2月1日に閉幕したヴェトナム共産党第13回全国代表大会は、同国の「国際的地位及び実力の変化を反映して、大会報告は従前の大会とは異なり、自信にあふれるものだった」(2月2日付け新華社ハノイ電が紹介した越中友好協会副主席で戦略及び国際関係発展研究センター顧問の阮栄光の発言)とされ、採択された決議は経済戦略及び外交路線に関して注目すべき内容を盛り込んだものとなったようです。中国メディアがヴェトナムについて突っ込んだ分析を紹介するのを見たことはほとんどないのですが、2月2日付けの環球時報は、司鎮濤署名の「注目すべき興国ドリーム下のヴェトナム外交」と題する文章を掲載しています。司鎮濤の肩書き紹介は「ヴェトナム問題学者」となっています。司镇涛については、中国検索サイト「百度」をチェックしても出ていませんが、2017年8月30日付けの環球時報掲載の彼の文章においては、「中国東南アジア研究会常務理事」という肩書きもついています。
 私はヴェトナム問題にはまったくの門外漢であり、この文章を評価する能力はありませんが、内容自体は極めて濃く、中国におけるヴェトナム認識の一旦も垣間見ることができて、とても勉強になりました。皆さんにもお裾分けしようと思い立った次第です。

 ヴェトナム共産党の第13回全国代表大会は2月1日にハノイで閉幕し、新指導部を選出するとともに、意気込みあふれる「興国ドリーム」を確定し、このドリームを「繁栄及び幸福な国家を建設する渇望」と称した。ヴェトナムはこれにより新たな発展段階に入り、各分野で新たな変化と気概を出現することになるが、外交もまた然りである。大会の政治文献内容及び会議代表、ヴェトナム学者の言論から読み取ると、今後のヴェトナム外交に関しては以下の注目すべき特徴が指摘できる。
 第一、「興国ドリーム」を支えることが核心的任務であること。13回党大会の計画に基づけば、ヴェトナムは「3ステップ」及び「2つの百年目標完成」の方式で興国ドリームを実現する。第一ステップは、2025年までに現代化を指向する工業システムを備え、低収入国家グループから卒業すること。第二ステップは、党成立100周年の2030年までに現代化工業システムを備えた「高平均収入」の発展途上国になること。第三ステップは、建国100周年の2045年までに高収入の先進国になること。以上の目標を実現するためには、国内における高度の安定、経済の快速発展そして社会の全面的進歩を保証しなければならず、外交政策はこの中心目標をめぐって策定される。今後、ヴェトナムは周辺の平和環境を維持し、主要経済国・圏との協力を強化し、「主動的、全面的かつ柔軟に」国際社会に溶け込み、ヴェトナムの発展のためにすべての可能な有利な要素を勝ち取る。
 第二、平和を確保し、戦争と衝突を防止することが重要目標であること。大会は次のように認識する。すなわち、ヴェトナムは総体的に平和な環境に面しているが、世界情勢は変化に満ちており量りがたく、大国間の戦略的競争は日ごとに複雑かつ激烈となり、東南アジア地域は大国の争奪に直面し、海上の情勢も緊張して複雑である。これらの問題の処理を誤ると、ヴェトナムの興国ドリームの実現に深刻に影響するだろう。したがって、13回大会は次のことを強調する。すなわち、外交工作は平和で安定した周辺環境を「創造し、擁護する」べきであり、「主動的予防を主とすることに転換し」、「スピードと先見に立脚して戦争と衝突を防止する」。ヴェトナムにとってもっとも関心があり、もっとも敏感な領土及び海洋問題に対しては、ヴェトナムは「断固防衛」を表明しつつも、外交及び国際法のレベルで「断固として闘争を堅持する」とともに「衝突は断固回避する」べきであるとする。以上から、ヴェトナムは外交、法理及び国際世論においてより強力に行動するだろうが、具体的行動においては慎重を保ち、軽率にリスクを冒すことはないだろう、と予見することができる。
