19期2中全回が中国憲法改正提案の中で「習近平思想」、正確には「習近平の新時代中国の社会主義思想」という習近平の名を冠した「思想」を憲法に記すことを提起した時以来、私はずっと違和感を拭えないできました。一つにはいかなる形の「個人崇拝」にも私が抵抗を感じるという個人的事情に由来するのですが、もう一つには「毛沢東思想」「鄧小平理論」と並び称されるに値するだけの「思想」を習近平が提起してきたのかという疑問があったからです。
 私が毎朝チェックしている中国新聞網は、10月11日付けの人民論壇網(人民日報主管)が掲載した、現代中国における政治理論・哲学の第一人者である韓慶祥による「新思想の重大根本観点及びその内在的論理」と題する論文を紹介しました(ちなみに、中国検索サイト「百度」でチェックしたところ、人民論壇網自体のサイトのURL(http://www.rmlt.com.cn/)は確認できましたが、実際にアクセスしようとしても「エラー」になってしまいます。もし、このコラムを読んでくださる方の中で、人民論壇網にアクセスできている方がいれば是非教えていただきたいです。ひょっとすると、このサイトは外部の者ではなかなかアクセスできないようになっているかもしれません)。この文章を読んでようやく、中国が「毛沢東思想」「鄧小平理論」に次いで「習近平思想」を公式に提起した理由を私なりに理解できました。「個人崇拝」に対する違和感はそのままですが、「習近平思想」にはそう呼ばれるだけの画時代的な中身はあると納得できたということです。
 画時代的な中身があるというのは、毛沢東思想が国共内戦から新民主主義革命までの中国の思想を代表し、鄧小平理論が改革開放時代の中国の思想を代表するとすれば、習近平思想は中華民族の復興を実現する時代、すなわち新時代の中国の特色ある社会主義の思想を代表するものと位置づけられるということです。習近平思想の正式名称が「習近平の新時代の中国の特色ある社会主義思想」という長い呼称を採用しているのは理由あってのことでした。
 19世紀中葉以来欧米日植民地主義列強に蹂躙され、国際社会の底辺に突き落とされるという民族的屈辱を経験した中国は、毛沢東による新中国建国実現、鄧小平(江沢民、胡錦濤)による経済大国実現を経て、今や習近平のもとで経済「大国」から世界「強国」へと歩みを進める、つまり中華民族の偉大な復興を実現する歴史的段階に進んでいるということです。
 私たちが注目しなければならないのは、韓慶祥が今日の中国の「時代的課題」として、「習近平におけるこの時代の問題、すなわち歴史的任務あるいは歴史的使命とは、社会主義現代化国家を全面的に建設し、中華民族の偉大な復興を実現し、「大而不強」の問題を集中的に解決し、「豊かになる」から「強くなる」という偉大な飛躍を迎えることである」と指摘していることです。「強くなる」とは「中華民族の偉大な復興を実現する」ということです。
 私は11月1日のコラムで、「中国・中国人における「大国」「強国」は歴史的な中国の体験(19世紀中葉から弱いが故に世界の底辺に突き落とされた民族的体験)を踏まえた、「侮られないためには大きくならなければならない・強くならなければならない」という事実認識としての「大国」「強国」です(羅建波文章の最後のくだり参照)。「中華民族の偉大な復興=強国」という自己定位は正にそれです。「大国主義」「覇権主義」という含意はないのです。」と記しましたが、それは韓慶祥の以上の指摘を踏まえたものです。
種明かしになりますが、私はもともと韓慶祥の文章をコラムで紹介するべく準備を進めてきました。その過程で羅建波の文章に出会い、習近平思想に関する韓慶祥の文章を紹介する前に、その思想の下敷きになっている内外情勢に関する習近平の戦略的判断を紹介した羅建波の文章を紹介しておいた方が良いだろうと判断した次第です。
 また韓慶祥の文章を読む時、習近平思想を理解する上では、「歴史的方位」という問題(「歴史的方位論」)が非常に重要な意味を持っていることが理解されます。日本語における「方位」とは地理的な意味で用いられることが多いと思いますが、「歴史的方位」について韓慶祥は次のように述べています。

