日本の怪:新コロナ・ウィルス感染者数データ

2020.05.04. (補足)5.5.

(補足)
 5月5日付けの朝日新聞は、都道府県毎の人口10万人当たりの感染者数を示す地図を掲載していました。人口百万人当たりに換算して中国の59人と比較すると、驚くべき値であることが分かります。東京328人、石川232人、富山203人、大阪189人、北海道162人、福井159人、千葉137人、京都129人、福岡127人、埼玉123人、兵庫122人、神奈川119人、高知106人ときます。中国59人より多い県は、北から山形、群馬、山梨、岐阜、愛知、滋賀、奈良、和歌山、沖縄の9県になります。中国より多い都道府県は実に22に上るのです。実に半数近い数になります。
 いろいろ原因はあるでしょうが、濃厚接触者及び定められた症状を感じたもの(37.5度以上の熱が4日間続くなど)のみがPCR検査を受ける現在の体制に主要な原因であることは明らかでしょう。この事実はまた、もっとPCR検査対象を広げることが急務(もう遅すぎるけれども、これ以上の感染者数を増やさないためにはなお不可欠)であることを示していることも間違いないと思います。

5月2日の朝のNHK(ニュース番組の後)の番組で、京都大学の山中伸弥教授が高瀬耕造キャスターの質問に答えているのを見かけました。特に印象深かったのは、日本における今後の見通しに関する質問に対して、山中教授が、日本については判断するためのデータがないので予測できない、この点で日本は世界でも特殊です、という趣旨の発言をしたことでした。たまたま見かけたので神経を集中していたわけではなく、したがって、山中教授の発言を正確に伝えている自信はありません。しかし、データがない点で日本は世界でも特殊だ、という趣旨の発言をしていたことは間違いないと思います。特に「日本は特殊だ」と、「特殊」という言葉を使ったことは間違いありません。
 山中教授が「特殊」としたのは、私がこのコラムで指摘してきたように、PCR検査が極めて制限的、選択的に行われていることを指していることは間違いないと思います。ここからは私の意見の繰り返しですが、制限的、選択的であるのは、人命最優先ではなく、現行医療体制を守ることを最優先にする厚生労働省及び御用学者たちの意見を安倍首相が丸呑みにしているからです。人命最優先か、医療体制最優先か、これが日本と世界を分ける分水嶺であり、医療体制最優先なのは日本だけで、それ故に「特殊」だということになります(山中教授がそういう意味で「特殊」と表現したわけではありません)。
 ちなみに、5月3日付けの中国日報網は、「生命なくして何の自由を語るのか」(中国語:「没有生命、何談自由?」)というタイトルで、中国の新コロナ・ウィルス対策が、感染率:人口百万人当たり約59人、治癒率:94.3%、死亡率:全国4.09%、湖北省を除くとわずか0.83%、という赫々たる成果(4月10日現在)を収めていることを報じています。
中国の古い言葉に「大道至簡」(基本原理・方法・規律は極めて簡単で、短い言葉で明らかにできる)があると紹介しつつ、今回の新コロナ・ウィルス対策として中国が行ったことは、「一切の代価を惜しむことなく、誰もの生命を救うこと」であり、換言すれば、「人が尻込みすることを断固としてやること」「コストを計算しないで思い切って投入すること」「中国経済が計り知れない巨大な損失を引き受けること」だった、とまとめています。安倍政権と正反対のことをしてきたから、以上の成果を成し遂げることができたということです。
 この文章はまた、「生命至上」の理念は中華民族5千年の伝統文化の内在的要求であるとし、「民為邦本、本固邦寧」「民為貴、社稷次之」「君舟民水」などの、中国人であれば誰もがそらんじている言葉が中華伝統文化の民本思想を表していると述べます。その上で、「重民愛民、保民安民」は古くから政府の首要な責任であるとして、今回の中国政府の行ったことは正にそれであると指摘します。また、中国共産党の信条は全身全霊で人民に服務することであり、中国政府は「以人為本」の執政理念に従い、人民の利益は何ものにも勝ることを強調するのであって、したがって、人民大衆の生命安全を守ることは当然のことである、とも述べています。
