12月21日にイラン核合意(JCPOA)参加国の外相会議がビデオ会議で行われました。バイデン次期大統領は、トランプ政権が一方的に脱退したJCPOAへの復帰に前向きですが、復帰に当たっては条件(イランのミサイル開発及び地域問題への影響力に関して厳しい制限をイランに呑ませること)をつけようとする可能性が取り沙汰されています。このようなバイデン(及びそのブレーン)の動きに対してイランは警戒しており、アメリカのJCPOA復帰は無条件でなければならない(アメリカが無条件復帰するのであれば、イランもJCPOA上のイランの自発的コミットメントに回帰する用意がある)という立場を明らかにしています(11月18日のコラム参照)。今回の会議は、アメリカとイランの立場が大きく異なる問題に関してJCPOA参加国の立場を協議、調整することを目的として開かれました。会議に臨む各国の姿勢は、ロシアと中国はイランの主張を完全に支持する立場、英仏独EUはアメリカ(バイデン)の立場を理解する立場、と大きく色分けできると思います。
会議の結果については、私は残念ながら今のところ欧州側(英仏独及びEU)の公式的立場を把握できていません。しかし、12月21日付けのイギリス『ガーディアン』紙WSは、外交担当編集長のパトリック・ウィンターの解説記事(浅井注:カーネギー財団WS「プロリファレーション・ニュース」が転載したもの)は、今回の会議で欧州側は、6月のイラン大統領選挙をにらみ、イラン国内の強硬派を利さないという配慮から、イラン及びロシア・中国の立場に同調したと解説しています。この報道が事実関係を正確に伝えているとすると、イランの対米ポジションは大幅に強まり、1月に船出が予定されているバイデン政権の対イラン政策には大きなハードルが設定されることになります。11月18日のコラムのフォロー・アップとして、最近の動きをまとめます。
<イラン議会による対米対抗措置立法とロウハニ政権の対応>
 イラン議会国家安全保障及び対外政策委員会は11月24日までに、イランを標的にするアメリカの違法な制裁に対する5条からなる核対抗措置法案を可決しました。その内容は、①ウランの20%濃縮を政府に義務づける、②低濃縮ウランの貯蔵量を拡大する、③新世代の遠心分離機を設置する、④イラン原子力委員会に対して「ウラン金属生産プラント」設立を任務づける、⑤40メガワット重水炉建設の適地の設計・特定を要求する、というものです(11月24日付けイラン放送WS)。さらに中国中央テレビWS(12月7日付け)は、"この法律には、対イラン制裁が2ヶ月以内に緩和されなければ、イラン政府がIAEAによる核施設に対する査察を停止させることを要求する内容が含まれる"ことを報じています。この法案は12月1日の議会で、260人中251人という圧倒的支持で可決されました。
 ロウハニ政権はこの法案に難色を示し、抵抗しました。12月10日付けの中国環球時報は、ロウハニが9日の閣議の席上でこの法律案に不満を表明し、"大統領は人々の選挙で生まれ、大統領のみが法案実施の権限を持つのであって、他者の号令に基づいて執行するのではない"と述べ、"国内が団結し、政府の外交政策を支持することを呼びかけた"と発言し、「外交的に不利になる」という理由でこの法律に署名することを拒否したこと、しかし、カリバフ議長の推進によって法律は効力を生じる、と報じました。
 念のために12月9日のイラン大統領府WSが紹介したロウハニの閣議発言をチェックしますと、ロウハニの関連発言は以下のとおりで、"法律に反対"云々は含まれていませんでした。しかし、ロウハニが議会の動きに不快感を示し、政府による外交の一元化を主張したことは分かります。また、すぐ後で紹介する12月14日のロウハニ発言からは、ロウハニは議会の法案が「制裁解除を遅らせる」という判断に基づいて反対していたことが分かります。

○外交で結果を達成するためには、相手に一つの声で聞かせる必要がある。ただし、議会は政府に従わなければならないということを意味するものではない。
○憲法によれば、政府の政策及び計画は大統領の特別権限だ。党派的な利益は脇に置いて、国益を優先しよう。
○(イランがJCPOA上の自発的約束を削減したことに関して)JCPOAに留まっている国々も自己の義務を適切に果たしていない。ナタンツにおける最新のIR2M遠心分離機の設置(注)に関して言えば、欧州側が文句を言うような新しいことではない。
(注)イランがIAEAに、「ナタンツの地下核施設(FEP)でウラン濃縮用遠心分離機を従来の旧型『IR一1』に代わって、新型遠心分離機『IR一2m』に連結した3つのカスケードを設置する計画」を通報した秘密情報がリークされ、12月4日にロイター通信が報道し、英仏独3国はイランの計画に重大懸念を示す声明を発表したことにかんするもの。
