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文在寅政権の対安倍政権認識
-安倍政権対韓制裁措置発動-

2019.08.04.

安倍政権が韓国を「ホワイト国」から外す閣議決定を行った7月2日、文在寅大統領は緊急国務会議を主宰し、同大統領の冒頭発言は異例の生中継で行われました。この発言は国民に対するメッセージとして行われたものです。日本国内では安倍政権の決定を支持する声が圧倒的ですが、韓国では野党第一党である自由韓国党を含めて安倍政権の行動に対する反対と反発が広がっています。安倍政権は今回の決定は徴用工問題等とは無関係であり、安全保障上の考慮に基づくものであると「説明」していますが、それはあくまで「表向き」の口実であり、徴用工問題等の歴史問題に関する韓国に対する国民的反感を利用した制裁行動であることは公知の事実です。日韓関係は1965年以来でもっとも深刻な対立局面を迎えています。憂慮に堪えないのは、その対立が広く国民レベルにまで広がっていることです。
私はこのコラムでも指摘してきたとおり、1965年の日韓協定を金科玉条にして「従軍慰安婦」問題、徴用工問題等について日韓請求権協定で決着済みとする安倍政権の主張は、日本も批准した国際人権規約をはじめとする国際人権法に違反するものであり、国際的に正当性を主張できず、文在寅政権の立場・主張が正しいと判断します。したがって、日本国内世論はとんでもなく間違った方向で安倍政権に誘導され、踊らされているわけで、韓国世論が「反日」で沸騰するのはもっともであり、「是は韓国にあり、非は日本にある」と断言します。
 「ホワイト国」から韓国を除外する安倍政権の動きに対して文在寅政権は様々な対応を行ってきましたが、私が特に注目していたのは、文在寅大統領が安倍政権の行動をどのように判断し、どのような反応を行うかということでした。そういう意味で7月2日の文在寅大統領の発言は極めて注目に値するものです。
 以下においては、まず、韓国メディアは安倍政権の行動をどのように分析したかを中央日報・日本語版WSによって確認します。次いで、文在寅大統領が韓国国民に対してどのようなメッセージを発したかを見ます。その上で、文在寅大統領が安倍政権の行動をどのように判断しているのかについて、中央日報の記事を紹介します。最後に、韓国側が今回の事態を極めて深刻にとらえていることを示すものとして、ハンギョレ社説を紹介します。
<安倍政権の行動に関する韓国メディア分析>
 8月2日付中央日報・日本語版WSに掲載された「安倍首相、韓国との決別を選択…安保友邦から除外」は次のように報じています。

もちろん両国の政界では「今回の措置をそれほど深刻に見る必要はない」という主張もある。日本側の議員は最近、東京を訪問した韓国議員に「信頼関係が回復すればまたホワイト国に復帰するはず」と述べた。訪問団の一員であり国会外交統一委員長である自由韓国党の尹相ヒョン(ユン・サンヒョン)議員も「韓国は今回の措置に象徴的な意味付けをするが、日本は『第3国に問題がある物資を送らない』という証明があれば戻すという軽い態度」と紹介した。
しかしこうした一部の知韓派日本政治家の認識は、安倍政権を動かす核心人物らの思考とは距離があるとみられる。安倍政権が韓国を友邦国と見ないという話は輸出規制措置が発効するはるか以前から首相官邸を中心に日本社会に広まっていたからだ。
韓日関係に詳しい日本側の情報筋は「昨年12月以降、レーダー照射問題が発生し、徴用問題の疲労感が長引き、韓国を中国や北朝鮮レベルの『敵』と見なすべきだという認識が首相官邸や官僚社会に伝播した」と述べた。
こうした認識はもう外交安保イシューを扱う学者にまで広まっている。7月中旬に東京で非公開で開催されたシンポジウムでは、北朝鮮問題に詳しい専門家パネルが「もう日本は韓国を安保友好国と見ていないため、今後の韓半島戦略や日韓関係はそのような認識を前提に研究しなければいけない」と発言し、韓国側の出席者を驚かせた。
