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ラブロフ外相の日ロ平和条約に関する発言

2019.11.24.

11月23日付の名古屋発タス電(英文)は、管官房長官の日ロ平和条約交渉に関する発言を受けてロシアのラブロフ外相が行った発言について報じました。その内容は4月5日付のコラムで紹介した同外相の発言を確認するものですが、日米安保条約にかかわる日露間のやりとりも紹介する興味深い中身も含まれていますので大要を紹介します。

 ラブロフ外相は、日露が平和条約署名に進めるためには、ロシアの南千島諸島に対する主権を日本が承認するべきだと述べた。彼のこの発言は、管官房長官が「まず領土問題を解決した上で平和条約を締結する」という日本の基本的立場を述べたことに対するコメントとして行われた。
 ラブロフは次のように述べた。「官房長官に対する敬意は払うが、我々はやはりロシア大統領と日本首相という最高レベルで達成された諸合意に従っている。両指導者は、1956年宣言に従って残っている諸問題を議論することで前進することに合意している。同宣言はこれら島嶼を含むロシアのすべての領域の不可分と主権とを承認することで第二次大戦の結果を承認しており、その上でほかのすべてのことが議論できるということだ。」
<日米軍事同盟>
 ラブロフ外相はまた、米日軍事政治同盟も平和条約署名の障害を作り出していると述べた。ラブロフは次のように語った。「露日関係を異なるレベルに導く上で、アメリカとの軍事同盟は問題となる。注意を喚起したいのは、‥1956年宣言は日本の領域におけるアメリカの軍事プレゼンスが中止される状況においてのみ完全に実行することができるということだ。」ラブロフは、「日本側は日米軍事政治同盟の増大強化によって生まれているロシア側の安全保障上の関心事項のリストを受け取っている」と付言した上で、次のように述べた。「日本側はこれらの関心事項について応えると約束した。我々はその反応を待ってから議論を続けるつもりだ。」
<アメリカにとっての脅威としてのロシア>
 ラブロフは次のように指摘した。「ワシントンはモスクワを脅威と定義しており、日米軍事政治同盟はこの定義に立脚しているという事実について、ロシアは日本側の注意を喚起した。以上のことは、日米同盟はモスクワに対するものではないとする日本の指導者の確言とは矛盾するものである。」  ラブロフはG20外相会議の場で次のように述べた。「アメリカは、アジア太平洋地域を含む世界における行動について、ロシアと中国が主要な脅威であること、そして、日本、オーストラリア及び韓国との軍事同盟はこれらの脅威及び挑戦に対処するものであることを公言することを躊躇していない。」  ラブロフは次のように述べた。「もちろん、我々は日本の外相との会見の際に、日米軍事政治同盟はロシアに対するものではないと日本が請け負ったことと以上のこととは矛盾すると指摘した。」