 「エンゲルスは次のように指摘した。我々の理論は「歴史的な産物であり、異なる時代においてまったく異なる形式を備え、同時にまったく異なる内容を備える」。この指摘が事実上語るのは、習近平思想の誕生、形成の「歴史的方位」の問題である。18回党大会以来、我が国は新しい歴史的起点に立ち、中国の特色ある社会主義事業は新しい発展段階に入った。」
 私なりの理解でいえば、「歴史的方位」とは「歴史的な方向性と現在的立ち位置」ということです。習近平・中国における「歴史的方位」とは、韓慶祥の表現を使えば、「中国の特色ある社会主義事業は新しい発展段階に入った」というのが歴史的な方向性であり、「18回党大会以来の新しい歴史的起点」というのが現在的立ち位置です。直ちに理解されるのは、毛沢東時代の中国の「歴史的方位」、鄧小平時代の中国の「歴史的方位」と、習近平時代の中国の「歴史的方位」とは明确に異なっているということです。「歴史的方位」という概念を踏まえれば、「毛沢東思想」「鄧小平理論」と並び立つ「習近平思想」の位置づけが理解されることになります。
 とは言え、「時代的課題」「歴史的方位」は毛沢東思想、鄧小平理論に次ぐ新しい思想・理論を要請していることは理解されるとしても、思想・理論と呼ぶにふさわしいだけの中身が習近平思想に具わっているのかは別の問題です。この点について韓慶祥は、「解決の方略」として、次のように指摘しています。
 「時代的問題を解決し、歴史的任務・歴史的使命を完成し、奮闘目標を実現するためには、有効な道筋及び方略、すなわち「総体的方略」を採用しなければならない。習近平思想は問題解決の方法、歴史的任務・歴史的使命を解決する方略、奮闘目標を実現する道筋を数多く提起した。」
 韓慶祥はそういう道筋としての習近平思想を「民族復興論」「人民中心論」「発展理念論」と整理しています。
 韓慶祥はさらに、道筋を提起するだけではなく、「必要かつ重要な全面的保障を提供する必要」そして「強大な領導力が全国各民族人民を引率して問題を解決し、歴史的任務・歴史的使命を完成し、奮闘目標を実現する必要」があることを指摘します。保障提供に関する習近平思想として韓慶祥は「二大布局論」「戦略配置論」「総体国家安全観」「運命共同論」「国家治理論」(「中国之治論」)に整理します。また、領導力に関する習近平思想は「強大政党論」ということになります。
 韓慶祥は以上の「歴史的方位論」「民族復興論」「人民中心論」「発展理念論」「二大布局論」「戦略配置論」「総体国家安全観」「運命共同論」「国家治理論」(「中国之治論」)「強大政党論」の10の根本的観点が習近平思想における思想・理論であると指摘します。しかも韓慶祥は、この10の根本的観点はバラバラに併存するのではなく、「以上の習近平思想の10の根本的観点は密接に繋がっており、厳密な内在的論理を備えていて、一つの有機体及び科学体系を構成している」と指摘し、「一つの有機体及び科学体系」と呼ばれるにふさわしい内容を習近平思想が備えていることを解説しています。
 以上が韓慶祥による「習近平思想」に関する解説のダイジェストです。私は韓慶祥の解説に基本的に納得し、「習近平の新時代の特色ある社会主義思想」すなわち「習近平思想」が「毛沢東思想」「鄧小平理論」と並び立つ思想と呼ばれるに足るものであることを私なりに認識しました。
 参考までに、韓慶祥の文章(詳訳)を以下に紹介します。
(習近平思想の根本的観点及び方法論の抽出及び概括)
習近平思想の根本的観点を抽出し、概括する上では、まずは前提的な意義のある方法論を確定する必要がある。この方法論確定の基礎は習近平思想が拠って立つ歴史的方位、時代的課題そして解決の方略である。
(歴史的方位)エンゲルスは次のように指摘した。我々の理論は「歴史的な産物であり、異なる時代においてまったく異なる形式を備え、同時にまったく異なる内容を備える」。この指摘が事実上語るのは、習近平思想の誕生、形成の「歴史的方位」の問題である。18回党大会以来、我が国は新しい歴史的起点に立ち、中国の特色ある社会主義事業は新しい発展段階に入った。