こうした水面下の動きを安倍首相が今回のホワイト国関連措置を通じて「法制化」レベルに引き上げたという解釈も出ている。このため「戦後の冷戦時代を経て北東アジアの安全保障を担当してきた韓日米協力の軸が実際に傾き始め、今後、安倍首相の具体的な行動で可視化する」という見方も出ている。
これに関連し日本国内の韓国専門家の間では「安倍首相としては文在寅政権の発足後、慰安婦合意が破棄される過程で抑えてきた悪い感情を爆発させたため、今後、徴用問題などに部分的な進展があるとしても韓国に対する安倍首相の接近法は大きく変わらないはず」「特に韓国との安全保障面での協力は米国が関連する範囲内で行われる」などの分析が出ている。
北朝鮮非核化をめぐる連携、韓日軍事情報包括保護協定(GSOMIA)など米国の意識しなければいけない最小限の範囲で韓日の連携を模索するということだ。安倍首相は最近、北朝鮮のミサイル発射に関連し、韓国を除いて「米国と連携する」という意向を明らかにした。
任期内の改憲に執着する安倍首相としては保守層の意識するしかないという事情もある。韓国に弱い姿を見せにくい状況的な要因もあり、韓国との対立が長期化する可能性は高いとみられる。
 同日付の中央日報・日本語版WSはまた、「「安倍首相、韓国に対し目も耳も塞いだ」…強硬モード長期戦の態勢」と題する記事で次のように報道しました。
「(首相)官邸が核心だ」。
先月末、日本の外交筋に韓日関係の展望を聞くとこのような答えを出した。安倍晋三首相の意思が非常に強硬だという意味だ。外務省実務陣から「それでも韓国との外交協議で糸口を見つけるべきだ」という声をあげにくい雰囲気だという。2日、日本が韓国を「ホワイト国」から除外する措置を強行したのは安倍首相の意向だと見るべきだという解釈に重みが生じる。…
安倍首相の韓国に対する強硬モードは複雑な政治的計算の結果だ。このような強硬モードを安倍首相がすぐに撤回する可能性はゼロに近いというのが両国の外交家の共通の衆論だ。駐日大使を務めた申ガク秀(シン・ガクス)元外交部第1次官は「安倍首相がここで退けば自分の政治支持基盤が揺らぐと考えている」とし「韓国の超強硬姿勢を止めることができない状況だ」と述べた。日本の外務省関係者も中央日報に「長期戦も覚悟している」と述べた。聖公会大学日本学科の梁起豪(ヤン・ギホ)教授は「安倍首相は『けりを付ける』という考え」とし「韓国に対し目も耳も塞いだ状態」と述べた。
安倍首相が韓日関係を契機に国内政治だけでなく、国際政治的にもアジア地域でのプレゼンスを確固たるものにさせるという計算を終えたという話も出ている。韓国に対する超強硬モードを自分の外交レガシーとしようとしているという見方だ。
匿名希望の元外交部当局者は「安倍首相は韓国との歴史問題の解決をやり遂げた首相として記憶に残りたいという目標を立てたようだ」とし「それに基づき北東アジアで米国と連合し中国に対抗する戦線を構築する過程から韓国を排除できる環境を作り上げる可能性もある」と分析した。梁起豪聖公会大学教授も「韓国が二度と歴史問題で謝罪と賠償を要求できないように釘を刺すことを自身の外交目標としたものとみられる」と述べた。
日本政府は安倍首相のこのような基調の下、緻密に戦略を組み機敏に動いてきた。この過程で日本の内傷も耐えようという計算も終わったというのが専門家らの見方だ。…
日本勤務経験のある元外交部当局者は「安倍首相は既に日本にも逆風があることを勘案してでも韓国をいわゆる『見せしめにする』という意志を固めたものと見られる」とし「韓国政府がより緻密で賢く対応しなければならない」と助言した。申ガク秀元次官も「今になって日本政府と安倍首相が立場を変えることを何もせずに期待するのは無理」とし「韓国政府が名分を作り日本を動かす知恵を絞らなければならない」と述べた。
