中国各地で発生している新型コロナ・ウィルス(以下「コロナ」)の集団感染や散発的事例について、1月13日、中国疾病コントロール・センターの馮子健副主任は記者会見で、「コロナと1年以上の戦いを経て、我々はこのウィルスに対する多くの認識を得ており、速やかに発見して速やかにコントロールすることができれば、コロナの大規模な流行が出現することはないはずだ」と述べました。また、多くの病例が報告されている石家荘に関して、「この数日間の新規患者の増加は、①観察している濃厚接触者、管理している地域及び人々によるものであり、すべては我々の掌握のもとで起こっている、②第1回目のPCR検査で発見されなかったのは主に感染したばかりで検査時にはまだ「空白期(潜伏期)」にあったためであり、その後のPCR検査で見つかった、③現地ではすでに全住民に対して大規模なPCR検査を実施しており、今後数日間はまだ新たな感染者の報告があるだろう」と述べた上で、「1月2日に最初の症例が報告されてからすでに11日が経っており、昨年処理した多くの集団感染例に基づけば、最初の報告から最後の報告までは一般的に2,3週間であり、我々が断固とした措置を取り、緊張感を持て様々な防疫措置を講じれば、速やかに抑え込むことができると確信している」と述べました。さらに馮子健は、「12月15日以後に石家荘から外地に出た人々に対しても大規模なスクリーニング検査、PCR検査、しらみつぶしの調査を行っており、最近各地で報告されている病例のほとんどはこれらの検査、調査の進展によるものである。しらみつぶしの調査を強化し、それを速やかに完成させることによって、石家荘以外の地域へのコロナ拡散を防止し、コントロールすることができるだろう」と述べました(以上、同日付中国新聞網)。
 また1月14日には、国家衛生健康委員会の馬暁偉主任が全国疫情防控工作テレビ電話会議において全国各地のコロナ集団感染状況について次のように語りました(16日付け中国新聞網)。
○2020年12月以来、北京、四川、遼寧、河北、黒竜江等で集団感染の事例が相次いでいる。その主要な特徴点は以下のとおりである。
第一、すべて国外から持ち込まれたものであること。すなわち、すべてのケースが国外から入境した人または汚染された冷凍輸入物品によって起こったものであり、隔離場所の管理における不規則、輸入冷凍物品に接触した労働者の防護不足などが重要な原因である。
第二、農村地域への波及。河北省石家荘、黒竜江省綏化、四川省成都等におけるコロナ発生はすべて農村地区または都市と農村の接する部分であった。
第三、感染者拡大が急速であること。比較的短い時間に急速に感染が広がった。
第四、感染の広がりの範囲が広いこと。人の密集した動き、婚礼パーティ、集会等の活動が感染拡大を加速し、外部に広がる趨勢を作り出した。
第五、対応上の困難増大。同じ省または都市で多くの感染ルートが出現し、コロナ患者を発見した時にはすでに地域的感染が起こってしまっており、防疫コントロールの難度が増大した。
 次に、最近の対処状況からいくつかの重要な問題点が浮かび上がった。
第一、公共スペースにおける常態的な防疫コントロールに緩みが出ていること。幹部及び大衆の防疫意識が希薄になり、公共スペースでの防疫措置に緩みが生まれ、情報伝達がスムーズでなく、これらはコロナ対処のスピード及び濃密さに影響を起こした。
第二、指揮命令システムが適時かつ効率的に機能を発揮できなかったこと。指揮システムが常態から緊急に切り替えるのが迅速でなく、応急処置の流れが明確さを欠き、情報の流れも闊達ではなく、これらのことはコロナ対応措置のスピードと濃密さに影響を与えた。
第三、コロナ応急処置の準備が万全ではなかったこと。PCR検査、疫学調査、物資備蓄、定点医院、隔離場所等の準備が不足し、管理及び技術関係の人員の訓練が不十分であった。
第四、農村のコロナ防疫コントロール力が脆弱であること。農村の医療衛生基礎条件は劣っており、技術力も不足し、早期発見能力は不十分である。農村地区におけるコロナ突発に対する防疫コントロール体制メカニズムは改善する必要がある。
 以上に基づき、以下の工作を重点的に行う必要がある。
第一、常態から緊急への適時切り替えの指揮システムを健全化すること。適時に緊急指揮システムを起動し、党委員会及び政府の統一的指揮の下で各種の工作を展開することを確保し、すべての措置を党委員会及び政府の統一配置のもとで推進するべきである。
