終報告
→有事法制
→日米相互協力計画(平時)
→日米共同作戦計画(有事)

(2)「戦後処理」:対日平和条約に加わらなかった国々との懸案処理

○日ソ
-日本
*1954年12月:政権交代(吉田→鳩山)
*国連加盟:ソ連(安保理常任理事国)の了解が不可欠
-ソ連
*戦争状態終結・外交関係回復のメリット
*1953年3月:スターリン死去
*1953年7月:朝鮮戦争休戦
-日ソ共同宣言
*1956年10月19日署名、12月12日発効。
*戦争状態終了と友好善隣関係回復(第1項)、外交関係回復(第2項)
*国連憲章諸原則に基づく関係(第3項)
*ソ連、日本の国連加盟支持(第4項)
*ソ連、対日賠償請求権放棄(第6項)。「1945年8月9日以来の戦争の結果として生じたそれぞれの国、その団体 及び国民のそれぞれ他方の国、その団体及び国民に対するすべての請求権を、相互に、放棄する。」→個人 の請求権問題
*平和条約交渉継続(第9項)。「歯舞群島及び色丹島を日本国に引き渡すことに同意する。ただし、これらの諸 島は、日本国とソヴィエト社会主義共和国連邦との間の平和条約が締結された後に現実に引き渡される。」  →領土問題
○日韓
-アメリカ
 *日韓関係正常化に対する強い意識(反共陣営強化)
 *日韓交渉主導(1951年10月:予備交渉開始。1952年2月:正常化交渉開始。)
-韓国
*李承晩政権(1960年4月退陣)→朴正熙政権(1961年5月)
*朴正熙政権の交渉への積極姿勢
-日本
*アメリカの圧力
*「李承晩ライン」に対する反発
**日本漁船拿捕
**竹島領有権問題
*韓国の対日歴史認識・対日請求権提起に対する拒否反応
-日韓基本条約
*1965年6月22日署名、12月18日発効
*国交:外交関係「開設」(第1条)
 *植民地支配:1910年8月22日(「韓国併合条約」締結)以前の条約は「もはや無効であることが確認される」(  第2条)→歴史認識問題・領土問題
 *請求権:日韓請求権協定(第2条1「完全かつ最終的に解決」)→個人の請求権問題
○日中
-日本
*国連の中国代表権:台湾→中国(1971年10月)
 *アメリカの対中政策大転換(「ニクソン・ショック」1972年2月)
*佐藤政権(~1972年7月7日)→田中政権(1972年7月7日~)
-中国
*国内:文化大革命
 *対外:対米ソ対決→対ソ対決
-日中共同声明
*1972年9月28日
*侵略:「日本側は、過去において日本国が戦争を通じて中国国民に重大な損害を与えたことについての責任  を痛感し、深く反省」(前文)→歴史認識問題
*戦争終結:「これまでの不正常な状態は、この共同声明が発出される日に終了する」(第1項)(←日華平和条  約第1条「(日中間の)戦争状態は、この条約が効力を生ずる日に終了」)
*「一つの中国」原則(第2項)
*台湾問題:中国の立場を「十分理解し、尊重し、ポツダム宣言第8項に基づく立場を堅持する」(第3項)→佐  藤・ニクソン共同声明、バイデン・菅共同声明
*請求権:中国は日本に対する「戦争賠償の請求を放棄することを宣言」(第5項)→個人請求権問題
○日朝
-唯一の戦後処理未解決問題
-1990年9月28日:3党共同宣言
*植民地支配・賠償:「三党は、過去に日本が36年間朝鮮人民に与えた大きな不幸と災難、戦後45年間朝鮮人  民が受けた損失について、朝鮮民主主義人民共和国に対し、公式的に謝罪を行い十分に償うべきであると認  める。」「三党は、日本政府が国交関係を樹立すると同時に、かつて朝鮮民主主義人民共和国の人民に被らせた損害に対して十分に償うべきであると認める。」(第1項)
*国交樹立:「三党は、日朝両国間に存在している不正常な状態を解消し、できるだけ早い時期に国交関係を樹立すべきであると認める。」(第2項)