イラン最高国家安全保障委員会(SNSC)の12月5日の声明は、議会と政府との対立について、明确に議会に軍配を上げました。すなわち、声明は、この法律が正常な法的手続きに従って承認されたと指摘し、この法律は「国益を損なうような問題を提起していない」として支持するとともに、「国益に反していて憂慮するべきは、国家の法律機関の尊厳と地位を損ない、国家の団結と連帯を害する論争の存在である」、「近日目にする発言は特定の利益のために国益を害しており、国家の利益に奉仕するものではなく、敵に対して誤ったメッセージを伝えている」と指摘し、全当事者が「無益な論争」を中止することを勧告し、政争によって国家の利益が損なわれることを許さないと警告しました(12月6日付けイラン放送WS)。
また、ライースィー司法長官も同日、この法律について「国際協定に対する約束を実行することを敵に強いるもの」、「イランがテコ及び道具をたくさん持てば持つほど、イラン国民に対する敵の敵対と圧力のコストはますます高くなる」として議会の行動(法律採択)を賞賛しました。またイラン当局者に対しては、"個人的政治的な見解に基づいてではなく、政治の現実に基づいて統一された革命的な立場をとる"ことを呼びかけました(12月7日付けイラン放送WS)。
 SNSC及び司法長官の発言は、名指しは避けていますが、ロウハニの主張を"特定の利益のために国益を害しており、国家の利益に奉仕するものではなく、敵に対して誤ったメッセージを伝えている"と批判し、"個人的政治的な見解に基づいてではなく、政治の現実に基づいて統一された革命的な立場をとる"ことを勧告したものとも受け止められます。
イラン外務省スポークスマンは、12月6日の定例記者会見で、この法律が効力を発生すればもちろん執行すると述べるとともに、ザリーフ外相が"議会の決定及びイランのJCPOA上の約束の削減は他の参加国が約束を守ることを再開することを条件に前に戻すことができる"と述べたことを紹介しました(12月7日付けイラン放送WS)。SNSC及び司法長官が議会の法律にお墨付きを与えた以上、外務省を含めたロウハニ政権はこれに従うことを認めたものと解されます。ただし、ザリーフ発言からは、この法律もまたアメリカの出方如何では前に戻すことができるという理解を示すことで、アメリカに対する交渉材料にしようとしていることを窺えます。
さらにザリーフは、イランの独立メディア(Arman Media) とのユー・チューブ上でのインタビューの中で、アメリカがJCPOA上の約束を忠実に履行するのであれば、JCPOA上の権利がアメリカに与えられるだろうと述べるとともに、"バイデン政権のメンバーは、アメリカがJCPOAに戻るに当たっては、すでに交渉済みのイランのミサイル計画を含むいくつかの問題は交渉可能ではないことを理解している"と述べ、"イランは将来に対して悲観的ではない"とつけ加えました(12月10日付けのIRNA通信)。ザリーフのこの発言は以上のイラン議会の動き及びSNSCと司法長官発言を踏まえた上で行われています。
 そしてロウハニは12月14日に内外記者会見を行って突っ込んだ発言を行いました(同日のイラン大統領府・英文WS)。ロウハニはJCPOAを高く評価してその存続に向けた政府の立場を明確にし、その立場から議会の立法への動きを「役に立たない」と批判するとともに、上記ザリーフ発言同様、法律実施の条例を策定することで中身を政府の従来の政策(P5+1をJCPOAの完全履行に導く)に合致する方向に軌道修正させようとしています。また、バイデンはJCPOAを知悉しているので、ミサイル計画や地域問題が再交渉可能ではないことを理解している、という発言もやはりザリーフの上記発言と軌を一にしています。ロウハニ発言の大要は以下のとおりです。
(冒頭発言)
○「2015年のJCPOA締結までは、西側諸国は安保理の枠組みのもとでイランの核活動を不法と見なしていたが、我々はJCPOAによって核の権利を合法化し、ミサイル問題及びIAEAの難しい条件を取り除いた。」
○「トランプの目的はJCPOAを破壊することだったが、失敗した。イラン国内でもJCPOA取引が破壊されることを願う者がいた。」「我々はJCPOAを生かしておいて、いずれかの時期に再びその役割が果たせるように最善を尽くしてきた。もちろん、この交渉と合意が完全なものだというつもりはない。神のみが完璧であり、世界のすべてのことには欠陥があり、この合意にも欠陥がある。しかし、JCPOAは重要な歴史的合意であり、イラン及びこの地域の歴史において前例のないものだ。6大国としかも制裁のもとで交渉できる国はほかにはない。」