第二、様々な応急処置の準備を確実に行うこと。聯防聯控メカニズムの各部門は連係して研修及び訓練を強化し、各レベルの要員が何を、如何に行うかについて理解するようにする。
第三、応急処置の科学性及び精確性を向上させること。中高リスク地域の確定及び調整、区域及びレベルごとによる地域及び人員の管理並びにPCR検査等の措置の実施、対応における単純化・杓子定規化の防止。
第四、農村地域における防疫コントロール工作の強化。農村と都市の一体的配置、一体的推進を堅持する。春節期間中の工作を高度に重視し、重点的グループに属する人員については帰村7日前のPCR検査を実施し、早期発見の能力を高め、早期隔離及び早期治療の準備を行い、帰村後のネット上の管理をしっかり行い、滞在中の健康監測を組織的に行う。
 私はこれまでの経験の蓄積の上に立った、自信すら窺える中国のコロナ対策、そして、昨年12月以来の感染拡大から的確な教訓と対策を打ち出す中国の危機意識に満ちた対応に接する時、国民の行動自粛の必要性を強調し、医療体制崩壊阻止を訴えるだけで、政府自身は何をするのかという点については何も答がない日本政府の対応の落差の大きさに唖然とするばかりです。これ以上コロナ患者を増やさないようにするには、PCR検査を格段に増やし、無症状感染者をできる限り見つけ出すことが政府の最優先課題に据えられなければならないのに、尾身会長をはじめとする医系技官が支配する厚労省・政府はこの期に及んでも相変わらず国民の自粛を呼びかけることに終始している姿には、怒りを通り越して絶望するほかありません。
 感染力の強いコロナに対してはとにかくPCR検査を格段に増やすことが先決課題です。そのことを確認する意味でも、石家荘を中心にして集団感染が起こっている中国の取り組みの様子を紹介します。
<無症状感染者(一匹狼)を捉える>
 上記の記者会見で、「最近のPCR検査では無症状感染者が見つかるケースが多いが、無症状感染者による感染拡大のリスクはどの程度のものか」と質問された馮子健は次のように答えています。
 「コロナの無症状感染者の比率はかなり高い。無症状感染者の問題についてはこれまでに一定の認識が得られており、初歩的ではあるが、国際的に一定の共通認識が形成されている。すなわち、無症状感染者は伝染性を持っている。無症状感染者の伝染力は、症状のある病人、患者と比較すると1/4~1/3程度だ。しかし、やはり伝染プロセスにおいて重要な役割を担っている。防疫措置に関しては、無症状感染者と患者との場合で違いはなく、すべて隔離するし、濃厚接触者はすべて追跡し、まったく同じ医学観察下に置く必要がある。」
 医系技官が支配する厚労省は一貫して、PCR検査の精度が低いことを理由に挙げてその検査を積極的に推進することにブレーキをかけています。中国もWHOもその点は百も承知の上です。しかし、無症状感染者をつかまえなければ感染拡大に歯止めがかけられない以上、繰り返しPCR検査を行って無症状感染者の割り出しを行う以外にないと結論しているわけです。
<PCR検査能力を増やす>
 1月12日に行われた記者会見で、河北省衛生健康委員会の梁占凱主任は河北省の一日当たりのPCR検査能力が110万回分にまで増強され、同省の検査圧力を大幅に緩和することができたと述べて、次のように紹介しています(同日付の経済日報WS)。
 「国務院は、河北省に需要に基づいて全国各地能力を統括アレンジして支援を行っている。現在までに江蘇省、浙江省、北京市、天津市等の省市から数百名が河北支援に向かっている。PCR検査に関しては12グループ252人が参加する国家検査支援隊が石家荘、邢台及び廊坊におけるPCR検査の支援に従事している。国家及び各省市の検査機関の支持のもと、現在の河北省の一日当たりのPCR検査能力は110万回に達し、検査にかかる圧力を大幅に緩和した(浅井注:別の報道では、1回の検査で10人分をまとめて検査する混合検査方式の採用により、一日1100万回分の能力に達したそうです)。
