『日中友好新聞』はいわゆる「日本共産党系」の日本中国友好協会(日中友協)が発行している新聞ですが、8月15日号は第3回常任理事会での討議を紹介しており、特に「香港問題で活発な議論」では、党中央の公式見解に対するさまざまな意見が紹介されており、私は大いに力づけられました。
 私は香港問題に限らず、日本共産党の中国問題に関する分析・判断は「結論先にありき」で、極めて問題があると認識・判断しています(1月の党綱領改正にかかわる志位委員長発言については、新著249-264頁で詳しく批判的に検討)。他方、日中友協の会員の方たちとはさまざまな集会でお会いすることがあり(コロナ下ではそういう機会もなくなりましたが)、中国に対してバランスがとれた見方を持っている人が多いことを知っています。私としては、日中友協及びその会員が党中央の中国問題に関する見解を正し、日本国内の偏見に満ちた対中認識を改めるべく、大いに健闘して欲しいと日頃から願っているのです。そういう私からすると、『日中友好新聞』の記事はとかく「奥歯にものが挟まった」感じで歯がゆいものが多いというのが偽りのない印象でした。
 しかし、冒頭に紹介した8月15日号では、香港問題に関して、名指しは避けているものの、党中央の香港問題に関する判断を問題視する意見が常任理事会の場で活発に出されたことを知ることができます。具体的には以下のとおりです。

香港問題での活発な討論
 議案提案を受けての討議では、香港の情勢をめぐって意見が集中し、次のような率直な意見が表明されました。
 「香港でも国家安全法に強く反対する人びとがいる一方で、この法律を支持している人もいる。協会内でもさまざまな意見がある。情勢を客観的にとらえることが必要だ」
 「理事長談話の内容を重視すべき。合わせて客観的な情報を集めて情勢分析を深めることも大事だ」  「中国本土と香港の人びとの思想形成の違いも考える必要がある」
 「民主派と言われる運動に見られる『西側賛美』などは問題と思っているが、権力をもつ側と市民とを同列に論じるべきではない」
 「中国政府、香港政府、民主派それぞれに問題があり、それぞれに批判が必要だ」
 「中国は『一国二制度』と『人権』を守ることを約束している。この立場から問題点を見ていくことが必要だ」
「中国が好きで入会してきた人の中には、中国に『抗議する』と聞いてびっくりする人もいる。幅広い人が集う協会としての判断が大事で、少数意見を排除すべきではない」
 私は日中友協の常任理事会という重みのある場所でこれらの意見が活発に出されたこと、そして、『日中友好新聞』がその事実を活字にしたことを非常に重視します。素晴らしいことだと思います。私はこの機会に、同紙が「奥歯にものが挟まった」物言いに終始するのではなく、真の日中友好を考える立場から、「正しいことは正しい、間違っていることは間違っている」と党中央にも直言する、ジャーナリズムとしてのあるべき姿を確立することを心から期待します。そして、日中友協が毅然とした立場を確立し、ひん曲がっている世論の対中観を正す先頭に立つとともに、党中央の主観と偏見に満ちた対中認識・分析をも正す役割(日中友協以外にこの役割を担いうる組織はない!)を担うことを心から期待していることも、併せて表明しておきたいと思います。