 第三、有利な外交システムを構築することが新しい重点となること。具体的には、ASEANに立脚して、多角的外交を推進し、国際政治経済におけるヴェトナムの地位と役割を高めることである。今後、ヴェトナムはより主動的かつ積極的にASEAN全体の行動能力を推進し、ASEANが地域問題及び大国の争いに介入を深めることを推進し、「大国の均衡」を理想から現実に変えようとするだろう。また、ASEANに依拠して、国連、APEC、メコン流域協力におけるヴェトナムの地位と役割を高めるとともに、国際政治経済秩序の構築及び「モデル化」のプロセスの中で自らの位置を確保し、このプロセスの中で、平和を追求し、法律を遵守し、秩序を維持し、協力を追求するヴェトナムという国際イメージを際立たせようとするだろう。
 第四、大国との関係を巧みに処理することは重点中の重点であること。ヴェトナムにとって外交における重点中の重点はなんと言っても中米両大国であり、中米両国はヴェトナムにとって死活的な協力パートナーであるとともに、防備し闘争する重点的な対象でもある。今後、ヴェトナムは「協力しかつ闘争する」原則によって中米両国との関係を処理するだろう。アメリカに対しては、相互利益の増大と相互信頼の増強に努め、一定の重大問題においてアメリカの力を借りて自らの国防、外交上の能力の不足を補うとともに、アメリカの内政干渉・破壊に対しては抵抗するだろう。中国に対しては、両国間の違いに関して「断固とした闘争を堅持」し、対中「経済依存」の減少に努めるとともに、対中関係の安定及び自国に有利な政治及び経済の協力を積極的に追求するだろう。大国間の争いに対しては定力を保ち、「絶対に一方を選ばず、その側に立たず」、同時に、大国間の矛盾を十分に利用して、戦術上の合従連衡によって戦略上の重大な利益を獲得する。
 野心満々で実力を備えるヴェトナムに対して、中国としては、「長期安定、未来指向、善隣友好、全面協力」という16文字方針を堅持すると同時に、認識及び思考方法に関しては修正すべき点がある。
 第一は重視。中国は一貫して中越関係を重視しているが、国内の少なからぬ当局者、学者はヴェトナムを「小国」と見なしている。事実は、ヴェトナムの人口は1億人に近く、発展は急速であり、興国ドリームを実現した暁には韓国ひいては日本並みとなり、その重要性はますます突出するだろう。
 第二は冷静。ヴェトナムは大国間の競争の中で一方の側に立たないことを繰り返し強調する。これは歴史の教訓と現実の必要とに基づくものであるが、それ以上に興国ドリームを実現するためにはしなくてはならない選択である。域外勢力がいかに力を使っても、情勢に極端な変化が起こらない限り、「ヴェトナムがいずれかの側に立つ」という問題は起こりえない。
 第三は二分。中越間には多くの共同利益が存在するとともに、突出した矛盾と違いもある。共同利益の分野における協力スペースは大きいが、違いの分野における妥協スペースは極めて小さく、短期的には両者間の取り替えは不可能だ。したがって、協力可能な分野では協力を強化し、堅持するべき分野では堅持するべきであり、協力によって違いを緩和できると考えるべきではなく、違いによって協力が中断されると心配するべきでもなく、中越双方は周辺環境の平和と安定に力を致すことであり、この一点さえしっかり把握すれば、大きな乱れが起こることはあり得ない。
 第四は現実。ヴェトナムは「一帯一路」及び運命共同体建設に関して短期間では解きほぐすことができない疑いを持っていることについて、我々は客観的事実として向き合うべきである。我々は理想主義と一方的思い入れを放棄する必要があり、まずは他の東南アジア諸国に対する働きかけを行い、ヴェトナムに対しては辛抱強く待つべきである。また、ヴェトナムは中国に対する「経済依存」を低め、さらには除去することに努力しており、経済発展が順調で、外国からの投資が活発であるもとでは、ヴェトナムのこの面での「渇望」はさらに強烈であるから、中国の投資者は理性的な認識を持つ必要がある。