*在日朝鮮人:「三党は、在日朝鮮人が差別されず、その人権と民族的諸権利と法的地位が尊重されるべきであって、日本政府は、これを法的にも保証すべきであると認める。」(第4項)
-2002年9月17日:日朝平壌宣言
*第1項:国交正常化交渉再開
 *第2項
  **「日本側は、過去の植民地支配によって、朝鮮の人々に多大の損害と苦痛を与えたという歴史の事実を謙   虚に受け止め、痛切な反省と心からのお詫びの気持ちを表明」
**「日本側が朝鮮民主主義人民共和国側に対して、国交正常化の後、双方が適切と考える期間にわたり、無   償資金協力、低金利の長期借款供与及び国際機関を通じた人道主義的支援等の経済協力を実施」
**「1945年8月15日以前に生じた事由に基づく両国及びその国民のすべての財産及び請求権を相互に放棄するとの基本原則に従い、国交正常化交渉においてこれを具体的に協議」
**「在日朝鮮人の地位に関する問題及び文化財の問題については、国交正常化交渉において誠実に協議」
 *第3項:「日本国民の生命と安全にかかわる懸案問題については、朝鮮民主主義人民共和国側は、日朝が不正  常な関係にある中で生じたこのような遺憾な問題が今後再び生じることがないよう適切な措置をとることを確認」←「拉致問題」
-停滞・後退
*国際環境:2001年9.11事件後の「対テロ戦争」
*第二次「核疑惑」と米朝枠組み合意崩壊→6者協議
*日本政府の対朝アプローチ:「拉致問題の解決なくして国交正常化なし」

2.冷戦崩壊と日米関係変質への動き

(1)アーミテージ報告

○要注目点
-報告の性格
*対日強硬派:アーミテージと新防衛ガイドライン(ナイ・イニシアティヴ)のジョセフ・ナイ
*バイデン政権に対する影響力:報告作成参加者カート・キャンベル(バイデン政権インド太平洋調整官)
-対日関係要注目報告:2000年第1次と2020年第5次
*第1次
**「ブッシュ政権の対日政策の青写真」
**集団的自衛権行使を公然と要求
*第5次
①対中対決同盟提起
②日米「対等」同盟提起
-中国・朝鮮半島:5つの報告の記述内容の変化の有無に要注目
○5報告
-2000年10月7日:第1次 クリントン政権:~2001年1月20日;ブッシュ政権:2001年1月20日 森政権:2000年7 月4日~2001年4月26日
"The United States and Japan: Advancing Toward a Mature Partnership"
  「米国と日本:成熟したパートナーシップに向けて」
(第2次報告での自己評価)「報告は‥政治、安全保障、沖縄、諜報活動、経済の各分野における協力強化の具体 的措置を勧告したが、それはブッシュ政権の対日政策の青写真となった。」)
-2007年2月16日:第2次 ブッシュ政権:~2009年1月20日;オバマ政権:2009年1月20日~2013年1月20日 安倍 政権:2006年9月26日~2007年9月26日 *中国に対する肯定的見方
"The U.S.-Japan Alliance: Getting Asia Right through 2020"
  「米日同盟:2020年に向けアジアを正しく方向付ける」
-2012年8月:第3次 第2期オバマ政権:2013年1月20日~2017年1月20日 民主党政権:2010年6月8日~2012年12 月26日 *日本の民主党政権に対する厳しい見方
"The U.S.-Japan Alliance:anchoring stability in Asia"
  「米日同盟:アジアに安定を定着させる」