○「JCPOAを望まず、破壊しようとしたものもいる。しかし、我々はそれを守ったし、JCPOAはトランプに立ち向かい、3回にわたって彼に屈辱を与えた。」(浅井注:「3回」が具体的に何を指すかは分かりません)。
○「現政府が成し遂げたことはJCPOAが破壊されることを防いだことであり、再びその役割を担うことができるように守ってきたことである。」
○「制裁解除が遅れることを望むものもいたが、我々は一瞬たりともそれに同意したことはなく、そういう動きには反対だ。これらの制裁は解除されなければならず、それは人々の権利だ。アメリカは自らが行った約束に回帰しなければならず、誰もが約束に完全回帰すれば、我々も全面的な約束に戻るだろう。」
(質問に対する回答)
○「P5+1(5大国プラスEU)が義務を満たす暁には、イラン政府も即刻その義務のすべてを満たす。そのことにより、JCPOAに述べられているすべてのこと(トランプ政権が課した石油その他の制裁のすべて)が解除される。」
○「議会が承認したことは制裁解除のための戦略的行動であって、制裁を続けるための行動ではない。議会が求めるのは制裁解除であり、制裁を解除するための原則を採用することである。この法律がその目的を満たすかどうかは別問題だ。」
○「私が約束削減を公表した第5段階の時、濃縮についてもはやいかなる約束もないし、我々の核計画に関連するR&Dその他の事柄にいかなる制限もないと明確に述べた。」「したがって、今進められていることは、IR2Mにせよ、議会が明らかにした核活動にせよ、私が昨年世界に向けて公表したことの範囲内のことである。したがって、アメリカが過去の過ちを正し、バイデン政権が2017年の状況に戻るのであれば、我々も完全に我々の約束に戻るし、そのことには何の問題もない。」
○(議会が通した法律についての質問に対して)「この法律は役に立つ(useful)とは考えないという政府の立場はすでに述べた。法律が最終的に承認される前の段階でそう述べた。これは私の個人的意見ではなく、政府内のコンセンサスだ。政府は一致してこの法律が国家に役立たないと考えている。」「相手側に圧力をかけたいということについては、我々が昨年行ったことがそれである。すなわち、我々は5段階でイランの義務を無効にした(set aside)。私はこの法律に関する執行規則を準備するように関係閣僚等に命じた。この週末までには条例を提出して承認することを期待している。そして、この法律の実施に関しての我々の解釈に基づいている条例が承認された暁には、法律は実施されることになるだろう。そのタイトルは、制裁解除を要求する法律ということであり、制裁解除を遅らせる法律ということではない。」
○「アメリカの次期政権のもとで状況は変わると信じている。以前の条件は残らないだろう。バイデンが選挙で勝ったので、状況は変わるだろう。我々は西側諸国及び近隣諸国との関係を拡大することに関心があるし、事態はそのように動いている。」「もし我々が、アメリカがイラン経済に与えた損害について補償を要求すると、制裁は長引くだろう。それを持ち出すと、制裁はさらに5年間続くことになる。制裁がさらに5年間続く方が良いというものもいるが、我々が今言っているのは、P5+1がすべての約束に戻るのであれば、我々は直ちにすべての約束に戻るということだ。」
○(バイデンがミサイル問題及びイランの地域的影響力に関してより強力な合意を求めているという質問に対して)「バイデン氏の発言については聞いていない。ドイツなども言っているようだが、我々は誰からのいかなる前提条件についても受け入れない。JCPOAは再交渉できないし、項目毎の再交渉を望まない。JCPOAはすでに交渉され、合意されたものだ。実施するかしないかだけしかない。」「ミサイルとか地域問題とかは核問題とは関係がない。交渉した当時、アメリカはミサイル計画を含めることを主張した。我々は交渉できないと拒否した。」「トランプは何も知らなかったが、バイデンは何が交渉され、どういう結果になったかをよく知っている。これらの問題は交渉対象ではない。テーブル上にあるのは、全員が可及的速やかに合意に完全に戻るということだけだ。」
<外相会議>
 イラン国内におけるJCPOAに対するアプローチのあり方をめぐって議会と政府の対立が公然化したことを背景に、JCPOA参加国は、12月16日の次官級会合を経て、12月21日にオン・ラインで外相会議を開催し、その結果、国連安保理決議2231を実施することの重要性を強調する声明が発出されました。IRNA通信がその全文を報道したので、声明の全文を紹介します。