<文在寅大統領の緊急閣議冒頭発言(韓国国民向けメッセージ)>
 残念ながら、文在寅大統領の発言全文を紹介する記事は日本語ではありません(今までにチェックした限り)。私が見た限りでは、8月2日付の聯合ニュース・日本語版WSに紹介された「文大統領「もう日本に負けない」 国民に奮起促す」と題する記事がその内容を比較的詳しく紹介しています。以下はその全文です。
文大統領「もう日本に負けない」 国民に奮起促す
【ソウル聯合ニュース】韓国の文在寅大統領は2日、日本政府が輸出管理上の優遇措置を受けられる「ホワイト国」から韓国を除外する政令改正を閣議決定したことを受けて開いた緊急閣議の冒頭で、「相応の措置を断固として取る」と述べ、公の場で対決姿勢を鮮明にした。
 特に事態悪化の責任が日本にあると指摘し、今後行われる強力な対応の責任も日本にあると強調した。  今後日本との「経済戦争」が予想されるだけに、韓国が優位に立ち、国際社会に向け日本の措置の不当性を訴える戦略と受け止められる。
 同時に文大統領は、「二度と日本に負けない。勝利の歴史を作る」と宣言し、国民を鼓舞する態度も見せた。
◇異例の強い批判 日本の責任を強調
 文大統領は、日本政府によるホワイト国除外決定は韓国大法院(最高裁)が日本企業に賠償を命じた強制徴用訴訟に対する「明白な貿易報復」と指摘した。
 日本が主張する理由は建前であり、韓国の司法の判断を貿易分野に関連付けた措置であることを明確にし、不当な措置を撤回するよう主張した。 
 特に日本の措置は、「強制労働の禁止」と「三権分立に基づく民主主義」という人類の普遍的価値や国際法の大原則に反する行為と批判。さらに大阪での主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット)で日本が強調した自由貿易秩序を自ら否定するものと指摘し、日本の行為が韓日関係だけでなく、国際社会にも悪影響を及ぼすという点を明確にした。
 文大統領は日本の措置について、世界経済に対する「利己的な迷惑行為」と批判した。他国に向けた国家元首の発言としては、異例の強い批判であり、これは今回の日本の措置は韓国に対する不当な報復であり、世界の貿易秩序に悪影響を及ぼすものであると強調する狙いがあるものとみられる。文大統領が「今後起こる事態の責任も全面的に日本にある」と強調したことも同様だ。
 文大統領は米国による仲裁にも言及し、「(日本は)一定の期間を定めて状況を悪化させずに交渉の時間を持つよう促した米国の提案にも応じなかった」と指摘。「韓国政府と国際社会の外交的解決努力を無視し、状況を悪化させてきた責任が日本政府にあることが明確になった」と強調した。
 これは韓国政府が対話による解決を求めたにもかかわらず、日本が無視して事態を悪化させたとする文大統領の認識を示したものだ。
◇「日本も大きい被害」と指摘 軍事情報協定の今後に注目
 文大統領は「断固たる対応」の正当性を強調し、さらに正面から衝突すれば、結局被害を受けるのは日本であるとする自信を示した。
 文大統領は「(日本の措置により韓国も)しばらくは困難があるだろう」と見通す一方で、「警告した通り日本も大きい被害を甘受しなければならないだろう」と指摘した。日本の措置は韓国企業だけでなく日本企業にとっても打撃になるとの分析があるものとみられる。
 また今回の事態を対日貿易依存度の減少や経済の多角化など産業構造の改善の機会にすれば、韓国経済を跳躍させる踏み台になるとの考えもうかがえる。
 さらに韓国が今後繰り出す「相応の措置」が予想よりも強力になるという点を予告したともみることができる。  実際に、洪楠基(ホン・ナムギ)経済副首相兼企画財政部長官はこの日の会見で、「われわれも日本をホワイト国から除外し、輸出管理を強化する手続きを踏んでいく」と発表し、対決姿勢を打ち出した。
 文大統領はまた、日本の対応により、段階的に措置を強化するとも述べた。