-2018年10月3日:第4次 トランプ政権:2017年1月20日~2021年1月20日 安倍政権:2012年12月26日~2020年9 月16日 *トランプ政権に対する距離を置いた見方
"More Important than Ever: Renewing the U.S.-Japan Alliance for the 21st Century"
  「21世紀のための米日同盟を更新する」
-2020年12月7日:第5次 トランプ政権:~2021年1月20日 バイデン政権:2021年1月21日~ 菅政権:2020年9 月16日~ *米日両新政権に対する働きかけを強く意識した提言
"The U.S.-Japan Alliance in 2020:an Equal Alliance with a Global Agenda"
  「2020年の米日同盟:グローバル・アジェンダを伴う平等の同盟」

(2)報告の認識-時系列変化-

○中国 2007年までは肯定的、2012年には肯定と警戒、2018年から警戒・敵対
-第1次(2000年)
*「アメリカを大規模な紛争に直接巻き込みかねない対立が‥台湾海峡において一瞬のうちに起こりかね  ない。」「中国の政治的経済的不安定は日米共通の挑戦」
*「アメリカの主要関心は中国との二国間関係」
*「中国の敵対的反応を恐れて米日は1996年宣言のアジェンダをフォローしてこなかった」
*「対中関係改善のため、中国封じ込め戦略を表に出さなかった」 *「中国が地域的政治・経済問題において積極的な勢力となるよう促す。」
-第2次(2007年)
*「中国では奥深い変化が展開中であり、それは中国が支配的な地域大国に躍り出る可能性を示している。‥  中国は地域の成長と地球的な活力の原動力であり続けるだろう。‥2000年10月報告以降、太平洋地域のもっとも重要な出来事は、中国の爆発的経済成長であった。」
*「中国は高齢化社会、不十分な社会保障、巨大で拡大が続く発展格差、構造的腐敗などの巨大な国内的挑戦  をかかえ、‥中国指導部の関心を国内に集中させ、‥総合的国力を発展させることのできる安定した平和的  な国際環境を求めている。」
*「価値観と外交の結びつきが米国の利益に否定的影響を与えうる‥イラン、スーダン、ベネズエラ、ジンバブエ、ウズベキスタンといった諸国に対する態度で明らか」
*「中国外交の主要な特徴の一つはエネルギー資源への安全で信頼できるアクセスを確立するという要求‥中  国の外部世界への依存増大は、米国とその友好国に外交的チャンスを与えることになるかもしれない。」
*「中国の集中的な軍近代化努力は、台湾との起こりうる紛争への準備に焦点があてられ、その努力は報われつつある。中国は周辺でハイテク戦争をおこなう能力を高めつつある。」
*「中国の近代化と成長‥の進む方向は不明。…重要なのは、中国が平和的な統合と有益な競争の道をすすむような選択をする動機を持っていること」
*「海底探査への大きな意欲が、アジアの安定を強めるかもしれない‥が、同時に中国は他の係争領域にたいする主張を強める誘惑にかられるかもしれない。」
*「エネルギー需要の増大は、競争だけでなく、一連の共同の利益をつくりだす。米国、中国、日本、インドの間には、海事安全保障の改善にたいしてますます大きな共同の利益がある。」
*「米日は2005年2月「2プラス2」声明で、「台湾海峡に関する問題の対話を通じた平和的解決を促す」という共通の戦略目標を発表。この目標は、当事者がその政治的相違を解決できない限り、われわれの指針原則と  しての役割を果たす…日本は台湾海峡をまたぐ平和と安定の維持に適切な方法で適応すべき」
*「中国は、他国の国内問題への「不干渉」と「低制約」の原理に基づいた多国間主義を受け入れている。中  国の参加は歓迎される」