(時代的課題)マルクスはかつて次のように指摘した。どの時代もその時代特有の問題を持っており、その問題とは「自らの精神状態を表現するもっとも実際的な要求である」。どの時代も、それが解決できる問題を提起し、それが完成することができる任務を制定することができるだけである。習近平におけるこの時代の問題、すなわち歴史的任務あるいは歴史的使命とは、社会主義現代化国家を全面的に建設し、中華民族の偉大な復興を実現し、「大而不強」の問題を集中的に解決し、「豊かになる」から「強くなる」という偉大な飛躍を迎えることである。これが事実上物語るのは、習近平思想が新しい歴史的方位において解決するべき時代の問題であり、あるいは実現するべき奮闘目標、完成するべき歴史的任務・歴史的使命である。
 (解決の方略)時代的問題を解決し、歴史的任務・歴史的使命を完成し、奮闘目標を実現するためには、有効な道筋及び方略、すなわち「総体的方略」を採用しなければならない。習近平思想は問題解決の方法、歴史的任務・歴史的使命を解決する方略、奮闘目標を実現する道筋を数多く提起した。時代的問題を解決し、歴史的任務・歴史的使命を完成し、奮闘目標を実現するためにはさらに、必要かつ重要な全面的保障を提供する必要がある。それだけではなく、もっともカギとなるのは、強大な領導力が全国各民族人民を引率して問題を解決し、歴史的任務・歴史的使命を完成し、奮闘目標を実現する必要がある。
 以上により、習近平思想の根本的観点を抽出し、概括する方法論とは、新時代において中国の特色ある社会主義を堅持し及び発展させる「歴史的方位-奮闘目標-全面保障-領導力」ということである。
(習近平思想の10の根本的観点)
 以上の方法論に基づき、習近平の一連の重要講話に基づいて、習近平思想の10の根本的観点を抽出し、概括することができる。
 第一は「歴史的方位論」である。長期にわたる努力を経ることによって中国の特色ある社会主義は新しい時代に入った。これが我が国の発展における新しい歴史的方位である。これはまた習近平思想の位置する歴史的方位でもある。
 第二は「民族復興論」である。新時代における中国共産党の歴史的使命と表すことができる。民族復興を実現することは習近平思想の歴史的使命、歴史的任務、奮闘目標である。
 第三は「人民中心論」である。中華民族の偉大な復興を実現することの価値観は人民の幸福を実現することである。良い生活に対する人民の憧れこそは中国共産党の奮闘目標である。習近平を確信とする党中央の治国理政は一貫して人民を心の中で最高の位置に置いており、人民は我が党執政の最大の自信の源である。党中央は「不忘初心、牢記使命」を並べて提起する。このことは、「民族復興論」と「人民中心論」とが習近平思想の二大基盤であることを意味する。
 第四は、「発展理念論」である。この観点は「総体方略」の次元から抽出し、概括したものである。なぜならば、新しい発展理念は「道」という特質を備えるとともに、新しい時代の新しい歴史的方位において解決する新しい社会主要矛盾を解決する根本的方略でもあり、大国を強国にして「強くなる」ことを実現する根本的な道筋、根本的な支点でもある。それは、発展の方向、発展の方式及び発展の動力等の問題を集中的に回答するものである。
 第五は、「二大布局論」である。これは、「二大布局」が「術」の範疇に属するとともに、中華民族の偉大な復興を実現する「総体布局」及び「戦略布局」であるためである。
 第六は、「戦略配置論」である。戦略配置は「二つの百年」という奮闘目標にかかわる戦略的計画及びその実行のための戦略的ステップであり、総体方略の一部分に属するとともに、「道」「術」に対する「行」の範疇にも属する。
 第七は、「総体国家安全観」である。これは、中華民族の偉大な復興を実現し、大国を強国にする、すなわち「強くなる」ことを実現する国内的保障である。  第八は、「運命共同論」である。これは、中華民族の偉大な復興を実現する、すなわち「強くなる」ことを実現するために、良好な外部環境を造営し、良好な国際的保障を提供するためのものである。