1.JCPOA参加国であるE3/EU+2(英仏独・EU、中ロ)及びイランの外相会議が2020年12月21日オン・ラインで行われた。会議はEU高級代表のボレルが司会した。
2.JCPOA参加国は協定保全に対する誓約(中国語発表文表現:協定を維持することに力を尽くすこと)を改めて強調し、その点でそれぞれが努力することを強調した。彼らは、全員によるJCPOAの完全かつ効果的な実施が重要であることを議論し、当面する協定実施上の課題(核不拡散及び制裁解除の約束を含む)に応える(中国語発表文:を解決する)ことの必要性を議論した。
3.外相は、公平で独立した唯一の国際機関として安保理から授権されたIAEAが、JCPOA下の核不拡散への約束の実施を監視し、検証するという重要な役割を発揮することを強調した。外相は、引き続きIAEAと誠実に協力することの重要性を強調した。
4.外相は、国連安保理決議2231で承認されたJCPOAが世界的な核不拡散体制のカギとなる要素であり、地域及び国際の安全保障に貢献する多国間外交の重要な成果であることを想起した。外相は、アメリカの協定からの脱退に対して深い遺憾の意を繰り返した。彼らは、決議2231が引き続き完全に効力があることを強調した。
5.外相は、全当事者によるJCPOAの完全実施を確保するために対話を継続することに合意した。外相は、アメリカがJCPOAに復帰する可能性を確認し、努力をともにすることでこの問題に積極的に対応することを強調した。
 この声明の重要な意義については、冒頭で触れましたように、イギリスの『ガーディアン』紙WSが12月21日付けで掲載した、パトリック・ウィンター(外交担当編集長)署名記事「EU諸国外相 イラン核合意復活に道筋つける」によって明らかにされています。すなわち、ウィンターはこの記事の冒頭で、「EU諸国外相は、今の段階では、イランとアメリカは合意に関する拡大または強化の受諾を求めない形で合意の完全遵守に戻ることができると確信して、イラン核合意の復活に新しい前提条件をつけないことに合意した」と述べています。つまり、これまでイランに対してミサイル開発、イランの地域影響力に関して要求を出してきた英仏独ですが、次期バイデン政権がこれらの条件をつけなくてもJCPOAに復帰する可能性があると判断し、これまでの要求を先延ばしすることにした、ということです。ウィンターはEU高官の言として、「会議に臨んだ全員が、核合意を保全することの必要性、そして、アメリカに対して、前提条件をつけず、何かをつけ加えたいとは言わずに、今の形の核合意に戻る方が良いと確信させることの必要性について合意した。イランを全面遵守の立場に戻らせようとするならば、我々が約束した経済的報酬を与えなければならない。現在の欧州諸国とイランの貿易は核合意前の水準を下回っている。」と述べたことを紹介しました。
 またウィンターは、欧州諸国が態度を変えた背景にはイラン国内の権力闘争に対する懸念が働いたことを次のように示唆しています。
 6月に行われるイラン大統領選挙で、西側との関与に反対する強硬派の圧倒的勝利になることを防ぐためには、アメリカとイランが速やかに核合意の回復に向けて動く必要があるという指摘がある。アメリカとの交渉のアプローチのあり方をめぐって、議会保守派とロウハニ大統領との間で権力闘争が進行中だ。イラン議会は2週間前、2月3日までにアメリカの制裁が解除されない場合には、イランは追加議定書(JCPOA)の自発的実行を停止するべきだとする決議(ママ)を採択した。この動きは、イランのJCPOAからの追放そしてIAEAによる核施設査察に対するイランの協力の終了を導く可能性がある。イラン原子力庁のザレーヒ長官は、アメリカの核合意回帰にはいかなる前提条件も設定するべきではないとして、議会の動きを批判した。
 イラン議会とロウハニとの攻防の焦点は、冒頭に紹介した、中国中央テレビWSが12月7日に報道した、"この法律には、対イラン制裁が2ヶ月以内に緩和されなければ、イラン政府がIAEAによる核施設に対する査察を停止させることを要求する内容が含まれる"ことをめぐってのものだったことが、以上のウィンターの記事からも確認できます。