*「米日が中国と向き合う二極構造は選択を地域の諸国に強いるので無力。地域のほとんどの国は厳格な中立  ないし中国との同盟を選ぶだろう。これは地域を冷戦に後戻りさせ、地域の安定に好ましくなく、中国の将  来の肯定的変化にとっても役立たない。」
*「正確な見通しは、製造業の中心地点としての中国の台頭は‥消費需要、投資資本、高技術の中心的な供給  源として、中国を米国と日本にますます依存するようにさせるということ」
*「中国の国益は一定の分野では米国と日本の国益と合致しつつあり、3国間協力で利益を得る可能性のあるような分野においてはその努力が追求されるべき」「米日は、中国が責任ある利害共有者となる方向に注意喚  起を追求しなければならない。」
*「東アジアの安定は米、日、中の三国の関係に依存しており、‥その関係を育成していく必要」
-第3次(2012年)
*「日米韓政府は‥中国の再興(re-rise)に対応する最適な地域環境を整えるために助力することが必要」「  日米同盟が中国の成功の一翼を担っている」
*「中国が新たに得た力をどのように利用するか‥透明性を欠き、はっきりしないことが、ますます懸念される」「特に心配な分野のひとつは、中国が中核とする権益の範囲を拡張する可能性。…尖閣諸島および南シ  ナ海における中国政府の意図に疑問が提起される。」
*「同盟国側は、中国の平和と繁栄から得るところが大きい。…(しかし)同盟国側は中国の軌道変更と幅広  い将来の可能性に適応できるような能力と政策を開発しなければならない」「中国の再興に対する能力と政  策を発展させなければならない」
-第4次(2018年)
*「米日は、オープンな地域的構造に対する中国の略奪的経済政策(ハイテク分野と「一帯一路」)の挑戦に直  面。米日EUはオープン、ルールに基づく投資環境を保全する共通戦略を必要としている。」
-第5次(2020年)
*「同盟にとって最大の安全保障上の課題は中国。中国の圧力の増加は、日米両国が台湾との政治的・経済的  な関わり方において、より一層の協力を必要としている。」
*「ロシアや中国との協力は、もう一つの課題」
*「ファーウェイに代わる代替技術を生み出すための民間部門の努力を促進」
*「地域インフラと経済発展。中国の「一帯一路」が汚職、負債、劣悪な基準の上に成り立っているという指  摘が強まっていることは、実行可能で透明性の高いインフラプロジェクトを形成する機会を示唆」
○朝鮮半島 ①米日韓3国関係の重要性強調(対日傾斜) ②朝鮮に対する厳しい見方・アプローチ
-第1次(2000年)
*「アメリカを大規模な紛争に直接巻き込みかねない対立が朝鮮半島において一瞬のうちに起こりかねな い。」
*「アメリカ、日本、韓国は、緊密な協力関係や目的の統一が、北朝鮮政府に対応する上で最も効果的な戦略  だという点で同意している。」
*「朝鮮半島における和解を促進する。」
-第2次(2007年)
*「統一の過程が2020年までに成就にいたる可能性は高い。死活的な問題は、その統一がいかに起こるかである。」
*「われわれの計算は、北朝鮮が核兵器開発を2020年まで、またそれを超えて開発し続ける可能性を含んでいなければならない。」
*「北朝鮮の核問題は再統一の場合のみ‥最終的に解決する、との可能性がますます高まっている…北朝鮮  は‥核とミサイル能力に自らの将来を賭けようとしている。」
*「金体制は‥2100万国民の将来は暗かろうとこのまま何とかやっていく方を選ぶだろう、というのがわれわれの結論」
*「6カ国協議プロセスが、北朝鮮の核兵器開発を封じ込める、あるいは凍結するだけにでも役立つなら、価値  あるものとなる」「6カ国協議が‥朝鮮半島において変化に対応し北東アジアの将来における安全を増進する重要なものであると証明されるかもしれない。」「米日は、5大国(米国、日本、中国、韓国、ロシア)間で多  国間協力の方が適している機能的課題を識別することに積極的であるべき」