 第九は、「国家治理論」及び「中国之治論」である。中華民族の偉大な復興を実現する、すなわち「強くなる」ことを実現するための良好な内部環境及び外部環境を造営するためには、中国の治を堅持しかつ強化する必要がある。そのことは二つの基本環境を支える根本的な支点である。言い換えれば、中国の治の根本目的は、中華民族の偉大な復興を実現する、すなわち「強くなる」ことを実現するための良好な内部環境及び外部環境を営造することである。党の19期4中全回及び18期3中全回の歴史的論理は代を次いで受け継がれており、理論的論理は相互に支え合っており、実践の論理は密接につながっているのであって、目標の方向性は一貫しており、重大な施策は繋がりつつ前に進んでおり、すべてが時代を画す意義を有している。
 第十は、「強大政党論」である。中国共産党の領導は中国の特色ある社会主義のもっとも本質的な特徴であり、中国の特色ある社会主義制度の最大の優位性であり、最高の政治領導力である。それは、中華民族の偉大な復興を実現するため、すなわち、「強くなる」ことを実現するために、強力な政治的保証を提供する。
(習近平思想の「綱」及び「目」)
 以上に述べたことに基づき、習近平思想の「綱」及び「目」を抽出し、「綱挙目張」(大綱を明確にすることによって細目を明らかにすること)することができる。
 習近平思想の「綱」とはすなわち、
 歴史的方位は、中国の特色ある社会主義の新時代である。
 歴史的使命は、中華民族の偉大な復興を実現することである(総目標、総任務)。
 価値観は、人民を中心とすることである(総理念)。
 総体方略は、新発展理念によって「二大布局」を推進し、「ツー・ステップ」戦略(発展方向、発展方式、発展動力並びに総体布局、戦略布局及び戦略ステップを含む)を実行することである。
 全面保障は、総体的国家安全を保障し、人類運命共同体を構築し、国家治理の現代化を推進することである。  領導力量は、強大な中国共産党である。
 習近平思想の「目」は、展開すればすなわち、
 「歴史的方位論」に主に含まれるのは、新しい歴史的方位が「何に由来」(歴史的成就、歴史的変革、歴史的影響)し、「現在は何処」(「三つの意味するもの」)にあり、「何処に向かう」(「五つの是」)か、ということである。
(浅井注)
「三つの意味するもの」:習近平の19回党大会報告(2017年10月18日)における以下の指摘:中国の特色ある社会主義が新しい時代に入ったということは、①近代以来艱難を経た中華民族が立ち上がり、豊かになることから強くなるという偉大な飛躍を迎え、中華民族の偉大な復興を実現するという明るい前景を迎えていることを意味し、②科学的社会主義が21世紀の中国において強大な生気と活力を渙発し、世界に中国の特色ある社会主義の偉大な旗を高々と掲げるに至ったとことを意味し、③中国の特色ある社会主義の道、理論、制度、文化は不断に発展し、現代化に向かう道筋を切り開き、発展を加速することを希望するとともに自らの独立性を維持することも希望する途上国及び途上民族にまったく新しい選択を提供し、人類の問題の解決のために中国の智慧と中国の方案を貢献していることを意味する。
「五つの是」:18期5中全回公報(2015年10月29日)は、「創新、協調、緑色、開放、共享」の発展理念を打ち出した。
「歴史的使命論」に主に含まれるのは、「偉大な闘争」「偉大な工程」「偉大な事業」である。
「価値観」に主に含まれるのは、「人民が目的である」「人民が主体である」「人民が尺度である」(人民至上)である。
 「発展理念論」に主に含まれるのは、サプライ・サイド構造改革を深化させ、社会主義現代化を基本的に実現し、社会主義現代化強国を全面的に建設する戦略的ステップである。
 「二大布局論」に主に含まれるのは、「戦略企画」「総体布局」「「戦略布局」である。
 「戦略配置論」に主に含まれるのは、小康社会を全面的に建設し、社会主義現代化を基本的に実現し、社会主義現代化強国を全面的に建設する戦略ステップである。
 「総体国家安全観」に主に含まれるのは、金融安全保障、文化安全保障、軍事安全保障等である。
 「運命共同論」に主に含まれるのは、百年来未だかつてない世界的大変局に対応し、世界的治理に参与し、手を携えて人類運命共同体を構築し、「一帯一路」の共同建設を推進することである。
 「国家治理論」に主に含まれるのは、国家制度の顕著な優位性を発揮し、国家の治理効能を増強し、茶会主義社会を治理することである。
