「中国の特色ある社会主義の道」:内在的ロジックと世界史的意義

2020.04.19.

4月17日の『学習時報』(中共中央党校の機関紙)は、「中国の道の内在的ロジックと世界史的意義」と題する、中央党校哲学教研部副主任の董振華教授署名文章を掲載しました。私は今まで、「中国の特色ある社会主義の道」に関する中国研究者・専門家の文章に数多く接してきましたが、この董振華署名文章はピカ一だと思います。論理は整然としていますし、内容も濃く、そしてなによりも、「中国の特色ある社会主義」とは何ものであるかについて、私たち外部の人間にも分かりやすく説明しています。また、「中国のやっていることは社会主義を逸脱している」とか、「社会主義とは言えない」とかの類いの批判が横行していますが、この文章を読めば、習近平・中国は大真面目で社会主義の道を模索していおり、かつまた、大いに「我が道」に自信を持っていることが理解できると思います。
 胡錦濤時代までの中国はどちらかといえば、自らの歩む道に対する外部の批判に対して、受け身的、防御的であり、弁解的な趣さえありました。しかし、習近平・中国は違います。2008年のリーマン・ショック以来の西側資本主義諸国の低迷と顕著な対照を示す中国経済の実績を踏まえ、中国はいまや自らの行き方(中国共産党領導体制)に大いに自信を深めています。今回の新コロナ・ウィルスに関しても、中国が基本的に事態を管理可能なレベルにまで押さえ込んだのに対して、米欧諸国が軒並み惨憺たる状況に陥っていることは、中国のシステムの優位性を改めて証明するもの今ひとつの例として広く受け止められています。しかも重要なことは、この自信が中国共産党の独りよがりではなく、中国社会全体の受け止めになっていることだと思います。
 以下に董振華署名文章を訳出して紹介します。

 中国の特色ある社会主義の道は、中国の社会主義現代化を実現し、人民の素晴らしい生活を創造する上で必ず辿らなければならない道である。新中国成立70余年で、中国の発展は世にもまれなる奇跡を創造し、我が国人を奮い立たせているのみならず、世界の注目の的ともなっている。国情に適合した発展の道を確固として歩んできたことこそ、我々が輝かしい成果を獲得した根本原因である。中国の道が通用するゆえんは、マルクス主義の道統をしっかり守り、伝統文化の智慧を吸収し、人類社会の発展の一般的法則に従ってきたからであり、それによって、時間的空間的な限定性を乗り越え、普遍性を備え、世界的意義及び歴史的意義を備えるに至ったからである。
<中国の道はマルクス主義の根本の道統をしっかりと守ってきた>
 道統とは、一つの文化または理論がしっかり守るところの本質及び精神である。マルクス主義の道統とは、終始一貫した立場、観点及び方法である。その中のもっとも核心的な要素は二つである。一つは実践という観点であり、今ひとつは全人類の解放を実現するという価値追求である。実践という観点は、マルクス主義の首要かつ基本的な観点である。マルクスが指摘したように、哲学者たちはそれぞれのやり方で世界を解釈したが、問題は世界を変えることにある。マルクスは正に実践の観点に基づき、主体と客体、事実と価値、有限と無限という彼我の対立を整合し、哲学史上における偉大な革命を実現し、唯物史観を打ち立て、人民が不断に世界を改造することを導いた。また、マルクスとエンゲルスは、プロレタリア階級の運動は大多数の人々の運動であり、大多数の人々の利益を追求するための運動であると指摘した。マルクス主義ははじめて、人民が自らの解放を実現する思想体系を創造し、人民が歴史の創造者であることを明らかにし、人の自由で全面的な発展という輝かしい展望を指し示した。
