中国の内外情勢に関する基本認識・判断は11月1日のコラムで紹介しましたが、パワー・ポリティックスに凝り固まっているアメリカ(共和党であると民主党であると変わらない)がこの認識・判断を共有することはあり得ず、中国を脅威・ライバルと見なし続けることを中国は冷静に見極めています。したがって、アメリカの大統領選挙の帰結がどうなるかに強い関心はありません。むしろ「他者感覚」のある中国は、中国がアメリカ的パワー・ポリティックス的発想を踏まえて「アメリカに力で対抗する」以外に、アメリカが中国を敵に回すことは得策ではないことを理解するに至る可能性はないと結論づけていると思われます。11月2日付けの環球時報社説(ウェブ掲載は11月1日)はそうした中国の率直な対米観を披瀝するものです。要旨を紹介します。

 世界の人々は今回の大統領選挙にすこぶる関心があるが、どんなに関心があるとしても、その利害は壁一枚を隔てている。中国社会からすれば、ますます多くの人がトランプ執政の4年は確かに中米関係に巨大なショックをもたらしたと感じながらも、アメリカの対中政策は戦略レベルですでに固まっており、両国関係は今後かなり長期にわたって対立が続き、さらに悪化するスペースは縮小しているものの好転する可能性もまた微々たるものだ、と見るに至っている。アメリカ大統領選挙が中米関係のカギとなるという見方は幼稚だというのが大方の見方だ。
 仮に過去4年間にアメリカの棍棒がなかったならば、中国人はおそらく永遠にアメリカの半導体工業などの基盤の上で家を建て続け、危機感で目が覚めるということはなかっただろう。過去4年のアメリカの対中政策はまたも「中国を目覚めさせた」と言うことができる。つまり、カギとなる技術で首根っこをつかまれることを心配するのは取り越し苦労などではなく、科学技術の弱点を補うという大幕がこれで完全に開いたというだけに留まらない。アメリカは中国の台頭を受け入れず、あらゆる手段で中国をやっつけようとするということ、それはリスクなどというものではなくて冷厳な現実であるということを、我々は確信するに至った。
 中国が大国として民族及び国家の復興を成し遂げるためには、人の弱みにつけ込んで一気呵成にくる戦略的な悪意と狂気とに打ち勝たなければならない。中米の平和共存は中国の従順及び忍耐を通じて実現できるものではあり得ず、我々はアメリカがどんな力を使ってもやっつけることができないだけの強大な力でなければならず、そうであることによってのみ、アメリカをしてルールに従って中国と平和的に競争することを最終的に受け入れさせることができる。言い換えるならば、アメリカがいろいろ試した上で最終的に、中国と平和共存することがアメリカにとって最善、あるいはもっとも悪くない選択であると認識する時にのみ、平和を基礎とした中米協力関係が安定するに至るだろう。
 それでは中国は何をするべきか。答は明确である。いささかも動揺せず、国を挙げて、市場経済という大環境のもと、中国のハイテクの弱点を一つ一つ整備し、全面的に基礎研究からハイテク応用に至るまで第一線へ押し上げ、安全かつ信頼できるサプライ・チェーンを構築することである。これは巨大なシステム・エンジニアリングであり、経済体制及び社会治理の一連の改革を経なければならない。
 軍事力建設も緊要不可欠である。戦略的防御の原則に基づき、近海での軍事闘争における優位性を構築する必要があるだけでなく、核を基礎とする戦略デタランスも構築しなければならない。アメリカが相対しているのは手に負えない、ライバルとするよりも友人とした方がアメリカの利益に合致する中国であることをワシントンに分からせる必要がある。
 要するに、中国にとってアメリカの選挙はそれほど重要ではなく、中国は二度と再び僥倖心を抱くことはあり得ない。アメリカの対中姿勢には当然ながらボトムラインがあるだろうが、見るところ、このボトムラインは中国自身によってのみ造り出すことができるようだ。