 「強大政党論」に主に含まれるのは、「理想信念」「4つの意識」「看家本領」「二大革命」「責任担当」等である。
(浅井注)
「4つの意識」:18期6中全回が採択した「新形勢下の党内政治生活に関する若干の原則」は、政治意識 、大局意識、革新意識、看斉意識の樹立を強調した。
「看家本領」:中央政治局第11回集団学習の際、習近平は、党の指導幹部が原点を学習研究し、マルクス主義哲学を自らの看家本領(伝家の宝刀;十八番;奥の手)とすることを強調した。
「二大革命」:「社会革命」と「自我革命」。習近平は、2018年春節祝賀会で提起した。
(習近平思想の10の根本的観点の間の内在的論理)
以上の習近平思想の10の根本的観点は密接に繋がっており、厳密な内在的論理を備えていて、一つの有機体及び科学体系を構成している。
 いかなる科学的な思想理論体系も、誕生及び形成の時代的背景及び歴史的方位を必ず有している。習近平思想の誕生及び形成の時代的背景及び歴史的方位は何か。19回党大会報告は初めて明确かつ鮮明に次のとおり指摘した。「長期にわたる努力を経て、中国の特色ある社会主義は新しい時代に入った。是が我が国発展の新しい歴史的方位である。」報告の第一部分が語っているのは、習近平思想の誕生及び形成に関する時代的背景及び歴史的方位であり、「歴史的方位論」と呼ぶことができる。その本質は、新しい時代、新しい歴史的方位の中国の特色ある社会主義発展の新たな文章を書き記すことである。それは正に、社会主義初級段階が鄧小平理論の誕生及び形成の歴史的方であったのと同じである。したがって、歴史的方位論は習近平思想の「立論の基礎」であり、「歴史的方位」を理解し把握することによってのみ、初めて習近平思想を新に理解し、把握することができる。「歴史的方位」に対する理解が欠けるならば、習近平思想を新に理解し把握することは難しい。明らかに、「歴史的方位論」はオリジナルなものであり、習近平思想の第一の根本的観点をなすものである。
 特定の時代的背景及び歴史的方位においては、それにマッチする奮闘目標、歴史的任務及び歴史的使命を確定しなければならない。19回党大会報告が確定した新時代、新しい歴史的方位は「豊かになる」から「強くなる」への偉大な飛躍を迎えるということである。これは実質上、我が国が発展して大国をして強国とする新時代、新しい歴史的方位にかかわることである。この新時代、新しい歴史的方位における我が党の新しい歴史的使命は中華民族の偉大な復興を実現することである。この内在論理に従い、19回党大会報告の第二部分の核心はすなわち、「新しい時代における中国共産党の歴史的使命」、すなわち奮闘目標及び歴史的任務に関する論述であり、その本質は「民族復興論」である。18回党大会以来、習近平を核心とする党中央は、中華民族の偉大な復興の実現すなわち「強くなる」という主線にしっかり沿って中国の特色ある社会主義を堅持し、発展させてきた。習近平思想は、新しい歴史的方位において形成された、中華民族の偉大な復興の実現にしっかり沿った一連の新理念新思想新戦略である。2012年11月15日、習近平は党総書記に当選した後、内外記者に対して重要講話を発表した。そこで語った核心思想は「三大責任の担当」である。その中の第一の責任の担当とは、民族のために担当し、中華民族の偉大な復興というチャイナ・ドリームを実現することである。これはまた、18回党大会以後に習近平が提起した第一の戦略思想であり、オリジナルなものである。したがって、「民族復興論」は論理的に「歴史的方位論」に連結しており、習近平思想の第二の根本的観点をなすものである。