 マルクス主義は普遍的かつ一般的な思想的原則であるのに対し、社会主義は具体的かつダイナミックな現実的存在である。マルクス主義は人類解放を指導する科学理論体系であり、創始者は科学的社会主義原則確立の基礎にたって、共産主義の理想を実現するための科学的論拠を提供した。共産主義は人類解放を志向する革命的実践であり、いまある現実を不断に超克する歴史的運動であって、社会主義は共産主義運動のプロセスにおける一つの段階である。中国共産党は成立以来、マルクス主義という科学理論を自らの指導思想とし、終始一貫してこれに従ってきた。中国の道の開拓と発展は、我が党が実践の基礎の上でマルクス主義を継承し、革新してきた結果であり、我々がマルクス主義の道統をしっかり守ってきたことの生き生きとした体現である。中国の道が堅持してきたことは社会主義であり、それ以外のいかなる主義でもない。これこそは、中国の道のもっとも鮮明な政治的本質である。
 実践を通じて中国の道の道統を把握してきたからこそ、我々は発展のプロセスにおいてありとあらゆる変化を経ながらもその根本を離れることがなく、マルクス主義の道統を堅守する基礎の上で、人民にしっかり依拠し、中国の特色ある社会主義を建設する実践の基礎に立脚し、マルクス主義の普遍的原理と中国の具体的な実際とを結びつける偉大な創造を実現し、不断に時代に即して前進し、新たな構想、戦略そして取り組みを提起してきた。また、実践を通じて中国の道の道統を把握してきたからこそ、我々はマルクス主義の科学性及び価値性を正しく理解する基礎の上で、中国の道が包含する真理及び道義の力を固く信じることができたのであり、中国の道の成功の秘密をしっかりつかむことにより、中国の道が現実に立脚するだけではなく未来指向であるようにし、それによって歴史的な意義を備えることができるようになったのである。
<中国の道は文化伝統中の中国の智慧をくみ取ってきた>
 『周易』に、形而上とは道を言い、形而下とは器を言う、とある。中国の経験、道、プランはすべて「器」であり、畢竟するところ、中国の智慧という「道」に源がある。いずれの国家及び民族も歴史、文化、伝統を異にし、その臨む情勢及び任務も異なり、人民の必要及び要求も異なる。各国が発展を図り、人民に福をもたらす道筋も当然同じではないし、同じであってはならない。マルクスが指摘したとおり、人々は自ら自己の歴史を創造するのだが、欲するがまま創造するのではないし、自らが選択した条件の下で創造するのでもなく、直面した、既定の、過去から継承した条件の下で創造するのである。中国の道の開拓は、中華の優秀な伝統文化の智慧を十分に吸収しており、中国の気概と風格を備えた思考様式を世界に提供しているのである。
 中華の優秀な伝統文化は天人合一、心物不二、求同存異を主張する。これらの思惟理念は中国の道の中に十分に体現されている。中国の道は合作共嬴を主張する。共同発展こそが真の発展である。中国は発展のプロセスにおいて互恵互利の原則を一貫して堅持し、他国が中国の発展に「便乗」することを歓迎する。中国の道は文明の交流を主張する。一花独放は春ではない。世界は多彩で美しい。中国は国際舞台において文明間の平等、交流、相互互鑒を堅持し、文明衝突論に反対し、和而不同及び兼收并蓄の理念を提唱し、世界の異なる文明観の意思疎通と対話に力を尽くす。中国の道は国強必覇に反対する。中国の道は世界に覇を唱える道ではない。中国人民の文化の中には覇権主義の遺伝子はなく、中国は未だかつて他国の内政に干渉したことはなく、主権国家の独立自主を断固主張する。
<中国の道は人類社会発展の一般法則に従ってきた>
 マルクス主義は人類社会の発展法則を創造的に明らかにし、唯物史観及び剰余価値学説という「二大発見」の基礎の上に、「二つの必然」(浅井注:資本主義は必ず滅亡し、社会主義は必ず勝利する)及び「二つのあり得ず」という科学的論断を導き出した。歴史の法則は、人の意思によって変わらないという客観性を持ち、歴史の法則に従ってのみ社会の発展を順調に実現することができる。中国の道は、共産党執権の法則、社会主義建設の法則、人類社会発展の法則に準拠して有益な探究を進めている。
