香港では再び型コロナ・ウィルス感染者が急増する状況になっています。手を打てる段階で無症状感染者(「忍者(一匹狼)」)を徹底的に追跡・把握・隔離せず、野放しにしことのツケが回っていることは間違いありません。香港の感染者数は日本とはまだ比べものにならないほど少ないですが、今日の日本における感染第3波到来の原因と同じです。日本の場合は、医療体制崩壊阻止を至上課題とし、感染者把握を二の次にした厚労省医療技官主導の取り組みが原因であることは、3月13日、4月13日4月22日などのコラムで指摘したところです。香港の場合、せっかく本土政府の支援を受けて大がかりなPCR検査を実施したにもかかわらず、市民の自発性に委ねたために検査を受けたのは人口の約1/4に留まり、感染発見は42人に留まりました。陽性比率は0.002%だったので、香港全市で約100人の感染者がいるだろうと推定されました。これらの「忍者(一匹狼)」が感染源となって、感染の流行第3波を招いていることは間違いないところです。
10月18日のコラムで香港市内の感染者数の推移を17日まで紹介しました。参考と記録のために、その後の状況は次のとおりです。18日2人(感染経路判明者)、19日1人(感染経路判明者)、20日1人(感染経路不明者)、21日1人(感染経路判明者)、22日1人(感染経路不明者)、23日1人(感染経路判明者)、24日1人(感染経路不明者)、25日1人(感染経路不明者)、26日~28日ゼロ、29日1人(感染経路判明者)、30日~31日ゼロ、11月1日1人、2日3人(感染経路不明者1人)、3日3人(感染経路不明者1人)、4日3人(感染経路判明者)、4日2人(感染経路判明者)、5日1人(感染経路不明者)、6日ゼロ、7日1人(感染経路不明者)、8日3人(感染経路不明者)、9日ゼロ、(10日:報道なし)、11日3人(感染経路不明者)、(12日:報道なし)、13日2日(感染経路不明者)、14日3人(感染経路不明者1人)、15日5人(感染経路不明者1人)、16日ゼロ、17日1人(感染経路不明者)、(18日報道なし)、19日4人(感染経路不明者2人)、20日21人(感染経路不明者9人)、21日36人(感染経路不明者13人、23人:ダンス・クラブ関連)、22日61人(感染経路不明者12人、ダンス・クラブ関連は22日までに60人)。
10月18日のコラムで、「PCR検査を徹底すれば感染源(無症状者を含む)を完全に洗い出して感染ゼロを実現することは十分可能(青島)だが、中途半端にやったのでは根絶することは不可能であるのみならず、再び感染拡大を招く可能性が大いにある(香港)」と書きましたが、今日の事態はそれを裏書きしています。香港の場合はまだ手立てを講じる可能性はあります。香港市民全員を対象にした、本土並みの1000万人規模の徹底したPCR検査をすることです。
 日本の状況はもはやすべてが手遅れであり、今や欧米並みの段階に近づきつつあるのではないかと思います。欧米諸国と異なりスキンシップの習慣がない日本はこれまで感染の爆発的増加をなんとか免れてきましたが、家庭内感染が著しく増大している現状はもはや僥倖頼みではなんともならない段階に入っていることを強く示唆していると思います。
これまでの僥倖にあぐらをかいて菅政権が推進したGO TOキャンペーンは「火に油を注ぐ」もの以外の何ものでもありません。「追跡・把握・隔離」というコロナ対策の鉄則を意識的・政策的に除外する厚労省主導の政策(というより無為無策)からは、「コロナの徹底的抑え込み」を望むべくもありません。ワクチン開発も欧米頼みの日本。菅義偉首相は東京オリンピックについて「人類が新型コロナ・ウィルスに打ち勝った証しとして開催し、東日本大震災の被災地が復興を成し遂げた姿を世界に向けて発信する場にしたい」と表明したと報道されましたが、これほど空疎な「口から出任せ」発言を平然と行う無責任さ・厚かましさには、怒りを通り越して唖然とするばかりです。