 チャイナ・ドリームとは、詰まるところは中国人民のドリームであり、その帰結及び目的は中国人民を幸福にすることである。であるからこそ、我が党は「不忘初心、牢記使命」を並び提起するのである。「中華民族の偉大な復興の実現」が歴史的次元に重点を置いたものであるとすれば、「人民を中心とする」は価値の次元に重点を置いたものである。19回党大会報告にいう新時代における新しい社会の主要矛盾とは、日増しに増大する人民の良い生活の需要とアンバランスで不十分な発展との間の矛盾である。ましてや、人民を中心とすることは我が党の根本的な政治的立場である。習近平の一連の重要講話の中で出現率がもっとも高い概念は人民であり、もっともカギとなる時に習近平が最重要として強調するのも人民である。人民を中心とすることは習近平の一連の重要講話の精髄であり魂であり、新時代の中国共産党員の価値志向であり、新しい社会の主要矛盾を解決する上での内在的要求である。人民を中心とすることが人を基本とすることよりも高みにあることのゆえんは次の点にある。すなわち、人を基本とすることは政治の上で実現することによってのみ、その意義と価値が初めて顕現する。しかし、人民を中心とすることは本質的に人を基本とすることの政治上の具体的な要求であり、体現である。要すれば、その高みとはその政治性、具体性、実効性及びアピール力にある。人民を中心とするとは「人民中心論」とも言いうる。「人民中心論」は習近平思想の第三の根本的観点をなすものである。
 「歴史的方位論」をビルディングの「地盤」に喩えるならば、「民族復興論」と「人民中心論」はこの「地盤」の上に突き固められた「二大礎石」に喩えられる。新しい歴史的方位とは、我が国が発展して大国から強国になる、すなわち「強くなる」ことを実現するという歴史的方位である。人民の幸福とは、中華民族の偉大な復興を実現すること、すなわち「強くなる」ことを実現することの帰結及び目的である。この新しい歴史的方位において、人民の日増しに増大する良い生活の需要とアンバランスで不十分な発展との間の社会の主要矛盾を解決し、中華民族の偉大な復興を実現し、大国を強国にして「強くなる」ことを実現し、人民をして良い生活を過ごすようにするためには、新しい発展理念を確立しなければならない。この新しい発展理念とはすなわち、創新、協調、緑色(グリーン)、開発、共享である。したがって、新発展理念の本質は、新時代、新しい歴史的方位が大国を強国にする、すなわち「強くなる」ことを実現する発展理念である。「要素主導型」「投資主導型」と比較する時、この新発展理念はオリジナル性を備えている。我々はこの新発展理念を「発展理念論」と簡潔に称することができる。「発展理念論」は習近平思想の第四の根本的観点をなすものである。
 如何にして中華民族の偉大な復興を実現し、「強くなる」ことを実現するか。そのためには、新発展理念の導きのもとで総体的方略を確定する必要がある。総体的方略とは本質上一種の戦略的企画である。「五位一体」の総体的布局を統括的に推進し、「四つの全面」戦略布局を協調的に推進すること、簡単に言えば「二大布局」を推進することこそが中華民族の偉大な復興の実現すなわち「強くなる」ことを実現するための総体的方略である。この総体的方略は習近平思想における不可欠なものであり、オリジナルなところでもあり、習近平思想の第五の根本的観点を構成するものである。
(浅井注)
「五位一体」:18回党大会は、経済、政治、文化、社会、生態文明という5方面から新時代に「五位一体」の総体布局を統括的に推進する戦略目標を制定した。
「四つの全面」:2014年11月、習近平は福建を視察した時、「小康社会を全面的に建設する、改革を全面的に深化させる、依法治国プロセスを全面的に推進する」という「三つの全面」を提起し、翌12月には、これに「党を全面的に厳しく治める」を加え、「四つの全面」とした。
新発展理念が中華民族の偉大な復興の実現寸話治「強くなる」ことを実現するための根本の「道」であり、「二大布局」が中華民族の偉大な復興の実現すなわち「強くなる」ことを実現するためのカギとなる「術」であるとすれば、それに続く論理として、中華民族の偉大な復興の実現すなわち「強くなる」ことを実現する上での戦略ステップを確立しなければならない。この戦略ステップはいわゆる「行」の範疇にかかわる。ここで言う「行」とは本質的には戦略的配置のことであり、中華民族の偉大な復興を実現するための実践上の道程を言う。この戦略的配置または実践上の新道程とは、19回党大会報告第4部分における「ツー・ステップ」の戦略的配置を言う。第一歩は、2020年から2035年までの15年間で社会主義現代化を基本的に実現すること、第二歩は、2035年から本世紀中葉までさらに15年かけて我が国を富強・民主・文明・和諧・美麗の社会主義現代化強国に築き上げ、中華民族の偉大な復興を実現する、ということである。この「ツー・ステップ」の戦略的配置は「戦略的配置論」と称することができ、習近平思想の第六の根本的観点を構成する。