 このような韓国側の「相応の措置」が軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄につながるのか注目される。
 与党側からは協定の延長拒否というカードを積極的に活用するべきとの声も出ているが、これは韓米日の安保協力体制にも影響するため、慎重に扱うべきとの意見も同時に出ている。
◇「屈服すれば歴史の繰り返し」 国民に奮起呼び掛け
 文大統領が国民に対し、「日本に負けない」、「勝利の歴史を作る」、「屈服すれば歴史が繰り返される」などのメッセージを出したことも注目される。 
   今回の事態を「韓日経済戦争」と見る向きがあるのは事実ではあるものの、大統領が生中継されている会議の発言で「勝利」と「敗北」を連想させる単語を使用したのは異例との評価もある。
 また、今回のできごとが、国家的な非常事態という認識のもと、国民が疲弊したり萎縮したりしないよう、文大統領が先頭に立って断固たる意思を示し、国民に奮起を促したとの見方も出ている。 
 同時に今回のあつれきが単純な経済問題を超え、外交や過去の歴史問題などが複雑にからみあっている点を考慮すれば、今回だけは韓国も簡単に譲歩できないという文大統領の切迫した心情もうかがえる。
 文大統領は「歴史に近道はあっても省略はない」とし、「いつかは越えなければならない山であり、今この場で立ち止まるならば永遠に山を越えることはできない。国民の偉大な力を信じて政府が先に立つ」と強調した。 
8月3日付の中央日報・日本語版WSは、以上の聯合ニュースの記事には含まれていない文在寅大統領の発言として以下のように報道しています。「加害者の日本が盗っ人たけだけしくむしろ大声をあげる状況を決して座視しない。挑戦に屈服すれば歴史はまた繰り返される」とし「我々は二度と日本に負けない」と強調した激しい発言が要注目です。
4時間後に反撃…大韓海峡が凍りついた
韓日両国が全面戦争に入った。日本政府は2日、韓国を「ホワイト国」から除外する2段階目の経済報復を断行し、韓国政府はこれを強く糾弾して正面対抗を警告した。韓国最高裁の徴用賠償判決で始まった韓日間の葛藤が一寸先も見通せない状況を迎えている。韓国政府が正面対抗カードで韓日の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)見直しを強く示唆し、今回の事態は北東アジア情勢にも影響を及ぼしかねないという分析が出ている。
日本政府はこの日午前10時に閣議を開き、韓国を輸出管理優遇対象国の「ホワイト国」から除外した。その4時間後に青瓦台で開かれた韓国政府の緊急国務会議の冒頭発言で、文在寅大統領は「今回の措置は両国関係に対する重大な挑戦であり、グローバルサプライチェーンを崩し、世界経済に大きな被害を及ぼす利己的な迷惑行為として、国際社会の非難を受けるだろう」と述べた。
日本の措置に対する対抗も予告した。文大統領は「わが政府は日本の不当な経済報復措置に相応の措置を断固として取っていく」とし「我々の経済を意図的に打撃すれば、日本も大きな被害を甘受しなければいけない」と警告した。また「加害者の日本が盗っ人たけだけしくむしろ大声をあげる状況を決して座視しない。挑戦に屈服すれば歴史はまた繰り返される」とし「我々は二度と日本に負けない」と強調した。
特に文大統領は今回の事態の責任が日本側にあることを明確にした。文大統領は「わが政府と国際社会の外交的な解決努力に背を向けた状況を悪化させてきた責任が日本政府にあることが明確になった以上、今後生じる事態の責任も全面的に日本政府にあるという点を明確に警告する」と述べた。続いて「わが政府は今でもお互い対抗する悪循環を望まない。立ち止まることができる方法は、日本が一方的で不当な措置を撤回して対話の道に出てくることだ」と話した。