*「現在の韓国政府にとって、朝鮮半島の不安定さは北朝鮮の核兵器計画以上の脅威とみなされ、‥ソウルの脅威評価を‥中国の評価に‥そろえさせている。」「ワシントンと東京にとっての難問は‥韓国との緊密な  協力関係を維持すること」
-第3次(2012年)
*「日米同盟、この地域の安定と繁栄のために極めて重要なのは、日米韓関係の強化」
*「日米韓政府は‥連帯して北朝鮮の核兵器開発を抑止する‥ために助力することが必要」「北朝鮮と同盟国  にとっての解決方法は、拉致や強制収容、政治および宗教の自由に関する厳しい制限だけでなく、食料安全  保障や災害救助、公衆衛生、教育、および文化交流を含めて、朝鮮半島におけるあらゆる人道上の問題に取  り組むこと」
*「日本が、韓国との関係を悪化させ続けている歴史問題に向き合うことが不可欠」「3国は非公式の場での活  動を通じて歴史問題に取り組むべき」「米日韓は歴史問題についてのトラック2会談を増やし、この問題に歩み寄る方法についての統一見解をもとめるべき」
*「2010年以来、韓国海軍の哨戒艦天安(Cheonan)の沈没、および延坪島砲撃事件などの挑発的軍事行動によって、北朝鮮の核とミサイルが大きな脅威となっている。金正恩の長距離ミサイル実験‥は北東アジアから  平和を奪うもの」
*「軍事情報包括保護協定 (GSOMIA)、物品役務相互提供協定(ACSA)を締結するために迅速に行動することは3 国の安全保障上の利益に資する」「三国間の防衛協力を強化するためには、東京とソウルはGSOMIA   とACSA を締結し、三国間軍事協約を継続していく必要」
-第5次(2020年) 文在寅政権の政策に対する批判的主張
*「第二の地域的安全保障上の懸念は、北朝鮮。非核化は長期的な目標ではあるが、短期的には非現実的‥核  武装した北朝鮮をいかにして封じ込めるかを考えることが優先。抑止力と封じ込め‥は日米同盟と米韓韓同  盟にとって優先事項。日米韓三国間の情報・防衛協力を強化する必要性」
*「北朝鮮に関する日米韓三国間の政策調整は、地域の安全保障にとって引き続き重要」
*「連携を構築する上でいくつかの課題を克服。特に重要なのは、日本と韓国の間の緊張が続いていること。  双方は、過去ではなく未来に焦点を当てる必要。」
○日本・日米同盟 ①小泉・安倍に対する肯定評価 ②一貫した9条改憲要求
-第1次(2000年)
*「日本は、第二次世界大戦の終結以来最も大きな社会的・経済的変化のただなかにある。日本の社会、経済  、国家としてのアイデンティティー、国際的役割が遂げつつある変化は、明治維新に経験した変化に匹敵するほど根本的なものとなる可能性をもつ。」
*「米日両国とも、国政の転換と重要な変化が起こっている時に、不確実なアジアの安全保障環境に直面している。」「21世紀に米日同盟を維持し強化するカギは、日本で進行中の変化の結果を予測する形でわれわれ  の二カ国間関係を作り直すことにある。」
*「国連平和維持活動への日本の参加、防衛分野での交流と安全保障問題の対話‥などは、日本政府の積極的  活動の高まりを裏付けている。」
*「日米同盟が、地域秩序の基礎としての役割を果たしてきた‥が、米日関係は進路を踏み迷っており、焦点  と一貫性を失っている。」
