4月7日付け(ウェブ掲載は前日17時57分)の環球時報は、「中国対日本 幻想抱かざれば失望なし」(中国語タイトル"中国对日本不抱幻想就不会有失望")と題する社説を掲載し、4月5日に行われた外相電話会談で王毅外交部長が茂木外相に対して「手を伸ばしすぎるな」と直言したことを紹介した上で、中日関係は「新たな震動期に入る流れにある」とし、「日本は相当当てにならない国家であり、外交自主能力は極めてお粗末、アメリカの影響は絶対、外交的道徳感も極めて低い」、「外交本性は、正義を擁護することではなくして実力に屈服することにある」などと、中国の日本に対する基本判断を率直に披瀝しました。4月6日のコラムで日中関係の基調変化を指摘しましたが、今回の環球時報社説を読むと、中国側イニシアティヴで実現した今回の外相電話会談における中国の対日メッセージの趣旨が奈辺にあるかを理解することができます。この対日メッセージをどう受け止めるかは人によって大いに異なると思いますが、これほどあけすけな対日認識表明は極めてまれ(それだけ、中国が菅政権に対する不信感を増幅していることが伝わってくる)ですので、社説の内容を紹介します。ただし、日本(菅政権)の対中強硬姿勢が尖閣問題で中国の譲歩を引き出すことに狙いがあるという社説の判断には、私としては首をかしげることをつけ加えておきます。

 王毅は5日に茂木に電話し、多くの一致点を達成(実務協力強化、相互のオリンピックに対する支持等)したが、激しく応酬し合ったことも事実で、茂木は釣魚島、新疆、香港などの問題を提起し、王毅は他人に追随して騒ぎ立てるようなことをせず、「手を伸ばしすぎるな」と直言した。
 総じて見るとき、最近の日本はアメリカに付き従い、調子を合わせて対中圧力に関する跳ね上がりが目立ち、中日関係改善の流れに暗い影を落としている。菅義偉は4月中旬に訪米することになっており、訪米前に中国に対して強硬姿勢を示すことでアメリカのご機嫌を取ろうとするオポチュニズムを示している。
 中日関係は昨年になって新たな起伏に見舞われた。コロナ勃発当初は「風月同天」(鑑真)だったが、その後アメリカでコロナが蔓延し、トランプ政権が中国にその責任を転嫁し、極端な対中政策に転ずると、日本の対中政策も動揺し始め、新たな震動期に入る流れにある。
 日本の損得勘定には大きくいって二つの原因がある。一つはアメリカの引力であり、日本の対外関係において一貫して主導的要素である。第二次大戦でアメリカに徹底的にやっつけられた日本は、アメリカの同盟国の中では実力最強だが、アメリカに対してもっとも従順な国家である。ワシントンが自分の側につけと要求するとき、日本はその要求に対してもっとも抵抗できない国でもある。日本の独立自主性は同じくアメリカの同盟国である韓国にも明らかに及ばない。
 もう一つの原因は日本自身のソロバン勘定だ。中米関係が深刻に悪化したのを見て、日本は自分にチャンスが訪れたと思い、強硬姿勢で北京に圧力をかけ、釣魚島(尖閣)などの問題で中国が譲歩することを引き出し、日本が2012年に「国有化」した後中国が同島海域で巡航を常態化したことを取り消すことなどを狙っている。ただし、日本は中国内政に干渉する第一歩を踏み出しはしたが、今のところはまだ随唱する段階で、外交的に意思表示するレベルにとどまっており、EUの如くシンボリックな対中制裁を行うまでの勇気はない。
 中日関係における今回のブレは次のことを我々に告げている。すなわち、日本は相当当てにならない国家であり、外交自主能力は極めてお粗末、アメリカの影響は絶対、外交的道徳感も極めて低い。日本は歴史的に繰り返し中国を傷つけた国であるのに、中国に対して常に偏見で臨み、日本を征服したアメリカに対してはペコペコして言うがままになる。その外交本性は、正義を擁護することではなくして実力に屈服することにある。したがって、中日関係はしょせんうまくいかず、我々としては日本に幻想を抱くまでもない。
 同時に見届けておく必要があるのは中国経済の不断の成長の蓄積が日本に対して持っている吸引力であり、日本の対中輸出はすでに対米輸出を上回り、日本の中国市場に対する依存はすでにできあがっていて、このことは日本が中米間で身を処するに当たって重大な制約となっているということだ。さらに、日本と周辺諸国との関係はすべて緊張しており、日本としては中国を戦略的敵とするまでの勇気はない。したがって、中日関係はさらに悪化するとしても、悪化の限度には限りがある。
 以上の現実に対して、中国としては対日関係の処理に当たってもっとおおらかであるべきである。日本に対して批判し、指摘すべきことについては遠慮する必要はない。日本は中国及びアジアに対して借りがある国であるのに、中国批判となるといささかの遠慮もない。我々としても、必要なときには日本の偽善を世論の前に存分に並べ立て、アメリカの従属国である日本のイメージを強めていくべきだ。ただし、ケンカするにしても罵るにしてもそのレベルにとどめるべきであり、日本が外交及び世論のレベルでしのこのする限りにおいては、我々としてもこれらのいざこざや恨み辛みを相応のレベルにとどめておくべきである。中日関係の二つの本質は安全保障と経済であり、安全保障というひもは主にアメリカが引っ張っているが、経済上の紐帯は中国に移りつつある。時間(歴史)は経済的紐帯が最終的に安全保障のひもを圧倒するだろう。我々は時間(歴史)を信じるべきである。
 釣魚島は中日間の根本の対立点ではない。それは両国の総合関係における風向計であり、試金石である。釣魚島問題が激化するときには両国関係の他の分野でも必ず問題が起こっている。日本が近頃釣魚島の争いを騒ぎ立てるのは、中国に戦略的譲歩を迫ろうとしているからである。釣魚島は中日関係における管制高地であり、東京としては、アメリカの圧力に直面する中国がますます「日本を引き寄せる」ことに力を入れるだろうと期待しているのだ。しかし、日本は考えが間違っている。中国は中日長期友好に力を尽くすが、中国は原則のある国である。原則なかりせば大国は立つによるなし。オポチュニズムは日本の独占物にしておこう。