同日、大統領府国家安保室のキム・ヒョンジョン次長はブリーフィングを行い、日本が朝鮮半島の平和造成に対する障害物になっている、「日本が指向する平和と繁栄の普通国家の姿が何か、私たちは一度慎重に考えて見る必要がある」と指摘しました。また別の大統領府高官は、日本がアメリカの仲介を拒否した経緯も説明しました。その点に関するハンギョレ・日本語版WSの8月2日付の記事の全文は以下のとおりです。
キム・ヒョンジョン次長「この間、日本は朝鮮半島平和プロセスに障害」
 大統領府が、日本が朝鮮半島に平和の雰囲気を作るうえで障害になってきたことと、米国の韓日軋轢に対する関与にも応じなかった情況を詳細に明らかにした。キム・ヒョンジョン大統領府国家安保室2次長は「過去数十年間、自由民主主義と市場経済価値を共有してきた韓国を安保上の理由を口実にホワイトリストから排除したことは、私たちに対する公開的侮辱といえる」と述べた。
 キム・ヒョンジョン2次長は2日午後、ブリーフィングを開き「日本は(この間)私たちの平和プロセス構築過程で助けるどころか障害を作ってきた。日本は平昌(ピョンチャン)冬季五輪当時、韓米連合演習の延期に反対し、北朝鮮との対話と協力が進行される渦中でも制裁と圧迫だけが唯一の解決法だと主張し、さらには韓国に居住する日本国民の戦時待避訓練を主張するなど緊張を作りもした」と話した。
 大統領府の要人が、朝鮮半島の平和造成にとって日本が障害物になっていると公式に話したことは異例だ。日本によるホワイトリスト排除に対する大統領府の激昂した雰囲気を見せたわけだ。キム・ヒョンジョン2次長は「日本が指向する平和と繁栄の普通国家の姿が何か、私たちは一度慎重に考えて見る必要がある」とも指摘した。
 また、大統領府の高位関係者はこの日、日本が米国の仲裁を拒否したことも詳細に説明した。彼は「米国が先月29日に韓日間の軋轢が続いていることに対して憂慮を表明し、一時的に現状況を凍結し、その間に両国が外交的合意を導き出して交渉すれば良いと提案した。日本側にも同日同じ提案をしたと理解する」として「それで私たちは米国の提案を基礎に、30日午後に両国間の高位級協議を提案したが、数時間後に日本が提案を拒否した」と明らかにした。
 続けて大統領府高位関係者は、米国が関与する効果については慎重に検討してみる必要があると述べた。彼は「日本が韓国をホワイトリストから排除した理由は何か、目的がどこにあるのか、経済的な理由なのか、政治的な理由なのか、あるいは両方なのか、慎重に考えてみる必要がある」と話した。さらに「それを勘案した時、果たして米国が日本を説得した時にどの程度の効果があるのか、慎重に検討してみる必要があると見る」と付け加えた。
 安倍首相の奇襲的な輸出規制が、高まる韓国経済を牽制するためなのか、朝鮮半島の平和協議のプロセスに加わりたいと言うことなのか、あるいは1965年の対日請求権協定後に続いている韓米日共助体制に対する根本的な再確立を要求しているのか、依然として確かめてみる必要があると見たわけだ。
<文在寅大統領は安倍政権の行動をどのように判断しているのか>
 8月3日付の中央日報・日本語版WSは、文在寅大統領が日本に対して極めて強硬な反応を示した背景として、①「日本政府の底意が韓日関係、さらには北東アジアを新しく再編する意図だと判断した」こと、②「歴史は歴史問題として協力すべきことは協力してきた両国の不文律を日本が根本から揺さぶることに対する文大統領の「怒り」」、③「韓半島平和プロセス過程で日本がずっと妨害してきたという認識」という3つのポイント指摘しています。以下は同記事全文です。
「日本、北東アジア再編の動き」判断…文大統領が全面戦宣言
8分20秒間かけて読み上げた2500字の発言の終始、文在寅(ムン・ジェイン)大統領の声のトーンは一定だった。抑揚なく独特の中低音の声であらかじめ準備してきた原稿を読み進めた。ネクタイを締めていなかっただけで服装は普段と同じだった。しかし表現の一つ一つは、これまでの文大統領の公開発言で聞いたことがないものだった。
