韓国・文在寅政権の新コロナ・ウィルス対策

2020.03.27.

韓国の文在寅政権の新コロナ・ウィルス対策が国際的に注目されています。韓国では2月下旬に感染者が出てすぐ、文在寅政権は2月23日に警戒レベルを最高段階に引き上げ、中央防疫安全対策本部を設置、中央と地方との協力システムを強化し、資源の合理配分によって全力で対策を講じてきました。文在寅政権の施策は「早期発見、早期隔離」の原則に従い、濃厚接触者、特定グループ及び感染者集中地域住民を対象に広範囲の検査を行うというもので、これまでに30万人以上が検査を受けています。その結果、当初は大邱での大感染などで事態は深刻視されましたが、最近は次第に感染者数が減り、一昨日、昨日は100人前後の感染者(半数近くは入国者)増加レベルでの抑え込みに成功しています。
 文在寅大統領は、2月20日の中国の習近平国会主席を皮切りに、アラブ首長国連邦(UAE)、エジプト、トルコ、フランス、スウェーデン、スペイン、サウジアラビア、米国、カナダの10カ国首脳とそれぞれ電話で会談しました。その上で彼は、26日に行われたG20サミット・テレビ電話会談では、韓国政府の対応について、「開放性、透明性、民主性」の3大原則の下、▼多くの検診を通じた感染者の発見▼感染ルートの追跡▼感染者、濃厚接触者の隔離後の出国禁止措置――などを行ってきたと説明。診断キットの早期開発、車に乗ったまま検査を受けられる「ドライブスルー方式」の検査場設置、自宅隔離の対象者のための「自宅隔離者安全保護アプリ」など創意的な方法を動員し、人・物資の国境を越える移動の制限を最小限にとどめながらも防疫効果を極大化させる特別入国手続きを施行していると紹介」(同日付聯合ニュース)しました。
 韓国が開発・採用した「ドライブスルー方式」、自宅隔離の対象者のための「自宅隔離者安全保護アプリ」、診断キット等については、韓国のコロナ封じ込めのこれまでの実績が国際的に高く評価されていることを背景に、26日時点で、世界の100カ国ほどから照会、協力支援が殺到しているとも報道されています(聯合ニュース)。
 韓国モデルが国際的に注目されるのには理由があります。中国の押さえ込みは赫々たるものがありますが、中国自身が認めるように、これは「社会主義体制の優位性」(強力な中央のリーダーシップ発揮)によるものであり、他の国々がおいそれと真似ることができるものではありません。それに対して韓国モデルは、「開放性、透明性、民主性」の3大原則が示すように、資本主義制度の下で進められており、多くの国々にとって学習、吸収の可能性が大きいわけです(安倍政権は当初、ドライブスルー方式は精度が低いとケチをつけていましたが、最近やっと導入に転換)。
 韓国の世論調査会社リアルメーターが26日に発表した文在寅大統領に対する支持率は、一週間前より3.2ポイント上昇した52.5%で、2018年11月第2週(53.7%)以来の高水準となりました。リアルメーターは、この支持率上昇の理由として、「新型コロナ・ウイルスへの政府の対応を肯定的に評価」したためと説明しています(同じく聯合ニュース)。
 私は、文在寅政権と安倍政権の対応を分ける最大のものは、「早期発見、早期隔離」の原則を早くから採用した文在寅大統領と無為無策のまま手をこまねいている安倍首相との違いにあると思います。特に私がいまでも信じられないのは、日本では検査体制の不備・不足を迅速に解決することもせず、それを前提にして検査対象を「絞り込む」という対応がとられてきたということです。いまはやっと改められましたが、かなり長い間、保健所で認められなければ検査が行われない仕組みが続いてきました。その結果が現在東京でうなぎ登りに増えている「感染経路不明」の陽性反応者の大量出現につながっていることは、素人の目にも明らかです。感染者を押さえ込むことには何の手立ても講じず、大流行になったときの「緊急事態宣言」を出すための法律を作ることにひたすらこだわった安倍首相は、いったい何を基準に物事を考えているのでしょうか。
 G20で、発言が注目された文在寅大統領と国内メディアですら記事にもならない安倍首相(ここまで書いて、そういえば、27日付けの朝日新聞も赤旗も、G20サミットに関する報道がゼロであることに気がつきました。サミットが夜9時からであったからかもしれません。いま朝日新聞デジタルをチェックしましたが、関連ニュースは1本だけ)。これが両者の本質的な違いをもっとも象徴していると思います。