中国健康管理協会健康文化委員会(浅井注:中国検索サイト「百度」によれば、協会は2016年に国務院の批准を経て成立した、中国健康管理部門初の「国家一級協会」の独立社団法人で、委員会はその直属機関)の主任委員である王立祥は、1月18日付けの環球時報で、「伝染病の一種である新型コロナ・ウィルスには基本的な感染法則がある。ウィルス感染の3要素は感染源、感染経路及び感受性集団(中国語:'易感人群'。英語:'susceptible population')であるが、コロナの予防コントロール上もっとも重要なのは感染源を抑え込むことだ。如何にして感染源をコントロールするか。無症状感染者、コールド・チェーン食品「汚染者」、スーパー・スプレッダー(super spreader)から着手し、タイムラプス予防コントロール(無症状感染者)、タイムリー監察コントロール(コールド・チェーン食品「汚染者」)、インスタント管理コントロール(スーパー・スプレッダー)によって総合的対策措置を講じる」と述べ、3つの感染源に対するコントロールの具体的内容を詳述しました。
 日本では感染拡大に歯止めがかからず、なすすべもない状況に陥っています。しかし、中国では基本的にコロナ・ゼロを実現していますから、今の中国にとっての課題は、新たに入り込む感染源を「入り口」で抑え込むこと(コールド・チェーン食品「汚染者」)、「入り口」をすり抜けた感染源で「質が特に悪いモノ」を徹底的に見つけ出すこと(無症状感染者及びスーパー・スプレッダー)が重点とされるわけです。王立祥は簡にして要を得た中国のコロナ対策の要諦を明らかにしていて参考になりますので、要旨を紹介します。
 ちなみに、私は昨年12月10日のコラムで豊洲市場の集団感染について触れました。私の問題意識は、日本でも輸入冷凍・冷蔵食品などに付着しているコロナ・ウィルスの問題を重視する必要があるのではないかということでした。中国でこれほど重視されている問題が日本ではまったく取り上げられないのはいかがなものかということです。また、無症状感染者(スーパー・スプレッダーも無症状感染者である場合が多いとのこと)を野放しにしている日本のコロナ対策は致命的な問題を抱えていることを王立祥の指摘から理解することも極めて重要だと思います。無症状感染者を捉えるにはPCR検査の徹底以外にないわけで、PCR検査に対して消極姿勢を貫く医系技官主導の安倍・菅政権のコロナ対策がコロナ流行抑え込みにはまったく無力であることを理解できるのです。

王立祥「新型コロナの「三者(三感染源)」を見定め、予防コントロールの「三時(タイムラプス、タイムリー、インスタント)」を把握する」
 伝染病の一種である新型コロナ・ウィルスには基本的な感染法則がある。ウィルス感染の3要素は感染源、感染経路及び感受性集団(中国語:'易感人群'。英語:'susceptible population')であるが、コロナの予防コントロール上もっとも重要なのは感染源を抑え込むことだ。如何にして感染源をコントロールするか。無症状感染者、コールド・チェーン食品「汚染者」、スーパー・スプレッダー(super spreader)から着手し、タイムラプス予防コントロール(無症状感染者)、タイムリー監察コントロール(コールド・チェーン食品「汚染者」)、インスタント管理コントロール(スーパー・スプレッダー)による総合的対策措置を講じる。
 第一、無症状感染者をタイムラプス方式で予防コントロールする。無症状感染者の発見は主としてPCR検査によるが、何度検査しても陰性だった者が、規定された隔離期間満了後に改めて検査して陽性になるという例がしばしば起こっている。したがって、濃厚接触者については、域内域外にかかわらず、無症状かつ陰性であるとしてもハイリスク集団に入れ、規定隔離期間後も隔離期間を再延長し、帰宅後(浅井注:中国では濃厚接触者及び濃厚接触者の濃厚接触者はすべて隔離する)も観察期間を設定するべきである。
 第二、コールド・チェーン食品「汚染者」をタイムリーに監察コントロールする。コールド・チェーン輸入食品及び外装がPCR検査で陽性反応を検出しているという報道は重視せざるを得ない。汚染された「モノ」を汚染「者」とするのは、「モノ」が「ヒト」に感染する可能性に気をつけるようにさせるためである。コロナに汚染されたモノに触れれば濃厚接触者である。寒冷な冬期には、環境はコロナの生存にさらに適しており、したがってタイムリーに監察コントロールし、大量輸入のコールド・チェーン食品に対してはサンプル検査を行う必要がある。
 第三、スーパー・スプレッダーをインスタントに管理コントロールする。WHOは、コロナを10人以上に感染させた者をスーパー・スプレッダーと呼ぶことを提起している。スーパー・スプレッダーになる者の特徴は、コロナ感染後も生理、心理状態がよく、心身的不適応の症状がないことだ。しかし、一見健康そうであっても、体内には大量のコロナ・ウィルスが存在し、まったく自覚のないままに感染を広げる。臨床例から見る時、スーパー・スプレッダーの多くは無症状感染者である。したがって、インスタントに発見してその移動を封じることが極めて重要となる。その際、感染の「量」に注意するだけでなく、感染の「場」に注意することが重要だ。感染例が多いということは、とりもなおさず管理コントロールがおろそかで、至るところで感染をまき散らすままにさせているということだ。スーパー・スプレッダーは孤立し、静止しておらず、いわば動態感染チェーンであり、インスタントに感染軌跡を探り当て、予防コントロールのネットを構築することによってのみ遺漏なきを期することができる。
 百年この方相まみえることがないコロナの流行に戦い勝つためには、状況の変化に不断に対応し、タイミングを失わないように戦術を調整し、情勢を客観的に分析し、隠れて変異する「敵」を不断に見つけ出す必要がある。「敵」との創造的な戦い方を不断に発見することによってのみ、コロナと戦う上での重りを増やしていくことができる。
 王立祥の解説はいわば「原論」で抽象的です。中央テレビWSは1月18日、中国疾病予防コントロール・センターの馮子健副主任にインタビューした内容を紹介しています。その内容は王立祥の「原論」を中国における実情に即して解説する、いわば「各論」と呼ぶにふさわしいものです。大要を紹介します。
(問) 最近、コロナが多くの地方で起こっており、大規模な流行が起こるのではないかと心配するものが増えているが。
(答) 現在比較的深刻なのは2つの地域だ。一つは河北省で、石家荘及び邢台が中心、患者もまだ増えている。もう一つは東北、特に黒竜江省で綏化が中心だ。それ以外はこの二つの地方から広がった小規模な流行で、局地的なものだ。
(問) 我が国内の感染はすべて国外から持ち込まれたウィルスによるものか?