2日午前に日本が閣議で韓国をホワイト国から排除する輸出貿易管理令改正案を議決してから約4時間後の午後2時、文大統領は青瓦台(チョンワデ、大統領府)で臨時国務会議を開いた。この席で文大統領は「事態を悪化させる非常に無謀な決定」「世界経済に大きな被害を及ぼす利己的な迷惑行為」「加害者の日本が大声を上げる状況を決して座視しない」などの表現を続けた。「我々は二度と日本には負けない」という内容もあった。さらに「今後生じる事態の責任は全面的に日本政府にあるという点を明確に『警告』する」と述べた。
この日の文大統領の冒頭発言は生中継された。文大統領の国務会議での発言が生中継されたのは初めて。青瓦台関係者は「日本のホワイト国排除に政府や大統領がどのような考えで対応していくかについて国民の関心が非常に大きかった。このため速やかに国民に正しく知らせようと生中継を選択した」と述べた。形式は国務会議の冒頭発言だったが、事実上の国民向け談話ということだ。準国民向け談話は事実上、対日全面戦を宣言したのと変わらなかった。
文大統領がこのように強硬対応を見せた背景は何か。まず、日本政府の底意が韓日関係、さらには北東アジアを新しく再編する意図だと判断したからだ。先月初め日本がフッ化水素など戦略物資の輸出を制限し始めた時期に会った青瓦台参謀の言葉だ。
「日本の戦略物資輸出制限措置について、当初は最高裁の強制徴用判決に対する不満を参議院選挙に活用するものと見ていた。ところがよく見ると、我々の競争力に打撃を与え、日本の経済的利益を狙うものではないかという疑いを抱いた。今は文化的・経済的・歴史的・政治的要因がすべて絡んだ状況だと見る。長期的な観点で韓日関係を見直すべきではないかというレベルまで判断することになった背景だ」。
こうした認識は最近さらに明確になった。与党関係者は「日本がこのように出てくるのは単なる最高裁の判決のためではなく、この際、韓国の成長潜在力を落とすための挑発と見る雰囲気がある」と伝えた。実際、文大統領は冒頭の発言で「さらに深刻に受け止められるのは、日本政府の措置が我々の経済を攻撃し、我々の経済の未来の成長を断って打撃を加えるという明らかな意図を持っているという事実」と述べた。
2つ目は、歴史は歴史問題として協力すべきことは協力してきた両国の不文律を日本が根本から揺さぶることに対する文大統領の「怒り」だ。文大統領を長期にわたり支えてきた青瓦台参謀は「その間、過去の問題とは別に行われてきた両国間の経済協力を歴史問題と連係させ、自由貿易秩序をまるごと揺さぶったことに対する文大統領の問題意識が大きかった」と伝えた。文大統領がこの日、「過去の深い傷があるが、両国は長い間、その傷を縫って薬を塗って包帯を巻いて傷を治癒しようと努力してきた。ところが加害者の日本がその傷に触れるなら国際社会の良識は決して容認しないだろう」と述べたのもこうした脈絡からだ。
3つ目は韓半島平和プロセス過程で日本がずっと妨害してきたという認識が作用した。青瓦台の金鉉宗(キム・ヒョンジョン)国家安保室第2次長は「我々は日本が韓半島(朝鮮半島)の平和プロセスの主な構成員と見なし、日朝修交などにおいて日本を積極的に応援した。しかし日本は平昌(ピョンチャン)冬季オリンピック(五輪)当時、韓米連合訓練の延期に反対し、韓国に居住する日本国民の戦時避難を主張するなど緊張を高めた」と批判した。また、「日本が目指す普通の国の姿が何かを慎重に考えなければいけない」と述べた。韓米朝を中心に進行される北東アジアの大きな流れの変化で疎外された日本が従来の秩序を崩して状況を再編しようとしているという与党の広範囲な疑心と軌を一にする発言だ。…