 「感染率:人口百万人当たり約59人、治癒率:94.3%、死亡率:全国4.09%、湖北省を除くとわずか0.83%」という成果は確かに赫々たるものであることは間違いありません。日本のように制限的、選択的にしかPCR検査を行っていない日本の人口百万人当たりの感染率が120人(GOOGLE統計。以下同じ)ですから、中国の成果のすごさが分かろうというものです。
日本の数字が人為的で当てにならない(分母が小さい)ことは、「三つの早期」を励行している国々と比較すると一目瞭然です。世界の模範国といって良い韓国ですら208人で、日本より高い数字です。韓国とならぶ模範国であるニュージーランドは228人、オーストラリア265人です。死亡率では桁外れな成績(後述)のシンガポールに至っては3192人の多さです。ちなみに欧米では、アメリカが3591人、イギリス2809人、ドイツ1991人、フランス1957人、カナダ1566人です。
 死亡率(除湖北省)0.83%という数字も桁外れに低い値です。シンガポールは0.01%(GOOGLE統計に基づいて計算。以下同じ)という信じがたい数字です。しかし、その後に来るのはオーストラリア1.4%、ニュージーランド1.76%であり、韓国2.32%がそれに続きます。日本は3.55%です。
日本に関する内訳(4日付け朝日新聞に基づいて計算)を見るともっと厳しい実態が浮かび上がります。3.55%より低い数字なのは大阪3.00%及び東京3.17%だけです。特定警戒都道府県13自治体ですが、京都3.61%、福岡3.71%、神奈川3.82%、千葉3.96%、岐阜4.00%、兵庫4.19%、埼玉4.22%のあと、北海道4.83%、茨城4.85%、そして石川5.68%、愛知に至っては6.91%と日本全体の数字のほぼ2倍です。制限的、選択的PCR検査の犯罪性は明白です。
 なお、死亡率ではアジアの健闘が光っており、香港0.38%、台湾1.39%、マレーシア1.67%、ヴェトナムに至ってはこれまで死亡者ゼロです。前に日本と韓国を比較したコラムを書きましたが、日本は韓国より1ポイント以上高いということは、早期発見、早期隔離、早期治療を励行してきた韓国とそれを手抜きした日本の違いを表しており、それだけ日本の人命軽視が数字になって現れているということではないでしょうか。
ちなみに、死亡率が一番高いのはフランスの18.95%で、次いでベルギー15.72%、イギリス15.24%、イタリア13.71%、オランダ12.46%、スペイン11.62%と続きます。独自のアプローチをとっているスエーデンも12.00%という高さです。アメリカは今のところ5.77%です。ロシアは猛烈な勢いでPCR検査を行っており、感染者数もうなぎ登りですが、死亡率は0.95%という素晴らしい数字です。アジアで日本より高い数字なのはミヤンマーの3.87%だけでした。インドは急速に感染が広がっていますが、今のところは3.24%です。
 日本における今後の見通しに関しては、御用学者氏の「数理統計」に基づくグラフがまことしやかな御託を並べているようですが、私は山中伸弥教授の発言がすべてだと思います。私も、日本だけは世界の例外で、新コロナ・ウィルスのお目こぼしに与り、政府の無為無策プラス国民の「三密」励行だけで事態が収まっていくという「奇跡」が起こるのであれば、それは結構この上ないと思います。
しかし、「三密」は世界のすべての国々が当たり前のこととして行っていることです。問題は安倍政権が無為無策を決め込んでいることであり、そういう無責任な政権が居座ることを許しているのは日本人だけであるということです。 今の日本は「感染経路不明」な感染者に「感染させた」一匹狼・忍者に対しては野放しが続いています。その一匹狼・忍者を野放しにさせないためには、できるだけ広範囲にPCR検査を行うことが不可欠です。ロシアはそれを愚直にやっているのです。韓国はそれで成功し、次の一歩へと歩み出そうとしています。緊急事態宣言を一ヶ月延長した日本との差は歴然です。
繰り返します。政府の果敢な行動のみが感染者数の減少を政策的・人為的に(神頼みではなく)可能にするのです。「お上」のいうなりになる日本人の悲しい性は本当になんとかならないものでしょうか。