トランプ妄言に対する中国の怒り

2020.04.20.

4月20日付けの環球時報は「中国を足蹴にして再選狙い ホワイト・ハウスの考え違い」と題する社説を掲載しました。トランプ政権による中国に対する誹謗と中傷はエスカレートして、とどまるところを知りません。今回の新コロナ・ウィルスを武漢の研究所が作り出した可能性があるという批判はその最たるものです。トランプがウソとでたらめの常習犯であることを知り尽くし、批判を惜しまない米欧メディアが、この点についてだけは、真相を明らかにする必要があると言い出しています。フランスのマクロン大統領、イギリスのラーブ外相も似たような発言をしました。米欧諸国の中国に対する不信感の根深さをまざまざと見せつけられる思いを味わっています。
「大量の死者を出し、1-3月期の経済成長がマイナスになるような犠牲を払ってまでしてでも中国がウィルスをばらまく」などという発想がどこから出てくるのでしょうか。世界的に権威ある雑誌『ネイチャー』が中国を連想させるような記事を書いたことについて謝罪する文章を公にしています。WHOも「中国震源」説を繰り返し否定しているのです。それにもかかわらず、そして、トランプの言説の信憑性ゼロであることは百も承知のはずのワシントン・ポストまでがこの「疑惑」を取り上げるところに、私は問題の真の所在を感じます。
 そのトランプが今度は、中国の新コロナ・ウィルスによる死者数を疑問視する発言を行いました。人間の尊厳に対する配慮・思いやりのかけらもないトランプの倫理感ゼロ丸出しのこの発言には私も呆れ返りましたが、中国にとっては「堪忍袋の緒が切れた」ということでしょう。環球時報のこの社説は、容赦ないトランプ批判を行いました。トランプは、刑事訴追を受けないとしても歴史の審判は免れない、と指摘するところに歴史の民である中国の真骨頂を見る思いがします。

 4月18日にトランプ大統領は、ホワイト・ハウスで行ったニュース・ブリーフィングの席上で、自らが指導する新コロナ・ウィルス対策が効果的であることを証明しようと、アメリカ人の死者数が10万人に11.24人であるとし、スペイン、フランス、イタリアよりも少ないと強調した。さらに彼は、中国の10万人に0.33人というのは「あり得ない」と公言し、「この数字を信じるものがあろうか」とまで言った。
 我々が言いたいのは、今回、中国国内で4632人の人命が失われたが、この数字がまだ小さいというのか、ということだ。中国人からすれば、もう十二分に多すぎる数字だ。武漢一都市だけで3869人が亡くなったのであり、人々は受け入れがたい思いをしている。中国の世論の場では、どうしてこんなことになったのか、どうしてこんなに多くの人が亡くなってしまったのか、という問いかけがずっと行われている。中国人が考えるのは、国家はもっと死ぬ人を減らすべきだったということであるし、そうするための努力及び改善の余地はあるはずだということだ。
 アメリカは世界最強国であり、医療資源は豊富、科学技術ももっとも発達しているし、今回は「参考書持ち込み可」のテスト(浅井注:中国の先行例から学べた、という意味か)だったわけであるのに、いまや一日に1,2千人、多いときは4千人の死者を出しているというのは、中国人の現代アメリカに対する想像力を絶している。アメリカでかくも大規模な死者を出しても良いという理由はあり得ず、ウィルスはまるで原始社会に入り込んだごとくであるが、少しの科学及び組織がありさえすれば、このようなことにはなり得ないはずだ。
 アメリカ大統領及びエスタブリッシュメントは現在の情勢に対して深刻に反省するべきである。ところが、アメリカ政府は責任を他人になすりつけることばかりであり、各州知事、民主党とケンカし、中国とWHOに責任をなすりつけ、今度は、アメリカの死亡率が欧州ほど高くないとか、中国の数字は低すぎて「信用できない」とか言って、自分がやっていることが最高だとする。これは政治的に極めて不徳な振る舞いである。
 中国は一度もアメリカと比べ合いをしようと思ったことはなく、すべてはワシントンが仕掛けてきたことだ。仮に本当に比べるとするのであれば、最大の違いは次のことにある。すなわち、中国及び中国社会は死者が多く出ることを心から悼むし、我が国家は人民の生命を守るために全力を尽くす。しかるにアメリカは、人の死を少なくすることと経済を守ることのいずれが大事かとソロバンをはじき、さらには、どちらのソロバン勘定が6ヶ月後の大統領選挙の勝利にとって有利かとしか考えない。
 これが根っこだ。最速でウィルスを抑え込み、死者を少なくするということは、アメリカのウィルス対策で一度も真っ先に来る原則となったことはなく、真っ先に来るのは、連邦政府と州政府との間の責任のなすり合い、目立ち度及びその効果だけを考える政治家連中の存在だけである。アメリカという国には、どれだけ以上の死者はどんなことがあっても許せないというボトム・ラインもなく、彼らが競い合うのは、自分が「戦時指導者」にもっともふさわしいというイメージであり、対策の失敗の責任を如何にして他人になすりつけるかということなのだ。
 遠慮なく言わせてもらう。アメリカのウィルス対策の組織は、中国のそれとはまったく同じレベルにはない。もともと我々は、アメリカの政治システムは今回のウィルスに際してその弱い一面をさらしてしまったが、いかなるシステムにもそれぞれの短所はあるとして、同情する気持ちがあった。ところがトランプ・グループは絶え間なく挑発し、当たり散らし、公然と中国の成果は「ウソだ」と非難し、必死になって中国に責任をなすりつけ、中国を踏みつけることで再選を狙うまでに狂い上がってしまっている。こうなってしまった以上、我々がアメリカの対策の腐りきってしまっている真相を明らかにするのを咎めないでほしい。
 アメリカはこれまでですでに4万人近い死者を出しており、ダントツで世界一であり、最終的にどれだけの死者が出るか分かったものではない。その理由は一つだけではないが、大々的な怠慢と背任が理由の一つであることは確かだ。アメリカの法律が政権担当者の責任を現在は追及しないとしても、歴史は彼らの責任を情け容赦なく審判するであろうことは間違いない。
 中国政府はウィルス対策に最大限の努力を払い、間違いなくウィルスを抑え込んだし、死亡者の数がアメリカのようにコントロール不能なレベルになるのを食い止めた。中国の対策の成績は確固としたものであり、歴史にも、そしてさまざまな角度から提起される疑問にも耐えうるものである。トランプ・グループは中国を中傷することで責任逃れをし、自らの「英明さ」を際立たせようとしているが、これはへぼ将棋であることが必ず証明されることになるだろう。中国がアメリカより秀でているのは、今回のウィルス対策における責任能力においてアメリカがさらけ出した無能さ及び不徳さとの比較という点においてであろう。