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プーチン大統領による安倍首相の歴史観批判(?)

2019.08.22.

8月20日付のタス通信・英語版WSは、「プーチン発言 個人的利益のために第二次大戦を歪曲する国」(Certain countries distort WW2 history for personal gain, says Putin)と題して、プーチン大統領が「1939年 第二次大戦の始まり」と銘打った展示会開会式で行った祝辞で、「いくつかの国では、第二次大戦の原因に関するあからさまに不正直な見方が押しつけられている」と述べたと伝え、彼の発言を以下のとおり紹介しています。

○「第二次大戦は人類全体にとっての深い傷であり、何百万人もの人々に深い痛みを与え、幾世代にも刻印を押してきた。したがって、世界をこの死生線に追いやった出来事は今日もなお科学者、活動家そして国家官吏の関心の的であり続けている。」
○「不幸なことに、個人的な政治的経済的関心のために、いくつかの国では第二次大戦の原因をひっくり返そうとする試みが行われ、歴史の事実は歪曲され、推測及びスペキュレーションに基づくあからさまに不正直な見解が押しつけられている。」
○「この点において、あの時代からのオリジナルな証拠及び文献資料はことのほか重要になっている。この展示会にはこうしたユニークな文献の多くが展示されており、中には初出のものもある。これらの資料は、我々及びこれからの世代に対して平和のもろさを想起させ、グローバルな脅威を前にして、政治的洞察力の欠如、利己心、そして団結を乱すことの危険性を警告している。この展示会が広範な人々の関心を引きつけ、歴史的真実の保全に貢献することを確信している。」
 プーチン大統領は安倍首相を名指ししているわけではありません。しかし、タス通信はこの記事に関連するお勧め記事として、8月15日付の東京発タス電「安倍首相、第二次大戦降伏セレモニーには絶対に参加せずと公言」を紹介しています。すなわち、この記事は8月15日の記念式典での安倍首相の発言を紹介するとともに、「これまでの年と同じく、安倍首相が先の大戦時にアジア諸国を侵略した日本の責任に触れることはなかった。安倍の前任者たちは首相としての発言の中でこの事実に明確に言及していたのに。」と指摘しているのです。
 今や公知のとおり、安倍首相肝いりの日ロ平和条約締結交渉は、「第二次大戦の結果として「北方4島」(南千島)がロシア領になった」という歴史的法的事実を安倍首相が認めることを頑なに拒んでいるために暗礁に乗り上げています。安倍首相の歴史観に注意喚起を行ったのが8月15日付タス電です。この記事をプーチン発言をよりよく理解するための「お勧め記事」としてことさらに取り上げているというわけです。日本のマスコミは、ファースト・ネームで互いを呼び合う親密な仲としてプーチン・安倍の関係を紹介することが多いですが、安倍首相を見るプーチン大統領の目は決して曇ってはいないと思われます。