 中国の道は、「二つの必然」が明らかにする人類社会発展の法則という歴史的趨勢を一貫して指向する。マルクス主義の確固たる信仰と共産主義の遠大な理想こそが共産党員の政治的精神である。習近平総書記は次のように指摘している。「我々は、弁証法的唯物論と史的唯物論の世界観と方法論を全面的に把握し、共産主義を実現するということは一つ一つの段階的目標に従って一歩一歩達成していく歴史的プロセスであることを深く認識し、共産主義の遠大な理想を中国の特色ある社会主義という共同の理想と統一させ、我々が現在行いつつある事柄と統一させ、中国の特色ある社会主義という道の自信、理論の自信、制度の自信、文化の自信を確たるものとし、共産党員の理想信念を堅く守り、マルクスのように共産主義のために終生奮闘するべきである。」中国の特色ある社会主義は我が国が位置する社会主義初級段階という基本的国情に立脚して歩んできたものであり、中国の特色ある社会主義の道に対する自信を確固たるものにすることは共産主義という遠大な理想を堅持することの現実的体現である。中国の道は鮮明な未来指向を備えており、我々が不断に現存するところを超克することを導き、現実に立ちつつ未来に向かうことを導いている。
 中国の道は、「二つのあり得ず」が明らかにする社会発展の法則に一貫して従って、社会的生産力を解放し、発展させることを堅持する。マルクスは次のように強調している。「いかなる社会形態であれ、それがおさめうる生産力をすべて出し切る以前には滅亡することは絶対にあり得ない。また、新しいより高度の生産関係は、そのための物質的条件が古い社会の内部で成熟する以前には、出現することは絶対にあり得ない(「二つのあり得ず」)。」社会の基本的矛盾の運動の法則に対する深い把握に基づき、我々は経済建設中心を堅持し、4つの基本原則を堅持し、改革開放を堅持し、生産力を不断に解放し、発展させ、中国経済社会の急速な発展を実現し、人民生活水準の不断の向上を実現し、中華民族が立ち上がり、豊かになり、さらに強くなるという偉大な飛躍を大々的に推進してきた。改革は、生産力を解放し発展させる上での必然の要求である。我々は科学的な方法論を堅持し、最大限の勇気と智慧によって改革を全面的に深化し、時宜に適合しないすべての思想観念及び体制システムの障害を断固として除去し、我が国の国家ガヴァナンス・システムとガヴァナンス能力の現代化を不断に推進してきた。
<中国の道は現代化の道筋という世界的意義を有する>
 中国の道は現代中国が備える地域的特殊性をはるかに超えて、今日の世界における普遍的法則性を備えており、他の国家及び民族が自らに適合した発展の道を選択する上での参考を提供しており、したがって世界的意義を有する。党の第19回大会の報告は次のように指摘した。中国の特色ある社会主義は新しい時代に入った。すなわち、中国の特色ある社会主義の道、理論、制度、文化は不断に発展し、発展途上の国家が現代化に向かう道筋を開拓しており、発展を加速し、かつ、自らの独立性を保持することを希望している世界の国家及び民族に対してまったく新しい選択肢を提供しており、人類の問題を解決するための中国の智慧と構想を提起している。
 中国の道は、西側の発展の道のみが「唯一正しい」とする神話を打ち砕いた。長期にわたり、西側国家の発展モデルは強大なハード・パワーとソフト・パワーを示し、それのみが唯一の正しい発展の道筋であると尊大にも宣言し、他国に対しても画一的にこのモデルに従うことを強制してきた。しかし実際には、このモデルは多くの国家の国情とは合致しておらず、発展進歩を勝ち取ることができないのみならず、混乱と災難とをもたらしてきた。事実として、世界は多方向的に発展しているのであり、世界の歴史は単線式に前進するものではない。中国の道は経済の高度成長をもたらしたのみならず、安定した社会秩序及び人民の安穏な暮らしをももたらした。なかんずく、世界経済が成長力を欠いている背景のもとで、中国経済のみは際だって優れたパフォーマンスを示している。しかも同時に、中国は国際的責任を積極的に担っており、責任ある大国のイメージを確立している。これらさまざまな具体的行動により、中国の道はますます国際社会の注目を集め、世界の広範な賛同をますます受けるに至っている。
