9月1日、ラブロフ外相はモスクワ国際関係大学(MGIMO)の新学年度開始に当たって学生、研究スタッフを相手に講演し、その質問に答える中で、ロ日関係の展望をどう考えるかという質問にも答えました。アメリカ・トランプ政権がロシアを敵と見なすもとでの日米軍事同盟に焦点を当て、日本はアメリカの言いなりにならないとロシア側には言いながら、現実の行動はその反対のことをやっているとして、日本と話すべきことは多いとするものです。安倍首相の辞任表明を踏まえたものであり、日本の後継政権に対する強烈な先制パンチをかませる意図がありありと感じられます。短いですが、ラブロフ発言(9月1日付けロシア外務省英語WS掲載)を紹介します。

 安倍首相とプーチン大統領との関係は相互尊敬に立った同志的、友好的なものであったし、互いの個人的共感にも基づいたものだった。プーチンは安倍辞任表明後の二人の電話会談(ロシア大統領府WSはこの電話会談がプーチンのイニシアティヴによるものだったと発表)でもこのことを指摘した。プーチンは、いかなる資格のもとでも安倍晋三との友好的な意思疎通を保ちたいという真摯な思いを確認した。
 ロ日関係の展望に関しては、我々としてはそれが実り豊かで親密なものでありたいと考えており、例外なしにあらゆる分野でインタラクションを開始したい。つまり、経済、ハイテク、研究及びテクノロジー、文化、人道的結びつき、教育、人的コンタクト、環境、千島列島を含む共同プロジェクト、そして、安全保障分野における緊密な協力とトランスペアレンシーだ。
 このインタラクションは、我々の共通な地域の具体的な情勢に関するディスカッション、なかんずく日米軍事同盟にかかわるディスカッションのみならず、国際機関における緊密な協調と協力の基礎となる。これらのことは安倍首相とプーチン大統領が合意したことである。そうすることにより、両国は、もっとも複雑な問題の解決すら可能となる関係レベルを実現することができることになるだろう。
 以上のフォーミュラは協調して採用されたものである。不幸なことだが、対日関係ではこのゴールから遠く離れた状況にいる。日本は経済協力の邪魔になる(対ロ)制裁に加わっている。東京は、ナノテクノロジーその他のハイテク分野での共同生産問題になると、西側諸国、主としてアメリカの顔色を窺う。
 残念なことだが、国連の難しい問題の決議では、日本はほとんど常にロシアに反対票を投じる。もちろん我々は、日本の島々に接する地域の安全保障に関してプロフェッショナルな対話を行いたいし、ワシントンがオフィシャルにロシアを敵と宣言しているもとで、日本のアメリカに対する軍事的義務に関する日本側の見解も知りたい。東京は、ロシアに対してアメリカと組むことはないと主張するが、ロシアを敵と見なしているアメリカと緊密な同盟を持っている。要するに、話し合うことは多い。
 同時に、与党指導者の選挙結果がどうであれ、したがってまた首相が誰であっても、以上のすべての分野で日本の隣人と最大限緊密な協力を発展させる用意がある。南千島諸島での共同経済活動については、我々が期待するほどスのスピードではないとしても、両国は前進している。これらのプロジェクトは、これらの島々に住んでいる人々の利益になるし、関係する会社にも利益になる。要するに、我々は段階的に進んでいく用意があるが、主要な仕事は、両国関係を根本的に新しいポジティヴなレベルに進めることである。