**「具体的共同と明確な目標設定の代替案を見つけようと善意の努力がなされてきたが、話し合いは散漫   で、共通の目的を明確に定義することができていない。…二カ国間の安全保障の結びつきを再定義し再活   性化する上で目に見える成果はあがっていない。焦点と計画の後に続く行動は明らかに欠落している。」
**「1996年の共同宣言は、‥米日防衛協力のガイドラインの改定、沖縄特別行動委員会(SACO)1996年報告   、戦域ミサイル防衛の共同研究の合意‥につながった。しかし、‥アメリカと日本の政策調整はすぐに、   揺らいで不十分なものへと戻ってしまった。」
**「1990年代の終わりには、アメリカは自己再生能力に欠けると写った日本に興味を失っていた。」「気まぐれな大統領府のリーダーシップは、アメリカの対日関係について、十分吟味した計画を作り出すことが   できなかった。」
**「アメリカの関心は‥中国との二カ国関係に主要な焦点をあててきた。」
 *「必要なのは、米日同盟を改善し、再活性化し、焦点をしぼりなおすことに、新たに注意を向けるべき時が来ていることにたいする認識」「アメリカと日本は緊急に、21世紀の両国関係に関して共通の認識とアプローチを発展させる必要がある。」
  **「米日防衛協力指針(ガイドライン)の改定は、太平洋をまたぐこの同盟で日本が果たす役割の増強に向   けた、上限ではなく、基盤」
  **「日本が集団的自衛権を禁止していることは、同盟間の協力にとって制約。この禁止事項を取り払うことで、より密接で、より効果的な安全保障協力が可能になろう。」
 *「米日同盟に必要な要素:
 **尖閣を含む防衛誓約の再確認
 **新ガイドラインの実行。有事立法成立を含む。
  **軍事施設共同使用。演習活動統合。実践並み訓練。相互支援のあり方定義。
  **PKO全面参加(1992年PKO法の制約取り払い)。
 **防衛技術交流
 **ミサイル防衛協力範囲拡大」
-第2次(2007年)
*「米国の未来は、2020年の新たな アジアとの強固でダイナミックな関係を求めており、その要石は引き続き米日同盟である。」
*「(9.11を受けてブッシュ・小泉は)かつてない個人的および戦略的なパートナーシップを築き、それは「  不朽の自由作戦〔アフガニスタン攻撃〕」、イラクの解放と再建、北朝鮮の核危機への対応、台湾・中国間  の新たな緊張の現れ、2004年12月の津波への大掛かりな対応といった大激動の中で試された。」
*「同盟は、過去数年の試練を乗り越えてより強くなっている。しかし、新たな地球的および地域的挑戦の波  が引き続き高まっている。」
*「日本が民主国家として、自らの過去に取り組み、近隣諸国と協力的な未来を形作る力を持っていると確信  ‥その未来は、過去と客観的に向き合うという点で双方向のものでなければならない。」
*「米日同盟戦略成功のカギは、共通の脅威に基づいた排他的な同盟から共通の利益と価値観に基づいたより開かれた包括的な同盟へと発展し続けること」「日本の新しい指導者たちは‥より積極的な安全保障と外交  の役割を主張。米国はその方向を約束する日本を必要としている。」
*「米日同盟はこの数年顕著に成熟。小泉首相の指導力と政治意思は、インド洋、イラク、中東のその他地域  への展開によって、国際舞台における日本の地位を高めるものとなった。」「自衛隊が、‥インド洋‥イラク内および周辺に展開したことは、東アジアの地理的範囲を越えて貢献をおこなうという日本のイニシアチ  ブを示す。日本の海外作戦参加は‥米日‥の上下関係を弱めた。」
*「重要なのは、日本は自分自身の防衛の主要部分を担う点でも責任を引き受けること。その中には、‥ミサイル防衛能力が含まれる。」「日本は‥同盟をより対等のものにしなければならない。」
*「憲法について日本でおこなわれている議論は、地域および地球規模の安全保障問題への日本の関心の増大 を反映するもので心強い動き。…米国は‥より大きな自由をもつ同盟パートナーを歓迎」