 中国の道の出現は、他の発展途上国が自らに適した発展の道を模索する積極性を鼓舞している。道は命運を決定するのであり、いかなる発展の道を選択するかは国家の発展の前途にかかわっている。中国の道の成功の実践は、自らに適合した発展の道のみが最高の道であることを解き明かしている。中国の道は、中国人民が艱難辛苦の実践の中で探し出してきた自らに適合する道である。多くの発展途上国もまた、実践の中で積極的に模索を行い、自らの現実的な経済的基礎、発展目標ビジョン、歴史文化伝統を十分に考慮するとともに、人民の願望を聴取し、人民の選択を尊重することをも重んじることによってのみ、独立自主、発展進歩及び人民の幸福を実現することができるのである。
<中国の道は人類の未来の共同の命運を明示している>
 今日、グローバル化の流れは不断に深まり、人類は利益がかかわる運命共同体にますますなりつつあり、いかなる国家も単独では人類が直面するさまざまな挑戦に対応することはできず、鎖国の孤島に戻っていくこともできない。今日の中国は、人類運命共同体の構築推進に力を入れており、中国の道の成功は人類運命共同体構築の必要性を明示している。中国の道が獲得した成果は自らの努力によるものだけではなく、良好な外部環境によるところもある。中国の道は運命共同体の受益者であると同時に、その推進者でもある。
 平和と発展は今日も引き続き世界の主題である。中国の道は正に平和発展の道であり、人類の平和発展という共同の期待を指し示している。中国の道は平和、発展、合作、共嬴の旗を高く掲げ、恒久平和、普遍安全、共同繁栄、開放包容、清潔美麗な世界の建設を呼びかけている。中国の道が世界的な広範な注目を集めているのは、それが構築しようとする麗しいビジョン及び世界人民の未来に対する期待とが一致しているからである。中国の発展は略奪式、侵略式の蓄積ではなく、未だかつて他国の利益を犠牲とすることを代価とするものではない。中国は一貫して、正しい義・理の観点を堅持し、各国との利益の交錯点を積極的に拡大しており、中国は世界の合作発展の積極的推進者であり、重要な貢献者である。
 中国は協商共建共享のグローバル・ガヴァナンスの考え方を堅持し、グローバル・ガヴァナンス・システムの改革と建設を推進してきた。世界各国間の経済貿易及び人文往来の不断の深まりに従い、いずれの国家も単独で完全無欠を期することはできず、ある国家にとっての発展問題はますます世界的な問題へと変化し、問題解決は一国の力を以てしてははなはだ不十分であり、グローバルで力を合わせ合作することが必要となっている。中国は、自らの発展の実現と同時に国際責任も積極的に担い、世界的アジェンダの解決のために力を貢献している。開放があってはじめて互聯互通があるのであり、人類の命運は開放の中で緊密に結びついている。中国の道は開放発展の道であり、中国は絶えず対外開放を拡大し、積極的に国際問題に身を投じ、開放型の世界経済の建設を推進している。
 平和、発展、共享、開放等は、中国の道が堅持する発展理念であるとともに、中国の道が人類の発展のために貢献する中国の智慧でもある。世界の人民は合作共嬴、守望相助を堅持し、人類運命共同体を積極的に構築することによってのみ、自らの命運をよりしっかりと把握し、人類の麗しい未来を共同で創造することができるのである。