 「発展理念論」「二大布局論」「「戦略的配置論」は中華民族の偉大な復興の実現すなわち「強くなる」ことを実現するという総体的方略から論じたものである。それに続く論理として、中華民族の偉大な復興の実現すなわち「強くなる」ことを実現するための全面的保障を明らかにする必要がある。この保障については主に三つの方面があり、「一主二基」と概括することができる。「一主」とは「中国の治」を実現すること、すなわち改革を全面的に深化するという総目標の実現である。「二基」とは、一つは国内に関して総体的国家安全保障を確保することを指し、今ひとつは国際に関して人類運命共同体を構築することを指す。
 総体的国家安全保障には主に、政治的安全、軍事的安全、経済的安全、文化的安全、社会的安全、科学技術的安全、情報的安全、生態的安全、資源的安全、核的安全、生物的安全が含まれ、その中で政治的安全、経済的安全、文化的安全、情報的安全、国土的安全、軍事的安全、金融的安全が相対的に重要である。総体的安全は「総体的国家安全観」と称することができ、習近平が提起したオリジナルな概念、理念、そして観念である。人類運命共同体を構築することの本質は、平和的発展、合作共嬴を強調し、重視し、中華民族の偉大な復興の実現すなわち「強くなる」ことを実現するために良好な外務環境を造成し、人類の問題を解決するために中国の智慧と方案を貢献することである。以上もまた、習近平が提起したオリジナルな概念、理念、理論および方案である。
 総体的国家安全保障及び人類運命共同体は、中華民族の偉大な復興の実現すなわち「強くなる」ことを実現する上での2大基本保障である。この二大保障を支える基本的保障は「中国の治」である。中国の治は改革を全面的に深化する目標である。改革を全面的に深化するという総目標は、すなわち、中国の特色ある社会主義制度を堅持し充実し、国家治理体系及び治理能力の現代化を推進するということであり、一つは「制度」、もう一つは「治理」であって、簡潔には「中国の治」と称することができる。中国の治の本質と目的とは、国家の発展のバランス・和諧・安定・安全を保障するとともに秩序を備えることであり、しかも国家発展の創新の動力と活力をかき立てることでもある。18回党大会以来、習近平を核心とする党中央は、中国の治を中心として中華民族の偉大な復興を実現し、進んで実践上の創新及び理論的創新を推進してきたのであり、そのことは根本的意義を備えるオリジナルな理念である。しかも習近平はかつて次のような根本的意義のある重要な命題・論断を提起した。すなわち、中国社会主義建設の実践の「前半プロセスと後半プロセス」:前半プロセスの主要な歴史的任務は社会主義基本制度の基礎の上で改革を進めること、後半プロセスの主要な歴史的任務は社会主義社会の治理をよくすること、というものである。18回党大会以来、我が党は中国社会主義建設の実践における「後半プロセス」を開始した。中国の治は「国家治理論」と称することができる。以上により、全面保障の表れとしての「国家治理論」「総体的国家安全保障観」「運命共同論」は習近平思想の第七、第八、第九の根本的観点を構成する。
 党政軍民学、東西南北において、党はすべてを領導し、中国のことをうまくやることのカギは党にある。それだけではなく、中国共産党の領導は中国社会主義のもっとも本質的な特徴であり、中国の特色ある社会主義制度の最大の優位性であり、再興の政治領導力である。中華民族の偉大な復興の実現すなわち中国が「強くなる」ことを実現する上では、中国共産党が決定的な役割を担う力であり、中国共産党の領導なしでは、民族復興は空想以外にない。よって、以上の内容を論じた後の必然的論理として党の領導力を論じなければならない。党建設に関する習近平の重要論述のオリジナルな貢献とは、中国共産党を大きい党から強い党にし、強い党の建設を重視することである。これを「強大政党論」と言うことができる。強大政党論は習近平思想の最後の10番目の核心的ポイントである。