*「日本軍の海外配備の道を開く法律(特別措置法が必要とされる現行制度とは反対)について現在進められている討論も、励まされる動き」
*「米日はインドとの間で‥3カ国間協力にむけた適切な機会を追求しなければならない。」
-第3次(2012年)
*「日米関係が漂流している‥。‥同盟の健全性が危機に瀕している」「中国の再台頭とそれに伴う不安定要 素、核能力と敵対的意図をもつ北朝鮮、そしてアジアのダイナミズムの兆しに直面」「今日の大問題に適切 に対処するには、より強力でより平等な同盟が必要」
*「日本には決定しなければならないことがある。つまり、日本は一流国家であり続けたいのか、それとも二 流国家に成り下がって構わないのか?」
*「1980年代の見直しでは地理的範囲を拡大し東アジアでの協調能力を向上させ、90年代の見直しでは日本の防衛協力の空白部分に関する機能を明確なものとした。今日では、利害地域は遠く南へ、さらには中東まで 拡大。今後の新たな見直しでは‥より広範な地理的範囲を含めるべき」
*「北京による 「第一列島チェーン(日本、台湾、フィリピン)」、もしくは北京が考える「近海」全体に対 してのより強大で戦略的な影響を与える意志‥接近阻止・領域拒否(A2AD)という挑戦」
*「南シナ海における平和と安定は、特に日本にとって大変重要な、もう一つの極めて重要な同盟利害。‥米 国と協力して監視を増強することは日本が関心を示すところ」
*「日本の「武器輸出三原則」の変更が武器輸出と技術協力に関する政策の窓を押し広げている。」
*「米国と日本は、米国の拡大抑止戦略と軍事力における相互の信頼を強める為に、現在の拡大抑止に関する対話を再活性させるべき」
*「日本の集団的防衛の禁止に関する改変は‥平和憲法の改正を求めるべき。集団的自衛の禁止は同盟の障害 。3.11は、(日米)軍が必要な時にいかに軍事力を最大限に活用できるかを証明した。平和時、緊張、危機、 及び戦争時の防衛範囲を通して完全な協力で対応することを我々の軍に許可することは責任ある権限行動 」「平時から緊張、危機、戦争状態まで、安全保障上のあらゆる事態において、米軍と自衛隊が日本国内で全面協力できるための法制化を‥責任もって行うべき」「同盟国には、日本の領域をはるかに超えて拡張し た、より堅牢で、共有され、相互運用の可能な情報・監視・偵察(ISR) の能力と運用が必要」
*「必要であれば武力を行使してでも、市民と、同様に他の国際的な平和維持軍を守ることができるような法 的権限を自国の平和維持活動軍に与えることを奨励」「多国籍の取り組みに積極的に参加すべき」
-第4次(2018年)
*「米日は平和と繁栄を脅かす増大する脅威に対して同盟を強化すべき」
*「過去5年、日米は新ガイドライン制定、同盟協調メカニズム設立、迎撃ミサイル開発。日本は集団自衛行使 を可能にする安保法制刷新、より積極的な世界的関与戦略、インド太平洋でのリーダーシップ発揮」
*「(トランプの)「アメリカ第一主義」と前方展開疑問視は同盟に対する深刻なリスク」
*「日米同盟は世界・アジアでより大きいリーダーシップを担うべき」
*「日米同盟は4つの挑戦に直面」
**「国際秩序:権威主義資本主義+同盟と現行国際秩序を疑問視するトランプ政権」
**「価値:ないがしろにするトランプ政権」
**「保護主義:不公正経済慣行に頼る中国等」
**「軍事:中国の軍事力現代化と「グレー・ゾーン」での活動」
*「トランプ政権、「自由で開かれたインド太平洋」という安倍のコンセプトを採用、拡大」
*「中国の能力・野心の増大及び北朝鮮の核・ミサイルの脅威は日本の防衛支出をGDP1%以上にすることを必 要としている。」
*「中国、北朝鮮及びロシアの増大する軍事力・強圧的行動に対して米日同盟のデタランス及び戦闘力強化は至上命題」