(答) 然り。昨年4月以後に発生したすべての感染におけるコロナ・ウィルスは国外からのものだ。最初の時期における予防コントロールの主要目標はヒトによるものだったが、その後、多くの感染がヒトによるものではないことが分かった。北京・新発地の感染は、輸入冷凍海鮮産品が国外での加工あるいは漁業者によって汚染され、その後ウィルスがコールド・チェーンで長時間生存し、輸入後にヒトが接触して感染し、感染の広がりを起こした。その後、運搬手段、交通手段、例えば上海では飛行機の中のコンテナに積まれた貨物の箱がウィルスを携帯していた例もある。こうした新たなウィルス輸入は新たな挑戦であり、PCR検査を強化して予防コントロールを強化する必要がある。輸入貨物に対する検査はますます強化され、サンプル調査率も向上している。これらの物品に接触したヒトに対しては監督予防コントロールを強化して、彼らが感染することを防止し、さらなる感染拡大を防ぐ必要がある。
(問) 変異したウィルスの危険性は?
(答) これまでの中国のコロナ対策は総じて非常に成功している。ウィルスが絶えず国外から持ち込まれて局地的な感染例を引き起こしているが、持続的な感染の広がりはなく、国際的な大流行とは異なっている。変異種を識別することにも問題はなく、国内ですでに3地域で、入国した人から変異種を検査で見つけているが、感染の広がりはない。「入り口」で検出できればコントロールできるのだ。我々のするべきことは、不断にこのウィルスを監察コントロールし、世界と協力してこのウィルスの感染範囲を見極めることで、これがウィルス流入を防止する上での重要な行動だ。もう一つは、いったんウィルスが入り込んできた時は、断固とした効果的な措置を講じて、変異種ウィルスが国内で感染を広げることを防止することだ。
(問) 国外から入国する人の隔離期間をもっと延長し、今まで14日間だったのを7日間延長したが、さらに7日間加えるべきだという主張は如何。
(答) 確かに議論する必要がある。14日間で大多数はコントロールできるが、隔離期間をさらに延ばすことによる代価は一人の人間、一つの地域だけのことではなく、全国的な問題となることだ。毎日入国者がいるから管理時間も延長する必要が出てくる。感染が発生した時は周辺の接触者のほか、濃厚接触者、濃厚接触者の濃厚接触者をも管理する必要が出てくる。かくして、人数は増加し、時間もより多くかかり、それによる予防コントロール上の圧力、コスト、代価は膨れ上がることになる。したがってバランスを見る必要がある。
(問) 石家荘や黒竜江の例は農村地帯での感染流行だが、農村での感染拡大という問題は新しい課題だ。
(答) 石家荘市藁城区では感染期間が長く、厳格な管理コントロールに乗り出す前にかなり感染が広がってしまっていた。現在検出された患者の相当多くは、管理コントロールを開始する以前にすでに感染してしまっていた。この地域でのウィルスは相当規模で地域的に広がっており、抑え込む上での難度はかなり大きい。また、人員隔離施設等の予防コントロールのための様々な施設、地域を管理コントロールすることに対するコミュニティの支持といった問題についても、都市とは異なる問題に直面する。農村の医療サービス・システムも都市のようにはいかない。都市で行っている応検尽検、願検尽検のごときPCR検査も農村で実行するのはより困難だ。さらに、農村の患者は症状が軽い間は大病院や検査能力がある病院には行かず、地元で診てもらうから、コロナ感染のシグナルを発見する時間が失われてしまう。これらの問題は今後改善するべき重要な課題だ。
(問) スーパー・スプレッダー問題はどう理解するべきか。
(答) この問題は最近発生したということではなく、このウィルスが現れてすぐ起こった現象だ。世界規模の問題である。一定の人は感染過程で重要な役割を果たす。特にコロナでは著しい。この問題については、どのようなケースに、どのような接触の仕方で発生しやすいかを見届け、そういうケース、そういう仕方に応じて有効な予防措置を講じることになる。集会、パーティその他の社交の機会に起こることが多いので、集会を減らす、集会規模を縮小する、できる限りの衛生措置を講じるなどを考慮する。