新コロナ・ウィルス対策:中韓対日本

2020.04.13 .

中国の新コロナ・ウィルス対策に深く関わってきた、中国疫学の権威・鐘南山は4月12日、早期発見、早期隔離及び早期治療がカギであると発言しました。また鐘南山は、10日に中国の韓国駐在の邢海明大使及び韓国の防疫専門家・李鐘求とともに中国中央テレビの番組に出席し、隔離措置、病例データ、治療方法等について今回、中国がとってきた予防・管理及び治療経験について説明しました。
 邢海明大使はこの番組の中で、「これまでの3ヶ月間は本当に容易ならざるものがあった。新コロナ・ウィルスが突如襲ってきて、中韓両国はそれぞれこれを迎撃ち、相互に協力し、手を携えて疫病に対抗した。艱難辛苦の努力を経て、中国はすでに基本的に押さえ込んだ。韓国は毎日の発症事例を50人以下に押さえ込んで5,6日になる。中韓両国の今回の防疫抗疫事業は国際社会全体における成功の模範と言えるだろう」と述べました。新コロナ・ウィルス対策に成功しつつある中韓両国の高揚感を窺う思いです。
 私は、鐘南山が述べた「早期発見、早期隔離及び早期治療」が中国及び韓国の今回の成功をもたらしている最大のカギだと思います。中国は武漢での初動が遅れたために大爆発を招いてしまいましたが、その後の武漢市・湖北省を一つの戦線とし、全国をもう一つの戦線とする、三つの「早期」による徹底的封じ込め作戦で成功し、4月には防疫と生産(経済活動)を同時に進める段階にまで戻っています。
 韓国の場合は、大邱で大暴発するや、文在寅政権も大規模な三つの「早期」作戦を展開し、10日には大邱で発症例ゼロを実現し、全国レベルでも二桁の数字まで発症例を押さえ込むことに成功しました。文在寅大統領は「あと少しの辛抱」と発言しました(12日)。
中国と韓国の成功はなによりもまず、徹底的な洗い出しを果敢に行ったことによるものといって間違いないと思います。
 日本での最初の感染者が見つかったのは1月16日、韓国では1月19日です。累計感染者数で見ると、日本も韓国も2月20日頃までは低い水準で推移していました。しかし、韓国では2月19日に大邱で大量の感染者が出てから急上昇し、数日で1000人台に達します。それに対して日本は3月21日に1000人台を超えました。韓国では3月23日で9037人でした。
しかし、韓国の場合、3月13日の時点で8086人であり、3月23日の時点ではすでにピークを越えていたことが分かります。韓国は4月3日に10062人で安定しており、4月11日では10480人ですから、最近8日間ではわずか400人強の伸びまで押さえ込んだのです。
ところが日本は、2000人超えが3月31日で10日間、3000人超えが4月3日で3日間、4000人超えが4月7日で4日間、5000人超えが4月9日で2日間、6000人超えは4月11日でやはり2日間という急ピッチでした。
以上の日韓比較から推定できるのは、韓国の早期発見アプローチは最初の段階では大量の発症者の発見を生んだ、しかし、果敢な取り組みによってピークを早い段階で迎え、その後の伸びを押さえ込むことに成功したということ、これに対して日本の「クラスター」中心主義(とは表向きであり、要するに、見つかった「クラスター」以外は野放し)は、当初こそ「伸び」を低く示すことにつながったけれども、検査されない発症者が野放しされる状況が続くことによって、3月下旬以後は「クラスター」以外の「一匹狼」が急増する結果になったということです。
日本と韓国の差は、諸外国の態度からも歴然としています。文在寅は連日と言っていいほど、外国首脳からの電話会談に応じています。10カ国以上です。WHO事務局長からは、WHOが主催する会議で、アジアを代表して基調報告するように依頼されました。しかし、安倍首相にはどこからもアプローチがありません。それもそのはず、日本が検査基準を厳しく設定し、「検体」数を押さえ込んでいることは世界中の知るところとなっているからです。日本の「低い」感染者数の信憑性はゼロなのです。
私も根っから疑っています。一つだけ気になっていたのは、死者数も低水準であることです。しかし、日本では近年、インフルエンザで亡くなる人が急増しています。おそらく、多くの人が検査されず、インフルエンザが原因で死亡、として処理されているのではないでしょうか。そういえば、ある生物学者(名前は失念)が、「感染者数も死亡者数も当てにならない」とハッキリ言っていました。
ちなみに、中国は日本の状況に関して、NHKの発表する数字を淡々と報じるだけです。その中で、4月12日付けの中国網が、遼寧大学日本研究所の崔岩教授の「緊急事態宣言 安倍は大試練をパスできるか」と題する文章を掲載しました。崔岩が次のように指摘していることを紹介しておきます。

 「低い水準で推移しているということは、日本政府の抗疫措置が優れた効果を収めているということでは必ずしもなく、日本は一貫して、「医療資源奪い合い」を防止するために厳格な診察及び入院治療の措置を取ってきたからだ。ほとんどの疑いのある患者は専門の検査を受けることができず、そのために検査を受ける人数は一貫して低い水準に抑えられている。その原因としてはまず、日本は欧米同様、新コロナ・ウィルスに対して十分な注意を払わなかったことがある。第二、西側の「集団免疫」概念を奉じ、また、自らの衛生防疫システムに自信を持っていることがある。さらにまた、日本は2020年7月にオリンピック、パラリンピックを行うことになっていたため、感染者が多く出て社会的パニックを起こしてしまうと、オリンピックとパラリンピックが流産してしまうことへの懸念もあった。」