-第5次(2020年)
<序文>
*「今回の報告書は、アジアのパワー・ダイナミクスの変化と日本への新たな期待から、特に重要である。実 際、日米同盟の歴史の中で初めて、日本は、主導的とまではいかないまでも、同盟の中で対等な役割を果たしている。日本のリーダーシップを奨励し、より対等な同盟から最大限の価値を引き出すことは、ワシント ンと東京の双方の指導者にとって重要な課題である。」
*「日本がより積極的な姿勢を示すようになった背景」
**「第一、日本はますます厳しい国家安全保障環境に直面」
**「第二、米国の一貫性のないリーダーシップが、日本にアジアや世界の戦略的問題をリードする力を与えてきたこと」
*「功績は、安倍晋三元首相」
**「国連憲章に基づき集団的自衛権を行使することを認める日本国憲法第9条の解釈変更を実現し、米国や他 の志を同じくする国々との新たなレベルの共同国際安全保障協力に乗り出した」
**「自由で開かれたインド太平洋構想」を掲げ、中国の非自由主義的な野心に対抗するための戦略的枠組みを構築」
*「日本のリーダーシップの役割を維持しようとする菅義偉首相の努力を熱烈に支持し、ジョー・バイデン大 統領と最も早く会談する訪問者の一人になるよう奨励」→菅首相訪米
*「中国の台頭に対応するために必要な地政学、経済、技術、ガバナンスの4つの戦略的課題のすべてに不可 欠な国」
*「共通の枠組みを創設し、優先順位と実施を調整することが、今後数年間の同盟の最重要任務」
<同盟の前進>
*「日米同盟は相互運用から相互依存へと移行しつつあり、危機に対応するだけでなく、長期的な課題にも対 応するために、双方がお互いを必要」
*「同盟にとって最大の安全保障上の課題は中国。中国の圧力の増加は、日米両国が台湾との政治的・経済的 な関わり方において、より一層の協力を必要としている。」→バイデン・菅共同声明
*「第二の地域的安全保障上の懸念は、北朝鮮。非核化は長期的な目標ではあるが、短期的には非現実的‥核 武装した北朝鮮をいかにして封じ込めるかを考えることが優先。抑止力と封じ込め‥は日米同盟と米韓韓同 盟にとって優先事項。日米韓三国間の情報・防衛協力を強化する必要性」
*「一刻も早く‥在日米軍駐留経費負担に係る特別協定(a Host Nation Support Agreement)を締結」
<パートナーシップと連携の拡大>
*「日米同盟は、地域内又は欧州などの価値を共有する国々との間で、多くの補完的で協力的な関係を強化。 日米同盟は、この一連の連携(coalitions)の核。過去20年間、北京の活動は、日米の支援によって促進されたアジア域内協力の新たなパターンに拍車をかけてきた。」
*「日本はオーストラリアやインドとの二国間、三国間の連携を強化し、クアッドが有望な新たな役割」→クアッド首脳テレビ会談
*「北朝鮮に関する日米韓三国間の政策調整は、地域の安全保障にとって引き続き重要」→文在寅大統領訪米
*「連携を構築する上でいくつかの課題を克服。特に重要なのは、日本と韓国の間の緊張が続いていること。 双方は、過去ではなく未来に焦点を当てる必要。」→文在寅大統領訪米
*「ロシアや中国との協力は、もう一つの課題」
<経済技術協力の強化>
*「日米安保条約第二条」
*「ファーウェイに代わる代替技術を生み出すための民間部門の努力を促進」
*「地域インフラと経済発展。中国の「一帯一路」が汚職、負債、劣悪な基準の上に成り立っているという指 摘が強まっていることは、実行可能で透明性の高いインフラプロジェクトを形成する機会を示唆」
*「エネルギーと気候変動。2050年までに日本経済をカーボンニュートラルにするという菅首相の公約は、韓 国の同様の公約と一致」
<結論>
*「より対等な日米同盟を構築」