 疫学調査及び感染源追跡に関しては、中国疾病予防コントロール・センターが49人の専門家が石家荘、邢台及び廊坊の第一線に赴いて現地指導を行い、センター本部では関係する専門家がビデオを通じてフォローしている。同時に、江蘇省、江西省、広東省、浙江省及び浙江省がそれぞれ20人合計100人の疫学調査専門家を派遣して河北省を支援している。
 治療に関しては、国家衛生健康委員会が29人の専門家グループを河北省に派遣し、河北省胸科医院に駐在して現場の第一線で救急治療に当たっている。また、天津市は20両の救護車及び80人の救急スタッフを、湖北省武漢市は移動CT及び5両の救護車を支援に派遣している。
<集中治療・集中隔離>
 1月12日に行われた河北省主催の記者会見で、徐建培副省長は、患者全員を指定医院に集中して治療するとし、石家荘は河北省胸科医院と石家荘市人民医院(ベッド数合計2400床)、邢台は邢台市第二医院(510床)、廊坊は廊坊市第三人民医院にすると発表しました。
<石家荘市及び邢台市における集中隔離及び隔離拠点建設>
 1月12日付けの河北日報は、11日に行われた河北省コロナ対策領導小組会議で、石家荘及び邢台両市では全員を対象にした第2回PCR検査を、また廊坊では集中感染が起こっている固安県で全員を対象にしたPCR検査を行うことを決めたほか、疫学調査と感染源特定を徹底的に行い、濃厚接触者及び濃厚接触者の濃厚接触者については定点隔離を断行することを決定した、と報道しました。また、濃厚接触者及び濃厚接触者の濃厚接触者に対しては「応隔尽隔」(全員隔離)を行うとし、厳格な基準に基づいて管理・サービスを行うこと、「三区両通道」(三区:隔離患者を感染しやすい人とを区分する清潔区・汚染区・半汚染区、両通道:医務人員通路と病人通路)、「一人一間一衛」(バストイレ付き個室)を実現し、入浴、WIFI(ネット環境)を備えて隔離された対象の正常な生活条件を満たすことについても定めました。
 重点区域の「応隔尽隔」に関しては、藁城区の重点村で、深刻な基礎疾患がある2人を除く村民5437人が集中隔離されました。自宅隔離にすると家庭内集団感染が起こりやすく、また、集中隔離すればPCR検査の速度を速め、早期発見早期治療を可能にするという判断に基づいています。隔離先では一人一部屋、ただし、子供、妊婦、基礎疾患がある人などについては状況に応じて居住条件を定めます。
「三区両通道」、「「一人一間一衛」を実現する一環として、新華社をはじめとする報道によれば、翌13日から、石家荘市の正定県と集中感染が起こっている藁城区の境界にある、510畝の土地で建築総面積6.9万平方キロの3000棟の集合住宅の建設を急ピッチで開始しました。各部屋面積は18平方メートル、ベッド、布団、机と椅子、空調、給油器、WiFi、ユニットバス等の生活必需品を備えます。また、事務所、食堂、倉庫、排水、電力、通信等の設備も市の管理の下で整備し、様々な消毒条件も完備します。
 また、邢台市は邢台経済開発区に、濃厚接触者及び濃厚接触者の濃厚接触者を収容するための5000戸の集合住宅の建設を1月15日に開始しました。設備はほぼ石家荘市と同じで、日常生活に不自由しないように配慮されています。南宮市も1月10日から、1.5万平方キロの土地に計6000棟の隔離用家屋の建設を開始しました。すでに1500棟が完成し、残りも一週間以内に完工予定といいます(以上、1月17日付け中国新聞網)。
<石家荘無症状感染者による感染拡大に対する各地の対応>
 中国では、ある地域で感染者(症状があるとないとを問わない)が出た場合、その人の行動に関するデータを発表することになっています。例えば河北省衛生健康委員会は1月11日、1月10日時点におけるのコロナ病例ニュースを発表しましたが、その中の第41号及び第57号の病例が武漢市と関係があると、武漢市は直ちに行動を起こし、調査、封鎖、疫学調査、消毒などを行いました。
 例えば第57号に関して、調査では本人が武漢市に到着してから石家荘に戻るまでの間の行動軌跡を、利用した乗り物、立ち寄った場所を含めて調べ上げます。また、それぞれの場所で接触した人を厳密に調査し、隔離、PCR検査が必要な者は直ちに実行します。本件の場合、548人の濃厚接触者が全員隔離され、さらに範囲を広げて把握された8107人と合わせてPCR検査を受けました(全員陰性)。また本人が訪れた建物はすべて封鎖され、本人が訪れた場所と合わせ消毒されました1月12日付け中国新聞網)。