 私自身は、イランだけに限らず国際情勢を「分析」するに当たって、「陰謀説」や「権力闘争」の視点ですべてを割り切ることには慎重です。それはいわば「当たるも八卦当たらぬも八卦」の類いだからです。ただし、今回の件に関しては、ロウハニとイラン議会との対立が権力闘争であるか否かはともかく、欧州諸国はこの「権力闘争」がJCPOAの存続に重大な影響を及ぼす可能性を深刻に懸念して、従来の立場を修正したことはほぼ間違いないことでしょう。そういう意味では、イラン外交のしたたかさ・巧みさを窺う材料にはなります。
<中国とロシアのイラン支持>
 ウィンターは指摘していませんが、欧州側が会議で態度を変えたもう一つの重要な要因は、中国とロシアがイラン支持の立場を明確に主張したことを上げる必要があります。JCPOAを交渉した段階(2015年以前)では、中国とロシアの立場はどちらかと言えば不即不離、是々非々でした。イランは孤立無援の中で交渉することを強いられていました。しかし、この数年間アメリカとの対立が不断に深刻化している中国とロシアは、一帯一路推進(中国)及びシリア内戦での緊密な連携(ロシア)等を通じて、イランとの関係を格段に深めており、今回の会議では全面的にイランの立場を支持する主張を展開しました。
12月21日付けの中国外交部WSは、王毅外交部長が以下のように主張したことを紹介しています。
 アメリカが核合意を脱退し、イランに対して極端な圧力を行使したことがJCPOA軌道離脱問題の根源である。アメリカが態度を改め、JCPOAに全面復帰することが危機を根本的に解消するための正しい道筋だ。現在、イラン核問題は重要な時期にさしかかっている。バイデンは核合意復帰の意思を明確に表明した。同時にアメリカは、イランに対する圧力を相変わらず強化している。JCPOAは正常な軌道に回帰するチャンスが出てきていると同時に、かつてないリスクの挑戦にも直面している。中国は4つの見方を提起する。
 第一、JCPOAを全面的に確固として擁護する。戦略的定力を保ち、極端な圧力行使に旗幟鮮明に反対し、JCPOA全体を積極的に擁護し、さらに主動的にそれぞれの仕事を行い、情勢転換のために時間と空間を獲得し、イラン核情勢が国際社会の期待する方向に発展することを推進する。
 第二、アメリカがJCPOAに完全復帰することを推進する。アメリカは速やかに無条件でJCPOAに復帰し、イラン及び第三者に対する制裁を解除するべきである。その基礎の上で、イランは核領域における約束を完全に回復し、履行する。各国はこの点についていかなる他の条件をも設けるべきではない。中国は、参加国がこれについて速やかに協議を行い、一致を達成後、参加国にアメリカを加えた国際会議を招集することを考慮し、アメリカのJCPOA復帰プロセスを起動することを提案する。
 第三、公正かつ客観的に協定履行上の紛争を解決する。非難及び圧力行使は全面的な協定の擁護という共通認識を弱めるだけであり、対話と協力のみが権利義務のバランスを実現することに役立つ。団結を保ち、違いを管理コントロールし、イランの正当な経済利益を保障するべきである。安保理イラン核問題は引き続き穏当に処理し、IAEAによるイランに対する核査察を支持し、イランと協力を深めるべきである。
 第四、地域の安全保障問題を適切に処理する。JCPOAはすべての問題を解決する「万能薬」ではない。地域の安全保障問題とJCPOAを直接関連づけることは、協定履行プロセスに障害を設けることとなる。中国は、湾岸地帯マルチ対話プラットホームを設立し、包容的な対話プロセスを起動し、地域安全保障問題に関して「易きから難きに至る」形で不断に共通認識を凝集していくことを提案する。ロシア等が提起している提案とも連結させ、相互に意思疎通し、合力を形成することを希望する。
 12月21日付けのタス通信は、ロシア外務省及びラブロフ外相の外相会議におけるロシアの立場を次のように報道しました(ロシア外務省英文WSはこれまでのところラブロフ外相の会議における発言を紹介していません)。
 会議の結果についてロシア外務省は、アメリカはJCPOA復帰について前提条件を設けるべきではない、とするロシアの立場を明らかにした。外務省は、「アメリカのJCPOA復帰はいかなる前提条件もあってはならないと確信する。この点について、我々は有益な仕事をする用意があるし、アメリカが過ちを正すことを助ける用意がある。これは我々の共通の利益である」と述べた。
 ラブロフは会議において、アメリカが全面的に同様なことをするのであれば、イランはJCPOA全面遵守に戻る用意がある、とするイランの声明に留意すると強調した。「我々は、JCPOAの参加国のみならず、アメリカもイランのこのシグナルに留意することを望む。国連安保理決議2231を遵守することは、アメリカにとって選択の問題ではなく、国連憲章第25条に定められた義務である。」