共に民主党のある親文派は「非常に大きなシルム(韓国相撲)をする前のまわしの取り合いはそれほど激しい。葛藤が長期化しても戦争でない以上、結局は両国が交渉で局面の転換を図るしかないが、立場が強硬であるほどカードが増えて交渉力が向上する側面がある」と診断した。この日、文大統領は冒頭発言の末に「わが政府は今でも対抗し合う悪循環を望まない。立ち止まることができる方法はただ一つ、日本政府が一方的かつ不当な措置を一日も早く撤回して対話の道に出てくることだ」とし、外交的解決の余地は開いておいた。
<ハンギョレ社説>
 8月2日付ハンギョレ・日本語版WSは「ついに"破局"を選んだ安倍、"国家力量"総結集し対抗しよう」を掲載しています。「今回の事態は、韓国最高裁(大法院)の強制徴用賠償判決と安倍政権の貿易報復で発火した。しかし、根本的には冷戦時期の韓国の軍部独裁政権と日本が締結した1965年韓日協定体制をもはやこれ以上はその古い姿のままで維持できなくなったことの象徴的な信号」と指摘した点がもっとも重要です。8月1日のコラムで紹介したキム・ヌリ署名寄稿文章と軌を一にした認識表明であり、それはとりもなおさず、「日韓1965年体制」に固執する安倍政権・自民党政治に対する韓国の良心の決別宣言を意味しています。
[社説]ついに"破局"を選んだ安倍、"国家力量"総結集し対抗しよう
 安倍晋三首相が、ついに韓日関係を破綻に導きかねない決定を下した。日本は2日の閣議で、韓国をホワイトリストから除外することを議決した。日本が韓国企業に打撃を与えうる品目の輸出を統制するという、事実上の"経済戦争"挑発と言うに値する。自由貿易原則を傷つけ、隣国韓国に敵対国として対処するという意味だ。国際分業・協業体系に亀裂を起こし、韓国・日本の両国経済はもちろん、世界経済にも深刻な悪影響を及ぼすだろう。近視眼的な安倍政権の"自害行為"を厳重に糾弾する。安倍首相が挑発した貿易戦争の結果は、そっくり日本が甘受するほかはない。
 今重要なことは私たちの対応だ。文在寅大統領が緊急国務会議を招集し、私たちも日本をホワイト国から除外することを決めた。文大統領は、日本の閣議議決を「外交的努力を拒否し、事態を一層悪化させるきわめて無謀な決定」と批判して、「政府は日本の不当な経済報復に相応する措置を断固として取っていく」と明らかにした。また「私たちは二度と日本に負けないだろう」とし「政府と企業の力量を信じて、自信を持って結束してほしい」と訴えた。
 文大統領の演説は、日本の決定の不当性を逐一批判し、断固たる正面対抗を明らかにしながらも、節制された言語で国民の団結と日本の反省を促したという点で時宜適切だったと見る。大統領の言葉を借りるまでもなく、今最も重要なことは、私たちの力量を一つに結集することだ。日本が7月初めに半導体材料の輸出規制を下した時のように、韓日貿易戦争の勃発責任を安倍ではなく文在寅政府のせいにする一部野党と保守マスコミの無分別な行動がこれ以上あってはならない。被害者の人権と民主主義の価値を傷つけ、自由貿易原則を押し倒した責任は全面的に日本政府にある。韓国政府の対応の適切性を批判することはできるが、その批判が日本極右政権の覇権的行動を擁護して支援することに変質してはならない。今は、政界をはじめすべての部門が日本政府の極悪非道な行動を批判することに集中しなければならない時だ。…
 今回の事態は、韓国最高裁(大法院)の強制徴用賠償判決と安倍政権の貿易報復で発火した。しかし、根本的には冷戦時期の韓国の軍部独裁政権と日本が締結した1965年韓日協定体制をもはやこれ以上はその古い姿のままで維持できなくなったことの象徴的な信号のようだ。「経済に打撃が大きいから、どうにか和解しよう」という方式で安易に軋轢を縫合してはならない理由がここにある。政府は"65年体制"の遺産のうち、責任を負うべきことには責任を負いつつも、時代的価値変化を反映する側で堂々と対応することを望む。それでこそ韓日両国の望ましい未来を開く土台を用意できる。

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